5月4日にナポリで開幕する第96回ジロ・デ・イタリア。今年はウィギンズやエヴァンス、ヘジダルがマリアローザ獲得を懸けてナポリに降り立つ。迎え撃つのは地元イタリアのニーバリやスカルポーニ。3週間の頂点を目指す注目のオールラウンダー達をピックアップしておこう。

優勝トロフィー「トロフェオ・センツァフィーネ」を懸けて争う7名が集まった優勝トロフィー「トロフェオ・センツァフィーネ」を懸けて争う7名が集まった photo:Kei Tsuji

マリアローザの本命はウィギンズとニーバリ

2010年ジロ・デ・イタリアの個人TTを制し、マリアローザを着たブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)2010年ジロ・デ・イタリアの個人TTを制し、マリアローザを着たブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Kei Tsuji総合リーダーの証であるマリアローザの色は、主催紙ガゼッタ・デッロ・スポルト紙に使用されている紙の色に由来する。直訳すると「ピンク色のジャージ」ではなく「バラ色のジャージ」だ。

ジロ・デル・トレンティーノ 並んでゴールラインを切るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)とヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ジロ・デル・トレンティーノ 並んでゴールラインを切るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)とヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Riccardo.Scanferla昨年ツール・ド・フランスでイギリス人選手として初めてマイヨジョーヌを獲得したブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)は、マリアローザを手に入れるべくジロに出場する。ジロとツールを連続で制する「ダブルツール」を狙うとの発言も出たが、ツールではチームメイトのクリス・フルーム(イギリス)がエース。目下のところウィギンズはジロに集中する。

似たような質問を何度も受けるブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)似たような質問を何度も受けるブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Kei Tsuji今年のジロは、昨年よりも山岳ステージの比率が低く、タイムトライアルが長い。これはつまりウィギンズ向きのコースであることを意味している。昨年のロンドン五輪個人TTで金メダルを獲得したウィギンズは、得意のTTでリードを広げるはずだ。

ウィギンズ最大のライバルと目されるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ウィギンズ最大のライバルと目されるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsujiウィギンズの山岳力がライバルたちに対して劣っているかというと決してそうではない。スピードや勾配が変化する登りは苦手だが、高出力でハイペースを刻むような登りではピュアクライマーをも凌駕する。

ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Riccardo Scanferla前哨戦ジロ・デル・トレンティーノでは、メカトラによって総合5位に沈んだものの、山岳ステージでライバルたちと対等の登坂力を披露。しっかりとジロに向けてコンディションを上げていることを証明した。「ジロに照準を合わせるために、短期間で集中したトレーニングを行ない、普段走らないレースも走った。確かに昨年と比べるとここまで勝てていない。でも、ジロに向けて軌道に乗っている」。

ウィギンズの脇を固めるのはエナオモントーヤやウラン、シウトソウ、カタルドといった山岳アシストたち。「今回のメンバーの強さは、昨年のツールのメンバーと遜色無い。メンバー全員調子が良く、準備は整った」。

そのウィギンズが「打ち負かすべき相手」と名指しするのが、ジロ・デル・トレンティーノで総合優勝したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)だ。

2010年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝したニーバリは、昨年のツールで唯一スカイ勢を苦しめる存在となり、総合3位フィニッシュ。アスタナに移籍した今年、ティレーノ〜アドリアティコで連覇を達成し、ジロ・デル・トレンティーノで総合優勝している。勾配のあるジロの山岳はニーバリ向き。とにかく今現在最も登れているのはニーバリだ。ライバルのウィギンズに対してニーバリはタイムを稼ぐことが出来るだろう。

一方で、ニーバリは個人TTで苦しむことが予想される。昨年ツールの41.5km個人TTで、ニーバリはウィギンズに対して2分07秒のビハインドを食らっている。

今年のジロには54.8kmの個人TTが設定されているため、ニーバリは冬場からTTバイクでのトレーニングに時間を割いて来たと言う。「オフシーズンから昨年までと異なるトレーニングに取り組んで来た。そして今その結果が出ている。個人TTでは踏ん張らないといけない。重要なのは余計なタイムを失わないこと」。

ニーバリはイタリア人選手の中でマリアローザに最も近い存在。なお、スカイとアスタナはスプリンターをメンバーから外しており、100%総合狙いのチーム編成でジロに挑む。


勝機を伺うヘジダルやエヴァンス、開催国イタリアのスカルポーニ

2012年ジロ・デ・イタリア 総合優勝トロフィーにキスをするマリアローザにキスをするライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)2012年ジロ・デ・イタリア 総合優勝トロフィーにキスをするマリアローザにキスをするライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) photo:Kei Tsujiディフェンディングチャンピオンのライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)は4月のアルデンヌ・クラシックでアグレッシブな走りを見せた。直前のツール・ド・ロマンディは、ジロを見据えて途中リタイアしている。

カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Riccardo Scanferla「今シーズンは前半から思った通りの調整が出来た。昨年よりも良い状態でジロに挑むことが出来るよ。それに、強いチームメイトたちも揃っている」。ヘジダルは記者会見で自信溢れるコメントを残す。マークが甘かった昨年と違い、今年は優勝候補に挙げられる中での出場。TTの長さはヘジダルに味方するだろう。仮にヘジダルが勝てば、1993年のインドゥライン以来の大会連覇となる。

ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ) photo:Kei Tsuji今シーズンまだ存在感を見せていないカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)は、2ヶ月後のツールを見据えながらジロを走る。エヴァンスはジロ・デル・トレンティーノ総合8位。ドロミテに近づく頃には本調子まで上げてくるだろう。

その他、海外勢としては、ジロ初出場のロバート・ヘーシンク(オランダ、ブランコプロサイクリング)やサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード)らも総合上位に絡んでくるだろう。2006年に総合6位に入っているサンディ・カザール(フランス、FDJ)は今年グランツール全戦出場を予定している。

地元イタリア勢としては、前述のニーバリの他に、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)やマウロ・サンタンブロジオ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)に注目したい。

コンタドールのタイトル剥奪によって2011年のジロ総合優勝者となったスカルポーニは、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュで5位。山岳ステージではまだまだ主役になれる脚をもつ。ジロ・デル・トレンティーノでニーバリと競り合って総合2位フィニッシュしたサンタンブロジオは、ガルゼッリとディルーカというベテラン2人を引き連れての出場だ。イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)が急遽出場を断念した今、彼らの背中には開催国のプレッシャーがのしかかる。


歴代マリアローザ獲得選手
2012年 ライダー・ヘジダル(カナダ)
2011年 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)
2010年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2009年 デニス・メンショフ(ロシア)
2008年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2005年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2004年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2001年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2000年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
1999年 イヴァン・ゴッティ(イタリア)
1998年 マルコ・パンターニ(イタリア)
1997年 イヴァン・ゴッティ(イタリア)
1996年 パヴェル・トンコフ(ロシア)
1995年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1994年 エフゲニー・ベルツィン(ロシア)
1993年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1992年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1991年 フランコ・キオッチォーリ(イタリア)
1990年 ジャンニ・ブーニョ(イタリア)

text:Kei Tsuji in Napoli, Italy

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