ツール・ド・ロマンディは残り2日、マスドロードに別れを告げる第4ステージは、1級山岳が4つ登場するクイーンステージだ。クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)と共に抜けだしたサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)がステージ優勝。フルームは基調なリードを奪い取った。

ツール・ド・ロマンディ2013 第4ステージコースプロフィールツール・ド・ロマンディ2013 第4ステージコースプロフィール photo:Tour de Romandieツール・ド・ロマンディ(UCIワールドツアー)最終日前日、4月27日に開催された第4ステージは、全6ステージ(プロローグを含む)中で最高難易度を誇るクイーンステージ。マルリーをスタートしレ・ディアブルレへと至る188.5kmの道程中には2回通過するクロワ峠を含む、計4つのカテゴリー1級の難関山岳が登場する。

地元スイスの期待を背負い逃げるセバスティアン・レイヘンバッハ(IAMサイクリング)地元スイスの期待を背負い逃げるセバスティアン・レイヘンバッハ(IAMサイクリング) photo:Tour de Romandie1級山岳を3回通過したのち、最後は標高400mの低地から標高1752mのクロワ峠頂上まで一気に駆け上がり、9kmのダウンヒルを経てレ・ディアブルレのゴールへと到達する。この上りと下りしか無いコースで、総合上位陣による激しい上り勝負が繰り広げられた。

深い雪に包まれたクロワ峠を走るメイン集団深い雪に包まれたクロワ峠を走るメイン集団 photo:Tour de Romandie深い雪の中を走る逃げグループ深い雪の中を走る逃げグループ photo:Tour de Romandieまた、厳しい山岳を前に、この日はDNSとDNFを合わせて39名もの選手がレースを去る。その中にはここまでステージ2勝を飾っているジャンニ・メールスマン(ベルギー)や、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、共にオメガファーマ・クイックステップ)の名も。

雨のクロワ峠で攻撃するティボー・ピノ(フランス、FDJ)とロバート・キセロフスキー(クリアチア、レディオシャック・レオパード)雨のクロワ峠で攻撃するティボー・ピノ(フランス、FDJ)とロバート・キセロフスキー(クリアチア、レディオシャック・レオパード) photo:Tour de Romandie最初の1級ル・モズ峠を目指して飛び出したのは、地元スイスのセバスティアン・レイヘンバッハ(IAMサイクリング)やアルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ)、トム・デュムラン(オランダ、アルゴス・シマノ)、マークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシングチーム)。山岳賞ジャージを着るブルグハートは2日連続の逃げを決め、先行することでジャージを守る動きに出た。

雨が路面を濡らす中、プロトンは未だ深く雪の残る山岳地帯へと分け入っていく。逃げグループの最大タイムギャップは6分ほど。メイン集団はこれまでと同じように、リーダージャージのフルームを擁するスカイプロサイクリングがコントロールを担った。

その展開の中で、66.1km地点のモズ峠、89km地点の1回目のクロワ峠頂上はいずれもブルグハートが先頭通過し、総合での山岳賞ジャージ獲得を決定させる。標高の高い区間では100m先も見えない程の深い霧が立ちこめ、冷たい雨が選手たちを濡らす過酷なコンディションとなっていく。3番目のモージャン峠ではヴィショが3名を振り切り、独走を開始した。

残り30kmで、メイン集団と先行するヴィショの差は1分半ほど。ここからトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)が集団からアタックし、長い追走の後にヴィショとの合流に成功。しばらくすると序盤から逃げていたヴィショを振り切り、マルティンは一人クロワ峠頂上を目指して上りに突入していく。

マルティンと人数の絞られた集団とのタイム差は、残り18kmで1分。独走でステージ優勝のチャンスを掴もうとしたマルティンだったが、しかし、徐々に活性化しつつある集団の勢いを抑えこむことは叶わず。FDJがペースを上げる集団に残り14kmで吸収された。

そして有力勢による上り勝負がいよいよもって勃発。まずはロバート・キセロフスキー(クリアチア、レディオシャック・レオパード)がアタックすると、次いでティボー・ピノ(フランスFDJ)、さらにダニーロ・ウィス(スイス、IAMサイクリング)がここに合流。

リーダージャージのフルームは、リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)の献身的なアシストにフォローされてメイン集団の前方に位置取って走る。更にサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)がアタックしていくと、これに反応するようにして遂にフルームが発進した。

クロワ峠で先行するクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)とサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)クロワ峠で先行するクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)とサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ) photo:Tour de Romandieスプリントで先行したサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)が優勝スプリントで先行したサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)が優勝 photo:Tour de Romandie苦い表情でゴールするクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)苦い表情でゴールするクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Tour de Romandie


ステージ優勝を遂げたサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)ステージ優勝を遂げたサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ) photo:Tour de Romandie頂上を通過して下りに入り、先行するのはフルームとスピラックのただ2名となる。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)やルイ・コスタ(ポルトガル、共にモビスター)らを含む追走グループは先頭2名を追ったものの、ウェットなダウンヒルでは思うように差が縮まらない。

総合優勝に王手をかけたクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)総合優勝に王手をかけたクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Tour de Romandieステージを狙うスピラックと、総合でのタイム差を広げたいフルーム。利害の一致した2名は先頭交代を繰り返していくと、タイム差は30秒から縮まらない。2人はフルーム先行のまま、最後の直線へと到達。最後はスピラックが加速し、昨年3月以来となる勝利を手中に収めた。

スリップに付いたフルームは同タイムでゴールし、3位グループで到達したライバルたちに対して1分の差をつけることに成功。前日までのタイム差と合わせ、フルームが他総合勢に対して持つリードは1分半ほど。翌最終日、18.6kmの個人タイムトライアルでは、ステージ優勝も期待されるフルームが総合を守ることは固いと見られている。





ツール・ド・ロマンディ2013 第4ステージ結果
1位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)  5h10′00″
2位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)
3位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター) +1′03″
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
5位 ウィルコ・ケルデマン(オランダ、ブランコプロサイクリング)
6位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アージェードゥーゼル)
7位 マルセル・ウィス(スイス、IAMサイクリング)
8位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル)
9位 ロバート・キセロフスキー(クリアチア、レディオシャック・レオパード)
10位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
 
個人総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) 19h03分10″
2位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ) +47″
3位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター) +1′21″
4位 ロバート・キセロフスキー(クリアチア、レディオシャック・レオパード) +1′22″
5位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +1′26″
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
7位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)
8位 ウィルコ・ケルデマン(オランダ、ブランコプロサイクリング) +1′27″
9位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター) +1′28″
10位 マルセル・ウィス(スイス、IAMサイクリング) +1′43″

山岳賞
マークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシングチーム)

ポイント賞
マティアス・ブランドル(オーストリア、IAMサイクリング)

新人賞
ティボー・ピノ(フランス、FDJ)

チーム総合成績
スカイプロサイクリング


text:So.Isobe
photo:Tour de Romandie