「クラシックの王様」と称されるロンド・ファン・フラーンデレンは今年で100周年。記念すべき大会を制するのはディフェンディングチャンピオンのボーネンか、それとも直近のレースで勝っているカンチェラーラかサガンか。別府史之(オリカ・グリーンエッジ)は2年ぶり4度目の出場だ。

「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」の周回で決着

ロンド・ファン・フラーンデレン2013コースマップロンド・ファン・フラーンデレン2013コースマップ photo:www.rondevanvlaanderen.be「モニュメント」と呼ばれる世界を代表する5つのワンデークラシックの中でも、ひと際大きな存在感を見せるのが、「クラシックの王様」の異名を持つロンド・ファン・フラーンデレンだ。今年は3月31日に開催される。

フランス語で「ツール・デ・フランドル」と呼ばれるフランドル地方最大のロードレースであり、そのステータスは「世界一」。そこに異議を唱える人は少ない。

1913年に第1回大会が開催され、今年で開催97回目。記念すべき100周年大会である。自転車競技熱が高いフランドル地方で開催されるだけに、沿道には熱狂的なファンが詰めかけ、頭上には黄色のフランドルフラッグが翻る。今年もフランドル地方の熱気はこのロンドで頂点に達する。

多くの観客が詰めかけた石畳の登り多くの観客が詰めかけた石畳の登り photo:Cor Vosロンド・ファン・フラーンデレンがそれだけ高いステータスを誇っている理由、それは他のクラシックレースには見られない過酷なコース設定だ。石畳に覆われた激坂がいくつも登場する。

ゴール13km手前の「パテルベルグ」石畳 平均12.9% 最大20.3% 長さ360mゴール13km手前の「パテルベルグ」石畳 平均12.9% 最大20.3% 長さ360m photo:Cor Vos昨年ゴール地点がニノーヴェのメールベケから、レース博物館のあるオウデナールデに移されるとともに、名物だったゴール前の「ミュール・カペルミュール」と「ボスベルグ」が姿を消した。代わりに登場したのが、「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」を含む大中小の周回コース。今年もそのコースレイアウトを引き継いでいる。コース全長は256km。

合計3回ずつ登場する「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」はいずれも石畳で、前者が平均4%・最大11.6%・長さ2200m、後者が平均12.9%・最大20.3%・長さ360m。最後の「パテルベルグ」からゴールまでは13kmしかない。

従来の「ミュール・カペルミュール」と「ボスベルグ」の組み合わせと比較すると、「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」の組み合わせの難易度は低いとの声も聞かれるが、コースの難易度がレースの難易度に直結するわけではない。レースの厳しさは選手が作るものであり、難易度が下がった分、スピードが上がり、展開的に以前にも増してサバイバルなレースとなる可能性もある。

最大勾配が22%に達する「コッペンベルグ」は192km地点で登場。急坂区間はのべ17カ所で、平坦な石畳区間も7カ所ある。フランドル地方特有の気まぐれな天候がレース展開に大きく影響するだろう。特に今年は季節外れの寒さによって、例年以上に厳しいレースになるかもしれない。天気予報によると、日曜日の天候は曇り時々晴れ。気温は最高6度、最低-1度だ。

登場する17の急坂
1 91km地点 ティーヘムベルグ アスファルト 平均5.6% 最大9% 長さ750m

2 113km地点 ターインベルグ 石畳 平均6.6% 最大15.8% 長さ530m
3 119km地点 エイケンベルグ 石畳 平均6.2% 最大10% 長さ1300m
4 134km地点 モーレンベルグ 石畳 平均7% 最大14.2% 長さ463m
5 149km地点 レケルベルグ アスファルト 平均4% 最大9% 長さ800m
6 154km地点 ベレンドリース アスファルト 平均7% 最大13% 長さ940m
7 160km地点 ヴァルケンベルグ アスファルト 平均8.1% 最大12.8% 長さ540m


8 182km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
9 186km地点 パテルベルグ 石畳 平均12.9% 最大20.3% 長さ360m
10 192km地点 コッペンベルグ 石畳 平均11.6% 最大22% 長さ600m
11 198km地点 シュテインビークドリシュ 石畳 平均5.3% 最大6.7% 長さ700m
12 209km地点 クルイスベルグ 石畳 平均6.5% 最大9% 長さ1000m


13 219km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
14 223km地点 パテルベルグ 石畳 平均12.9% 最大20.3% 長さ360m
15 230km地点 ホーグベルグ アスファルト 平均3.5% 最大8% 長さ3000m


16 239km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
17 243km地点 パテルベルグ 石畳 平均12.9% 最大20.3% 長さ360m

ロンド・ファン・フラーンデレン2013コースプロフィールロンド・ファン・フラーンデレン2013コースプロフィール photo:www.rondevanvlaanderen.be


やはり注目はボーネン、カンチェラーラ、サガンの三強

昨年3度目の優勝を果たしたトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)昨年3度目の優勝を果たしたトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Makoto Ayano昨年の第96回大会は、トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)とフィリッポ・ポッツァート(イタリア、当時ファルネーゼヴィーニ)、アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)の三つ巴の闘いに持ち込まれ、ボーネンが悠々とスプリントを制した。

E3ハレルベークを制したファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)E3ハレルベークを制したファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード) photo:Riccardo Scanferlaランプレ・メリダに移籍したポッツァートは今シーズンまだ輝きを見せておらず、昨年12月に落車し、大腿骨と肋骨骨折、脾臓損傷を負ったバッランは療養中。今年は表彰台のメンバーがガラリと変わりそうだ。

ヘント〜ウェベルヘムを制したペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)ヘント〜ウェベルヘムを制したペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Riccardo Scanferla昨年、史上5人目となる3度目の優勝を果たしたボーネンは、例年よりも調整が遅れながらも、着々とロンドに向けて調子を上げて来た。ヘント〜ウェベルヘムで落車して膝を痛めたが、直前のVDKドリダーフス・デパンヌ・コクサイデでは積極的な走りを披露。「昨年ほど絶好調ではない」と、調整の遅れを認めながらも「この数週間で急速にコンディションを上げた」と語っている。

4度目の出場を果たす別府史之(オリカ・グリーンエッジ)4度目の出場を果たす別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji地元フランドルの英雄にして、ベルギーチャンピオン、ならびにディフェンディングチャンピオン。重いプレッシャーを背負うボーネンは、テルプストラやシャヴァネル、スティバルという強靭なアシストたちを従えての出場。オメガファーマ・クイックステップのチーム力はナンバーワンだと言っていいだろう。

2010年大会の覇者ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)は、昨年ロンドの補給ポイントで落車して鎖骨を骨折。大きな目標に掲げていたロンドとパリ〜ルーベを棒に振った。

今年は大会9日前のUCIワールドツアーレースE3ハレルベークで35km独走勝利を飾るなど、復権に向けて順調な仕上がりを見せる。2008年と2009年大会の覇者デヴォルデルは心強い存在になるだろう。

近年ロンドで主役を担うボーネンとカンチェラーラの二強に割って入ろうとしているのが、23歳のペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)だ。ヘント〜ウェベルヘムで初優勝を果たしたサガンは、今シーズンすでに世界最多7勝をマークしている。

サガンは2011年にロンド初出場を果たしたが、結果は途中リタイア。昨年は、追走集団のスプリントに絡んで5位に入っている。今年に入って一段と逞しさを増したサガンは、爆発的なアタックとスプリントを武器にロンド初制覇を目論む。ボドナールやヴィヴィアーニがサガンをサポートすることになるだろう。直近のレースを見る限り、カンチェラーラとサガンのコンディションが飛び抜けている感もある。

バッランを欠くBMCレーシングチームはフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー)をエースに据える。アルデンヌクラシックに集中するため、世界チャンピオンのジルベールは欠場。フィニーもスタートリストに入っていない。

スカイプロサイクリングはゲラント・トーマス(イギリス)をエースに据えているが、好調のイアン・スタナード(イギリス)も注目の存在。アウトサイダーとしてはセバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)やセプ・ファンマルケ(ベルギー、ブランコプロサイクリング)、そしてヘント〜ウェベルヘムで果敢な走りを披露したハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)らに注目。伝統的にロンドと相性の良いイタリアからは、ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)やオスカル・ガット(イタリア、ヴィーニファンティーニ)が出場する。

また、ヘント〜ウェベルヘムに続いて、別府史之(オリカ・グリーンエッジ)がロンドに出場する。2011年に日本人として初完走を果たしたフミは、2年ぶり4度目のロンド出場。最も格式あるクラシックレースの精鋭メンバーに選ばれたことが、何よりも走れている証拠だ。フミは2011年大会5位のラングヴェルトをサポートする。

text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla, Makoto Ayano

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