3月22日、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)の独走力がライバルたちを圧倒した。UCIワールドツアーの第56回E3ハレルベークでカンチェラーラが独走勝利。ロンド・ファン・フラーンデレンやパリ〜ルーベに向けて布石を打った。

集団内で走るベルギーチャンピオンのトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)集団内で走るベルギーチャンピオンのトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Riccardo Scanferlaロンド・ファン・フラーンデレンの9日前、ヘント〜ウェベルヘムの2日前というタイミングで開催されるE3ハレルベーク。これまで土曜日に開催されてきたが、今年は金曜日開催に変更された。ベルギー国内における今シーズン最初のUCIワールドツアーレースであり、クラシック本戦の前哨戦としての意味合いが強い。

アタックを仕掛けるトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)アタックを仕掛けるトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Riccardo Scanferlaハレルベークを発着する211kmのコースには、「オウデ・クワレモント」や「パテルベルグ」など、お馴染みの急坂が多数取り入れられている。急坂や石畳、細いコースなど、その過酷さはフランドルクラシックならではだ。

石畳を避けて砂利道を走るファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)石畳を避けて砂利道を走るファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード) photo:Riccardo Scanferlaレースは序盤からアナス・ルンド(デンマーク、サクソ・ティンコフ)ら6名が逃げ、オメガファーマ・クイックステップ率いる集団が追う展開に。レース終盤の勝負どころを前に、ルンドらは早くも吸収される。

カンチェラーラを追走するペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)らカンチェラーラを追走するペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)ら photo:Riccardo Scanferla「ターインベルグ」で口火を切ったのは、昨年史上最多の5勝目を飾ったトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)。この王者の動きにはユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)が素早く反応し、遅れてカンチェラーラらも合流。そこからシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)らがカウンターアタックで飛び出すなど、レース先頭では常に動きが。

ゴールまで50kmを残してボーネンやカンチェラーラを含む10名強が先行。ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)はメカトラで遅れてしまうが、チームメイトのサポートによって難所「パテルベルグ」の手前で何とかレース先頭に復帰する。

すると「パテルベルグ」で再びボーネンがアタック。カンチェラーラやサガン、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)らが反応して先頭は11名ほどの精鋭グループに。オメガファーマ・クイックステップとスカイプロサイクリングがそれぞれ人数を揃えることに成功した。

そして迎えた「オウデ・クワレモント」。ゴールまで35kmを残したこの登りでカンチェラーラが一気に仕掛ける。石畳の長い登りをパワフルなペダリングで踏み抜いたカンチェラーラは瞬く間に15秒のリードを得て独走を開始。ボーネンは出遅れた。

追走グループを形成したのはサガン、シャヴァネル、ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシングチーム)、セバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)、ゲラント・トーマス(イギリス、スカイプロサイクリング)の5名。ディフェンディングチャンピオンのボーネンはこの中にも入れなかった。

独走するファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)独走するファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード) photo:Riccardo Scanferla

独走でゴールに飛び込むファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)独走でゴールに飛び込むファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード) photo:Riccardo Scanferlaゴールまで35kmの個人タイムトライアルを開始したカンチェラーラは、互いの様子を見ながら走る追走5名や、ボーネンを含む第2追走を相手にリードを広げ始める。ラスト25km地点で追走5名に対して1分、第2追走に対して1分45秒のリード。

オスをかわし、2位争いのスプリントを制したペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)オスをかわし、2位争いのスプリントを制したペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Riccardo Scanferlaラスト10kmでタイム差は40秒まで縮まったものの、カンチェラーラが踏み直すと再びタイム差は1分まで拡大。並走するチームカーのデモル監督から指示を受けながら走ったカンチェラーラが、最終的に1分04秒差で逃げ切った。

大きな優勝トロフィーを受け取ったファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)大きな優勝トロフィーを受け取ったファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード) photo:Riccardo Scanferla強いカンチェラーラが帰ってきた。昨年ロンド・ファン・フラーンデレンで鎖骨を骨折し、不運なクラシックシーズンを送ったカンチェラーラ。今シーズンはストラーデビアンケ4位、ミラノ〜サンレモ3位と、順調な仕上がりを見せている。昨年ツール・ド・フランスのプロローグ以来、実に9ヶ月ぶりの勝利だ。

「今日は自分がすべきことをした。調子が良いと感じているときはアタックする必要がある。オメガファーマ・クイックステップが人数を揃えていたので、何かしなければと思った。フランドルでも鍵を握るオウデ・クワレモントで、グループの人数を絞り込みたいと思って直感的にアタックしたんだ」。

2010年と2011年に続く3度目の勝利を飾ったカンチェラーラは、2日後のヘント〜ウェベルヘムや1週間後のロンド・ファン・フラーンデレン、そしてもちろん2週間後のパリ〜ルーベも狙っていく。「この勝利で自信を取り戻すことが出来た。これからのレースにリラックスして挑めるよ。まだまだ重要なレースが残っているけど、今はこの勝利を祝いたい」。

カンチェラーラを捉えきれなかった追走グループからは、ゴール手前でオスがスパート。しかしオスはトーマスとサガンに追いつかれて3位に。サガンがミラノ〜サンレモに続いて2位に入った。

別府史之(オリカ・グリーンエッジ)は自身3度目の完走。12分15秒遅れの83位でレースを終えている。フミは3月26日から28日まで同じくベルギーで開催されるデパンヌ3日間レースに出場する予定だ。

選手コメントはレディオシャック・レオパード公式リリースより。


E3ハレルベーク2013
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)   5h08'28"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)      +1'04"
3位 ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシングチーム)
4位 ゲラント・トーマス(イギリス、スカイプロサイクリング)
5位 セバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)    +1'08"
6位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)       +2'15"
8位 ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)
9位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)
10位 セバスティアン・テュルゴー(フランス、ユーロップカー)
83位 別府史之(日本、オリカ・グリーンエッジ)                +12'15"

text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla

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