第5ステージはキエーティの街への上りゴール。ホアキン・ロドリゲスが得意の急な上り勾配でのスプリントを爆発させ、ライバルたちを引き離し独走ゴールした。クリス・フルームがクヴィアトコウスキーからリーダージャージを奪うことに成功した。

カヴェンディッシュがリーダージャージを着たミカル・クヴィアトコウスキーを励ますカヴェンディッシュがリーダージャージを着たミカル・クヴィアトコウスキーを励ます (c)CorVosティレーノ〜アドリアティコ第5ステージはオルトナ〜キエーティの、ステージレースとしては最長クラスの230kmで争われた。ゴールするのは丘の上に佇むキエーティの街。ステージ後半、パッソ・ランチャーノ(距離11.3km、平均勾配8.5%)を越えたあと、集団の勝負はこの丘上都市へと至る標高差300mの急勾配で決着する。最大勾配が19%に達するこの短く急な坂が総合優勝者を絞り込むのだ。

昨日活躍したトマシュ・マルチンスキー(ポーランド、ヴァカンソレイユ)を囲む選手たち昨日活躍したトマシュ・マルチンスキー(ポーランド、ヴァカンソレイユ)を囲む選手たち (c)CorVosスタートの街オルトナは晴れ。レースはアドリア海に達してようやく好天に恵まれる。フランチェスコ・キッキ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)が発熱のためスタートせず、168人の選手が走りだす。

スタート0km地点に到達するまでの落車で セプ・ファンマルク(ベルギー、ブランコ)が落車してリタイア。重要なクラシックシーズン前に膝に手術を擁する負傷を負った。

そして山岳賞ジャージを着るフランチェスコ・ファイッリ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)と、オリヴィエ・カイセン(ベルギー、ロット・ベリソル)もリタイア。ファイッリも落車で肋骨を骨折していた。

いくつもの逃げを狙うアタックの後、9人が抜け出しに成功する。逃げたメンバーは以下の9人。
ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、アスタナ)
ミヒャエル・シェアー(スイス、BMC)
マキシム・ベルコフ(ロシア、カチューシャ)
ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)
セバスティアン・ラングフェルド(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)
ステイン・デヴォルデル(ベルギー、レディオシャック・レオパード)
フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ)
チェーザレ、ベネデッティ(イタリア、ネットアップ)
オスカル・ガット(イタリア、ヴィーニファンティーニ)

レディオシャック・レオパードの新監督、ルーカ・グエルチレーナ氏レディオシャック・レオパードの新監督、ルーカ・グエルチレーナ氏 (c)CorVosベネデッティがコーナーリングミスによりコースアウトしてこのグループから遅れ、7人となった集団が70km地点で7分差にまで差を広げる。集団ではスカイ、キャノンデール勢が徐々にペースを上げ、差を詰めだす。

フォルチェッタ・ディ・パレッタの上り、そしてパッソ・ランチャーノでこの逃げグループも分解。クネゴ、フレチャ、アニョーリ、デヴォルデルが他の選手をふるい落とし、クネゴが独走状態に入る。

距離11.3km、平均勾配8.5%のパッソ・ランチャーノをひとり走るクネゴ。集団はスカイのリゴベルト・ウラン、セルジオルイス・エナオモントーヤのコロンビア人ペア、そしてダリオ・カタルドらが今日も先頭にたち、ペースを上げる。
クネゴは峠を下り、登り始めたキエーティまで6.8km地点で捕まってしまう。

絞りこまれた集団でホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がアタックの機会を伺う絞りこまれた集団でホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がアタックの機会を伺う photo:Riccardo Scanferla

集団も20人強の少人数に絞られた。スカイに守られたフルーム、リーダージャージのクヴィアトコウスキー(オメガファーマ)、ホーナー(レディオシャック)、コンタドールとクロイツィゲル(サクソ・ティンコフ)、ニーバリとティラロンゴ(アスタナ)、サンタンブロージオ(ヴィーニファンティーニ)、サガンとモゼール(キャノンデール)、ノチェンティーニ(アージェードゥーゼル)、モレーノとロドリゲス(カチューシャ)、マーティン(ガーミン)、モレマ(ブランコ)、アマドール(モビスター)ニエミエツ(ランプレ)ら主要なメンバーが残った。

得意の上りのスプリント力を生かしてフルームらを引き離すホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)得意の上りのスプリント力を生かしてフルームらを引き離すホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Riccardo Scanferlaフィニッシュラインの待つキエーティへ向けて勾配を増すコース。サガンをはじめ、急勾配に対応できない選手が次々とふるい落とされていく。
スカイのアシスト勢の後ろにつけるフルーム。それをマークするクヴィアトコウスキー、コンタドール、ニーバリがお互いを牽制しながら上る。

2位 バウク・モレマ(オランダ、ブランコ) に続きゴールするアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)2位 バウク・モレマ(オランダ、ブランコ) に続きゴールするアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ) (c)CorVosラスト4kmを切ってアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)と ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)が抜け出る。スカイ勢がペースを上げてそれを吸収すると、急勾配に差し掛かったラスト1.3kmでロドリゲスがアタック、みるまに差を広げる。フルームとコンタドールらはこれを追わず、お互いの闘いに集中する。しかしここでニーバリが苦しみ、遅れだす。

ロドリゲスは後続に5秒の差を持ってキエーティの街のフィニッシュラインに飛び込んだ。
後続2位争いの集団はバウク・モレマ、アルベルト・コンタドール、マウロ・サンタンブロージオ、クリストファー・ホーナー、クリス・フルームの5人でゴール。

表彰台で歓喜するホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)表彰台で歓喜するホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Riccardo Scanferlaリーダージャージを着た総合首位のクヴィアトコウスキーは35秒遅れでフィニッシュラインを越えたたため、フルームがマリア・アッズーラを奪取することに成功した。
コンタドールはフルームについで20秒差の総合2位につけ、ポイント賞では首位にたっている。

得意のコースで予想通りの優勝を飾った、葉巻の意味の”プリト”が愛称のロドリゲスは言う。
「今日は昨年のレースで彼らが僕を置き去りにしたポイントでアタックしたんだ。今日勝てたことはとても重要だ。前にもここで勝ったことがあり、ティレーノには特別な思いを抱いてきた。今年は最強の選手がこのレースに集っている。そこで勝てたことはチームにとっても、僕にとっても良いことだ。
リーダージャージを獲得したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)リーダージャージを獲得したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) (c)CorVosフルームがこのレースに勝ったように思えるけど、明日は難しいレースだ。明日は僕のようなタイプの選手にはとても難しいレース。フルームのコンタドールに対しての20秒差は十分な差だと思う。でもニーバリに対しては十分じゃないと思う」。

フルームから20秒遅れ。ポイント賞ではトップにたったアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)フルームから20秒遅れ。ポイント賞ではトップにたったアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ) photo:Riccardo Scanferla総合首位にたつことに成功したフルームは言う。
「チームは残り50kmのパッソ・ランチアーノからリーダージャージにプレッシャーを与えながら走った。最後の2つの上りでクヴィアトコウスキーに対して差を開くことが作戦だった。チームはレースを破壊した。クヴィアトコウスキーが遅れたという知らせを聞いた時、ヤル気が増したけれど、正直言って僕もすでにその時は全開だったんだ。このリーダージャージはチームの走りのおかげだ」。

20秒差で総合2位につけるコンタドールは言う。「僕が今までのレースから学んだことは、レースが終わるまでは終わりじゃないってこと。ある日は彼が僕からタイムを奪うし、別の日には僕が彼のタイムを奪う。ボーナスタイムを狙ってくるフルームの走りはいいね。本当にグッジョブだ」。

このレースが終わった直後、パリ〜ニースではチームスカイのリッチー・ポルトがパリ〜ニースの個人TTを制し、総合優勝を決めた。フルームがこの日手にしたリーダージャージは果たして最後まで守れるだろうか。ティレーノはあと2ステージを残す。


ティレーノ〜アドリアティコ2013第5ステージ オルトナ〜キエーティ 230km
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 6h06’43”
2位 バウク・モレマ(オランダ、ブランコ) +08”
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)
4位 マウロ・サンタンブロージオ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)
5位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)
6位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) +17”
8位 プリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ)+22”
9位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)
10位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)+28”

個人総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 22h11’53”
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)+20”
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
4位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ) +24”
5位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)+37”
6位 マウロ・サンタンブロージオ(イタリア、ヴィーニファンティーニ) +52”
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +55”
8位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) +57”
9位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ) +1’27”
10位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ) +1’51”

山岳賞
チェーザレ・ベネデッティ(イタリア、ネットアップ)

ポイント賞
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)

新人賞
ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)



text:Makoto.AYANO
photo:Riccardo Scanferla、CorVos