1級山岳モンターニュ・ド・リュールで繰り広げられた総合上位陣による上り勝負。ラスト1.6kmからアタックしたポルトが独走ゴールし、ステージ優勝とマイヨ・ジョーヌを同時に獲得した。

晴れの天候に笑顔をこぼす別府史之(オリカ・グリーンエッジ)晴れの天候に笑顔をこぼす別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji3月8日(金)に行われたパリ~ニース(UCIワールドツアー)第5ステージは、いよいよマイヨ・ジョーヌ争いをほぼ決定づけるクイーンステージ。シャトー・ヌフ・デュ・パプから東に向かって進む176kmには、カテゴリー2級の山岳が2つ、3級が3つ用意され、最後は登坂距離13.8km、平均勾配6.6%の1級山岳、モンターニュ・ド・リュールへと上り詰める頂上ゴールが用意される。

緑に色づき始めた山肌を駆ける緑に色づき始めた山肌を駆ける photo:photo:Riccardo Scanferla今大会で幾度も登場し、勝負どころとなっているモンターニュ・ド・リュールでは、今年も総合上位陣によるマイヨ・ジョーヌを掛けた勝負が火花を散らした。

逃げグループを率いるパオロ・ロンゴボルギーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)逃げグループを率いるパオロ・ロンゴボルギーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Kei Tsuji曇り空から時々日差しの差し込む天候の中、この日は前日から6名少ない、計170名の選手たちがスタート。DNFの中には、体調不良に苦しむサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)の名も。ミラノ~サンレモ連覇への黄色信号が灯る。

スタート後16km地点で逃げを成功させたのは、イエンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・レオパード)、シリル・ルモワンヌ(フランス、ソジャサン)、パオロ・ロンゴボルギーニ(イタリア、キャノンデール・プロサイクリング)、ティエリー・ウポン(フランス、アルゴス・シマノ)の4名。47km地点のコル・ド・ムースでは、最大タイム差6分をマークした。

メイン集団をコントロールするのは、マイヨ・ジョーヌのアンドリュー・タランスキー(アメリカ)擁するガーミン・シャープ勢。アシストのヨハン・ヴァンスーメレン(ベルギー)らが淡々をペースを刻み、先頭4名とのタイム差を徐々に削り取っていく。

モンターニュ・ド・リュールで先頭を走るイエンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・レオパード)モンターニュ・ド・リュールで先頭を走るイエンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・レオパード) photo:Cor.Vos逃げグループ内で、次々と現れる中級山岳では、ウポンが最も積極的な走りを見せる。第1、第3~5山岳ポイントを全て先頭通過してポイントを荒稼ぎすると、山岳ポイントの合計で2位に急浮上。1位ヨハン・チョップ(スイス、IAMサイクリング)と7ポイント差までに迫った。

メイン集団では、やがてロバート・ヘーシンク(オランダ)での勝利を狙うブランコプロサイクリングや、オメガファーマ・クイックステップ勢が牽引を行い、徐々にペースを引き上げていく。やがてミケーレ・スカルポーニ(イタリア)をエースに立てるランプレ・メリダも人数を揃えてここに加わった。

各チームがモンターニュ・ド・リュールへの準備を整えていくが、タランスキーのアシストはジャック・バウワー(ニュージーランド)一人だけとなる。先頭ではリュールへの上り口からフォイクトが一人先行する一方で、メイン集団ではスカイプロサイクリングによるペースアップが始まった。

チームメイトに守られてモンターニュ・ド・リュールを上るリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)チームメイトに守られてモンターニュ・ド・リュールを上るリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) photo:Riccardo Scanferla

ゴールに向けて独走するリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)ゴールに向けて独走するリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) photo:Cor.Vosカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ)とダビ・ロペスガルシア(スペイン)の牽きにより、先頭フォイクトはゴールまで7kmを残して吸収。ペースアップによって20名ほどまでに縮小した集団からは、まずダヴィデ・マラカルネ(イタリア、ユーロップカー)とヘーシンクがアタックするものの、スカイの牙城を崩すことは叶わず。続いたクリストフ・ルメヴェル(フランス、コフィディス)の動きも封じられた。

1級頂上ゴールを制したリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)1級頂上ゴールを制したリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) photo:Kei Tsujiそして残り4kmから、スカルポーニがアタック。これを皮切りに、総合上位陣による争いが始まった。タランスキーのカウンターアタックにはポルトが反応し、集団の人数は一気に絞り込まれる。ここからデニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ)が飛び立った。

メンショフに先行を許した集団からは、残り1.6kmでポルトがアタック。タランスキーは追走を試みたが付ききれず、ポルトは先頭メンショフをパス。

アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)を含むメイン集団は33秒遅れアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)を含むメイン集団は33秒遅れ photo:Kei Tsujiタランスキーやナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)らが追いかけたものの、ポルトの勢いは最後まで落ちることが無く、そのままモンターニュ・ド・リュールの頂上ゴールへと飛び込んだ。ポルトの先行を許したタランスキーは必死の追走を見せたものの33秒届かず、ポルトのマイヨ・ジョーヌが確定した。

「今日は全てが時計じかけのようにピタリと動いた」と語るポルト。「パリ~ニースのステージ勝利を飾って、リーダージャージを獲得できた。とても良い気分だよ。明日があるし、その次には最終日があることはよく分かっているけれど、ジャージを守れるだけのチームだと思っている。後は指折り数えるだけ。」

「今日の終盤は、僕らのコントロール下にあった。特にロペスの働きは素晴らしかった。彼はクールで、物静かで、本当に助けられたんだ。だから今日の功績は、彼とチーム全体の働きによるものなんだ。」

「今回はウィギンズも、フルームもいないし、コンタドールもいない。普段、自分自身のために走ることができないのなら、数少ないチャンスは全力で取りに行かなければいけないんだ。大きな勝利を掴めて良かったよ」。絶対的エース不在を埋める見事な走りを披露した。

失意の表情のアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)がマイヨヴェールに袖を通す失意の表情のアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)がマイヨヴェールに袖を通す photo:Kei Tsuji総合首位に立ったリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)総合首位に立ったリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) photo:Kei Tsuji


21分35秒遅れでゴールする別府史之(オリカ・グリーンエッジ)ら21分35秒遅れでゴールする別府史之(オリカ・グリーンエッジ)ら photo:Kei Tsuji下山の準備をするイヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)下山の準備をするイヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Kei Tsuji


別府史之(オリカ・グリーンエッジ)は21分35秒遅れの小集団内でゴール。ステージ124位でレースを終えている。

翌第6ステージは、マノスクからニースへと至る220kmのステージ。1級山岳を中盤に置くレイアウトで、逃げ切りを狙うアタッカーとスプリンターチームの駆け引きに注目だ。


パリ~ニース2013第5ステージ結果
1位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) 4h50′54″
2位 デニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ) +26″
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)+33″
4位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
5位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)
6位 リエーヴェ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
7位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル)
8位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)
9位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)
10位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)

個人総合成績
1位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) 24h26′08″
2位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +32″
3位 リエーヴェ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +42″
4位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル) +49″
5位 タジェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +52″
6位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ) +53″
7位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)
8位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ) +54″
9位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)
10位 ペーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ) +56″

ポイント賞
アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)

山岳賞
ヨハン・チョップ(スイス、IAMサイクリング)

新人賞
アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)

チーム総合成績
カチューシャ


text:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji,Cor Vos,TDWsport

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