2013年ピナレロラインナップにおいて、ドグマ65.1think2と共に一大トピックスとして話題をさらったモデル、それがピュアXCレーサーMTB ドグマXC 9.9だ。ロードバイクと同じ高品質なカーボンの採用やアシンメトリックデザインの採用など、最もホットなバイクの性能を徹底検証していく。

ピナレロ DOGMA XC 9.9ピナレロ DOGMA XC 9.9 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

「ピナレロがMTBを開発している。発表は2013年モデルお披露目と同時期」という噂が広まったのは昨年の5月頃。インターネット上で偽物の画像が出回るなど世界的に話題の中心となったバイクが、今回のインプレッションのテストバイクであるドグマXC 9.9である。

発表会で披露されたドグマXC 9.9の姿は、29インチのホイールを備えたハードテイルバイク。アシンメトリーデザインを採用した奇抜なリアセクションなどが目を引くが、その中身はピナレロがロードバイクで培った技術を応用し、独自の新機構を多く設けたピュアレーシングXCバイクだ。

意外にスリムなトップチューブ。荒地をイメージしたグラフィックが意外にスリムなトップチューブ。荒地をイメージしたグラフィックが ロードバイク同様にテクノロジーが表記されるシートポスト部分ロードバイク同様にテクノロジーが表記されるシートポスト部分 1-1/8、1-1.5インチの上下異型テーパードヘッドチューブ1-1/8、1-1.5インチの上下異型テーパードヘッドチューブ


まず特筆すべきなのは、フレーム素材として採用されているカーボン材だ。2012年のロードトップモデルであるドグマ2と同様の東レ製Torayca 60HM1K Carbon Nanoalloyが奢られ、剛性と軽量性を高い次元で両立させることに成功している。

従来29erのフレームはハンドルを切った際Fサスペンションとの干渉を防ぐためにヘッド付近のダウンチューブを曲げる加工を施していたが、ドグマXC 9.9はダウンチューブを大口径のストレート形状とする「ピナフィットXX9」を開発。29erが苦手としていた高い剛性とレスポンス、ハンドリング性能を高めることに成功し、懸念されるFサスとの干渉についてはダウンチューブのヘッド側裏面に「フォークストッパー」を設けることで答えを導き出した。

左右独立型のシートステーによりクランプ部分は上下に別れた形状に左右独立型のシートステーによりクランプ部分は上下に別れた形状に 大口径のダウンチューブ。ピナフィットXX9デザインによりストレート形状を採用大口径のダウンチューブ。ピナフィットXX9デザインによりストレート形状を採用


左右独立させたシートステイにより、クランプ面積を広く取ることに成功左右独立させたシートステイにより、クランプ面積を広く取ることに成功 フロントサスペンションの干渉を防ぐフォークストッパーを設けているフロントサスペンションの干渉を防ぐフォークストッパーを設けている


また、ドグマXC 9.9の最も特徴的と言える部分がシートポストから上下2段構造で伸びるシートステー「ONDA XC アシンメトリック ツインアーム」だ。左右のシートステーを完全に独立させることで積極的にしならせることのできる柔軟性を持たせ、リアホイールからの衝撃をシートステーのみで吸収させている。

しいては一般的なハードテイルMTBに対して50%近いストレス軽減を生み出し、優れた乗り心地を実現。シートステーを分離させたことでシートポストを広い面を固定する「Xパワーシステム」を装備。4本ボルト止めとすることにより激しいライディングでもストレスを与えない効果を生み出している。

チェーンステーは大きく曲線を描くことで路面追従性を高めているチェーンステーは大きく曲線を描くことで路面追従性を高めている リアブレーキを堅牢なチェーンステーに搭載したRADシステムリアブレーキを堅牢なチェーンステーに搭載したRADシステム


更にリアブレーキシステムはシートステーではなく、チェーンステーに搭載する「RADシステム」を装備。堅牢なチェーンステーに移動させることによってストッピングパワーを増大させ、コントロール製の増強と、ツインアームシートステーの柔軟な動きを可能とし、激しいブレーキングを多用するレースシーンにも対応を見せている。

その他の部分もロードバイク同様のシステムが多く組み込まれ、ヘッドは1-1/8、1-1.5インチの上下異型テーパードヘッドチューブ、BBはプレスフィット30だ。

フレームを後方から見る。スローピング角は大きめだフレームを後方から見る。スローピング角は大きめだ 独特のONDA XC アシンメトリック ツインアームは積極的にしならせることで乗り味を追求独特のONDA XC アシンメトリック ツインアームは積極的にしならせることで乗り味を追求 左右でカラーも異なり、アシンメトリーデザインを端的に表す左右でカラーも異なり、アシンメトリーデザインを端的に表す


さて、そうして開発されたドグマXC 9.9の重量は、フレームで1050g。29erとしては最軽量の部類に入る数値と言える。この話題性に富むハイエンドモデルはどのような走りを見せるのだろうか。早速インプレッションに移ろう。




―インプレッション

「ロードのドグマに共通する剛性感がある、ピュアレーシングバイク」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

ピナレロと言うとレーシングバイクというイメージが強く、独特のアシンメトリーなデザインなど、乗る前から期待を持っていたバイクです。いざ乗り出してみると、剛性と乗りやすさを両立しているバイクという印象を持ちました。

「ロードのドグマに共通する剛性感がある、ピュアレーシングバイク」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)「ロードのドグマに共通する剛性感がある、ピュアレーシングバイク」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート) 剛性の高さは特にBB周りに顕著で、どんな入力をしてもマイナス方向にロスする気配がありません。進行方向に対して常にBBが直角に位置しているイメージがあり、この辺りはロードのドグマにも通じるところで、「ザ・レーシングバイク」です。加えてヘッド周りの剛性も高いため、下りで前荷重になっていてもスッとハンドルを切ることが難なく可能です。これは15mmアクスルの影響もあるのでしょうが、かなりレーシーですね。

振動に対しても各部が最適な動きをするため、ロスを最小限にタイムを削ることができます。衝撃の伝わり方がソフトで、粘るように衝撃を処理する働きを感じます。フレームの芯がしっかりとしている印象ですね。これは乗り心地にも共通していて硬く踏み負けることは無く、どんな踏み方をしても自転車が前に進んでいく感じがありました。走っている際の身体への負担は微小です。

特徴的なリアバックですが、これはかなりレースに向けた実戦的な味付けです。非常にストローク量の短いサスペンションに似た動きで、ダラダラとしておらず「良い動き」。クローズドのサーキットコースをハイスピードで駆け抜けるのに適していると言えます。

また29erですので走破性や巡航性の高さも持ちあわせており、重心も低いため低速・高速を問わず安定している点も魅力的です。29erはシングルトラックでの機敏な動きはどうしても苦手ですが、これを解消するジオメトリの工夫が感じられます。剛性の高さが加わったことで反応性も高いレベルですね。

機能にデザインを取り入れ機能美として処理するあたり、ピナレロらしさを感じる機能にデザインを取り入れ機能美として処理するあたり、ピナレロらしさを感じる ただブレーキに関してはストッピングパワーよりもコントロール性を重視しているようで、もうすこし制動力が欲しいかなと思ったのは正直なところ。ただそこはブレーキの交換で見直せる範囲だとは思います。

幅広い範囲で締め付けるシートクランプやフォークストッパーなど、機能にデザインを取り入れ機能美として処理しているのはピナレロらしいポイントです。

このバイクはJシリーズなど、ハイスピードをキープするレースにこそベストな一台。漕ぎが軽く走りに集中できるため、リジッド29erだけに王滝などにも向いていると言えるでしょう。

ピナレロ DOGMA XC 9.9ピナレロ DOGMA XC 9.9 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp


ピナレロ ドグマXC 9.9
カラー:マットブラック x ホワイト
サイズ:S(430), M(465), L(500), XL(540) 
フレーム素材:Carbon 60HM1K Nanoalloy Torayca
フォーク:FOX FACTORY 32 FLOAT 29 FIT CTD REMOTE, KASHIMA COAT , TRAVEL 90, 15mm QR, 1.5>1-1/8" TAPERED
CTDリモートレバー:FOX 2013 CTD REMOTE LEVER-SINGLE CABLE-UPPER RIGHT/LOWER LEFT
ボトムブラケット:PF30プレスフィット
ヘッドセット:FSA INTERNAL ALLOY CUPS, ACB 1-1/8" UPPER, 1.5" LOWER
フレーム重:約1,050g
価 格:399,000-(フレームセット・税込)




インプレライダーのプロフィール

戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート) 戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。09年からは「キャノンデール・ジャパンMTBチーム」のメカニカルディレクターも務める。
OVER-DOバイカーズサポート


text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano



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