トレックロードバイクの主力となるマドンシリーズ。チームレディオシャックが駆るフラッグシップモデルであるマドン7を始め、5シリーズ、バリューモデルの4、3シリーズ、アルミモデルの2シリーズを一挙にテストライドして違いを確かめた。

Madone7 重量そして乗り味 究極の軽さを実現したフラッグシップモデル

今年のツール・ド・フランス目前にお披露目を受け、軽量・空力・剛性・快適性のベストバランスを突き詰めた新フラッグシップモデルがマドン7シリーズだ。「FAST IS EVERYTHING(速さこそ第一)」をモットーに、プロライダーに実戦で勝利を導くことを第一とした7シリーズの実力は並大抵のものでは無かった。

圧倒的な走りの軽さを備えた旗艦 マドン7シリーズ圧倒的な走りの軽さを備えた旗艦 マドン7シリーズ 試乗車として準備されていたのは、コンポーネントにデュラエースDi2、そしてアイオロスD3ホイールを装備したマドン7.9。ハンドルなどの各パーツもボントレガーの最高級品で組まれたハイエンドバイクだが、市販パッケージと同様の構成だ。ダイレクトマウントブレーキもボントレガー製となる。

第一印象は、とにかく進みの軽いバイクであるということ。ペダルを踏んですぐに伝わる「軽さ」があり、その進みの良さはトップレベルと言って良い。低~高速まで、どのスピード域からどんなギアを踏んでも加速感は鈍りを見せず、「ダルい」スポットが全く感じられないほどだった。従来のマドンで少し気になっていた加速時の重さは綺麗になくなっている。そしてそれは高速域になるほど顕著だ。

しかし、マドン7はガチガチのフレーム剛性から加速感を生み出すバイクではない。その点は旧マドンと同じだ。フレームが全体として程よいしなやかさを持ち合わせているため、加速から巡航においてマドンらしい「スムーズさ」を感じることができる。通じて快適性も高い。さすがに段差を越えるようなシチュエーションでの安定性はドマーネに譲るものの、会場の周りに設けられた一般道の試乗コースでは全くといって良いほど不満が無かった。

e2システムを採用するヘッドチューブ、そして細身のフロントフォークの組み合わせは剛性感たっぷりで、上りのダンシングで強く車体を振ってもブレるような事が無い。ダンシングは非常に軽く、ハンドリングはシャープだ。他の試乗車と比較するためにアルミホイールを入れてみたが、パリッとした印象は更に強くなった。

唯一気になるポイントを言うとすれば、レースバイクである事による踏み心地の硬さが挙げられるだろうか。先ほど快適性の高さについて述べたが、踏み心地と快適性は似ているようでいて別の項目だ。BBを含めてボトムラインの剛性が強いため、高い強度で踏み続けるような場合では脚の消耗は少し早いかもしれない。

フレームの性能に驚かされて忘れてしまいがちだが、フレームに一体化するようなダイレクトマウントブレーキシステムはストッピングパワー/コントロール性においても全く違和感が無かった。プロジェクトワンでは今回テストしたボントレガー製のものと、シマノ製のもの(発売時期未定)とチョイスが出来るようになるという。

マドン7は、しなやかさと剛性という相反する要素がハイレベルでバランスされ、非常に高い完成度を持ち合わせた究極のレーシングバイクだと感じた。(磯部 聡)


マドン7の鋭い加速感、軽快な走りには感動さえ覚えるマドン7の鋭い加速感、軽快な走りには感動さえ覚える 乗り始めてすぐに感じるのは走りの軽さと加速の鋭さ。それはフレームの軽さ、そして硬さからくるものだろう。他のグレードのバイクとは一線を画すような高性能を感じる。これはおそらく誰が乗っても感じ取れるものだと思う。

踏み込むごとに軽快に加速していくので、自分が速くなった錯覚さえ感じる。いや、実際に速く走ることができると思う。平坦、上り、どんなシチュエーションでも軽快そのもの。
軽すぎる軽量バイクは走りが安定しないものだが、マドン7は安定感も十分ある。というのも、走りの軽さからすると意外なほどに路面追従性と乗り心地が良いのだ。会場でテストライドをする人の幾人からは「硬い」という声が挙がっていたようだが、他社の(いまや多数派の)高剛性バイクたちと比べると、マドン7は縦方向の柔軟性、振動吸収性は一歩リードしているように思う。荒れた路面では快適な乗り心地の良さを発揮してくれる。これにはとくにリアステーの設計が訊いていると感じた。

反して硬さを感じるのはBB周り。メインフレーム全体に芯のあるような硬さがあり、それが反応性の良さにつながっている。しかしそれとて不快な硬さといったものではなく、薄い鋼のようなしなり感をもつため、足にくるものではない。高い設計バランスを感じる。

バイク全体が「速く走れ、もっと速く」と要求してくるので、つい飛ばしてしまう。なんという楽しさだろう。

セットされたダイレクトマウントブレーキはボントレガー製のもの。やや質感がチープだが、フレームに溶け込むデザインで、エアロ効果は高そうだ。コントロール性は十分。この新しい設計思想のブレーキを、これからリリースされるシマノ製ブレーキでも試してみたいと思った。

年令を重ね40代なかばとなり、ロードレースに出ることもなくなった。ロングライドの走りをサポートしてくれるドマーネに心が傾きつつあった私だが、つい「あと5年、いや10年、まだ乗れるうちはマドンに乗りたい」と思ってしまった。まるで背伸びしてスポーツカーを欲しがる若者のように。

マドン7はやはりロードレーサーの最高峰に君臨するモデルだ。この性能を自分のものにしたいという欲求は、いくつになっても捨てがたいものがある。それが自分には持て余すものだと分かっていても。

マドン7はフレーム単体価格¥460,000。もちろん高価だが、プレミア的な値付けをするヨーロッパブランドのバイクより割安感を感じる。むしろこの値段でカーボンフレーム製作技術の粋を集結したような「テクノロジーの結晶」を味わうには安いものだと思う。(綾野 真)


Madone5 煮詰められたバランス感 万人が楽しめるレーシングバイク

OCLV500カーボンを搭載したマドン5シリーズ。マドン7の登場を受けて上位機種同様のモデルチェンジを施したが、そこにマドンらしい乗り味はしっかりと受け継がれていた。

試乗車のスペックは、コンポーネントに機械式のアルテグラを装着した5.2。ホイールは一般的なロープロアルミホイールのボントレガーRACE。その他ハンドル周りなどもボントレガーのアルミ製パーツでアッセンブルされる市販仕様だ。

テストしての第一印象は、ミッドレンジに位置するバイクながら、かなり完成度が高いということだった。全体的を通してバランス感がとても優秀と感じることができた。大きなモデルチェンジを経ているが、従来のマドンシリーズの特徴であるマイルドな乗り味を引き継いでいる。

成熟したバランス感が持ち味のマドン5シリーズ成熟したバランス感が持ち味のマドン5シリーズ

OCLV500カーボンを使うフレームは、走行中に若干だがチューブの肉厚を感じさせる。しかし7シリーズのような極薄チューブのような印象は薄く、荒れた路面にもあまり神経質にならず突っ込んでいくことができる。

強靭なフレーム剛性を売りにしているバイクではないので、思いっきりダッシュを掛けた瞬間の反応に対しては微妙な遅れがあるものの、それ以外では何ら不満も感じない。

アマチュアレベルには充分な剛性と反応性を維持しており、踏み出しから中速域まで加速の鈍るところは感じられない。非常にスムーズにスピードが乗っていく感があり、軽快感はスピードが高まるにつれて増していく。高速域での車体の振りの軽さは7シリーズのそれとほぼ同じレベルに達していた。

エアロ化によるスピードの増し方を体感することは非常に難しい項目だが、確かに高速の下りでは伸びが良いように思える。ディープリムを装備すれば鬼に金棒といったところだろう。

5.2の完成車で380,000円というプライス。決して安いものでは無いが、高いレベルで纏められた性能は、アマチュアレーサーにとってはまさにバリュープライスだ。尖った部分の無い素直な性格のフレームだけに、ホイールやコンポーネントのグレードアップをすれば戦闘力を一層引き立てることができるだろう。(磯部 聡)


マドン5のバランスのとれた高性能はロードバイクのベンチマークとなるだろうマドン5のバランスのとれた高性能はロードバイクのベンチマークとなるだろう マドン7に続けて乗ったが、軽快な加速感、剛性感、安定感、それらすべてが共通している。フレーム設計・形状はほぼ同じなので当然といえば当然だが、弟分である。いっぽう、マドン7に乗った時に感じた、張り詰めたような硬さは感じない。

コンポにアルテグラを採用していることもあり、ややマイルドにしたような乗り味、角のとれた走行性能には安心感さえ感じる。マドン7で感じた、そのチューブの薄さ、硬さからくる、”一度転倒してしまえば壊れてしまいそうな脆さ”は、5では感じられない(もちろん7も印象にしかすぎないが)。

しかしマドン5にはどんなにダッシュやスプリントをしても、そのすべてに応えてくれる高性能がある。ロードレース用バイクとしてはかなりの高完成度だと感じる。高校生から実業団レーサーまでが必要とする十分な性能を、この中級グレードのマドン5は備えている。

「これ以上何を望む?」それは贅沢と言っていいのかもしれない。ヒルクライムの性能を求めれば6、7と投資していくのは意味があるだろう。しかしロードバイクに求められる普遍的な性能は、このマドン5で十分なところに達している。

ロードレースで戦うことを求める人には、ぜひこのマドン5を薦めたい。(綾野 真)

Madone4 コストパフォーマンスを追求したマドン

コストパフォーマンスを追求したモデルがマドン4シリーズと言えるだろう。
試乗したモデルは4.5。マドンは5シリーズ以下がアジア生産となるため、この4.5もそうだ。

コストパフォーマンスの高さを感じるマドン4シリーズコストパフォーマンスの高さを感じるマドン4シリーズ ジオメトリーはリラックスしたライディングポジションがとれるH2フィットのみだ。シートマストは採用されず、ノーマルの丸ピラー(それでもカーボン製だ)となり、ケーブル類も内蔵されず外装となる。コンポもSTIレバーとディレイラーがアルテグラ、ブレーキ本体が105、クランクが105相当のコンパクトクランクというミックスコンポ。ホイールはボントレガーRACEホイールだ。ステムやピラーもフレームのカラーリングと統一感のあるボントレガー製品が使用される。

パーツ構成のディテールを見るほどに、こと細かくコストダウンが図られていることに感心するが、それも性能を維持しながらの低価格化の工夫であることが良心的だ。全体の完成度を台無しにするようなサードパーティ製パーツを用いていないのがさすがトレック。好印象だ。

乗り出してみると、上位モデルに比べてやはりパーツ構成からくる車体の重量増を感じはするものの、走りの軽快さはマドンの血統を引き継いでいることがはっきりと感じられる。

ダッシュ、コーナリング、ハードブレーキングを繰り返すが、十分な性能と安定性を感じることができた。ボントレガーRACEホイールも軽快で、車格を損なうことがない十分な走行性能を持っている。
全体バランスとしても、マドン4.5はアンダー25万円(249,000円)のバイクとしてはクラス最高の性能といっていいだろう。

レースで競う人ならもうひと頑張りして上位モデルを手に入れたいが、やはり予算の限られている場合は25万円というのはひとつの壁。カーボンバイクの素性の良さを感じるマドン4.5は、スポーツライド入門者にはうってつけだろう。パーツ交換でグレードを上げていくにも、プランの立てやすいパーツ構成だ。(綾野 真)


Madone2 アルミらしさの感じられる入門用ロードレーサー

今回のトレックワールドでお披露目されたマドンの末弟モデル、2シリーズ。マドンラインナップ史上初となる、エントリーユーザーを対象としたアルミモデルだ。

アルミらしさの感じられる入門用ロードレーサー マドン2シリーズアルミらしさの感じられる入門用ロードレーサー マドン2シリーズ テストバイクは、105ミックスのコンポーネントを採用した2.3。ボントレガーRaceホイールを組み合わせて169,000円(税別)という買い求めやすいプライスを実現しているが、実車を目の当たりにして驚いたのはその完成度が高いことだ。パールの入ったブルーのペイントは非常に質が高く、ケーブルのフレーム内蔵工作や、チューブ間の溶接痕も削られるなど、見栄えは一般的な同等レベルのバイクをはるかに凌いでいると言って良い。

ライディングフィールは一般的なアルミバイクに似ているが、硬過ぎずに、フレーム全体で剛性バランスが取られている点は、カーボンモデルのマドンと性格を同じくする。

BB90に迫るワイドなBB86.5を採用したボトムブラケットはタフさが感じられ、大概のアマチュアライダーならば剛性感に不満は出ないだろう。軽量アルミバイクでは無いためヒルクライムは得意なシチュエーションではないが、平坦での軽快感は充分に感じられるレベルだ。

エアロチューブによる空力アドバンテージを体感することは非常に難しかったが、ビギナー目線で見れば最高級バイクと同様のシステムは心を惹きつける大きなポイントだ。

カーボンモデルと比較してしまえば走りに重さは感じるものの、それは安定感に繋がることも事実。ハンドリングは直線志向が強く、ロードバイクに慣れていない初心者に向くと感じる。通勤から通学、そして週末のトレーニングまで幅広く使える安心感のある。ガンガン乗り倒して、次に進むステップとして最適なバイクだ。(磯部 聡)


提供:トレック・ジャパン レポート:シクロワイアード編集部