今回はEdge800Jを使ってツーリングなどを日々楽しんでいる、東京・墨田区にサイクルショップを構える朝倉 誠さんに、上手な使い方や活用方法などのアドバイスを伺った。普段のライドに、トレーニングに、ちょっとした使いこなしのヒントがいっぱいだ。

朝倉 誠(あさくらまこと) - Bicicletta de MATTINO

2011年の6月に開店し、一周年を迎えるスポーツサイクル専門店。一般家屋の1階部分を改築した店内はコンパクトだが、氏が厳選したフレームや試乗も可能な完成車が整然と並ぶ。朝倉さんはMTB/ROADを問わないマルチ自転車乗りで、どちらもの定期的な乗り方スクールやロングツーリングなどソフト面も充実させ、お客さんのサイクルライフを常にサポートしている。「豊富な在庫から商品を選ぶ量販店ではなく、スタッフとの気さくな対話を通じながら自転車ライフを楽しむお手伝いをすののがスタイル。ガーミン製品についてはとくに詳しく使い込んだうえでアドバイスを行なっている。

Bicicletta de MATTINO(ビチクレッタ・ディ・マティーノ)
130-0004 東京都墨田区本所3-9-4
定休日 : 毎週水曜日
営業時間 : 平日12:00〜20:00 日・祝日12:00〜19:00
電話 : 03-6658-4977
→Bicicletta de MATTINOホームページ



Edge800Jのナビ能力は飛躍的に向上している

前作Edge705(写真左)の進化版がEdge800Jだ前作Edge705(写真左)の進化版がEdge800Jだ まず、朝倉さんはガーミンナビを登山用時代のモノから使い続けているというガーミンのヘビーユーザーである。そんな朝倉さんはEdge800Jの前作でもあるEdge705も使った経験がある。その実体験から見えてくるのは、800Jになってから、「ナビとしての基礎体力が大幅にパワーアップしている」ことだと言う。

Edge800Jはハードそのものの出来がまったく違い、GPS衛星の補足スピードの大幅アップ、PCとの連動スピードアップなど、細かな見直しが図られていると言う。

確かに、どちらも実感としてとても速く、Edge800Jがはじめてのガーミン製サイクルコンピュータである筆者にとってはこれが通常と思っていたが、実はそうではないらしい。朝倉さんは「Edge800Jは大きく進化している」のだと言う。

サイクリストが使いやすいインターフェース

朝倉さんは言う「Edge800Jは画面の見易さやタッチスクロールのし易さについても特筆すべきモノがある」。確かに、これは筆者も感心した部分だ。真夏の晴天下でも画面がはっきりと認識できたし、グローブをしたままでも画面操作やスクロールは実にスムーズ。ストレスをまるで感じない。

太陽光下でのEdge800Jの液晶画面。非常に視認性が高いことがわかる。太陽光下でのEdge800Jの液晶画面。非常に視認性が高いことがわかる。

「ソフトウェアが完全に日本語ライクに作り直されている点にも注目して欲しい」と言う。これにより、特に豊富な表示が可能なデータ画面や、詳細な道案内を行ってくれるナビゲーション中に、一瞬で情報を把握する事ができ、確実かつ安全にサイクリングが楽しめるようになっているのだという。

また、登山用のGPSとサイクリング用のEdgeシリーズでは使い勝手が少し違い、Edgeシリーズはサイクリングにより使いやすい味付けがされていると感じるそうだ。聞くところによるとカーナビとサイクリングナビは開発チームが別になっており、実際にそれぞれの用途で使っている人が開発に携わっているということで、ユーザーの気持ちやニーズをよく理解しながら製品を作っているからなのだという。


日の入り時刻を設定しておくと便利

各項目がキメ細かく設定できるのもEdge800Jの特徴だという。とくに朝倉さんの場合、画面表示設定で選択できる「日の入(り時間)」を重宝しているという。

ツーリングの道中において、できれば周りの景色が見えなくなる日暮れ以降の走行は避けたいところだが、この表示を設定しておくことで、全体のペース配分が容易になり、危ない目にあわずに済むというわけだ。

豊富な情報量でも日本語化のお陰で把握しやすい豊富な情報量でも日本語化のお陰で把握しやすい ナビゲーション中でも完全日本語化の恩恵は大きいナビゲーション中でも完全日本語化の恩恵は大きい

ガーミン・コネクトに記録すれば、サイクリング日記帳のように楽しめる

また、朝倉さんはその都度の走行データをパソコンに吸い上げる事で、その日の走行内容を振り返ったり、通過したルートの途中に「こんなものがあったのか!」という新しい発見をすること、「"自転車日記帳"のような使い方がとても楽しいんです」と言う。

Webサービスのガーミンコネクトにアップした走行データをパソコンでチェックする朝倉さんWebサービスのガーミンコネクトにアップした走行データをパソコンでチェックする朝倉さん
その日の走行ルートはパソコンの各種地図上に表示でき、いつどこに走りに行き、「あの時迷ったのはここだったのか」「もう一本内側の道を走っていれば河川敷が近かった」などと振り返ることができ、走行後のデータを見るのがとにかく楽しくてたまらないと言う。

朝倉さんが走って記録した画面をもとに紹介しよう。朝倉さんはソフトにガーミン・コネクト(Garmin Connect)を使用して、デスクトップパソコンのiMacにツーリングの軌跡をダウンロードして表示させている。
ガーミン・コネクトはガーミンが提供・運営する、Web上でデータの記録・分析ができるサイト・サービスだ。ガーミンのGPSを使っているひとなら誰でも簡単にデータをアップロードでき、他の人のデータを閲覧したり共有することができるWebサービスだ。

ガーミン・コネクトで墨田区からバイクフォーラム青山までの往復経路(約28km)を記録したものガーミン・コネクトで墨田区からバイクフォーラム青山までの往復経路(約28km)を記録したもの クリックするとサイトにジャンプします(外部リンク)

ガーミン・コネクトの画面

右のPC画面のスクリーンショット「都内周遊」は、朝倉さんがショップのある墨田区から、ブリヂストンサイクルのショールームであるバイクフォーラム青山までの往復経路(約28km)を記録したもの。

走った経路が地図上に表示され、時間ごとのスピードや高度、心拍、ケイデンスなどが表示される。

※アップロードされたデータへのリンクはこちら。画面右下の言語選択で日本語を選べば日本語表示ができる。

埼玉県飯能市から山中を抜ける国道299号線をひた走って長野県へと向かったロングツーリングの記録埼玉県飯能市から山中を抜ける国道299号線をひた走って長野県へと向かったロングツーリングの記録 クリックするとサイトにジャンプします(外部リンク)

ロングツーリングの記録例

ロングツーリングで使用した例も挙げておこう。下のデータ「SFIDA合宿 独りでアタック299」は、埼玉県飯能市から国道299号線をひたすら走って、長野県まで抜けたルートの軌跡だ。

※アップロードされたデータへのリンクはこちら

これらのデータは、Web上でいつでも閲覧が可能で、仲間と共有することも簡単だ。こうして記録を取ることで、サイクリングで経験した記録が蓄積されていく。

朝倉さんはそれらのデータをPCの画面上で見ながら、走ったルートや、どう走ったかを説明してくれた。スピードや走行時間、獲得標高などが一目瞭然なので、次のサイクリングの際に参考になるというわけだ。

「都内を走るコツは急がないこと。心の焦りは事故に繋がります。ルートを把握しておけば、周りに気を配る余裕が生まれやすいです」「山の中で独りぼっちになっても、Edge800Jがあれば安心して走れるんです。ルートミスはなく、天候の変化にも対応しやすい」と、アドバイスもくれた。

朝倉さんは言う「KMLファイルをエクスポートしてGoogleマップ上で地図だけ見るといった使い方もできますが、こうしてガーミンコネクトにアップロードしておけば、いろんなデータをすぐ参照できます」。

筆者も走ったデータをパソコンに吸い上げて地図を眺めたり各種データの照らし合わせをするが、それだけで楽しいものだ。走って楽しく、その後もデータを見返して楽しい。サイクリングが2度おいしくなるのは本当のことだ。

ナビを設定することで安心して走りに集中できるようになる

事前にパソコン上で作成したルートを本体に取り込む事も可能。ここで表示される距離はコース全長ではなく、現在地からそのコース始点までの距離を示す。全長は次の階層でインフォメーションボタンを押すと、表示される。事前にパソコン上で作成したルートを本体に取り込む事も可能。ここで表示される距離はコース全長ではなく、現在地からそのコース始点までの距離を示す。全長は次の階層でインフォメーションボタンを押すと、表示される。 ルート全体の情報がコンパクトな画面にグラフィカルに表示される。あとは「出発」を選択すればOKだ。ルート全体の情報がコンパクトな画面にグラフィカルに表示される。あとは「出発」を選択すればOKだ。
また、朝倉さんのクラブライドなどの実体験にもとづく話を聞いて驚いたのは、サイクリングといえども目的地への的確なナビゲーションがないと、案外ライダーは不安になり走りに集中できないことがあるそうだ。残り距離や行程がはっきり把握できないと、ペダルを踏む力をつい躊躇してしまうのだという。つまり、マイペースがわからなくなるということのようだ。

ナビを使えば、事前に設定したルートをナビゲートしてくれる事で、安心して走りに集中でき、無駄に体力も使わないという。

Edge800Jは優秀な日本地図を格納しているおかげでミスコースがまず無く、ツーリングやサイクリングの強い味方になるというのは確かだろう。ボディがコンパクトなのにもかかわらず、ナビの案内が的確なのもポイントが高いところだ。

コンビニと道の駅を検索し、ツーリングに活用する

道の駅を上手に活用すればクルマ+自転車で行動範囲が広がる道の駅を上手に活用すればクルマ+自転車で行動範囲が広がる ときにクラブで一日で往復200kmというロングツーリングもする朝倉さん。住んでいる地域を出発し、片道100km程度の範囲で目的地を探し、往復200kmの日帰りツーリングコースを設定する。普段ホビーレースなどに参加する脚力のあるサイクリストたちにとっては、トレーニング兼ツーリングライドとしては特別なことではないだろう。そんなとき、朝倉さんが重宝する検索項目は、「コンビニ」と「道の駅」だという。

コンビニは補給とトイレ休憩にたいへん便利。道の駅にはもちろんトイレがある他、駐車場があることからツーリングの起点として使う事も多いという。

クラブや仲間同士などで走る場合、ツーリングに参加する全員が片道100kmを走るのではなく、人によっては自身の脚力レベルに合わせてルート上にある道の駅まではクルマでスキップ移動し、そこで自走組と合流して目的地まで自転車でライドすることも多いのだという。帰りもクルマで帰ってもいいし、走る人で疲れた人がいれば交代することもできる。確かにそうしてコンビニや道の駅を使えば、参加メンバー各々の精神的・肉体的負担が減るだろう。

道の駅は、自動車関連から検索可能だ道の駅は、自動車関連から検索可能だ 自動車関連を押すと「道の駅/案内所」という項目が出てくる自動車関連を押すと「道の駅/案内所」という項目が出てくる 検索をするとおおよその距離と方角が示される検索をするとおおよその距離と方角が示される

Edge800Jは検索アルゴリズムのベースがクルマ用であるから、自転車では不要な「高速道路IC」などの検索項目も入っているが、逆に道の駅などの施設をカバーした豊富な情報量は、自転車乗りにとっては有難い項目なのだ。

地図データは交換可能。MTBトレールライドやハイキングにも使える

朝倉さんは自転車乗りとしては結構珍しい、オン・オフどちらも問わないマルチジャンルの自転車乗りでもある。その氏の経験から、Edge800Jは木立などが並ぶ山中でもGPSがロストする事はないという。

山の中では街中以上に方向感覚は狂い、下手をすれば命取りになる事もある。そんな状況下でもEdge800Jは強い味方であってくれる。筆者も以前、クルマ用のガーミンをウィンドブレーカーの胸ポケットに入れた状態で、地図にも載っていないような山中の尾根や河原を歩いたことがあるのだが、確かに自分の通ったルートが正確にトレースされていた。ガーミンのナビ機能の実力は他社製のものとはひと味違う、ということは確かに感じとることができる。

Edge800Jは木立などが並ぶ山中でもGPSがロストする事はないEdge800Jは木立などが並ぶ山中でもGPSがロストする事はない
Edge800Jの強力なナビ機能のおかげで、休憩ポイントまでライドに集中しながら走ることが出来るEdge800Jの強力なナビ機能のおかげで、休憩ポイントまでライドに集中しながら走ることが出来る ボディ後部の防水カバーを開ければ地図データ等を差し替えるmicroSDスロットがあるボディ後部の防水カバーを開ければ地図データ等を差し替えるmicroSDスロットがある

もしEdge800Jをハイキングや登山にも使うなら、別売りのマップソース「日本登山地図」をインストールすれば等高線が表示される詳細地形図が使用できる。また、ラインナップ豊富な海外地図をインストールすれば、海外旅行などにも使用できるだろう。それらのマップソースは地図データが収録されたmicroSDカードを差し替えることで簡単に可能だ。マップソースはmicroSD/SDカードで購入することができる。

別売の日本登山地図を使用すれば等高線の出る地形図が表示できる別売の日本登山地図を使用すれば等高線の出る地形図が表示できる 海外地図を入れれば海外旅行、レース参戦、観光等でも使用することができる海外地図を入れれば海外旅行、レース参戦、観光等でも使用することができる
朝倉さんの話を聞いているうちに、ますますEdge800Jはサイクリングの、ロングツーリングの、自転車旅行などの最高のパートナーであることがわかった。リアルタイムに変わる身体の状態をモニタリングしながら、かつ、詳細な日本地図とともに鍛え上げられたアルゴリズムで正確に目的地へと導いてくれる。

また、その日走ったデータを後日パソコン上で表示して、旅日記として楽しむ事もできる。レースとは違う、自転車が本来持っている楽しさの一面を強力にバックアップしてくれるのだ。

Edge800Jは、小さいながら楽しさがギュッと詰まった宝箱のような存在であることがわかった。

さあ、このEdge800Jの楽しさを次に味わうのはあなたです。自転車での冒険にたくさん連れ出して、楽しい想い出をいっぱい記憶させてあげて下さい。
text:佐藤春道/シクロワイアード編集部  提供:いいよねっと