ディーンのDNAを受け継ぐ高いコストパフォーマンス

リドレー DEAN RSリドレー DEAN RS エアロロードではノアに対してノアRSがあるように、TTバイクではディーンに対しても弟分となるディーンRSを展開するリドレー。その目的はプロスペックの開発で培った技術と性能を、一般ライダーに適したレベルに調整して、手ごろな価格で提供することを目的としている。

ディーンRSのデザインは、ディーンのアグレッシブなデザインを目にした後では、随分おとなしくも思える。しかしディーンRSのフロント部分は、空気を切り裂く形状に成型されたヘッドチューブ、「R-Flowジェットフォイル」テクノロジーを搭載したフロントフォーク、そしてフォーククラウン後部に装備されるセンタープルブレーキなど、その仕様はディーンそのものだ。
空気抵抗削減に最も効果のあるフロント周りの構造をノアと共用することで、限られたコストの中で高いエアロダイナミクスを追求している。

ちなみに、この「R-Flowジェットフォイル」テクノロジーは、ディーンRSではフロントフォークのみの搭載となり、空気抵抗の削減値は約6.4%。ディーンよりもわずかに約0.6%少ないに止まっている。そして、微粒子状のテープをヘッドチューブ、ダウンチューブ、シートチューブに貼ることで空気抵抗の削減を狙うもう1のエアロダイナミクス技術「R-Suerface」も搭載し、3.6%の空気抵抗削減を実現している(ディーンの場合4%)。もちろんワイヤ類もフレームに収納されている。

フロントセクション以外はディーンRSのオリジナルデザインとなり、直線的なチューブ形状で構成されている。シートステーはオーソドックスなモノステータイプ。ブレーキキャリパーはオーソドックスにこの部分に装備される。

シートステーのブレーキブリッジから下の部分の外径は細めに成型され、しかも直線的にリヤエンドに結ぶことで駆動ロスを最小限に収めながら乗り心地を高める狙いだ。
さらにトップチューブも横方向に広く、縦方向に薄く成型することで、シートステーを含めたフレームのアッパーラインにしなやさかを与える設計がされている。

ノア同様、圧倒的な翼断面に成型されたフォークブレード。ホイール部分の乱流を防ぐスリットが2箇所設けられるノア同様、圧倒的な翼断面に成型されたフォークブレード。ホイール部分の乱流を防ぐスリットが2箇所設けられる 鳥のくちばしのように成型されたヘッドチューブ。フォークとの一体感ある形状も相まって前面投影面積を小型化する鳥のくちばしのように成型されたヘッドチューブ。フォークとの一体感ある形状も相まって前面投影面積を小型化する シフトワイヤはマスドロードのノアシリーズと同じように、ダウンチューブの上側からフレーム内に収納されるシフトワイヤはマスドロードのノアシリーズと同じように、ダウンチューブの上側からフレーム内に収納される

フロントブレーキはクラウン後部に装備され空気抵抗削減を削減。センタープル式によりハンドリングに影響はないフロントブレーキはクラウン後部に装備され空気抵抗削減を削減。センタープル式によりハンドリングに影響はない シートチューブはBBに対して直線的に結ばれる。BBに近い部分をタイヤ形にカットアウトして空気の乱流を防ぐシートチューブはBBに対して直線的に結ばれる。BBに近い部分をタイヤ形にカットアウトして空気の乱流を防ぐ

そして、シート形状はオリジナルのエアロシートポストを使用し、オーソドックスなセパレート構造を採用している。ディーンに比べると対象ユーザーを広範囲とするディーンRSだけに、サドル高の微調整が容易なこのタイプは堅実な仕様と言えるだろう。また、インテグラルシートポストを苦手なライダーにとっては歓迎すべきポイントでもある。

フレーム素材については、ディーンが50T、40T、30Tのハイモジュールカーボンであるのに対して、ディーンRSは30T、24Tを適材適所に使うことで価格を抑えつつ、ターゲットとするユーザーに対して過度にならないフレーム剛性が追求されている。
また、フレーム重量も1250gと、TTモデルとしては軽量に仕上げられているのも見逃せない。フロント部分以外はシンプルなフレーム形状を採用しているため、ディーンに比べると120g軽量だ。

シート部は専用のエアロシートポストを装備するセパレートタイプ。サドル高を容易に調整できるのがうれしいシート部は専用のエアロシートポストを装備するセパレートタイプ。サドル高を容易に調整できるのがうれしい BBシェルはスレッドタイプ。扁平チューブでBB周りを構成しつつも、シェルの体積を増やして必要な剛性を確保するBBシェルはスレッドタイプ。扁平チューブでBB周りを構成しつつも、シェルの体積を増やして必要な剛性を確保する モノステーは比較的細身に仕上げられ、リヤエンドに対して直線的に結ばれる。剛性と快適性を両立する仕様と言えるモノステーは比較的細身に仕上げられ、リヤエンドに対して直線的に結ばれる。剛性と快適性を両立する仕様と言える

カーボン製のTTバイクとなると20万円台後半の価格が多いが、RSの価格は25万円を下回る。「R-Flowジェットフォイル」テクノロジーを搭載したフロント部分の作りをはじめ、そのスペックを考えると十二分なプライスパフォーマンスを備えている。ここ最近のトライアスロン人気の高まりに加え、ロードバイカーの間でもにわかにTT競技が注目されている。こうした競技に本格的に挑戦したいユーザーにとって、ディーンRSはプライスパフォーマンスに優れる1台となってくれるだろう。

インプレッション

TTの入門に最適な極めて自然な走行性能

ディーンRSのジオメトリーを見ると、リヤセンターは390㎜、ホイールベースは967㎜(Sサイズ)。したがってフロントセンターはTTバイクとしては比較的長めに確保されると考えられる。

フロント部分は「R-Flowジェットフォイル」テクノロジーのフロントフォークをはじめ、ディーンと同じ作りなので剛性感もありハンドリングは軽めだ。長めのフロントセンターに起因する安定感と軽いハンドリングのバランスはよく、シートアングルが78度に設定されるので前乗り気味になるとはいえ、腰高な感覚はなく、操りやすいTTバイクに仕上がっている。

一般レベルのライダーでも必要以上に脚を使わされることなく速度を維持しやすいだろう(吉本司)一般レベルのライダーでも必要以上に脚を使わされることなく速度を維持しやすいだろう(吉本司)
その剛性はディーンほどの逞しさはないものの、それでもタイムトライアルの走りに必要な、ビッグギヤを踏むためのレベルは十分に備えられている。一般レベルのライダーでも脚にストレスを感じることなく、ペダルをしっかり踏み抜ける快適性があるので、必要以上に脚を使わされることなく速度を維持しやすいだろう。

コーナーの立ち上がりなど、若干前荷重になった時のダンシングでも上体が安定し、ペダリングがしっかりできる(吉本司)コーナーの立ち上がりなど、若干前荷重になった時のダンシングでも上体が安定し、ペダリングがしっかりできる(吉本司) そして、フロントセクションの剛性がしっかりしているので、コーナーの立ち上がりなど、若干前荷重になった時のダンシングでも上体が安定するのでペダリングがしっかりできる。

全体的には非常にクセのないライディングフィールで、ドロップハンドルを装備すれば格好はともあれ普通に乗れてしまうほどだ。ディーンも素直な走行性能を持ったTTバイクだが、その血統はディーンRSにもしっかりと受け継がれている。加速方向のスパルタンさを少しばかり控えめにしたのがディーンRSと言える。
ディーンに乗ってしまうと物足りなくも感じるが、ディーンRS単体で判断すれば価格に対する性能のバリューは十分満足ゆくものだ。そして、なによりホビーレベルのライダーにはディーンRSの方が快適性は高いので、結果として速く走れてしまうかもしれない。

また、サドル高の調整がしやすいセパレートタイプのシートポスト、車輪の着脱が容易なロードタイプのリヤエンドといった部分も扱いやすく、TTにこれから挑戦するサイクリストやトライアスロンのロングディスタンスなどにもオススメしたい1台だ。

リドレー DEAN RS

リドレー DEAN RSリドレー DEAN RS
PRICE¥249,900(税込) フレームセット
FRAME30ton,24tonハイモジュラスカーボンファイバー
WEIGHT1250g
COLOR1114A
SIZEXS,S
提供:JPスポーツグループ 企画/制作:シクロワイアード