高次元の汎用性を備えた最先端のエアロロード

リドレー NOAHリドレー NOAH
ライダーの要求に応じて細かなラインナップを展開するリドレー。その中において最も存在感のあるマスドロードモデルが「ノア」であることに異論を唱えるものはいないだろう。

ロシア最強のスーパープロチーム、カチューシャにおいて、ヘリウムと並ぶ主要機として使われたこのモデルは、プロ選手の高いパワーとスピードを受け止めるために、リドレーの技術の粋が詰め込まれている。

ボリューム感にあふれるフレーム形状は、扁平型に成型された前三角のチューブを見ても分かる通り、エアロダイナミクスを追求したもの。そして、最も興味深いのはフロントフォークとシートステーの作りだ。バイクのサイドビューでは分かりにくいが、この部分にスリットが設けられている。

これはエアロハンドルなどを手がけるパーツメーカー、オーバルコンセプトとリドレーの共同開発によって生まれた「R-Flowジェットフォイル」と呼ばれる技術。フォークブレードとシートステーの2箇所にスリットを設けることで、走行時にスポークが発生させる空気の乱流を抑え、これにより最大7.5%の空気抵抗削減を可能にしている。

さらにフレームをよく見ると、ヘッドチューブ、ダウンチューブ、シートチューブのそれぞれには、表面を微粒子状に加工したテープ状のものが備えられている。これはもう1つの空気抵抗削減のためのテクノロジー「R-Surface」テクノロジーと呼ばれる加工だ。層流を増加させる効果があり、最大4%の空気抵抗が見込まれるという。

もちろんワイヤ類は全て内蔵。シートまわりもインテグラルタイプを採用することで、ポストに至るまでスムーズで無駄のないエアロ形状が追求され、空気抵抗を削減する。こうしたエアロダイナミクス向上のギミックにより、ノアはスプリント時に最大時速2㎞のアドバンテージが得られるという。

「R-Flowジェットフォイル」を搭載したフォークブレード。内側に絞り込む形で剛性と空力効果を高める「R-Flowジェットフォイル」を搭載したフォークブレード。内側に絞り込む形で剛性と空力効果を高める 前後のシフトワイヤをダウンチューブからフレームに内蔵する。徹底的に空気抵抗削減を追求前後のシフトワイヤをダウンチューブからフレームに内蔵する。徹底的に空気抵抗削減を追求 エアロ効果を高めるために扁平形状のシートチューブは、タイヤの外郭に沿った形に切り取られるエアロ効果を高めるために扁平形状のシートチューブは、タイヤの外郭に沿った形に切り取られる

ボリューム感あふれるフレームワーク、そしてエアロ形状となると、ウイークポイントとされるのが振動吸収性だ。長距離ロードレースでは速さもさることながら、快適性も大きなキーワードになってくる。そこでノアはトップチューブの上面を幅広に設計して、ねじれ剛性を確保しながらサイドシルエットをアーチシェイプとしたトップチューブを採用。さらにシートステーにベンド加工を施すことで、パワートランスファーをロスすることなく乗り心地を高めている。

フレームの素材については1つのグレードにこだわるのではなく、フレーム形状や必要とされる性能に応じて、50、40、30tonの3種類を適材適所に使い分ける細かな作りを見せる。素材と形状を細かく突き詰めることでプロ選手が求める剛性の高さと、長距離を走っても疲れない高い快適性が高度なレベルで追求されている。

アーチ状に成型されたトップチューブ。エアロフレームにありがちな路面からの突き上げ感を和らげるアーチ状に成型されたトップチューブ。エアロフレームにありがちな路面からの突き上げ感を和らげる ハンガー部分は一般的なスレッドタイプだが、ボリュームをしっかり与えて無駄なウイップを発生させないハンガー部分は一般的なスレッドタイプだが、ボリュームをしっかり与えて無駄なウイップを発生させない

そして、プロレースの高速のダウンヒル走行でも安定したハンドリングを実現するため、ヘッドコラムは上側1-1/8、下側1-1/2の上下異形タイプを採用するなど、ノアは現在のロードバイクのトレンドを全て飲み込んだ設計になっている。

こうして出来上がったノアのフレーム重量は1075g。エアロダイナミクスを追求したフレームとしては、非常に軽い仕上がりとなり、平坦路でのアドバンテージはもちろんだが、上りのコースも高いレベルでこなせるオールラウンドな性能が追求されている。

ボリューム感あふれるヘッドチューブ。上は1-1/8、下は1-1/2の上下異形タイプを採用するボリューム感あふれるヘッドチューブ。上は1-1/8、下は1-1/2の上下異形タイプを採用する シート部はインテグラル形状。チューブを外側から抑えるピラー部分は確実な固定が行なえるシート部はインテグラル形状。チューブを外側から抑えるピラー部分は確実な固定が行なえる シートステーのブレーキブリッジ下部には「R-Flowジェットフォイル」を搭載して空気抵抗を削減シートステーのブレーキブリッジ下部には「R-Flowジェットフォイル」を搭載して空気抵抗を削減

インプレッション by 吉本 司

ガツンと踏みたくなる力強い加速が魅力

高いレベルのフレーム剛性によって繰り出される加速性能の高さは見事(吉本司)高いレベルのフレーム剛性によって繰り出される加速性能の高さは見事(吉本司)
扁平形状を前面に押し出したフレーム形状で圧倒的な存在感があるノア。その走りもまた圧倒的なパフォーマンスと言える。フレーム剛性は高いレベルにある。そこから繰り出される加速性能の高さは見事で、初速の鋭さは自分の感覚を上回るほど。加速の立ち上がりがとにかく優れるので、つい重いギヤに入れてスピードを上げたくなる。高出力で踏み続けられるライダーならこの性能は魅力的だ。

試乗車に装備されているFFWDのカーボンホイールとのマッチングも絶妙で、フレームのエアロ効果も相まって時速40㎞から、その後半にいたる巡航性は非常に気持ちがいいし、この速度域での上げ下げも軽快だ。プロならもう一段上の速度域なのだろうが、とにかく常用速度の高いプロユースを想定した設計が伺える。

上りでもダンシングは軽快(吉本司)上りでもダンシングは軽快(吉本司) 加速の鋭さはコーナーの立ち上がり、上りでのアタックといった面においても魅力的だ。上りでもダンシングは軽快。バイクをこじるようなダンシングをすると剛性が高いのでパタパタとした挙動になり推進力が鈍るが、しっかり腰を固めてパイクを必要以上に振らず、ペダルをしっかり真っ直ぐに踏み下ろすような基本に忠実な走りをすれば、軽快に上りもこなせる。

そして、このエアロ形状にして乗り心地が悪くないのには驚かされる。予想では荒れた路面でバタバタして路面への接地感はどうかと想像したが、そうした部分は感じられない。オンザレールのダウンヒルが楽しめる。このあたりは「テスト・オン・パヴェ」とフレームに記される通り、石畳の路面が多いベルギーで開発される製品だと感心させられる。

フレーム形状やカーボンの積層といった部分もあるが、フロントセンターの長い設計と重心位置が低く安定感が高いのも、乗り心地をアップさせる要因の1つだろう。

ノアの本当の性能を引き出せるのはフィットネスレベルの高いサイクリストだと思うが、こうしたハイパフォーマンスバイクに挑むのもホビーサイクリストの楽しさだ。特徴的な設計思想と存在感のあるスタイリング、そしてリドレーならではの美しいペイントワーク、フラッグシップとして魅力的な1台と言えるだろう。

インプレッション by 佐藤 光国

ギャップを踏んでもトルクが逃げないので、安心して走れる(佐藤光国)ギャップを踏んでもトルクが逃げないので、安心して走れる(佐藤光国)

高剛性と優れた空力性能で高速レースに最適

初期加速はとても鋭いです。その剛性の高さから、自分の場合は時速40㎞を過ぎぐらいから脚が負けるような感覚がありました。プロ選手のように高出力を出し続けられる人に最も向いていますが、ペダル回転数を意識して、脚を真っ直ぐ踏み下ろす意識で走ると、加速の良さを体感できます。

時速40㎞ぐらいを過ぎるとエアロダイナミクスに優れるためか、滑らかに進む感覚があり、レースの集団、前に上がる時にも力を温存できそうです。なので平坦や緩斜面のロードレース、クリテリウムなど速度の速いレースが最適ですね。

ハンドリングにクイックさはありますが、素直で直進性もしっかり確保されるのでストレスはないです。また、高剛性なのに振動吸収性にも優れ、今日乗った中で最も乗り心地はよかったです。ギャップを踏んでもしっかりトルクが逃げないので、安心して走れますね。


インプレッション by 木下 大輝

高剛性と乗り心地の良さをバランスしたプロ仕様

とにかくフレーム剛性が高い。上りもとても軽くてしっかり前にでてくれる感覚があります。ただ、剛性が高いので一般レベルのライダーだと長距離のコースだと後半だと踏み負けちゃうかもしれません。まさにトッププロが使うフレームだと思います。

上りがとても軽くてしっかり前にでてくれる感覚。下りでも安定している(木下大輝)上りがとても軽くてしっかり前にでてくれる感覚。下りでも安定している(木下大輝)
その一方で、トップチューブからシートチューブがベンドしている影響だと思いますが、乗り心地は優れています。フロントセンターが長めに設計されているせいか、自転車の中心に乗っているような感覚があり、ハイスピードになった時でも安心感が高い。乗り心地もいいので、ベルギーの石畳の路面でも走りやすいでしょうね。とにかく全体的なバランスがいいバイクです。

下りで安定しているので、ジャパンカップのコースのように下りのタイトコーナーの切り返しが多く、平地もある程度あるようなコースなどにも適していると思います。

インプレッション by 西井 敏次

加速の鋭さ、ハンドリングのシャープさなど、自分の感覚以上(西井敏次)加速の鋭さ、ハンドリングのシャープさなど、自分の感覚以上(西井敏次)

風にとけ込む高性能。プロスペックのすごさを体感

実物を見るとカラーリングが美しいバイクで、2011年モデルは昨年のものよりいいですね。加速の鋭さ、ハンドリングのシャープさなど、自分の感覚以上で、性能、カラーリング、価格、全てにおいてすごいバイクです。でも乗り心地に不快感はありませんし、ハンドリングについても怖さを感じることはありません。下りや、ブレーキングでの剛性感も高く、安心して走れます。

今回乗ったリドレーのバイクすべてに共通するのは、前輪と後輪が別々の動きをせずに、常に自転車の真ん中に乗っていられるので安心感が抜群です。私には未知の世界ですが、これがプロが乗るバイクかと感心させられます。

自転車ではよく「風を切る」という表現をよく耳にしますが、このノアとノアRSは、風にとけ込むという感覚があります。下りなどで知らないうちにスーッとスピードが出ています。

リドレー NOAH

リドレー NOAHリドレー NOAH
PRICE¥357,000(税込) フレームセット
FRAME50ton,40ton,30tonハイモジュラスカーボンファイバー
WEIGHT1075g
COLOR1101A
SIZEXS,S,M
提供:JPスポーツグループ 企画/制作:シクロワイアード