早速ツール・ド・フランスで勝利するなど話題を呼ぶ新型Tarmacだが、一般ユーザーにとって大きな変更点はジオメトリーが変更され、男女共用フレームとなったこと。同社SBCU担当の佐藤修平さんにこの変更が持つ意味を掘り下げて聞いた。実走派店長たちによるインプレッションと併せてお届けしよう。

刷新されたRIDER FIRST ENGNEEREDとは

THE ALL-NEW, RIDER-FIRST ENGINEERED TARMACTHE ALL-NEW, RIDER-FIRST ENGINEERED TARMAC
先代Tarmacのコアテクノロジーとして誕生したライダーファーストエンジニアード。これはつまり、フレーム形状やカーボン積層の工夫、下側ヘッドベアリング径の変更などによって各フレームサイズ毎の乗り味の差が出ないように調整すること。従来スペシャライズドが抱えていた、スモールサイズは硬く、ビッグサイズは大味という差を解消したシステムだ。

Retulフィッターの資格を持つSBCUの佐藤修平さんに話を聞いたRetulフィッターの資格を持つSBCUの佐藤修平さんに話を聞いた そんなライダーファーストエンジニアードが、新型Tarmacで進化を果たす。キーポイントはボディージオメトリーフィットの公式ツールとして活躍するRetul(リチュール)から得たデータを開発に落とし込み、男女共用のプラットフォームとなったこと。

これに伴って48、50、52、54、56、58という従来のフレームサイズ展開が44、49、52、54、56、58へと変化し、ジオメトリーも変化している。これが意味することとは?サイズ選びはどうしたら良いのか?同社国内フィッターを統括するSBCU(Specialized Bicycle Components University、販売店向けの講習や、一般向けに製品の解説、普及活動を行う部門)の佐藤修平さんに話を聞いた。

全世界4万人のフィッティングデータを反映 男女同一フレームへと生まれ変わったTarmac


CW:ライダーファーストエンジニアードが刷新され、ラインアップやジオメトリーも大きく変わりましたね。その意味はどこにあるのでしょうか?

全世界から集めたフィッティングデータを検証することで、サイズ構成の見直しと男女共通化を実現全世界から集めたフィッティングデータを検証することで、サイズ構成の見直しと男女共通化を実現
佐藤:大きく変更されたのはフレームが男女共通となったことですね。従来は女性版のターマック、つまり女性用レーシングモデルとしてジオメトリーやサイズ展開が異なるアミラが用意されていましたが、新型Tarmacからは男女共通の1種類のフレームに生まれ変わりました。

現在フレーム開発は軽量化やエアロ化などある1つの性能を伸ばすという方法から、フレームに関わる全てを最適化するアプローチへと切り替わっている、と開発ディレクターのクリス・ユーは言っています。その上で我々の開発アプローチが正しいのか確かめるため、全世界から得た4万ポイント、数千人のRetulフィッティングデータの検証を行ったことが、今回の同一フレーム登場の端緒となりました。

データ分析を進めていくうちに、スタックとリーチ長の数値が男女間で重なり合う部分が存在し、男女でフレームを分ける必要が無いと気がついたのです。そして、背の高い女性と低い男性が同じサイズに乗ったとしても問題がないようなジオメトリーを、ライダーファーストエンジニアードを用いて検証、最適化しながらゼロベースで作り上げたのです。

フレームは共通だが、完成車ではハンドルやサドルは男女別のパーツをアッセンブルするフレームは共通だが、完成車ではハンドルやサドルは男女別のパーツをアッセンブルする
もちろん男性や女性、瞬間的な出力が高い方や低い方、様々な人に適応するようにフレーム形状や剛性の調整を行っています。これまでプロ選手のために開発を行っていたフラッグシップモデルですが、ライダーファーストエンジニアードの進化により、乗り手を選ばない懐の深さを手に入れたことが進化している点ですね。

CW:フレームサイズ展開が変わっているのですが、サイズ選びのアドバイスをお願いします。

佐藤:1つ目は、従来のアミラでは44、48、51のサイズ展開でしたが、新ターマックではこれらは44、49、52に相当します。スタック&リーチの変化は僅か3mm程度ですので、従来Amiraの48に乗っていた方は、新型ターマックの49へスライドが可能というわけです。

2つ目に気をつけて頂きたいのは、先代Tarmacで49サイズ、52サイズに乗っていらっしゃった方が最新型へ移行する場合です。具体的な数値で説明すると、先代の49サイズはスタックが504mmだったのですが、新49サイズでは514mmとなりました。52サイズでは526mm('17)から527mm('18)となり、ワンサイズごとに比例して数値が変わるというわけではなくなりました。先代、新型間で著しい変化があるのは49、52サイズで、この部分に注意を払っていただくか、もしくはRetulで購入前サイジングを行えば非常に安心ですね。

また、54サイズ以上では変化はわずかで、今まで通りのポジションをほぼそのまま再現することができます。新しく生まれ変わったTarmacをぜひ試して欲しいですね。

新型Tarmacインプレッション


新井:第一印象はとにかく走りが軽いこと。それが全面的に感じるのですが、やはり前作よりも200gも軽くなったフレーム重量による部分が大きいのでしょう。持っても軽いし、実際に乗って踏み出した時の進みの軽さは誰もが感じられる特長ではないでしょうか。乗り味にクセはなく、前作でも際立っていた走りのバランスの良さが受け継がれており、どんなシーンでもしっかりと進むとても良いバイクです。

「フレーム重量が軽くなったおかげでより軽くスムーズな乗り味になった」新井康文(BIKE SHOP FORZA)「フレーム重量が軽くなったおかげでより軽くスムーズな乗り味になった」新井康文(BIKE SHOP FORZA) photo:Ryuta.IWASAKI
安藤:これだけ軽くなったにも関わらず、乗り心地や剛性など犠牲になった部分はありませんね。すべての性能がレベルアップしていると感じます。乗り味はTarmacらしいレーシーさを残しつつ、挙動がピーキーであるとか、フレームが硬すぎるといったマイナス要素は全くなく、どんな人にもおすすめできると思います。ハイエンドバイクながら、今まで以上に角が取れたような印象で非常に乗りやすく進化しています。

新井:乗り心地が良くなったとも感じたのですが、その要因が新規形状となったシートポストでしょう。前作のシートポストもしなりを感じていた部分だったのですが、今回もそれは同じですね。手で力を加えてみても目に見えてしなっているので、カーボンの積層で厚みを工夫しているのだと思います。路面ノイズを程よく伝えながら、一定以上の衝撃をカットしてくれるような印象です。

「形状は大きく変更されたがTarmacらしい乗り味を残しつつ全ての性能が上がっている」安藤光平(Bicicletta SHIDO)「形状は大きく変更されたがTarmacらしい乗り味を残しつつ全ての性能が上がっている」安藤光平(Bicicletta SHIDO) photo:Ryuta.IWASAKI
安藤:リア三角も新たにコンパクトなデザインに変更されましたが、当初はリアのしなりがなくなり、路面のギャップ等で跳ねるのではと思っていました。でも、そういったネガティブな感触はありません。むしろ路面追従性は上がっていると思います。踏み込んだ時の反応性も抜群です。

新井:そうですね。新型Tarmacは各所のルックスから想像できる乗り味とは、いい意味で裏切られる性能を獲得していると感じます。前作から比較するとどの部分も細くシェイプアップしていて華奢な印象を受けるのですが、踏み込んだ時のカチッとした剛性はそのままですし、フレームがしなってウィップ感を出すわけでもありません。細身で生まれるデメリットを、カーボン素材や積層のテクノロジーでコントロールしているのでしょう。今回はパワーメーターを装着しテストを行ったのですが、スプリントで5秒平均1042Wという数字を出すことができました。それでも剛性には全く不満感じることなく、凄い伸びを楽しむことができたんです。

新型Tarmacで普段の練習コースを走った新井さんは、この日峠の区間で自己ベストタイムを叩き出した新型Tarmacで普段の練習コースを走った新井さんは、この日峠の区間で自己ベストタイムを叩き出した photo:Ryuta.IWASAKI「純粋に重量の軽量化によってヒルクライム性能が格段に上がった」「純粋に重量の軽量化によってヒルクライム性能が格段に上がった」 photo:Ryuta.IWASAKI

「刷新されたフロントフォークはより安定したハンドリング、コーナリングを実現してくれる」「刷新されたフロントフォークはより安定したハンドリング、コーナリングを実現してくれる」 photo:Ryuta.IWASAKI
安藤:ジオメトリーも刷新されているので、特に小さいサイズでは乗り味が上手く調整されているなと感じます。ここはライダーファーストエンジニアードが効いている部分。女性モデルと共用となったことで、より小柄なライダーにも乗りやすい設計です。

新井:メカニック目線の意見も言わせてもらうと、スペシャライズド独自のOSBB、いわゆるBB30系でありがちなBB周りの音鳴りを気にする人がいると思いますが、ベアリングをしっかり組み付けし固定してあげればその点も全く問題ありません。音鳴りを気にして敬遠してしまうにはもったいないフレームですので、きちんとプロショップにて整備して乗って欲しいですね。

「専用シートポストのしなりが快適性に繋がっている」「専用シートポストのしなりが快適性に繋がっている」 photo:Ryuta.IWASAKI「形状から想像できる乗り味以上の性能を有し、カーボンテクノロジーの進化を感じる」と新井さん「形状から想像できる乗り味以上の性能を有し、カーボンテクノロジーの進化を感じる」と新井さん photo:Ryuta.IWASAKI

「今まで以上に全方位に対応したオールラウンダーに仕上がっている」とお二人「今まで以上に全方位に対応したオールラウンダーに仕上がっている」とお二人 photo:Ryuta.IWASAKI
安藤:今回大きくモデルチェンジしたTarmacですが、根本的な乗り味は前作と変わらず、苦手なシーンが見当たらないオールラウンドな性格です。フレーム重量が軽くなったことでヒルクライム性能も上がっていますし、新たに獲得したエアロ形状により平坦も速い。各性能が伸びたことで今まで以上にオールラウンダーなバイクとして誕生していますね。

新井:基本的にはレースバイクですので、速く走りたいという、よりスピードを求める人には特に響く性能です。速く楽に走りたいというサイクリストの根本的な欲求を高いレベルで満たしてくれますね。どんなシチュエーションでもよく走るバイクですので、乗り手を選ばずレースでもロングライド等のイベントでも満足いくパートナーとなってくれることと思います。

インプレッションライダープロフィール

左:新井康文さん(BIKE SHOP FORZA) 右:安藤光平さん(Bicicletta SHIDO)左:新井康文さん(BIKE SHOP FORZA) 右:安藤光平さん(Bicicletta SHIDO) photo:Ryuta.IWASAKI
新井康文(BIKE SHOP FORZA)
茨城県つくば市にある「BIKE SHOP FORZA」の店長。お店は3年連続S-WORKS Tarmac国内販売数一位を誇り、日本で最もTarmacを組むメカニックの一人。自身でも歴代のTarmacを乗り継ぐ。ツール・ド・おきなわに焦点を当てたレース活動を行い市民210kmで上位完走に食い込む実力者。「チームターマック」ではキャプテンを務める。

安藤光平(Bicicletta SHIDO)
東京都狛江市にある「Bicicletta SHIDO」の店長。いくつもの有名クラブチームを渡り歩き、現在はFIETS GROEN日本ロボティクス所属でJプロツアーにも参戦。2012年の2days race in 木祖村ではスプリント賞を勝ち取りグリーンジャージを獲得。シクロクロスでもトップカテゴリーのC1を走る。チームターマック主力メンバーの一人。

提供:スペシャライズド・ジャパン 制作:シクロワイアード編集部