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ジロ・デ・イタリアのチームカーやオフィシャルカー、ドクターカーの車列に、キャリアにバイクとホイールを満載した白いヴィットリアカーが混じる。ここではジロの裏方としてレースを支えたヴィットリアのニュートラルサポート体制にスポットを当てます。

ジロ・デ・イタリアのニュートラルサポートを務めるヴィットリア

「ジロに帯同しているニュートラルサポートカーは合計3台あり、それぞれ6台のニュートラルバイクと20本のホイールを積載しています。つまり合計18台のバイクと60本のホイールがレースの中でサポート可能な状態にあります。山岳ステージでは車に加えてモーターバイクも運用しているため、実際はそれ以上の数になります」。真っ白な車体にヴィットリアのロゴが入るホンダ新型シビックタイプRを指差しながらそう語るのは、ヴィットリアニュートラルサポートの広報を務めるヴェロニカ・パッソーニさん。スタート前の慌ただしいタイミングにも関わらずたっぷりと時間を作ってニュートラルサポートについて説明してくれた。

ヴィットリアニュートラルサポートの広報を務めるヴェロニカ・パッソーニさん(左)ヴィットリアニュートラルサポートの広報を務めるヴェロニカ・パッソーニさん(左) photo:Kei Tsuji
ニュートラルサポートとは、その名の通り中立な立場で選手の援助を行う体制のこと。パンクや機材トラブルが発生した際に対処するのはチームメカニックだが、200名近い選手がコース上に散らばっている状態では常に所属チームが近くにいるとは限らない。その時のためにヴィットリアのニュートラルサポートカーやサポートバイクが選手に寄り添い、トラブルが発生した時に公平にサポートを行う。

「ニュートラルサポートカーの後部座席には経験豊かなメカニックが座り、その手元には一通りの工具と3〜4本のホイールを準備。何かあればすぐに飛び出せる状態にあります。また、機材サポートだけでなく、運転席と助手席にはボトルや清涼飲料、エナジージェル、そして天候悪化に備えてキャップなども用意しています」。ジロの大会関係車両と共通のシビックタイプRは決して大柄な車体ではないが、その中には様々な仕掛けが詰め込まれている。

ホンダ新型シビックタイプRがヴィットリアのサポートカーホンダ新型シビックタイプRがヴィットリアのサポートカー photo:Kei Tsuji
ドアポケットには選手に渡すための補給食が詰め込まれているドアポケットには選手に渡すための補給食が詰め込まれている photo:Kei Tsujiラジオツールから選手の状況をいち早くキャッチするラジオツールから選手の状況をいち早くキャッチする photo:Kei Tsuji

トラブル時に素早く駆けつけられるように車内にホイールが詰め込まれるトラブル時に素早く駆けつけられるように車内にホイールが詰め込まれる photo:Kei Tsujiあらゆるトラブルに対応するために工具もひと通り揃えられているあらゆるトラブルに対応するために工具もひと通り揃えられている photo:Kei Tsuji

「ホイール交換が主な仕事になりますが、ニュートラルサポートの活動は多岐に渡ります。壊れたバイクを回収してニュートラルバイクを差し出すこともあれば、選手の要望に応じてハンドルの角度やサドルの高さ調整、そしてディレイラーやブレーキの調整、細かいメカトラを修理することも。チームのメカニックがその場にいないときに選手が頼れる状況を作ることが私たちの仕事です」。トラブル発生場所にいち早く駆けつけるため、車内には無線を2機搭載。1つめはレース状況を把握するための競技無線で、もう1つはニュートラルサポートのスタッフ間の通信用。レース状況に合わせて臨機応変にサポートカーの動きを決めているという。

過渡期にあるディスクブレーキロードの準備も万全なサポート体制

2017年からは、中立な立場で公平にサポートを行うという立場上、ディスクブレーキのサポートも開始した。「昨年ディスクブレーキのトライアルが始まったことを受け、今年からディスクブレーキを搭載したホイールも用意するようになりました。どのチームもディスクブレーキを使用することができる状態で、実際に今回のジロでも数名の選手が使用していました。数で言うとキャリパーブレーキよりずっと少ないものの、何かあったときにニュートラルサポートで対応できるように体制を整えています。

ニュートラルサポートカーには6台のニュートラルバイク(ピナレロ・ドグマK)が載るニュートラルサポートカーには6台のニュートラルバイク(ピナレロ・ドグマK)が載る photo:Kei Tsuji
ディスクブレーキに対するサポートも万全な体制を整えているディスクブレーキに対するサポートも万全な体制を整えている photo:Kei Tsujiディスクブレーキについて解説も行うディスクブレーキについて解説も行う

ローター径やエンド幅、スルーアクスルorクイックリリースなどまだ規格が一本化しておらず、今後プロトンの実情を踏まえながら用意するホイールを増やしていく予定です」と、各チームの使用機材について徹底的にリサーチしている。ギアの多段化の移行時期と同様に、規格が入り乱れる時期はどうしても用意する機材が増える。

キャリアに積まれたニュートラルバイクはピナレロのドグマK。すべての選手に対応しなければならないため、シマノやルック、タイム、スピードプレイなど各種のペダルが用意されている。「シーズン始めにUCIワールドチームやUCIプロコンチネンタルチーム所属選手の身長をチェックし、様々な体格の選手に対応できるようフレームサイズを3種類揃えています」。トラブル発生時に迅速に選手のフィッティングを行うため、サドルの高さはクイックリリースで調整可能だ。

イタリア国内外を駆け回るヴィットリアのサポート部隊

残雪のステルヴィオ峠を駆け上るヴィットリアのサポートカー残雪のステルヴィオ峠を駆け上るヴィットリアのサポートカー photo:Kei Tsuji
ジロ・デ・イタリアではゲスト用のバスも用意し、スタート地点のスポンサーエリアではブースも展開。現場でニュートラルサポートを行うと同時に、サポートチームへの供給やフィードバックも行っている。「昨晩フィリッポ・ポッツァート(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ)と現在使用しているコルサについて意見交換を行い、何度も何度もテストを繰り返したコンパウンドはグリップ力のある柔らかさと走行抵抗の少なさ、そしてパンク耐性の高さを両立しており、選手が求めるバランスの良いタイヤだという結論に至ったところです。

レース前、サポート用のホイールにタイヤを貼り付けるレース前、サポート用のホイールにタイヤを貼り付ける 膨大な量のCORSAが用意された膨大な量のCORSAが用意された グラフェンで強化されたホイールQURANOが準備されているグラフェンで強化されたホイールQURANOが準備されている


ヴィットリアは2011年にRCSスポルトとニュートラルサポートの契約を結び、以降ジロ・デ・イタリアを始めとする主催レースのニュートラルサポートを行うようになった。イタリア国内ではジロ、ストラーデビアンケ、ティレーノ〜アドリアティコ、ミラノ〜サンレモ、イル・ロンバルディア、イタリア選手権などの主要レースをサポート。海外でもツアー・オブ・ブリテンやツアー・オブ・オーストリア、ヨーロッパ選手権などもカバー。スタッフが「近年は休む暇がない」と笑うほど、1年を通してヴィットリアのサポートカーがヨーロッパを走り回っている。

提供:ヴィットリア・ジャパン text&photo:Kei Tsuji