灼熱の南半球で行われたツアー・ダウンアンダーを筆頭に、ヨーロッパでもロードレースシーズンがいよいよ開幕。冬至を過ぎてから日一日と太陽が顔を出す時間も長くなり、そろそろ春のライドに向けての意欲も高くなってくる季節だ。今回のスペシャル企画では、スペシャライズドが誇るロード3本柱、Tarmac、Venge、そしてRoubaixを、レースでの活躍も含めて検証し、その魅力に迫りたいと思う。

たゆまぬ熱意、歩みを止めないスペシャライズドの3本柱

昨年のジロ・デ・イタリアを制したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)。駆るのはスペシャルカラーのS-Works Tarmac昨年のジロ・デ・イタリアを制したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)。駆るのはスペシャルカラーのS-Works Tarmac photo:Kei Tsuji
2015年のジロ・デ・イタリアもS-Works Tarmacを駆るアルベルト・コンタドール(スペイン)が勝利した2015年のジロ・デ・イタリアもS-Works Tarmacを駆るアルベルト・コンタドール(スペイン)が勝利した photo:Tim de WaeleS-Works Tarmacでウィリーを披露するボーラ・ハンスグローエの選手S-Works Tarmacでウィリーを披露するボーラ・ハンスグローエの選手 photo:CorVos


遂に幕開けた2017年のロードレースシーズン。ディスクブレーキロードの活躍や新型コンポーネントの発表など、開幕当初からテック面においても話題に事欠かないシーズンとなっている。そんな今シーズンも変わらない輝きを放ち続けているのが、アメリカの雄であるスペシャライズドが誇るラインアップ、すなわちTarmac、Venge ViAS、Roubaixの3シリーズだ。

軽快なヒルクライムフィーリングと癖のない扱いやすさで登りから下りまであらゆる局面に対応する「オールラウンドレーサー」、空気抵抗の削減を至上命題とし、高速レースで圧倒的なアドバンテージをもたらす「エアロロード」、石畳のような荒れた路面でライダーを守り、さらなる力を与えてくれる「エンデュランスバイク」。この3つのカテゴリーに沿ってバイクをラインアップするメーカーは多いが、スペシャライズドはその流れに先鞭をつけたブランドである。

初のディスクブレーキバイクによるUCIロードレース勝利をアピールするトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップフロアーズ)初のディスクブレーキバイクによるUCIロードレース勝利をアピールするトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップフロアーズ) photo:TDWsport
ペーター・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)のために用意されたVENGE ViAS Discペーター・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)のために用意されたVENGE ViAS Disc photo:Kei TsujiVENGE ViAS Discで勝利を飾っているマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)VENGE ViAS Discで勝利を飾っているマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji/TDWsport


2003年に初代Tarmac、その翌年にRoubaixを発表したスペシャライズドが、現在のラインアップを完成させたのは2011年のこと。マクラーレンとの共同開発によって生み出されたVengeを仲間に加え、それから7年間に渡って3つのシリーズをラインアップし続けてきた。

もちろん、2つ、あるいは1つのモデルでレースシーンに対応するという競合ブランドも多い。それはブランドとしてのフィロソフィーの違いでもある。翻って言えば、それぞれが主戦場とするフィールドにおいて、最も優れた性能を発揮するように特化した“Specialized bike(専用バイク)”をラインアップするスペシャライズドは、ブランドフィロソフィーを体現しているということでもある。

集団先頭でパリ〜ルーベのパヴェを突き進むトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップフロアーズ)。その走りを支えるのは今も昔もRoubaixだ集団先頭でパリ〜ルーベのパヴェを突き進むトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップフロアーズ)。その走りを支えるのは今も昔もRoubaixだ photo:CorVos
スペシャライズドそのものを体現するラインアップだが、その実力が本物であることは過去の戦績が証明している。ヴィンチェンツォ・ニーバリやアルベルト・コンタドールらによるグランツールでの勝利を生み出したTarmac。マーク・カヴェンディッシュやペーター・サガンのスプリントを支えたVenge ViAS。ニキ・テルプストラやトム・ボーネンらクラシックハンターの信頼に応え、パリ~ルーベをはじめとしたクラシックで数々の栄光を手にしてきたRoubaix。

一つ一つを挙げていけばキリがないほど、多くの勝利と共にあったスペシャライズド。今シーズンは、クイックステップフロアーズとボーラ・ハンスグローエの2チームに供給し、すでにブエルタ・ア・サンフアンで全7ステージ中5ステージを制している。すでに勝利の量産体制に入ったスペシャライズドバイクは今シーズンも台風の目になりそうだ。

ラインアップの中核となるオールラウンドレーサー Tarmac

スペシャライズドS-Works Tarmac 2017スペシャライズドS-Works Tarmac 2017
スペシャライズドを支える3本柱のうち中核となる、いわば大黒柱のような存在が、このTarmacだ。2003年のデビューから数えれば、5代目となる現行Tarmacは「ライダーファースト・エンジニアード」を取り入れ、大きな飛躍を果たしたモデルとなった。

やみくもに剛性や重量といった数値を追うのではなく、ライダーの声を聞き、エンジニアとの密接なやりとりをもとに製品を開発していくメソッドが「ライダーファースト・エンジニアード」であり、実に3年の歳月を費やして開発されたTarmacは、デビュー以来数多くの勝利を飾ってきた。グランツールを5度、世界選手権を2度制した実績を持つ、プロトン最強バイクの一角として君臨してきた。

カラーバリエーションが豊富に揃うこともTarmacの魅力だカラーバリエーションが豊富に揃うこともTarmacの魅力だ カーボングレードを引き上げ、走りを洗練させたミドルグレードの「comp」カーボングレードを引き上げ、走りを洗練させたミドルグレードの「comp」


その最大の特徴はサイズごとに専用の設計を行っているという点にある。7つのフレームサイズに対し、体格やタイプの異なるテストライダーによる実走テストを繰り返し、それぞれのフレームへの入力データを計測することで、フレームサイズごとに最適な剛性や加速性、振動吸収性、路面追従性の目標値を設定。その値を満たすように各々のフレームが開発・設計されているのだ。つまり、同じTarmacという名前を持つバイクでありながら、7つの異なるバイクを開発するようなアプローチがされたのだ。

Tarmac現地プレゼンテーション参加記事

[img_assist|nid=137591|title=|desc=|link=node|align=right|width=250|height=]2014年夏にデビューした現行Tarmacのメディアプレゼンテーション参加記事はこちら。カリフォルニア州モーガンヒルにあるスペシャライズド本社において開催され、ウェブキャストを用いた世界同時中継も行われ世界の注目を集めた。開発者へのインタビューやインプレッションも含め、徹底的にTarmacを掘り下げた。スペシャライズド New Tarmac誕生開発の革命“ライダー・ファースト・エンジニアード”
あらゆるライダーにフィットするべく設計されたTarmacの真価は、プロレーサーたちが愛用するトップモデル「S-Works Tarmac」はもちろんのこと、より手の届きやすいミドルやエントリーグレードにもしっかりと受け継がれている。今年のTarmacに用意されるのは、5種類のフレームと9種類の完成車パッケージ。S-Works Tarmacにはディスクブレーキモデルも用意され、最新のトレンドにもバッチリ対応している。

S-Worksの直系ともいえるのが、Fact10rカーボンを使用するミドルグレードのExpertとCompシリーズだ。特に今年から「ライダーファーストエンジニアード」が導入されたTarmac Compはラインアップの中でも最もコストパフォーマンスに優れた注目モデルとなっている。初めてのロードバイクに選んでも、きっと長い間楽しめる一台だ。

プロトン最速のエアロマシン Venge ViAS

S-Works Venge ViAS Disc eTapS-Works Venge ViAS Disc eTap
Tarmacが癖のない優等生であるならば、高速走行に特化したモンスターバイクがVenge ViASだ。「史上最速のエアロロードバイクを製作すること」を至上命題とし、空力のスペシャリストであるクリス・ユーによって産み落とされたエアロの申し子は、ペーター・サガンやマルセル・キッテルらによって栄光の道を歩んできた。

その速さの源となったのが、ワイヤー類のフル内装を実現する“Aerofly ViASハンドル”や、フレームやフォークと一体化した“ゼロドラッグブレーキ”といったトータルインテグレーションデザイン。並みのTTバイクが裸足で逃げ出すような、エアロダイナミクスを追求した設計によって、40kmを走った時にTarmacに116秒の差をつけるという異次元の速さを手に入れた。

Venge ViAS現地プレゼンテーション参加記事

[img_assist|nid=174183|title=|desc=|link=node|align=right|width=250|height=]2015年6月に発表されたVenge ViASだが、それに先立ってCW編集部は発表を1ヶ月後に控える中、カリフォルニア州モーガンヒルにあるスペシャライズド本社で行われたプレゼンテーションに参加した。同社が誇る風洞実験施設WIN-TUNNELと実走で行った空力テストにて、その類い稀なる空力性能を目の当たりにした。スペシャライズド VENGE 5年ぶりの構造革新トータルパッケージで5分を縮めるエアロロードマシン
世界最速バイクとしての揺るがぬ地位を手にしたVenge ViASだが、その進化する速度もまた速かった。デビューした翌年の2017年モデルでディスクブレーキモデルであるVenge ViAS Discへとモデルチェンジ。このエアロロード×ディスクブレーキという異色の組み合わせは、当初驚きをもって迎えられた。

S-Works Venge ViAS Disc FramesetS-Works Venge ViAS Disc Frameset VENGE VIAS EXPERT DISCVENGE VIAS EXPERT DISC


一般的にはエアロダイナミクスに劣るとされるディスクブレーキを究極のエアロロードであるVenge ViASに装着することに、疑念を覚える人もいただろう。しかし、その選択が間違いではなく、むしろVenge ViASの速さをさらに引き上げるものであったことはトム・ボーネンが証明してくれた。ブエルタ・ア・サンフアン第2ステージ、Venge ViAS Discを駆ったボーネンがスプリントを制し、UCIロードレース史上初となるディスクロードでの勝利を果たしたのだ。実際、ディスクブレーキ化により重心が下がるとともに、全体の剛性バランスも整えられ、走りのクオリティは格段に洗練されている。

自転車の歴史にその名を刻み込んだVenge ViAS Disc。そのラインアップはトップモデルであるS-Worksと、セカンドモデルのExpertの2つ。そして、より手頃なエアロマシンとして用意されるのがVenge Elite。前作であるVengeのフレームを採用し、扱いやすいエアロロードとしてビギナーにもぴったりのバイクだ。

過酷な石畳レースを制するためのグランツーリズモ Roubaix

サスペンションシステム“フューチャーショック”を搭載したRoubaixサスペンションシステム“フューチャーショック”を搭載したRoubaix (c)specialized
ここ数年に発表されたロードバイクの中で、最も革新的でユニークなテクノロジーを搭載したバイクの一つが、この新型Roubaixであることに異を唱える人はいないだろう。フォークコラムに内蔵するという新発想で、走行性能を犠牲にせず圧倒的な快適性を手に入れたサスペンションシステム”フューチャーショック”の登場は既存のロードバイクという枠組みを破るだけのインパクトがあった。

過去に存在したロード用サスペンションシステムのどれもが成しえなかった「重量」そして「ハンドリングの悪化」という二つのデメリットの克服を果たすことに成功したフューチャーショックによって、劇的な進化を遂げた新型Roubaix。ライダーファーストエンジニアードによる最先端のフレーム設計と相まって、極めて高い走行性能と快適性を融合させたエンデュランスレーサーとして完成した。

過酷なパリ〜ルーベのパヴェ(石畳)でRoubaixをテストするトム・ボーネン過酷なパリ〜ルーベのパヴェ(石畳)でRoubaixをテストするトム・ボーネン (c)specialized
今年のパリ〜ルーベを引退レースに選んだボーネン。新生Roubaixが彼を支える今年のパリ〜ルーベを引退レースに選んだボーネン。新生Roubaixが彼を支える (c)specialized革新的なフィーチャーショックを搭載したRoubaix革新的なフィーチャーショックを搭載したRoubaix (c)specialized


その主戦場となるのは過酷な天候と路面状況で争われる“北のクラシック”、その中でも最も格式高く最も苛烈なレースであるパリ~ルーベだ。デビュー以来、“北の地獄”ことパリ~ルーベで5度の勝利を挙げているRoubaix。その栄光に満ちた戦績に新たな一ぺージを加えるべく開発されたのが新型Roubaixである。

そして、今年のスペシャライズドのサポートチームを見れば、グランツールよりもクラシックレースを得意とする選手がひしめいていることに気づくだろう。今年で引退を表明しているボーネンをはじめ、サガン、テルプストラ、スティバルと、石畳で輝きを増す強豪たちがRoubaixを駆ってベロドロームを目指す姿が今から目に浮かぶようだ。

Roubaix国内試乗記事

[img_assist|nid=210585|title=|desc=|link=node|align=right|width=250|height=]衝撃と共に昨年デビューを飾った新型Roubaix。スペシャライズドの2017モデルが一同に会したジャパンプレミアでの試乗、詳細解説記事はこちらから。興味を惹きつけてやまないフューチャーショックの、そしてRoubaixそのものの価値、そして魅力とは?多角的にインプレッションを行った。全てのエンデュランスバイクを過去にする“フューチャーショック” スペシャライズド New Roubaix
ラインアップされるのは、プロモデルたるS-Worksを筆頭に、Fact10rカーボンを使用することでよりアマチュアライダーにも扱いやすくなったExpert、Comp、Eliteの4車種、そして前作となるRoubaix SL4のフレームを使用したSL4シリーズが2車種用意されている。

S-Works Roubaix eTapS-Works Roubaix eTap Roubaix CompRoubaix Comp


注目が集まるのは、やはり目玉となるフューチャーショックを搭載しながらも、アンダー30万円に抑えられたRoubaix Eliteだろう。ワイヤー式ディスクブレーキの採用によって価格を抑え、新型Roubaixの性能を身近にすることに成功した戦略モデルは、人気が出ること間違いなしだ。この注目バイクの乗り味を実際に試すことができるショップも全国的に展開中だ。こちらのリンクに掲載中のショップではRoubaixの試乗車が準備されている。歴史を変えるエンデュランスバイクの世界を、ぜひ味わってみてほしい。
提供:スペシャライズドジャパン 製作:シクロワイアード編集部