日本とは比べ物にならないほどざらついた、シチリア島のアスファルト。しかし、そんなことをまるで厭わないかのように、むしろ水を得た魚のように、踏みを入れたF10は軽々と速度を上げていく。およそ半日を掛けて行われた、DOGMA F10のテストライドの模様と、インプレッションをお伝えしようと思う。

シチリア島のワインディングで、F10を駆る

前章でも記したが、今回DOGMA F10のプレゼンテーションが催されたヴィアグランデの村は、カターニア空港から車で30分ほど北上した場所にある。シチリア島と言えば、かのヴィンツェンツィオ・ニーバリの出身地としても有名だが、その故郷であるメッシーナも1時間ほどと、あまり遠くない。

なぜシチリアが選ばれたかと言えば、暖かいから。ピナレロ本社のあるトレヴィーゾは北海道とほぼ同じ緯度にある(つまりとても寒い)ため、半袖+ウォーマー類ぐらいの薄着で走れる当地域がプレゼン開催地となった。「思い切りF10を堪能してほしい」というピナレロの意気込みが、否が応でも伝わってくる。

ずらりと揃えられたF10。前日は地下駐車場に隠されていたずらりと揃えられたF10。前日は地下駐車場に隠されていた photo:So.Isobeチームスカイのヴィヴィアーニとモスコン用のバイク。ヘッドコラムスペーサーなどが微妙に異なるチームスカイのヴィヴィアーニとモスコン用のバイク。ヘッドコラムスペーサーなどが微妙に異なる photo:So.Isobe

筆者と、テストライドで乗ったF10。新型のデュラエースDi2が装着されていた筆者と、テストライドで乗ったF10。新型のデュラエースDi2が装着されていた photo:Takehiro.Nakajima
バイクのアッセンブルを記しておくと、コンポーネントはシマノの新型デュラエースDi2で、ホイールはフルクラム RACING QUATTRO CARBON。タイヤはヴィットリア CORSA(25c)を7barにセッティングした。ちなみに誰もが初試乗となった新型デュラエースDi2は、製品版として最初に出荷されたものだそうで、ピナレロとシマノの結びつきを強く感じることができた。

ゲストライダーは、チームスカイのトラック五輪金メダリストであるエリア・ヴィヴィアーニと、若手ホープの筆頭であるジャンニ・モスコン。ファウスト・ピナレロ社長が同行するのもお約束だ。意欲的な眼つきのジャーナリストと一緒に、私は太陽の光をたっぷりと受けながら走り出した。

モスコンとヴィヴィアーニの牽引で高速巡航する隊列。モスコンとヴィヴィアーニの牽引で高速巡航する隊列。 (c)ピナレロ・ジャパン
ゲストとして参加したリオ五輪金メダリストのエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)ゲストとして参加したリオ五輪金メダリストのエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:So.Isobe頂上付近に雪をかぶったエトナ火山。シチリア島の象徴とも言える存在だ頂上付近に雪をかぶったエトナ火山。シチリア島の象徴とも言える存在だ (c)ピナレロ・ジャパンかのエトナ火山の麓でゆっくりと、しかし確実に標高を上げていくワインディングロードを車列は行く。登りに入ってすぐに気づいたのは、車体のカッチリ感が非常に強くなっていること。ヘッド部分の剛性はF8とさほど変わらないように感じるが、BB周辺がより硬くなり、ペダリングのダイレクトさが大幅に増しているのだ。

だからと言って、65.1までのDOGMAにあったゴチッとした雄々しい硬さ(を好む方も未だ多い)とはベクトルが違い、むしろ物理的な軽量性も相まって、非常に軽やかなフィーリング。もちろんピュアレーシングバイクであるため脚残りが良いとは決して言えないが、ゴリゴリと脚を削ってくるような雰囲気でもない。そして、スピードの伸びはどこまでも淀みない。

F8のデビュー時にも記したことだが、65.1に対してF8は「スムーズ」だった。それで言えば、F8に対してF10は「シャープ」と称すことができると思う。車体形状が大きく変わっていないことを踏まえれば、この変化はカーボン積層の妙によるものと推測されるが、とにかく身のこなしが軽いことに驚かされた。

ハンドリングに関しては、コーナリング中の挙動はF8同様に安定しており、それは60km/hを超えるような高速域でも変わらない。ただ恐らくフロントフォークの横剛性が増しているためか、F8に感じていた倒し始めの「タメ」が薄れ、ほんの僅かだけクイックになった。とは言っても扱いにくさは無く、ヘッドの剛性も相まって、ハードブレーキ中に路面の凹凸が大きくなっても不安を感じることはなかった。このあたりは伝統的なイタリアンバイクとも共通する性格だろう。

鋭さを増したフィーリング オールラウンダーとして薄れぬDOGMAらしさ

「より強く、軽く、そしてエアロに」という開発コンセプトが、まさにそのまま形になったのがこのF10だ。もちろん空力面に関しては資料を信じるほかないが、よりシャープになった乗り味は、まさにトップレーサーが、トップレースで勝つための機材そのものだ。

集団の先頭付近で走る筆者。ハイスピード域でもよどみはなく、どこまでもクリアに加速していく集団の先頭付近で走る筆者。ハイスピード域でもよどみはなく、どこまでもクリアに加速していく (c)ピナレロ・ジャパン
アタック合戦に加わるモスコン。彼へのインタビューは次章にて紹介しますアタック合戦に加わるモスコン。彼へのインタビューは次章にて紹介します (c)ピナレロ・ジャパン誤解を恐れずにF10の方向性を表すのであれば、「物凄く洗練された65.1」と言えるかと思う。そして、クリス・フルームがツール・ド・フランスの山場で使ったF8の山岳用軽量バージョン「X-Light」と比べれば、ずっと乗りやすい。

乗りやすく優等生的な性格のF8に比べれば、F10は少々踏み味が硬く、魅力を引き出すにはペダリングスキルを身につけておいたほうが良いと思う。しかし完全プロ用のX-Lightが究極に「そちら寄り」の味付けであることを踏まえると、DOGMAにとってF10の味付けはまさに正統進化といえるだろう。

もちろん、F10の本領発揮ゾーンはパワーが求められる高速域になってから。ライド中にはアタック合戦となる場面もあったが、誰かに飛びつくような場面でも、パンッと乾いたフィーリングで加速に繋げてくれる。その性格はF8よりも確実に研ぎ澄まされていて、どんなに負荷をかけた状態でも「芯」の強さが目立つものだった。

そしてDOGMAを語る上で大切なこと。それが、このバイクが「オールラウンダー」であることだ。先代からエアロを積極的に取り入れてきているが、あくまでエアロ一辺倒ではない。山岳からスプリント、クラシックレースまで全て1車種でこなしてきた、伝統的なDOGMAイズムはF10になっても全く薄れてはいない。それは試乗してすぐに馴染んめる「乗りやすい」点からも明らかであるし、シチリアのワインディングコースで乗り込むほどにその感覚は強く、大きなものになっていった。

「いいね。すごく軽い」。今初めてF10に乗ったというジャンニ・モスコンは、走りながら感想を聞いた時にそう答えた。当然ながら私にはF10の限界を推し量ることは不可能だが、全力で踏み込んだ後の彼の笑顔こそが、F10の実力を如実にしていたように思う。


次章では、ゲストライダーとして招かれたジャンニ・モスコンに聞いたインプレッションと、ファウスト・ピナレロ氏が語る開発ストーリーを通じ、F10の本質と魅力をより深く紹介していく。



ピナレロの正規取扱店の中で、以下の4店舗にはすでにDOGMA F10が販売されている。関東、関西、九州のピナレロファンは一度足を運んでみると良いだろう。用意店舗は今後順次増えていく予定だという。

DOGMA F10 販売車設置店舗(2017年1月23日現在)

都道府県店名住所TEL
北海道サイクルショップ ナカムラSAPPORO札幌市中央区南4条西1丁目1-2 第87松井ビル011-532-9588
大阪シルベストサイクル梅田店大阪府大阪市北区梅田2-5-206-6344-3808
兵庫ヤマダサイクルセンター兵庫県神戸市中央区三宮町1-7-9078-331-2712
福岡ワイズロード福岡天神店福岡県福岡市中央区渡辺通4-9-25天神ロフト092-753-6910
提供:ピナレロ・ジャパン text:シクロワイアード編集部