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昨年Venge Viasと共にデビューしたスペシャライズド初のスキンスーツ「S-Works Evade GC Skinsuit」が遂に日本上陸。徹底的に空力に磨きをかけ、着心地にもこだわったタイム短縮の最終兵器を詳細解説。インプレッションと共に紹介する。

高速ロードレース用のエアロスキンスーツ、S-Works Evade GC

S-Works Evade GC スキンスーツを試すジャーナリスト。肩部分の空力とフィット感を高める工夫が凝らされているS-Works Evade GC スキンスーツを試すジャーナリスト。肩部分の空力とフィット感を高める工夫が凝らされている (c)specialized/Andy.Bokanev
ロードバイクにおける「エアロ」が一般に浸透してどれくらいの期間が経っただろうか。エアロロードバイクというカテゴリーはすでに定着しているし、フィッティングで空力面の効率を求めるホビーレーサーも増えてきた。しかし、ことウェアに関してエアロに注意を払っている方はまだまだ少ない、と私は思う。

乗車時における抵抗の80%は身体から生まれていることからも重要度は高く、それを裏付けるようにここ最近のエアロ系ウェアの進化には目を見張るものがある。グランツールの山岳ステージでもワンピースタイプのウェアが使用されている様子を見たことがある方も少なくないだろう。今回インプレッションを行ったS-Works Evade GC Skinsuitは、近年加熱するエアロウェア開発競争に一石を投じる、スペシャライズド初の製品版スキンスーツである。

生地表面の処理を変えてさりげなく入るSロゴ生地表面の処理を変えてさりげなく入るSロゴ 肩部分はディンプル加工が施された生地「Dimplex」を用い、シームレスに仕上げている肩部分はディンプル加工が施された生地「Dimplex」を用い、シームレスに仕上げている

前側は上下でセパレートしており、脱ぎ着と体温調整に役立ってくれる前側は上下でセパレートしており、脱ぎ着と体温調整に役立ってくれる 背中のポケットは薄いジェル系補給食を入れるのに最適な大きさ背中のポケットは薄いジェル系補給食を入れるのに最適な大きさ


このスキンスーツはVenge Vias、ホイール+タイヤ(ROVAL CLX 64+S-WORKS Turbo)、ヘルメット(EVADE)、シューズ(S-WORKS SUB 6)と共に5分を短縮(平均体格のライダーが40kmを走った場合)するトータルパッケージの一要素としてデビューしており、同社の風洞実験施設"WIN-TUNNEL(ウィン・トンネル)”でのテストでは、一般的なジャージとビブショーツの組み合わせに比べて-96秒削減という圧倒的な数値を叩き出している。

「GC」という名称からも理解できるが、このスキンスーツはTT用のみならず、前部分のみ上下でセパレートさせることで着脱や動きやすさ、通気性を向上させ、長時間のマスドレースでも快適に使えるようにしていることが特徴だ。背中には小さいながらも3つのポケットを装備しており、コンパクトな補給食程度なら持ち運びできる。

S-Works Evade GC Skinsuit(BLACK)S-Works Evade GC Skinsuit(BLACK) (c)specializedS-Works Evade GC Skinsuit(TEAM RED)S-Works Evade GC Skinsuit(TEAM RED) (c)specialized


空力に大きく影響する肩部分はゴルフボールと同じディンプル加工が施された生地「Dimplex」を使い、更に縫い目の無い特許出願中のシームレス構造を採用したことで、空力はもちろんのことフィット感、快適性が全て高い次元でまとめ上げられている。更に誰にもフィットするよう揃えられた11種類のサイズラインナップ(国内展開は5サイズ)、編み込み生地を脚部とバックパネルに使うことで、疲労を低減させる着圧効果を生んでいることも忘れてはならないポイントだ。

心地よいフィット感、タイム計測で浮かび上がるエアロ性能

スペシャライズド本社内の風洞「WIN-TUNNEL」でテストを受ける筆者スペシャライズド本社内の風洞「WIN-TUNNEL」でテストを受ける筆者 (c)specialized/Andy.Bokanev
筆者は昨年スペシャライズド本社で行われたVenge Viasのメディア発表会に参加し、幸運にもそこで採寸を経て配布されたS-Works Evade GC Skinsuitを長時間にわたって試すことができた。国内価格56,160円(税込)と非常に高価ではあるものの、率直な感想は、「機材として非常にアリ」、である。

まず何と言っても、スキンスーツと聞いて想像しがちな着苦しさが全く無いことに驚かされる。脚や腕を通す際こそシワが寄らないよう整えるのが一苦労だが、いざファスナーを上げても締め付けはほとんど苦しさを感じず、心地良い程度。製品を手に取ったときは「こんなに小さくて大丈夫かな?」と感じたが、下ハンドルを握るような深いポジションでもお腹部分にたるみは出ず、背中側が引っ張られる感覚も無い。生地の伸びが非常に良いことで緩くも、苦しくも無い絶妙に心地良いフィッティングを体験できた。

S-Works Evade GC Skinsuitについて解説を受けるジャーナリストたちS-Works Evade GC Skinsuitについて解説を受けるジャーナリストたち (c)specialized/Andy.Bokanev採寸をしてからフィッティングを行う。身体にぴったりと合うサイズ選びが肝になる採寸をしてからフィッティングを行う。身体にぴったりと合うサイズ選びが肝になる (c)specialized/Andy.Bokanev

アパレル開発ルームの一角に置かれていたミシン。ここから製品の雛形が作られていくアパレル開発ルームの一角に置かれていたミシン。ここから製品の雛形が作られていく (c)specialized/Andy.Bokanev縫い付けに使っている糸も特殊なものだという縫い付けに使っている糸も特殊なものだという (c)specialized/Andy.Bokanev


発表会の際は空力アドバンテージを体感できるよう、ジャーナリストは一人一人WIN-TUNNELで装備を変えて実験(詳細はこちら)を行ったが、どんなに強風になっても一切スキンスーツはバタつかず、特に首・肩部分の空気がツツーと綺麗に流れていくのを感じた。ワットを固定し19kmの個人TTを2回計測して通常装備との差を図るテストでは167秒短縮という驚きの数値が計測されたが、その中でS-Works Evade GC Skinsuitが果たした役割は少なくないと感じる。

また、もともとのサイズが非常に小さいことで、重量も軽い。Sサイズの実測でわずか193gであるため、特にヒルクライムのレースでは大きな武器になることは間違いない。試しにより全身の動きが求められるシクロクロスレースで使った際にも窮屈さは感じず、更にロングライドでもバックポケットが装備されているため、薄いジェル系の補給食であれば十分な量を確保することができた。生地が薄いため、汗に対する速乾性もかなり高い。

伸びが良いから深いポジションをとっても極めて快適。肩周りのバタつきは一切無い伸びが良いから深いポジションをとっても極めて快適。肩周りのバタつきは一切無い (c)Ryuta.Iwasaki/Specialized Japan
そう滅多に各社のエアロスーツを着比べる機会が無いため比較が難しいものの、この心地良い密着感、軽量さ、そしてエアロダイナミクスは、タイムトライアルはもちろん、ヒルクライム、ロードレースでも間違いなく大きな武器になる。

こんなペラペラなスキンスーツ1着で5.5万円オーバー?と高価に感じる方もいるだろうが(私も最初はそう感じた)、簡単にパフォーマンスを上げてくれるレース機材として捉えれば、こんなにもリーズナブルな製品を探す方が難しいように感じる。そういう観点で捉えれば、S-Works Evade GC Skinsuitのコストパフォーマンスは絶大だ。だからこそ、購入の際にはできる限り身体にフィットするようサイズ確認を大切にしたい。

Aeroiseverything(空力こそ全て)。そんなスペシャライズドのモットーをリアルに再現する、レーサーのための本気機材だ。

提供:スペシャライズド・ジャパン、製作:シクロワイアード編集部