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難関山岳から平坦、個人タイムトライアル、そしてハプニングまで、様々なドラマが巻き起こったツール・ド・フランス第2週。今回は、トッププロから愛されるDURA-ACEホイールについて焦点を当てていく。

あらゆるコースと選手の要望に応えるDURA-ACEホイール

アンドラ公国の1級山岳エンヴァリラ峠を皮切りに、横風スプリンターステージ、魔の山モンヴァントゥー、個人タイムトライアル、そしてジュラ山脈2連戦と熱戦が続いたツール・ド・フランス第2週。ありとあらゆるタイプのコースが現れ、シマノサポート選手たちはバリエーションに富むDURA-ACEホイールをコースに合わせて使用していた。

第8ステージ、超級山岳トゥールマレー峠でアタックしたティボー・ピノ(フランス、FDJ)は前後共にWH-9000-C50-TUを選択第8ステージ、超級山岳トゥールマレー峠でアタックしたティボー・ピノ(フランス、FDJ)は前後共にWH-9000-C50-TUを選択 photo:Kei Tsuji
超級山岳トゥールマレー峠の頂上に差し掛かるティボー・ピノ(フランス、FDJ)超級山岳トゥールマレー峠の頂上に差し掛かるティボー・ピノ(フランス、FDJ) photo:Kei Tsuji超級山岳グランコロンビエ峠を登る超級山岳グランコロンビエ峠を登る photo:TDWsport/Kei Tsuji


ツールで使用される9000系DURA-ACEホイールのラインナップは、リムハイト別に「WH-9000-C75」「WH-9000-C50」「WH-9000-C35」「WH-9000-C24」という4種類。末尾の数字がリムハイトを表しており、プロ選手が使用するのはチューブラーだが、C50とC35にはクリンチャーが、C24にはクリンチャーとチューブレス仕様が用意されており、計8種類がプロ・一般を問わず幅広いユーザーから愛されている。

例えばピレネーやジュラ山脈のような超級山岳では前後重量1,151gを実現したC24を、アップダウンを含むコースでは軽量性と空力を両立したC35を、スプリンターステージではエアロダイナミクスに優れるC50を、完全な平坦やタイムトライアルではC75を、というように、様々な状況に応じて選べることがDURA-ACEホイールの強み。ここにPROのディスクホイール、「TeXtream Carbon Disc」とバトンホイール「3-Spoke Wheel」を組み合わせれば、対応できないコースはもはや一切存在しない。

プロのレースではチューブラータイプのホイールが使用されるプロのレースではチューブラータイプのホイールが使用される photo:Makoto.AYANO
レース前は選手自らホイール回りのチェックを行うレース前は選手自らホイール回りのチェックを行う photo:Makoto.AYANOジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)もスプリントに備えWH-9000-C50-TUをチョイスジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)もスプリントに備えWH-9000-C50-TUをチョイス photo:Makoto.AYANO

BMCの選手間でも好みや役割にあわせてWH-9000-C35-TUと、WH-9000-C50-TUを使い分けるBMCの選手間でも好みや役割にあわせてWH-9000-C35-TUと、WH-9000-C50-TUを使い分ける photo:Makoto.AYANO
スタート直後に1級山岳を登り、頂上からは長い下りと平坦が続いた第10ステージでは、マイヨジョーヌのクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)は前輪にWH-9000-C24-TUを、後輪にWH-9000-C50-TUを装着。昨年は前後共にWH-9000-C24-TUやWH-9000-C35-TUを選択していたフルームだが、今年は前述した組み合わせを多く使用している。

また、同じ第10ステージでも、序盤から逃げを狙っていたマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)は前後ともに、よりスピード維持が行いやすいWH-9000-C50-TUを選択していた。同じコースであっても選手の狙いに応じてホイール選択の差が出ているのは興味深いポイントだ。

2周目の後半に入り、ようやく個人タイムトライアルステージが現れた。圧倒的なペースでステージ優勝を飾ったトム・デュムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)はフロントにWH-9000-C50-TUを、後ろにPRO TeXtream Carbon Discを選択。多くの選手達デュムランと同じような組み合わせを使用していた。

PRO 3-Spoke Wheelは、TeXtreamカーボンによって軽量性と強度の両立を実現しているPRO 3-Spoke Wheelは、TeXtreamカーボンによって軽量性と強度の両立を実現している photo:Makoto.AYANO
WH-9000-C75-TUをフロントに使う選手も多いWH-9000-C75-TUをフロントに使う選手も多い photo:Makoto.AYANO凸面状のディスクが採用されたPRO TeXtream Carbon Disc。シマノサポートチームの選手のスタンダードかと思わせるほど使用率が高い凸面状のディスクが採用されたPRO TeXtream Carbon Disc。シマノサポートチームの選手のスタンダードかと思わせるほど使用率が高い photo:Makoto.AYANO


また、タイムトライアルの世界王者ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)やローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)らは前輪に3-Spoke Wheelを選んでいたことも面白い。更にフルームは後述するように、前輪にWH-R9100-C40-TUをセットしていた。

スプリントレースとなった第14ステージはWH-9000-C50-TUの使用率が高めだった。第14ステージで逃げを試みたジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)のステージ敢闘賞と、復調の兆しを見せ始めたジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)のステージ4位を支えている。

アダム・イェーツは第11ステージでWH-9000-C35-TUを使用。勝利に貢献したアダム・イェーツは第11ステージでWH-9000-C35-TUを使用。勝利に貢献した photo:Makoto.AYANO
マイヨヴェールを着たアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)がラセ・ドゥ・グランコロンビエ峠を登るマイヨヴェールを着たアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)がラセ・ドゥ・グランコロンビエ峠を登る photo:Makoto.AYANOトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)は山岳でもWH-9000-C50-TUを使用するトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)は山岳でもWH-9000-C50-TUを使用する photo:Makoto.AYANO


ジュラ山脈を舞台とした第15ステージでは、純粋な軽量ホイールWH-9000-C24-TUを始め、WH-9000-C35-TU、WH-9000-C50-TUと選手によって選択するリムハイトが様々。ヒルクライムを得意とするティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)はWH-9000-C24-TUを、逃げを狙ったセバスティアン・ライヘンバッハ(スイス、FDJ)はWH-9000-C35-TUを使用。WH-9000-C50-TUは主にスプリンター勢によって使われていた。足切りにを回避するべく、登りをマイペースで、下りと平坦を飛ばすグルペット特有の動きを考慮したものなのだろうか。

フルームによって実戦投入! DURA-ACE R9100ホイール

休息日にWH-R9100-C40-TUを使うクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)。実際に使用される場面は世界初のこととなった休息日にWH-R9100-C40-TUを使うクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)。実際に使用される場面は世界初のこととなった (c)CorVos
クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)はシマノの新型ホイールを使用クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)はシマノの新型ホイールを使用 photo:Makoto.AYANOWH-R9100-C40-TUホイールを使って走るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)WH-R9100-C40-TUホイールを使って走るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:TDWsport/Kei Tsuji

そしてツール開幕直前に発表された次世代のDURA-ACE R9100シリーズのホイールが、遂に実戦投入が行われたことも大きな話題。休息日でのテスト使用を経て、マイヨジョーヌを着るフルームによって第12ステージのモンバントゥー決戦でWH-R9100-C40-TUホイールが使用されたのだ。

実戦では初となる新型デュラエースの実戦投入であり、その見慣れないフォルムはファンやメディアの注目を集めた。大きなアクシデントによって話題の盛り上がりに水を差されてしまったが、フルームは長い登りが現れる個人TTでも、前輪にWH-R9100-C40-TUホイールを使用していた。勝負どころで使用していることころを見るに、より大きなメリットを感じているのだろう。コンポーネントの投入と共に、これからの活躍が楽しみでならない。

レースは第3週へ 熾烈なるステージ優勝と総合争い

ツール開幕から2週間を経た現在、マイヨジョーヌをキープしているのは変わらず3勝目を狙うフルーム。アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)のリタイアや、目下最大のライバルであるナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)の伸び悩みによって、総合優勝に向けて順調に駒を進めている状態だ。

第2週目もシマノサポート選手の活躍が目立つ形となり、皮切りとなった第10ステージでは序盤から逃げグループに入り、最後のスプリントで世界王者ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)を下したマシューズがまず1勝を収める。

サガンとボアッソンハーゲンを振り切ったマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)が勝利サガンとボアッソンハーゲンを振り切ったマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)が勝利 photo:Kei Tsuji
翌11ステージは大きな山岳が設定されていないため、スプリンターステージと目されていた。しかし何が起こるか誰にも分からないのがツール・ド・フランス。残り12kmを残したところで集団からフルームとゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)、サガンら4名が飛び出し、ゴールまで逃げ切るサプライズな展開に。この際にフルームは総合ライバル勢との差を開くことに成功し、総合優勝への駒を一手進めることになった。

第12ステージのモンヴァントゥー決戦は思わぬ形で水を差されてしまったが、翌13ステージの個人タイムトライアルでは、シマノとPROを使用するトム・デュムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)が他を寄せ付けない圧倒的な走りで狙い通りにステージ優勝を達成。この際に新型ホイールを投入したマイヨジョーヌのフルームはステージ2位に入り、ライバル勢との差を更に広げることに成功している。

トップタイムを叩きだしたトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)トップタイムを叩きだしたトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) photo:Makoto.AYANO
総合3位と新人賞首位のアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)総合3位と新人賞首位のアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) photo:TDWsport/Kei Tsuji総合2位にジャンプアップしたバウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)総合2位にジャンプアップしたバウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) photo:Makoto.AYANO


第2週の週末は比較的に穏やかに推移した。第15ステージのジュラ山脈では総合首位のフルームに対してライバルチームが攻撃を仕掛けたものの、圧倒的なチーム力を誇るチームスカイの前に沈黙せざるを得なかった。

総合首位のフルームに続いて、好調のバウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が総合2位に浮上し、アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)は総合3位と、変わらず新人賞マイヨブランをキープ中。総合表彰ワンツースリーはDURA-ACEを使用する選手が独占している状態だ。ライバル勢が伸び悩む中、このままフルームが例年通り順当に駒を進めることは想像に難くない。

マイヨジョーヌを着て休息日を迎えるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)マイヨジョーヌを着て休息日を迎えるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:TDWsport/Kei Tsuji
新人賞ジャージのマイヨブランを着たアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)新人賞ジャージのマイヨブランを着たアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) photo:Makoto.AYANO


選手たちの活躍を追ってきた本レポートも次回が最終回。フィニッシュのパリ・シャンゼリゼまでは残り1週間。アプルス山脈でのシマノサポートチームの活躍に注目だ。

提供:シマノ 制作:シクロワイアード編集部