ローター初のロード用コンポーネントUNO。各パーツの解説に続き、本ページではインプレッションをお届け。ブエルタ・ア・エスパーニャにも登場する1級山岳プエルト・デラ・モルクエラを舞台に、UNOと油圧制御が持つメリットを体感した。

ブエルタ・ア・エスパーニャの1級山岳でUNOをテスト

昨年のユーロバイクにて展示されたUNOのプロトタイプ昨年のユーロバイクにて展示されたUNOのプロトタイプ 筆者はローターの製品を愛用しており、Q-Ringsと3Dクランクは今や手放せないアイテムとなっている。そして、昨年のユーロバイクでUNOのプロトタイプに触れる機会があったため、その製品版には非常に興味を持っていた。

ブレーキの制動力に関しては圧倒的な優位が証明されている油圧システムだが、シフトに関してはどのようなメリットをもたらすのか。これが今回のインプレッションにおける最重要ポイントだ。加えて個人的には、プロトタイプで重く感じた変速操作がどの程度改善されているのかにも注目した。

UNOのテストライドの舞台となったのは、スペインの首都マドリードの北東部に位置する山岳地帯。用意されたコースは約70kmほど。この日のハイライトはブエルタ・ア・エスパーニャにも頻繁に登場し、昨年大会でも選手達が登った1級山岳プエルト・デラ・モルクエラの登りだ。距離は8.9kmで、平均斜度は6%。UNOの性能を体感すべく、試乗車を駆ったジャーナリストがコースに飛び出していく。

筆者に用意されたテストバイクはサーヴェロR3のリムブレーキ仕様筆者に用意されたテストバイクはサーヴェロR3のリムブレーキ仕様 テストライドには、世界各国のジャーナリストに加え、2008年のツール覇者であるカルロス・サストレ氏(左端)も参加したテストライドには、世界各国のジャーナリストに加え、2008年のツール覇者であるカルロス・サストレ氏(左端)も参加した photo:ROTOR

マドリード近郊の山岳地帯を舞台に開催されたテストライドマドリード近郊の山岳地帯を舞台に開催されたテストライド photo:ROTOR
今回筆者が使用したテストバイクは、ROTORと関係深いサーヴェロのオールラウンドバイク、R3。必然的にブレーキはリムブレーキタイプのマグラRT8をベースとしたキャリパーがセットされ、ホイールはレイノルズのカーボンクリンチャー。クランクセットは左右個別にパワー計測が可能なクランク式パワーメーター「2INPOWER」に、楕円チェーンリングQ-Ringsの組み合わせであった。なおスプロケットはシマノCS-6800、チェーンはDLCコーティングが施されていないKMCのX11SLだ。

がっちりと握り込めるレバー、自然な操作感

UNOの姿を見て「レバーのブラケットが大きい」と感じた方も少なくないと思う。確かに他に類を見ないほど大ぶりで、コンパクトなシマノのDi2ブラケットと比較すれば、その差は歴然だ。特に欧米人と比較して手の小さい日本人ライダーの中には、漠然と小さなブラケットの方が良いと言う考え方も一部にあり、筆者自信の考えも同様だった。しかし、今回UNOを使ったことで、その考えを改めさせられることになる。

1級山岳「プエルト・デラ・モルクエラ」へのアプローチ1級山岳「プエルト・デラ・モルクエラ」へのアプローチ ハイペースで登りをこなすジャーナリストたちハイペースで登りをこなすジャーナリストたち photo:ROTOR

ライド序盤こそ握りの大きさに違和感を感じていた筆者だが、あっという間に慣れてしまったのだ。それと言うのも、ブラケット胴回りの寸法が絶妙で、手との隙間が生じないから。加えて、指が太い筆者にとっては、中指から小指がレバーとハンドルの間に収まることも好ましく感じる。

リザーバータンクやマスターシリンダーを内蔵する部分も良くフィットするため、ブラケットポジションでのダウンヒルでも非常に安心感がある。特にダンシング時の握りやすさは特筆すべきもので、小さなブラケットにはないメリットがあるように思う。

UNOの性能を体感する筆者UNOの性能を体感する筆者 photo:ROTOR
一方でブレーキレバーはハンドルのドロップ部分と距離が近いため、手が小さな方でも使いやすいように感じる。さらにリーチアジャスト機能が設けられているため、ユーザーが好みにカスタマイズすることも。UNOを試して「レバーが遠い」と感じる方は少ないだろう。

と言うように意外な好発見があったUNOのブラケットだが、使い勝手を更に高めるべく、内部のリザーバータンクなどを覆うプラスチック製カバーの寸法を小さくしたものをオプションとして用意する予定があると言う。もし実際にリリースされるのであれば、他ブランドには無い利点となるだろう。

正確なシフティング

まず結論から述べると、油圧式変速最大のメリットとは、他のコンポーネントにはない正確無比なディレイラーの動きにあると言える。ディレイラー側に配置されたインデックス機構を油圧で動かしているため、ワイヤーの伸びによるごく僅かな遊びが生じず、狙ったスプロケットに対して高い精度でチェーンを移動させてくれるのだ。加えて、ワイヤーの経年劣化や調整のズレといったトラブルも発生率が低いことで、良好な状態を長く保持できるという長所もある。

操作方法は、スラムのDoubleTapレバーと共通。一本のレバーでシフトアップもシフトダウンもできる。シフト動作もブラケットをしっかりと握ったまま難なく行うことができ、シフトを奥に押し込む際もブラケットを持ち替える必要がない。フロントのトリム機能はカンパニョーロのように、シフトアップ/シフトダウン時どちらにも有効だ。

UNOが取り付けられたテストバイクUNOが取り付けられたテストバイク 見た目に大きいレバーだが、心地よく握ることができる見た目に大きいレバーだが、心地よく握ることができる

油圧を使っているためかディレイラー動作時のフィーリングは、機械式と比べれば角のない動きと言える。シフトレバーのクリック感はデュラエース比較でやや重いレベルまで仕上がっており、何ら不満が生まれることはない。ユーロバイクで触ったプロトタイプはシフトダウン時の変速操作がやたらと重かったが、製品版では劇的と言えるほどに改良されていたことも触れておきたい。僅か半年の間に大きな変化がもたらされていたのだ。

機械式コンポーネントではリアに対してフロントの操作が重いという構造上の性格があるものの、UNOでは油圧を用いたことで前後差がほぼ統一されていたこともユニークだった。

実際に使って印象に残ったのは、「良い意味でごく普通」の使い勝手と言うことだ。もちろんメンテナンスに関しては専門知識を要するのだが、実際にフィールドに持ち出してみれば、その完成度の高さに驚くことになった。

コントローラブルなブレーキ

昨年のブエルタ・ア・エスパーニャに登場した1級山岳「プエルト・デラ・モルクエラ」の頂上にて(4月だというのに気温0℃)昨年のブエルタ・ア・エスパーニャに登場した1級山岳「プエルト・デラ・モルクエラ」の頂上にて(4月だというのに気温0℃) 今回使用したリムブレーキは、良い意味で使いやすいものだった。油圧だけに制動力の立ち上がりが早い、いわゆる「カックンブレーキ」かと思ったが、どちらかと言えばデュラエース(BR-9000)よりも効き始めはマイルドな印象だ。もちろん握り込むごとにブレーキの効きは強くなるが、急な制動力変化が無いために、ライドをスタートしてすぐ慣れてしまったほどで、扱いやすい。

開発陣が「コントロール性を意識した」と言う通り、コーナー毎のスピード調整も行いやすいため、走り全体を通してもギクシャクすることがない。当たり前ではあるが、80km/hに迫るダウンヒルでも安心して使うことが出来、3大コンポーネントブランドのトップレンジと比較しても引けは感じなかった。筆者は試すことはできなかったが、ディスクブレーキもジャーナリストたちから好評を得ており、「既存のコンポーネントを超えるコントロール性」という意見も聞かれた。

「UNOは真っ当なコンポだった」

油圧を用いた変速システムや、軽量マニアが喜びそうな強烈なインパクトを残すリアディレイラーのルックスなど、奇抜な印象を持たせるUNOだが、実際に使ってみると、シマノ、カンパニョーロ、スラムに続く第4のコンポーネントとして、非常に扱いやすい至極真っ当な製品であった。これならば異端児扱いされることもなく自転車界に浸透していくだろうし、トッププロ選手がテストしてきた実績は、レース機材としての価値の証明にも繋がる。

そして何より、筆者が昨年のユーロバイクで触ったプロトタイプから、僅か半年という短期間にライバルブランドと対等に戦えるまで性能を引き上げてきたローターの開発力や技術力には改めて驚かされた。

開発者インタビュー:エンジニアに聞く、第4のコンポーネント

本ページの最後に、プレゼンテーションの場で行ったローター本社スタッフへのインタビューを紹介したい。エンジニアのダヴィッド・マルティネス氏と、マーケティングスタッフのウェンディー・ブーハー氏にUNOについて聞いた。

UNOの開発に深く携わったエンジニアのダヴィッド・マルティネス氏UNOの開発に深く携わったエンジニアのダヴィッド・マルティネス氏
UNO開発のきっかけは?

コンポーネント開発は自然な流れでした。私達が生み出した楕円チェーンリング「Q-Rings」や、3Dシリーズを始めとしたクランクは多くのサイクリストに受け入れられ、ローターを象徴する製品となりました。クランクセットが存在するのだから、次はコンポーネント。そのように進むのはとてもナチュラルなことだったのです。

開発過程で製造されたUNOのプロトタイプたち開発過程で製造されたUNOのプロトタイプたち FDも様々な形状や構造が検討されたFDも様々な形状や構造が検討された 「いくつかの点において、プロライダーはとても重要なフィードバックをもたらしてくれた」「いくつかの点において、プロライダーはとても重要なフィードバックをもたらしてくれた」 photo:ROTOR油圧式を採用した理由はなぜでしょうか?

実を言うと、私達は6年前に機械式のフルコンポーネントの開発をスタートさせました。ただ、ライバルブランドが多くの特許を持ち、既存の方式では改良の余地が極めて小さいということが、開発の初期段階で判明したのです。そういった背景からワイヤーの摩擦抵抗がなく、メンテナンス頻度が低いといった特有のメリットを持つ「油圧制御」を選択しました。

付け加えるとディレイラーにインデックス機構を搭載するというアイディアも、完全なるローターのオリジナルです。これは機械式コンポーネントを開発しようとしていた段階から取り入れていました。

そうすることでどのようなメリットがあるのでしょう?

従来の機械式コンポーネントは変速レバーにインデックス機構を取り入れていましたが、結局はディレイラーとの間をワイヤーで繋ぐため、ワイヤーの伸びによって私達が目指す「正確な変速動作」の妨げになるということが判明しました。そこで伸び縮みの無いオイルを介し、ディレイラー側に配置したインデックス機構を動かすことで正確性を向上させました。

実戦テストは行いましたか?

昨年の11月からUCIワールドチームのディメンションデータや、女子トップチームのサーヴェロ・ビグラにUNOを供給し、レースやトレーニングで酷使してもらいました。そして、いくつかの点において、とても重要なフィードバックをもたらしてくれました。

その中でも最も重要だったのが、リムブレーキホイールのリム幅です。現在はワイドリムが主流になっていますが、レースの現場においてはリム幅の狭いホイールをニュートラルサポートから渡されることもあります。そこで、様々なリム幅のホイールに対応できるように、リムブレーキ用のブレーキにはアジャスターを設けたのです。

昨年、ユーロバイクで触った時よりも大幅にシフトに必要な力が軽減されており、とても驚きました。

ユーロバイクで展示した製品はプロトタイプということもあり、決して完成度が高いと言えるものではありませんでした。スプリングやシール類をはじめ様々な箇所に改良を施しています。

ロードコンポーネントを発表しましたが、今後の展開は?

まずはトライアスロンやシクロクロスといったロードと近いジャンルに向けた、UNOの派生モデルを開発することになるでしょう。MTB用コンポーネントを作るとしたらその後ですね。UNOと同様にフル油圧制御のMTBが登場したならば、マウンテンバイカーに広く受け入れられるはずです。MTBに乗る方であれば、油圧の機能性と信頼性を熟知しているでしょうから。

私達ローターでは、常に様々なプロダクトの開発と改良を行っています。ここ最近のことを例に取ると、UNOと同時に「2INPOWER」の開発も進行させていました。また新しいプロダクトがお披露目できる段階になったら、皆さんにお知らせします。期待していて下さい。

「UNOは性能を突き詰めた真っ当なコンポーネントだった」「UNOは性能を突き詰めた真っ当なコンポーネントだった」 photo:ROTOR


スペイン・マドリードにて開催されたローターのメディア向けイベントで発表されたのは「UNO」のみにあらず。次編では、左右独立して計測を行うことのできる新型パワーメーター「2INPOWER」を紹介する。加えて、ローター本社工場で行われた工場見学の模様もお届けしたい。

編集:シクロワイアード 提供:ダイアテック