ハイセンスなサイクリストを中心に、その注目度が高まってきているファブリックのサドル。シンプルなデザインに機能性を兼ね備える「Scoop」を元プロライダーの山本和弘さんがインプレッション。CW編集部・綾野による「Scoop」と軽量フルカーボンモデル「ALM」の乗り比べインプレとあわせて紹介しよう。

「快適性と耐久性の高バランスがScoopの特徴 乗り心地の良いサドルを探している方に是非」
山本和弘さん(キャノンデール・ジャパン)

MTB、シクロクロス、ロードとジャンルを問わず活躍し、現在はキャノンデール・ジャパンに勤務する山本和弘さんMTB、シクロクロス、ロードとジャンルを問わず活躍し、現在はキャノンデール・ジャパンに勤務する山本和弘さん Slateを初め、キャノンデールの今季モデルの多くにファブリックのサドルが標準装備されるSlateを初め、キャノンデールの今季モデルの多くにファブリックのサドルが標準装備される photo:Naoki.Yasuokaファブリックサドルの各モデルに共通することなのですが、その中でも特に乗り心地の良いのがScoopですね。すごく良くしなるため、振動や衝撃があまり身体に伝わってきません。一方で、柔らかすぎるということもなく、脚の動きにあわせて適度に左右に動いてくれます。単にクッション性が高いだけではなく、スムーズにペダリングすることができるのです。

毎日MTBで往復65kmの通勤ライドをしており、リュックサックを背負うため、お尻に大きな負担がかかり、それまでは痛むこともありました。しかし、Scoopに替えてからは、お尻が痛むことはなくなりました。今使用しているサドルの快適性に不満がある方はぜひ1度Scoopを試してみて欲してみて下さい。中でも私と同じように通勤通学で重い荷物を運ぶという方や、体重のある方にオススメですね。

ScoopはFlat、Shallow、Radiusという3つの座面形状がラインアップされていますが、その中で最も気に入っているのがRadiusです。実はサイジングツールによると私に最適なのはShallowで、こちらも実際に試してみて快適でした。身長と手首の長さによるフィッティングの精度は実用性充分な程に信頼性が高く、サドル選びに困っている方なら、是非とも一度試して頂きたいですね。もちろん、私の様に好みで座面形状を決めるというのもアリです。

セッティングについても色々と探っているところなのですが、Radiusはサドルを横から見た際のRが大きいため、中央付近がフラットになる様(=やや前下り)に取り付けるとより快適と感じました。また、テール部分のせり上がりがより大きくなるため、前傾が取りやすく、どっしりと座って踏み込んだ時のホールド感も高くなった印象です。

「ファブリックサドルの各モデルに共通することなのですが、その中でも特に乗り心地の良いのがScoop」「ファブリックサドルの各モデルに共通することなのですが、その中でも特に乗り心地の良いのがScoop」
横から見た際のRが大きい「Radius」。3種類展開される座面形状の中で、最もトラディショナルで、アップライトなポジションに適する横から見た際のRが大きい「Radius」。3種類展開される座面形状の中で、最もトラディショナルで、アップライトなポジションに適する 「デザインがとてもシンプルで飽きづらい」「デザインがとてもシンプルで飽きづらい」


快適性と同じく、個人的に最大の特徴と感じているのが耐久性の高さです。とてもハードな使い方をしても、表皮がほとんど痛むことがありません。梅雨の雨の中でガンガン乗って、泥を巻き上げるようなところを走り、総走行距離も長いとなれば、普通なら表皮が擦れるはずですが、Scoopの場合はダメージをほとんど受けません。

加えて、快適性が高い一方で、ベース、レール、内部のポリウレタンフォームのへたりも少なく、長くハードに使っても、新品の時と乗り心地が同等なのです。汚れたら、ボトルの水をかけて、さっと洗い流すだけで綺麗にできるというメンテナンス性の高さも気に入ってます。

そして、1人の自転車乗りとして、スタイリッシュなデザインも気に入っています。デザインがとてもシンプルで飽づらく、個人的には愛着が湧いてきますね。加えて、カラーバリエーションが豊富で、よりバイクとの一体感が出ますね。Scoopほどカラーを選べるサドルは他にありませんから、カラーカスタム用にもオススメです。

もっとも手頃で、私も使用しているクロモリレール仕様は、快適性と耐久性に優れ、デザイン性も高いにもかかわらず8,000円と、非常にコストパフォーマンスが高い印象です。軽量サドルに比べると、少し重量を感じるかもしれませんが、それ以上にメリットが大きく、これからもずっと使い続けていきたいですね。

「座り心地のScoop、デザインのALM 両方気に入った」綾野 真(CW編集部)

Scoopのカーボンレール採用モデル。この秋から国内でも展開されるScoopのカーボンレール採用モデル。この秋から国内でも展開される
CW編集部・綾野はジャイアント PROPELにfabric Scoopをセットして愛用CW編集部・綾野はジャイアント PROPELにfabric Scoopをセットして愛用 ScoopとALM ULTIMATEの2種を2ヶ月ほどテスト使用した。まずScoopは3つの座面形状から選べるが、後部がもっとも丸みを帯び、Rの大きな「Radius」をチョイス。アップライトなライディングポジションに適しているとのことだ。

乗り始めからお尻にしっくりとフィットする。あまりに座り心地が良いので、使用感についてはそれ以上書くことがないくらいの快適さだ。しっとりした触感のアッパー素材も今までにないフィーリングで、バイクパンツとの相性も良く、滑らず、パンツ側のライクラ生地へのダメージも少ない感じがする。

Scoopはカーボンレール採用の軽量モデルをロードに、クロモリレールのタフなモデルをマウンテンバイクに装着して使い分けている。カーボンレールモデルは軽量ながらパッドのボリュームも十分で、ロングライドには極上の座り心地で、長距離に対して「痛みが出るかも」といった不安感を一切感じることがない。MTBでの使用も具合がよく、ロードよりもアップライトなXCポジションに「Radius」のカーブはベストな感じ。天然皮革ではないアッパーは土がついて汚れても洗剤とブラシを使用してのゴシゴシ洗いが心置きなく可能だ。

最低限の快適さを求めたい、しかし軽さを極めたいというヒルクライムレーサーにオススメなALM最低限の快適さを求めたい、しかし軽さを極めたいというヒルクライムレーサーにオススメなALM
Scoopの調子が良いから、フルカーボンサドルのALM ULTIMATEを手にした時の不安感も少なかった。表面に貼り付けられたバッファロー革とクッション材はボリュームが少なく「アンコ」も薄いが、座面のカーブが生理的に安心できる感じ。また、手で押して感じるベース全体のしなりが大きいため、昔の革サドルのテンション構造のよう。3Dプリンターで成型されたというベースとレールの一体構造は、積極的にしなるラインを描いているからか、果たして座った時の印象もその通りのもの。

「ALMの快適性の高さは、フルカーボンサドルとしては珍しい存在だ」「ALMの快適性の高さは、フルカーボンサドルとしては珍しい存在だ」 サドルバッグを装着するのをためらわせる程に美しい仕上げサドルバッグを装着するのをためらわせる程に美しい仕上げ ALMにはScoopほどの快適さはないが、ハンモック的な動きで快適さを生んでいる感じ。必要最低限のしなりとフィット感は確保されているので、レーシングサドルとしては合格だ。ヒルクライムや短距離ロードレース用としてなら軽さが武器になるだろう。

ちなみにグランフォンド大会の実走取材時にALMを使用してみたが、最後までお尻に痛みを感じることなく走り切れた。この手の超軽量カーボンサドルとしては珍しい存在だ。最低限の快適さを求めたい、しかし軽さを極めたいというヒルクライムレーサーにはぜひおすすめしたい。ただしロングライドやツーリング的な使用ならScoopのほうが当然ベターチョイスだ。自分の場合はヒルクライムをとくに指向していないので、むしろ短い距離を速く走るときに乗るエアロ系ロードバイクにALMを取り付けたいと思っている。

最後になるが、テストとして使い始めたScoopとALM ULTIMATEは結局合計3つがマイサドルのラインナップに加わった。最近の愛車のジャイアント PROPEL Advanced SL(上に挙げた写真)にはScoopをセットしている。2015モデルのPROPELのホワイトカラーは数あるバイクのなかでも個人的にベストデザイン賞をあげたいぐらい気に入って購入したもの(つまり一目惚れ買い)。

この無地でシンプルなフレームデザインにバッチリ組み合わせることができたのがベースカラーがホワイトのScoop。ブランド的にもグラフィック的にもフレームと喧嘩しないピュアなデザインが気に入っている。長距離を乗らない時期にはALMに交換して、よりデザインで見せたいとも思っている。その際はサドルバッグも付けたくない。fabricのサドルは取り付けるバイクのブランドやフレームデザインを選ばないことも強みだと思う。

シンプルなデザインに機能性を兼ね備える「ALM」と「Scoop」シンプルなデザインに機能性を兼ね備える「ALM」と「Scoop」
提供:ファブリック・ジャパン 制作:シクロワイアード