低価格でパワートレーニングを始められることで、熱い注目を浴びるステージズパワー。今回は前回に引き続き、実際に長期間にわたって使用してみたレポートをお届けしよう。

取り付けや校正作業もスマートなステージズパワー

編集部に届いたステージズパワー セットアップから実走までインプレッションを行った編集部に届いたステージズパワー セットアップから実走までインプレッションを行った
前回記事にて、ステージズが持つ他のパワーメーターへの優位性や、特長といったものはご理解いただけたかと思う。「精度」「軽量性」「信頼性」という要素を兼ね備え、しかも他のライバルに比べるとグッと抑えられた価格を持っているステージズパワー。

しかし、本当にそんなうまい話が世の中にあるのか?安いのには理由があるのでは?と疑ってしまう人もいるだろう。そんな慎重なあなたのために、編集部では実際に1か月にわたる長期テストを行った。組み付けから実際のライド、スマートフォンとの連携までステージズパワーの持つ魅力を味わってみたインプレッション、2年ほど前からパワーメーターを使用している編集部・安岡がお届けしよう。

取り付けは通常のクランクと同じ手順で行う取り付けは通常のクランクと同じ手順で行う クランクを6時の方向にして、校正を行うクランクを6時の方向にして、校正を行う さて、以前からパワーメーターを使用してきて、パワーが表示されないとなんだか不安、という程度にはパワーメーターに慣れ親しんだ私だが、使用しているのがハブ式のパワーメーターであったこともあり、ホイールの選択肢が大幅に狭められてしまうということには悩まされていた。

かといって、従来のスパイダーアーム計測式のパワーメーターは高価で手が出ないな、と思っていたところに現れたステージズパワー。見た目にも非常にすっきりしていて好感がもてるし、なんといってもかなり手が届きやすい価格に心を揺さぶられていた。チームスカイが使用しているというのも、信頼性という点ではやはり大きなプラスポイントだ。

といういきさつで、ぜひ使ってみたいと思っていたところに今回のインプレッションの機会となった。まずは取り付けである。これは非常に簡単で、通常のクランクの左アームを交換するだけ。もちろん、緩むと大変な部分ではあるがトルク管理さえしっかりとできるのであれば、自宅でも交換作業は行うことが可能。

パワーを計算するのに必要な角速度(=ケイデンス)を測定するのに加速度センサーを用いているため、フレーム側にマグネットやセンサーを取り付ける必要がなく、面倒な位置決め作業などが不要なので、極めて簡単な作業で済むのだ。なので、取り付けに関しては、数あるパワーメーターの中でも最も簡単な部類に入るだろう。

BluetoothもしくはANT+でスマートフォンと接続できるBluetoothもしくはANT+でスマートフォンと接続できる メイン画面では計測結果が表示されるメイン画面では計測結果が表示される 校正作業もお手の物校正作業もお手の物


取り付けが完了すれば、ゼロオフセットを行う必要があるが、この工程も至って簡単なもの。6時の方向に左クランクを合わせた状態で、ペアリングしたサイクルコンピューターから校正の操作をするだけ。ちなみに、ステージズパワーには専用のスマートフォンアプリも用意されており、ゼロオフセットはスマートフォンからも実施できる。

小さなサイクルコンピューターよりも操作しやすいため、校正作業はスマートフォンで行うのも良いだろう。他にもファームウェアのアップデートなどもスマートフォンから簡単に行うことができるほか、パワーやケイデンスもアプリ上で表示できるようになっている。

ステージズパワー実走インプレッション

さて、それでは実走したインプレッションをお届けしよう。今回、1か月ほどにわたって乗り込んでみた。日々の通勤をはじめ、沖縄での実走取材などを合わせて、約1,000kmを乗り込んだ。その中で分かったことは、ステージズパワーが謳う「精度」「軽量性」「信頼性」という3つの要素が非常に高いレベルにあるということ。

パワーメーターとして申し分の無い性能を持つステージズパワーパワーメーターとして申し分の無い性能を持つステージズパワー
まずはパワーメーターでもっとも重要になる「精度」と言うファクターについて。これまで使用してきたパワーメーターとは大きく計測方式も異なることと、片足のみの出力からの計算という方式ということもあり、実をいうとそこまで精度は高くないだろうな、と覚悟して使い始めた。

しかし、その予想はすぐに裏切られることとなった。まずは、これまで使ってきたパワーメーターとの差がどれだけあるのかを検証するために、2つのパワーメーターを併用して同時に使用してみたのだが、走行中に表示される数値はほとんど変わらず。ライド終了後にデータをダウンロードしたところ、細かな数値のばらつきは見られるものの、ほとんど同じ数値を示していた。

ただ、左クランクのみの計測方式のため、わざと左足だけに力を入れたり抜いたりするようなペダリングだと、極端に数値が高く出たり低く出たりすることは確かだ。しかし実際の使用状況でそんな乗り方をするようなシチュエーションはほぼないだろう。普通に使っている分には他のパワーメーターと変わらない数値を示してくれる。

濃い赤線がステージズパワー、薄い赤線がハブ式パワーメーターの数値 ほぼ同じ傾向を示している濃い赤線がステージズパワー、薄い赤線がハブ式パワーメーターの数値 ほぼ同じ傾向を示している
これはつまり、これまで他のパワーメーターを使っていた人がステージズパワーに乗り換えてもほぼ違和感なくトレーニングに励めるということである。私も、最初はハブ式パワーメーターと併用していたが、ステージズの数値が信頼できると感じてからは、ステージズのみでの運用に切り替えたが、それまでに蓄積してきたデータとの整合性もあり、2台目としても十分な精度があることが確認できた。

「軽量性」に関しては、重量増加が20g程度ということもあり、クランク交換によって重みを感じるようなことはよほど鋭敏な感覚を持っている人でないと難しいだろう。少なくとも、私は20gの重量増によるデメリットは一切感じ取ることができなかった。

裏側のセンサーも小さく、装着していることは気にならない裏側のセンサーも小さく、装着していることは気にならない
ステージズパワーのロゴシールが貼られているステージズパワーのロゴシールが貼られている
非常に薄い本体非常に薄い本体

そして「信頼性」という点については、1,000km程度の距離では一度も動作不良などを起こすこともなく、ストレスフリーに動いてくれた。何度か雨天での走行や、水を使用する洗車なども行ったが、内部に水分が侵入した形跡は皆無。IPX7規格を取得しているというのは伊達では無いということだ。

流石に落車などはしていないため耐衝撃性については未知数だが、クランクの内側という設置場所は安心感がある。レースでコーナーの立ち上がりにペダルを路面にヒットさせてしまった時も、余計な心配をせずに済んだ。これがペダル計測方式のモデルであれば、少し気がかりになってしまうところだ。

このようにパワーメーターとして申し分の無い性能を持つステージズパワー。安価でありながら、ホイールをはじめとした機材の縛りが少ないステージズパワーは、最初のパワーメーターとしてはもちろん、すでに他のパワーメーターを使用しているサイクリストの2台目としても十分な性能を持つ優れたモデルだと言えそうだ。
提供:インターマックス インプレッション&文:安岡直輝 製作:シクロワイアード