7月5日からドーバー海峡を挟んだ隣国イギリスのヨークシャー州で開幕したツール・ド・フランス2014年大会。世界最大規模を誇り、世界中から注目を集める今大会には22チームから、全198名の選りすぐられた選手が出場する。この中で、過半数以上の14チーム/126名の選手が使うコンポーネントが、トッププロが信頼を寄せ、その走りを支えるシマノだ。

トッププロチームが選ぶシマノとPRO

イギリスで開幕した今年のツール・ド・フランスイギリスで開幕した今年のツール・ド・フランス photo:Kei Tsuji
第101回目となる今年のツール・ド・フランスは、サイクルロードレースへの熱が高まるイギリス・ヨークシャーからスタートし、計21日間で全長3656kmを走破するコース設定。山岳や平坦などコースの内訳こそ例年と同様だが、4年ぶりに復活したパヴェコースや、最終日前日に行われる54kmにおよぶ個人TTなど、機材の信頼性が重要視されるステージが多く盛り込まれたプログラムが用意された。

マイヨジョーヌカラーのバイクを用意したマルセル・キッテル(ジャイアント・シマノ)マイヨジョーヌカラーのバイクを用意したマルセル・キッテル(ジャイアント・シマノ) (c)Makoto.AYANO
ベルキンが使用するビアンキに装着されたFC-9000ベルキンが使用するビアンキに装着されたFC-9000 photo:Makoto.AYANOトレック新型フレームEMONDAのリアブレーキは従来フロント用であったBR-9010を使用するトレック新型フレームEMONDAのリアブレーキは従来フロント用であったBR-9010を使用する photo:Makoto.AYANO

ごく一部のスター選手を含めて、毎年選手たちは栄光のツール・ド・フランスに出場するためにシーズン前から厳しいトレーニングを重ね、実戦での結果を求め続ける。そのため、機材スポーツとも呼ばれるプロロードレースにおいて、人間の力を推進力へと変換する機材には、非常に精密かつ正確、そしてロスの無い性能が求められる。

そんな厳しいプロフェッショナルサイクリング界の最高峰のレースで、選手やチームから最も高い信頼を得ているコンポーネントブランドのひとつが、ものづくり大国・日本が誇るシマノだ。

スカイのチームカーに搭載された沢山のデュラエースホイールスカイのチームカーに搭載された沢山のデュラエースホイール photo:Makoto.AYANO
チームスカイカラーにペイントされ、コースプロフィールが巻かれたPRO Vibeステムとハンドルチームスカイカラーにペイントされ、コースプロフィールが巻かれたPRO Vibeステムとハンドル (c)Makoto.AYANOマルセル・キッテル(オランダ、ジャイアント・シマノ)のバイクに装着された特別仕様のPRO Vibe Sprintカーボン。スプリントポイントなどを記した紙が貼られているマルセル・キッテル(オランダ、ジャイアント・シマノ)のバイクに装着された特別仕様のPRO Vibe Sprintカーボン。スプリントポイントなどを記した紙が貼られている (c)Makoto.AYANO

今回のツールでは、実に参加22チーム中で半数を超える14チームがシマノコンポーネントを採用している。その中でシマノがスポンサーとして機材供給を行うのは7チーム。ジャイアント・シマノ、ベルキン、チームスカイ、オリカ・グリーンエッジ、FDJ.fr、BMCレーシングチーム、そしてトレック・ファクトリーレーシングという強豪チームだ。

その中で、様々なバリエーションを誇るデュラエースホイールを使用するのは全6チーム。更に熱整形で足型にぴったりとフィットする高性能カスタムフィットシューズまでを含めると、実に多くの選手がシマノやPROの製品を使用している。バイクが集うヴィラージュやプロトン内の選手たちの間でも、その信頼感は際立っている。

現地のスタッフがレース現場に赴きフィードバックを収集する現地のスタッフがレース現場に赴きフィードバックを収集する photo:Makoto.AYANO9070系Di2コンポーネントとWH-9000-C50-TUが装着されたベルキンのバイク9070系Di2コンポーネントとWH-9000-C50-TUが装着されたベルキンのバイク photo:Makoto.AYANO

キッテルが開幕4ステージで3勝 ボームが過酷な石畳ステージを制す

ツール史上最大規模の観客が沿道に駆けつけたイギリスでの3日間と、4年ぶりに組み込まれたパヴェ(石畳)ステージを含む北フランス/ベルギーでの2日間が終了したツール・ド・フランス2014。シマノのコンポーネントを使う選手は5ステージ中4勝と順調に勝ち星を積み上げると同時に、マイヨジョーヌをはじめとした4賞ジャージに袖を通すなど存在感を示している。

2年連続で第1ステージを制したマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)2年連続で第1ステージを制したマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ) photo:Tim de Waele第1ステージを走るファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)第1ステージを走るファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング) (c)Makoto.AYANO


大集団スプリントで先行するマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)大集団スプリントで先行するマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ) photo:Tim de Waele
第5ステージのパヴェを行くラース・ボーム(オランダ、ベルキン)。独走に持ち込み勝利を掴む第5ステージのパヴェを行くラース・ボーム(オランダ、ベルキン)。独走に持ち込み勝利を掴む (c)CorVos
残念ながら既にリタイアを喫したものの、第2ステージでアタックで観客を湧かせたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)残念ながら既にリタイアを喫したものの、第2ステージでアタックで観客を湧かせたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleツールに初めて出場する中国人選手のジ・チェン(先頭、ジャイアント・シマノ)。連日プロトンを牽引する懸命な仕事ぶりからエスケープ・キラー呼ばれるツールに初めて出場する中国人選手のジ・チェン(先頭、ジャイアント・シマノ)。連日プロトンを牽引する懸命な仕事ぶりからエスケープ・キラー呼ばれる photo:Makoto.AYANO

歓迎ムード一色のヨークシャーからリーズまでの190.5kmで争われた第1ステージ。パンチャーやクライマーが入り混じり、落車が発生するなど混乱の様相を呈す中、ジャイアント・シマノのマルセル・キッテル(ドイツ)が昨年に続き開幕スプリントを制覇。自身2度目となるマイヨジョーヌ獲得に成功する。同時に序盤から逃げに乗った今大会最年長ライダーのイェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)がマイヨアポワと敢闘賞を同時に獲得し、キャリア最後と銘打つツールの初日から見せ場を作った。

春のアルデンヌクラシックさながらにアップダウンを多く含んだ第2ステージでは、前半からキッテルのためにジャイアント・シマノが集団を牽引。登り区間では前回大会覇者であるチームスカイのクリス・フルーム(イギリス)が早速アタックを見せ、ラルプ・デュエズと見間違う程に集まった大勢のファンを沸かせた。

平坦ステージで3連勝を達成したマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)のバイク。シマノ・デュラエースDi2とPROのハンドルとステムで固めらている平坦ステージで3連勝を達成したマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)のバイク。シマノ・デュラエースDi2とPROのハンドルとステムで固めらている photo:Makoto.AYANO
この日のジャイアントシマノはWH-9000-C50-TUで統一したこの日のジャイアントシマノはWH-9000-C50-TUで統一した photo:Makoto.AYANOベルキンのバイクに装着されたST-9070。細身で握り易いと選手からも好評だベルキンのバイクに装着されたST-9070。細身で握り易いと選手からも好評だ photo:Makoto.AYANO

パヴェステージを制したラース・ボーム(オランダ、ベルキン)のバイク。デュラエースホイールは石畳の強烈な振動にも耐えうる強度を有しているパヴェステージを制したラース・ボーム(オランダ、ベルキン)のバイク。デュラエースホイールは石畳の強烈な振動にも耐えうる強度を有している photo:Makoto.AYANO
イギリス最終日となった第3ステージは首都ロンドンのザ・マルを舞台とした大集団スプリントに持ち込まれ、絶好の位置からスプリントを開始したキッテルが他を圧倒し2勝目をマークした。フランス本土に舞台を移した第4ステージでは前日とは対象的に混戦のスプリントとなったものの、またしてもキッテルが先頭でゴールラインを通過。早くもスプリントステージでのハットトリックを達成。26歳と若いながらも、既に名実ともに最強スプリンターの名を不動のものとしている。

そして今大会の目玉であり、4年ぶりにパリ~ルーベのパヴェが登場した第5ステージ。想像を絶する振動と気温14度という寒空が選手が襲い、機材の信頼性や耐久性がレースの展開を大きく左右しかねない中で、9070Di2コンポーネントとWH-9000ホイールを使用するベルキンが大活躍。クラシックレースを得意とするラース・ボーム(オランダ)とセプ・ファンマルク(ベルギー)がレースを積極的に動かし、最後はボームがアタック、力強いペダリングで後続を引き離しステージ優勝を果たした。

昨年に引き続き、第1ステージでマイヨジョーヌを獲得したマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)昨年に引き続き、第1ステージでマイヨジョーヌを獲得したマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ) (c)CorVos
過酷な雨のパヴェステージを制したラース・ボーム(オランダ、ベルキン)過酷な雨のパヴェステージを制したラース・ボーム(オランダ、ベルキン) (c)CorVos自身最後と銘打つツールの初日から見せ場を作り、マイヨアポアを獲得したイェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング自身最後と銘打つツールの初日から見せ場を作り、マイヨアポアを獲得したイェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング (c)CorVos


デビューから2年 レーシングコンポーネントとしての安定感を高める9000系デュラエース

シマノデュラエース9000シリーズシマノデュラエース9000シリーズ (c)Shimano
デビューから2年の月日が経過した9000系デュラエース。発表時には大きな話題をとなったリアの11段変速や4アームクランクなども現在のプロロードレースシーンではすっかりお馴染みの存在となっている。1シーズン先行して投入されたホイール(WH-9000系)と併せて、その安定感はより一層高まっている。

なかでも選手から圧倒的評価が高いのが、9070系デュラエースDi2コンポーネント。今から4年前に先代の7970系がツール・ド・フランスに投入されて以来、変速の確実性、圧倒的に軽やかな操作感、雨や泥をもろともしない信頼性、優れたメンテナンス性からプロにいち早く受け入れられ急速に普及していった。もちろん、今年も先に紹介したシマノサポートチームのライダー達のほぼ全員が使用する。

選手の要望にもかなう充実した製品ラインアップを誇るシマノ。FDJ.frのバイクには珍しいロングアーチタイプのブレーキが取り付けられていた選手の要望にもかなう充実した製品ラインアップを誇るシマノ。FDJ.frのバイクには珍しいロングアーチタイプのブレーキが取り付けられていた photo:Makoto.AYANO表面処理が市販品と異なる、プロ供給専用品のチェーンリング表面処理が市販品と異なる、プロ供給専用品のチェーンリング photo:Makoto.AYANO

サテライトスイッチをこの向きに取り付けているのも面白いサテライトスイッチをこの向きに取り付けているのも面白い photo:MakotoAYANOトム・フィーラース(オランダ、ジャイアント・シマノ)のクランク内蔵型パワーメーター対応デュラエースクランクセットトム・フィーラース(オランダ、ジャイアント・シマノ)のクランク内蔵型パワーメーター対応デュラエースクランクセット photo:MakotoAYANO

更にオプションで設定されている「スプリンタースイッチ」や「サテライトスイッチ」「TTスイッチ」などはDi2コンポーネントの大きな魅力で、9070系では5つの接続ポートを持つSM-EW90-Bを組み合わせることで全てのスイッチを1台のバイクに組み込むことが可能。どんな体勢でもストレス無く変速できることはコンマ1秒を争うトップライダーのみならず、ホビーレーサーにも間違いなく大きなメリットとなる。

また、Di2と併せてメカニカルタイプが選択できることも9000系デュラエースの大きな魅力である。プロの現場ではファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)はブラケット形状の好みなどからあえて機械式を選択しているという。

加えて、グレードを越えてパーツをミックス出来る様になったこともトピックスで、昨年デビューした6870系アルテグラDi2を組み込むことが可能だ。実際に今ツールでは、上りの厳しいステージでフルームのバイクにはRD-6870-GSと11-32TのCS-6800が装着されていた。その理由はロングゲージタイプのリアメカと、ロー側32Tのスプロケットがデュラエースのラインナップにないため。しかし、セカンドグレードのアルテグラはそれを補完する役割を果たしているのだ。

上りの厳しいステージでクリス・フルームのリアカセットは11−32T。アルテグラのメカで変速させる上りの厳しいステージでクリス・フルームのリアカセットは11−32T。アルテグラのメカで変速させる (c)Makoto.AYANOプロロードレース界では標準的な装備となった9070系デュラエースDi2プロロードレース界では標準的な装備となった9070系デュラエースDi2 photo:Makoto.AYANO

カンチェラーラはあえて機械式の9000系デュラエースを選択しているカンチェラーラはあえて機械式の9000系デュラエースを選択している photo:Makoto.AYANO
総じて、9070系デュラエースDi2のみがクローズアップされるが、今回のツールではシマノは9070系、9000系、6870系の3種のプロユースコンポーネントが選手の好みや用途に合わせて使用されている。プロの要求にくまなく対応できる選択肢の広さはホビーレーサーにとってもユーザーフレンドリーであると言えよう。

次回も引き続きシマノサポートチームの活躍をレポートしつつ、ツールで使用されているデュラエースホイールWH-9000系などに焦点を当てて紹介していく。また、プロトタイプや未発表機材についての情報も入り次第、紹介する予定だ。
提供:シマノ 企画/制作:シクロワイアード