コンテンツ
イタリアの名門ブランド『ピナレロ』が満を持してリリースした『DOGMA60.1』。マグネシウムフレームを採用し、リリースから7年が過ぎた現在でも根強い人気を誇る名車『ドグマ』の名を受け継ぎ、新たにカーボンモデルとして誕生した。その実力は“唯一無二”。これまでの常識に囚われることなく創り出されたフォルムに搭載された、最新の素材と革新的なテクノロジーの詳細に迫る。


ピナレロ DOGMA60.1

価格 620,000円(フレームセット) フレーム素材 TORAYCAⓇ NanoAlloy™テクノロジー ウルトラハイモジュラス60HM
フォーク ONDA FPX1 60HM1Kカーボン サイズ(C-C) 42SL、44SL、46.5SL、50、51.5、53、54、55、56、57.5、59.5
カラー スタンダード12色以外にMY WAYカラーオーダーも可能

「Technology 1/totally asymmetric」
世界初の非対称フレームこそ本当の“均等”を生み出す。

「バイクは左右対称なもの」というのは、誰が決めたのだろうか。確かに、これまでも左右非対称のチェーンステイを採用したロードバイクは存在した。しかし、2010年の旗艦モデルとしてピナレロが投入した『DOGMA60.1』は、フォークからトップチューブ、シートステイ、チェーンステイ、つまりフレームトータルで左右非対称の形状となっており、この世界初の技術はこれまでの“常識”を覆すものだ。

世界初となる左右非対称フレーム


A:トップチューブ
左下がスクエア形状な非対称トップチューブにより、ハンドリング入力による不均等なヨレを軽減

B:フォーク
右フォークは、左フォークよりもボリュームを持たせたスクエア形状を採用

C:シートステイ
右シートステイは、左側よりボリュームがあり、さらなる剛性を実現

D:チェーンステイ
右チェーンステイのBB寄り部分はシャープに、逆にリアエンド側は太い形状。また左チェーンステイのBB寄りは補強され、リアエンドに行くに従ってシャープな形状となっている

一見すると奇をてらった形状と思われがちだが、その発想は実に理にかなっている。ギアやチェーンなどの駆動系はバイクの右側に集中しているため、左右対称のフレームではどんなに均一にペダリングしてもフレームに掛かる加重は左右で異なってきてしまう。そこでドグマ60.1では、加重が均等に掛かる形状として左右非対称フレームを採用した。

ペダリングによる左右対称フレームに掛かる加重イメージ

右ペダルを踏み込んだときには、BB周辺を中心にフレームへ大きな加重(赤~黄色の部分)が掛けられていることがわかる右ペダルを踏み込んだときには、BB周辺を中心にフレームへ大きな加重(赤~黄色の部分)が掛けられていることがわかる 左ペダルを踏み込んだときには、右のペダリング時と比べて、フレームに加重が掛かっていない(青色の部分)左ペダルを踏み込んだときには、右のペダリング時と比べて、フレームに加重が掛かっていない(青色の部分) フレームを詳細に見ると、駆動系があることでより高い剛性が必要な右側はボリュームを持たせ、右側より剛性が必要でない左側はシャープなシルエットをしていることがわかる。これにより、ペダリング時などに掛かる加重が均等になるだけでなく、フレーム左側のボリュームを落とせたことで、フレーム全体として重量減に成功。非常にボリュームのある形状であるにも関わらず、2009年旗艦モデルであるプリンスよりも軽量な950g(540mm)を実現している。

また、フォーク(下写真・左)・シートステイ(下写真・中央)ともに、詳細に見なければ分からないほど微妙な左右非対称形状を見せる。この形状はCAD(コンピューター支援設計)やFEM(有限要素法による構造解析技術)、さらに繰り返し行われたテスト走によって生み出された。

フォーク形状。じっくり見ると微妙な左右非対称を成していることがわかるフォーク形状。じっくり見ると微妙な左右非対称を成していることがわかる Photo:Makoto.AYANO シートステイも左右非対称。ブレーキ付近の左右のチューブの太さを見てもらえると違いがわかりやすいシートステイも左右非対称。ブレーキ付近の左右のチューブの太さを見てもらえると違いがわかりやすい Photo:Makoto.AYANO 非対称とはアンバランスという意味ではない。DOGMA60.1は、ライディングフィールとデザインのバランスを高次元で両立させたバイクだ非対称とはアンバランスという意味ではない。DOGMA60.1は、ライディングフィールとデザインのバランスを高次元で両立させたバイクだ Photo:Makoto.AYANO

「Technology 2/TORAYCAⓇ NanoAlloy™」
ピナレロ社が独占的に使用可能な最高グレードのカーボン素材と技術

最高グレードの高張力率を誇る“TORAYCAⓇ カーボン60HM”を使用したことで、より少ない材料量で高い剛性と安定性を生み出し、結果としてフレームの軽量化を実現最高グレードの高張力率を誇る“TORAYCAⓇ カーボン60HM”を使用したことで、より少ない材料量で高い剛性と安定性を生み出し、結果としてフレームの軽量化を実現 Photo:Makoto.AYANO 『DOGMA60.1』の優位点は、その形状だけではない。フレーム素材として採用された“TORAYCAⓇ カーボン60HM”は、世界最高レベルの技術を有する日本の「東レ」とのコラボレーションにより、現在自転車業界ではピナレロ社のみが独占的に使用することが可能なカーボン素材。60HMとは60トンの荷重に耐えられる強度を示し、これは市場でも最高グレードに属する素材なのである。

 また“TORAYCAⓇ カーボン60HM”には、NanoAlloy™(ナノアロイ)テクノロジーという「東レ」独自の最新技術が採用されている。従来はカーボン素材にポリマー(重合体)を混合(ブレンド)されてきたのが、この手法では混合されたポリマーそれぞれの特質を弱めてしまっていた。それに対してNanoAlloy™テクノロジーは、アロイ化することでそれぞれの特質を最大限に利用することを可能にした。さらに「東レ」では、このアロイ化をナノスケールサイズで行う“ポリマーアロイ”の開発に成功した。

破断したチューブ(左)と可塑性変形したチューブ(右)。可塑性変形することで、フレーム破損やライダーの安全性に対するリスクを軽減している破断したチューブ(左)と可塑性変形したチューブ(右)。可塑性変形することで、フレーム破損やライダーの安全性に対するリスクを軽減している Photo:Pinarello LAB この技術を使い、“TORAYCAⓇ カーボン60HM”は他社の標準品質のカーボン素材よりも耐衝突力が59%アップ。従来であれば破断していたような衝撃を受けた際にも、破断せずに可塑性変形をし、フレーム破損のリスクを軽減している。

加えて、カーボンの製造技術には“EPS(エチルポリスチレン)”テクノロジーを採用している。これはカーボン成型時にできるフレーム内面のシワをなくし、滑らかにするピナレロ独自の技術。フレーム内側が平滑になることでフレームに掛かる加重が均一化され、剛性アップ、品質安定性の向上、さらにフレームの外側からは見えない部分の軽量化を実現している。

複数のチューブがつながるシートチューブ接合部分や、ヘッド・BB周辺なども、EPSテクノロジーによって滑らかな内部構造となっている複数のチューブがつながるシートチューブ接合部分や、ヘッド・BB周辺なども、EPSテクノロジーによって滑らかな内部構造となっている トップチューブ、シートチューブ、シートステイが集合する接合部周辺の内部構造。内部も滑らかに成型されており、妥協がないトップチューブ、シートチューブ、シートステイが集合する接合部周辺の内部構造。内部も滑らかに成型されており、妥協がない

外見のみならず、見えない部分の美しさにもこだわっているDOGMA60.1。ピナレロのバイクに対する哲学を感じられるフレームだ外見のみならず、見えない部分の美しさにもこだわっているDOGMA60.1。ピナレロのバイクに対する哲学を感じられるフレームだ Photo:Makoto.AYANO

ピナレロ DOGMA 60.1 プロモーションムービー




次ページではバイクジャーナリスト・桜沢淳樹氏によるDOGMA60.1ファーストインプレッションをお届けする。実感を伴ったDOGMA60.1の魅力をぜひ感じて欲しい。

提供:ピナレロジャパン Text:Tomo Hoshino 制作:シクロワイアード