「New best bike of the world.Again」と銘打ち、北イタリアはヴェネツィアで披露された新型DOGMA F8。世界中のメディアを招いた行われたプレゼンテーションでは、次々とDOGMA F8に関するテクノロジーが紹介されていった。

ジャガーの空力と検証ノウハウがF8の開発を押し進めた

オールラウンドやエアロ、または快適性、軽量性などに特化したバイクを用意し、それぞれをトップモデルとしてラインナップすることは大手ブランドでは一般化してきた。しかしピナレロはそれとは異なり、DOGMAにエアロ性能を与えるという選択をした。新型F8はあくまでも「エアロを纏ったオールラウンドレーシングバイク」なのである。

ジャガーとのコラボレーションによって、開発は飛躍的な速さで進められたジャガーとのコラボレーションによって、開発は飛躍的な速さで進められた
フレーム各部には「FlatBack」形状を採用。空力を高めるとともに軽量化と剛性確保に貢献しているフレーム各部には「FlatBack」形状を採用。空力を高めるとともに軽量化と剛性確保に貢献している ダウンチューブの形状を見る。FlatBack形状はフレーム各所で最適な形にモディファイされているダウンチューブの形状を見る。FlatBack形状はフレーム各所で最適な形にモディファイされている


カーボンのトップシェアブランド「東レ」とピナレロが密接な関わりを持っているのは周知の通りだろう。ここにチームスカイと、スカイに車両を提供するジャガーが加わったことで、ピナレロ(知識)+チームスカイ(フィードバック)+東レ(素材)+ジャガー(空力と検証)という超強力なコラボレーションが実現。素早く大胆な設計が進められた。

開発にあたってはCFD(数値流体力学)を用い、300回に及ぶコンピューターシミュレーションから算出された70のデザイン案のそれぞれに対してヨー角を変えながら、3Dプリントモデルを使いながらシミュレーション。その結果、卵形断面の後ろ半分を切り落としたような形状の「FlatBack」チューブが完成した。これによって高速走行時にチューブ後方を真空状態にし乱気流を排除することができるため、フレーム全体の空気抵抗を効果的に削減しているのだ。



大きく形状を変更した「ONDA F8フォーク」も目につくポイントの一つ。これにもFlatBack形状が用いられており、なるほど、よく見ればブレードの後ろ部分はスパッと大胆にカットされているし、ブレードの中央部分には整流効果を発揮するというカドが立てられている。前方から見るとロードバイクとは思えないような「大股」になっており、これは横方向の剛性に配慮したものだ。

DOGMA F8に奢られる東レの最新カーボン「T1100 1K」のスペック。従来製品の性能を全て上回るDOGMA F8に奢られる東レの最新カーボン「T1100 1K」のスペック。従来製品の性能を全て上回る 詳細は続編のインプレッションを見て欲しいのだが、従来のDOGMA 65.1 Think 2が縦方向へと硬かったのに対し、横剛性が上がったことでバランスが向上し、非常に乗りやすくなったと感じた。具体的な数字を提示すると、従来のONDA 2フォークと比較して54%の空気抵抗削減と10%の軽量化を成功させているという。

DOGMA 65.1 Think 2との空力比較。全てにおいてF8が上回っている事が分かるDOGMA 65.1 Think 2との空力比較。全てにおいてF8が上回っている事が分かる 空力面でもっとも特徴的なのはシートステーのブレーキキャリパー取り付け部分だろう。これは後述するアシンメトリックデザインとも関係するのだが、キャリパーのアーム部分で生まれる空気抵抗を削ぐべく左右の形状が全く異なっている。

ヘッドチューブ周辺の空力性能を見る。ヘッドチューブ周辺の空力性能を見る。 またボトルを装着することを前提とし、ダウンチューブの半分からBB寄りはヘッドチューブ側に比較してワイドな形状となり、「なるべく下側にボトルを付けた方が空力的に良い」ということからケージ位置を調整できるようにシートチューブ側は3ボルト式に。結果的に細かなアップデートと併せて、従来モデルに対して空力性能を47%向上させたとプレスローンチでは語られた。

ところで、空力をここまで煮詰めたのに何故ダイレクトマウントブレーキを使わなかったのかと疑問に思い質問してみたところ「プロレースでの整備性を高めた結果」という答えが返ってきた。このようにあくまでF8はレースありきで開発されたマシンだが、イタリアン規格のBBなどと併せ一般ユーザーにとっても嬉しいポイントだろう。

シートチューブに対してダウンチューブまでもがオフセットしたアシンメトリーデザインは、65.1 Think 2に対して16%ものバランスの均等化を実現。コンパクトになったリアバックも大きく形を変えており、振動吸収性とパワー伝達効率の向上をより強力に押し進めた。

そしてそれらを形づくるのは、もちろんピナレロが密接な関係を持つ東レのカーボンファイバー「TORAYCA (トレカ)」だ。

F8には今年に入ってから正式発表された「TORAYCA T1100 1K」が既に導入されている。発表会では特に使用部分については言及されなかったが、後で質問したところ、ヘッド〜ダウンチューブ〜チェーンステー部分に織り交ぜて使用していると教えてくれた。また、カーボンプリプレグに使われている「NANOALLOY (ナノアロイ)」自体も進化している。

新素材の導入によってフレーム重量は860g(54サイズ、ペイント、スモールパーツを除く)となり、DOGMA 65.1 THINK2に対して80g(フレーム+フォークでは120g)軽量化。加えて12%の剛性向上も達成した。これまで「過剰な軽量化は剛性の低下を招く」として極端な軽量化を避けてきたが、このF8の登場によってDOGMAは遂に「軽量バイク」の仲間入りをも果たしたのである。

トレヴィーゾ郊外のファクトリーでDOGMA F8を持つファウスト・ピナレロ氏トレヴィーゾ郊外のファクトリーでDOGMA F8を持つファウスト・ピナレロ氏
細かい仕上げや塗装は全てイタリアの職人の手で行われている細かい仕上げや塗装は全てイタリアの職人の手で行われている 開発エンジニアのマッシモ・ポロニアート氏。荷重検査機と共に開発エンジニアのマッシモ・ポロニアート氏。荷重検査機と共に

ピナレロ DOGMA F8 スペック

カラー950/ネイキッドレッド(マットフィニッシュ)他、計9カラー
付属品フルカーボン専用シートポスト
サイズ42、44、46.5、47、50、51.5、53、54、55、56、57.5、59.5、62(CC)
マテリアルT1100 1KカーボンTORAYCA® Nanoalloy™
フォークONDA F8 T1100 1KカーボンTORAYCA® Nanoalloy™ 1”1/8-1”1/2
重量フレーム860g(54サイズ)、フォーク360g
価格648,000円(税抜)(ファーストロットは2014年6月末~7月初頃より入荷開始)


次ページでは、DOGMA F8のインプレッションと、プレスローンチにゲストとして同行したベルンハルト・アイゼルのコメントを紹介する。
提供:ピナレロ・ジャパン text:シクロワイアード編集部