2014年、トレックのMTBカテゴリー最大のトピックスは、遂にトレックが650Bのバイクをリリースしたことだろう。SUPERFLYやFUELに代表されるXCカテゴリーは、ワールドカップなどでも既に定着して久しい29erとされているが、XCとDHの中間に位置するAM、つまりオールマウンテンカテゴリーに属する2モデルが650B化した。

トレック レメディ9.8トレック レメディ9.8
今回650Bとなって登場したのは、140mmストロークのフルサスバイク、「REMEDY(レメディ)」と160mmストロークのフルサスバイク「SLASH(スラッシュ)」の2台。29erよりもコントローラブルかつ機敏な動きを与え、26インチよりも障害物を乗り越え易くする。それに対するトレックの回答が、オールマウンテンバイクの650B化だ。

レメディのコンセプトは、軽いフレームと優れたサスペンション、そして正確なハンドリングを備えた究極のテクニカルトレイルバイク。カーボンフレームとアルミフレームという2モデルが用意されており、2つのチャンバーを備え、滑らかで途切れの無いサスペンション機能を実現するDRCV(Dual Rate Control Valve)や特許取得のABP(Active Braking Pivot)の搭載など、上りや下りなど地形を問わず「走る楽しみ」を追求したバイクに仕上げられている。

ヘッドチューブはマドンなどと同じE2ヘッドを採用しているヘッドチューブはマドンなどと同じE2ヘッドを採用している
トレック独自のDRCVシステムを組み込んだリアユニットトレック独自のDRCVシステムを組み込んだリアユニット
140mmストロークのサスペンションを装備する140mmストロークのサスペンションを装備する

対するスラッシュは、160mmトラベルのサスペンションを搭載したことで、レメディよりも下り系にやや寄ったバイクだ。ダウンヒルマラソンやエンデューロ系レースにも対応するレース向けのジオメトリーを採用している。

レメディと同じく2つのチャンバーを備え、滑らかで途切れの無いサスペンション機能を実現するDRCV(Dual Rate Control Valve)や特許取得のABP(Active Braking Pivot)の搭載など、最速の下り系オールマウンテンバイクとしてふさわしい機能が与えられている。フレームはアルミ製となり、デオーレXTコンポで組んだ完成車が発売されている。

遂にプロジェクトワンにMTBが登場。より細かなニーズに応える遂にプロジェクトワンにMTBが登場。より細かなニーズに応える
そして既報の通り、MTBのハイエンドモデルがプロジェクトワンに対応したこともまた、大きなトピックス。ロードバイクのオーダーシステムは他メーカーでも行われ始めたが、MTB、特にマスプロメーカーではほとんど初めてのことだろう。

今回発表のこのトレックMTB注目の2台、レメディ9.8 とスタッシュ8を、MTB山遊びの達人、日下裕次郎さん(DayDownBicycles店長)がインプレッションしてくれた。

インプレッション by 日下裕次郎(DayDownBicycles)

レメディ9.8 インプレッション

オールマウンテンバイクとして、ほとんど、もはや全くと言っていいほどネガティブな部分が見つかりませんでした。当然フルサスですのでトラクションの掛かりは良いのですが、650Bとなったことでバイク任せにモリモリと踏み込んでも、例え路面状態の悪い場所でも非常にスムーズに進んでくれました。特にリアサスペンションの動きが秀逸で、落ち葉がたまっている場所ですら全く意図しません。

全くと言っていいほどネガティブな部分が見つからない全くと言っていいほどネガティブな部分が見つからない
当然29erと比較すればクイックかつピーキーで、操作感がとても面白いですね。とにかく場所を選ばずに良く走ってくれるため、誰にでもおすすめできます。特に技術が発展途上の方には最適ではないでしょうか。26インチから乗り換えても違和感はありませんね。

試乗車はハイエンドモデルの9.8で行いましたが、非常に良くまとまったパッケージだと思います。決して安価なプライスではありませんが、値段以上のパフォーマンスを発揮してくれます。上りも全く不得意とせず、むしろ下手なXCバイクよりも走ってくれます。ですから王滝のような長い上り下りのあるようなイベント・レースに非常に向いていると思いました。

スタッシュ8 インプレッション

650B化を果たしたレメディとスラッシュに隠れてしまいがちだが、もう一つ注目したいのがリアリジットのアルミオールマウンテンバイクであるスタッシュだ。29erホイールと120mmストロークのサスペンションを備え、やや寝かしたヘッドアングルと低めのスタンドオーバーハイトにより、操作性の向上と安定感を求めている。このバイクのインプレッションをお届けする。

トレック スタッシュ8トレック スタッシュ8
RacefaceのTurbineクランクを採用するRacefaceのTurbineクランクを採用する 溶接痕も美しく仕上げられている溶接痕も美しく仕上げられている

第一印象は、「とにかく良く進むバイク」です。オールマウンテンバイク/プレイバイクというイメージを持って試乗したのですが、良い意味でその先入観は裏切られました。チェーンステーが非常に短く設計されているためか、26インチのバイクと比べて全く遜色無く機敏な動きを見せてくれました。

26インチに匹敵する機敏な動きが魅力的26インチに匹敵する機敏な動きが魅力的
まずルックスが気に入りました。塗装や各部の造作も面白く、いい意味でトレックらしくない面白い存在のバイクです。
乗ってみれば、細かなターンが続くトレイルでも、29erにありがちな「大振り感」は無く、狙ったところにフロントタイヤを差し込むことができます。しかも、29erですのでトラクションが掛かるし、障害物も難なくクリアできる。従来26インチのハードテイルのサドル高を下げて下りを楽しんでいたような方でも、違和感無く移行できるでしょう。29erの常識を覆す走りに、ただただ驚きました。

もちろんクロスカントリー的な乗り方をする場合にはXCバイクに一歩譲りますが、「午前中にトレイルを2本ほど楽しむ」ような走り方にはとても向いていると思います。アルミであることの重さも、走りには感じられませんし、とても完成度が高いですね。タイトコーナーの多い下りトレイルで、ガンガン振り回して遊ぶのに最高の一台です。

ライダープロフィール

日下裕次郎さん(DayDownBicycles)日下裕次郎さん(DayDownBicycles) 日下裕次郎(DayDownBicycles)

長野県長野市川中島町のサイクルショップ「DayDownBicycles(デイダウンバイシクル)」の店長である日下裕次郎さん。バイクライドをこよなく愛し、MTBでロードでと地元長野のフィールドを走っているほか、タイのチェンライ国際MTBチャレンジなどにも参加。お店では毎週末のロード&MTBモーニングライドパーティーが盛んだ。

DayDownBicycles
提供:トレック・ジャパン 企画/制作:シクロワイアード