発表会2日目にはプロペルのテストライドが実施され、各メディアのサイクルジャーナリストたちがプロペルをじっくりとテストライドした。台湾から来日したR&Dチーフエンジニア、ニクソン・ファン氏へのインタビューと併せてお伝えする。

日本CSCでPROPELをテストライド

ジャイアント PROPEL Advanced SL0をインプレッションジャイアント PROPEL Advanced SL0をインプレッション
テストコースの舞台に選ばれたのは、日本サイクルスポーツセンターのメインコース(5kmサーキット)を順走するアップダウンに富んだレイアウト。エアロロードバイクの試乗にはいささか不釣り合いでは?とやや疑問に感じていたが、プレゼンテーションを聞いて納得。ツール・ド・フランスの難関山岳で使用されていることも考えれば登坂テストは必須だろうし、ホームストレートや最終コーナーは下りとなるため、高速でのテストにはむしろ平地よりも向いていると言える。

試乗は、デュラエースDi2、ZIPP404ホイール、ステム一体型のオリジナルハンドル「CONTACT SLR AERO INTEGRATED」を組み込んだ、最上級販売パッケージである「PROPEL Advanced SL 0(1,260,000円)」。タイヤは同じくジャイアントオリジナルのP-SLR 1(700x23C)で、空気圧は前6.5bar、後7.0barにセットした。

速度を維持したままの上りではアドバンテージを得ることができる速度を維持したままの上りではアドバンテージを得ることができる photo:Kenta.Onoguchi
乗車してみると、ハンドリング周りの操作感にやや特徴がありつつ、硬すぎない踏み味と乗り心地。常々エアロロードバイクはノーマルロードと比較して衝撃吸収性や横方向の剛性が不足しがちであるが、プロペルには目立つほどのクセが無い。

TCR Advanced SLほどの軽快感には及ばないものの、ペダルの踏み込みへの反応も早く、ギアを掛けていくとぐっとスピードが乗っていく。ZIPP404との組み合わせではスプリントの伸びも軽く、スプリンターには大きなアドバンテージがあるはずだ。ハイスピードになるほどに車体の安定感は増し、多少の凹凸を踏んでも挙動が乱れることが無かった。通じて直進性は非常に高いため、延々と直線を走るようなシチュエーションでは大きくストレスの軽減に貢献してくれるだろう。

スピードの伸びは非常に良く感じたスピードの伸びは非常に良く感じた コーナーでバンクさせると、直立に戻ろうとする力がノーマルロードと比べて強く、若干アンダーステア気味となる。高速コーナーでは何ら問題になるほどでは無いが、切り返しの多いテクニカルなダウンヒルを好む方には相性がやや悪いだろうと感じる。横風を受けた場合にはハンドルが取られるのでは無く、バイク全体がゆっくりと横に動くイメージだ。横風に対する空力性能が現れている部分だろう。

エアロ性能については厳密に言及できないものの、下り勾配では明らかにスピードの伸びが良いと感じる。試しに高速域でダウンチューブにつけたボトル後方に手をかざしてみたところ、空気が暴れているような感じはあまり受けなかった。

スピードを維持したままクリアする登坂は得意だが、低速ヒルクライムでの軽快感はやや薄い。ホリゾンタルであることも関係するためか速度の遅いダンシングでは車体が振りにくく、スムーズなペダリングができないとバランスが崩れて失速するような雰囲気を若干感じた。

奇麗なペダリングのまま高出力を維持できるライダーならば長時間のヒルクライムでもこなせるはず。ちなみにT-700カーボンを使用した「Advanced」は踏み心地がマイルドであることで、「Advanced SL」よりもダンシングは行いやすかった。「エアロには惹かれるけれど、クセのあるバイクは…」と思うユーザーは「Advanced」の方が向いているだろう。

そしてエアロロードバイクながら、PROPELは衝撃吸収性が比較的高い。試しに芝生やグレーチングの上を走っても特にリアから伝わる衝撃は柔らかく、ロングライドや長距離レースでも疲労感はTCR Advanced SLよりも少ないはずだ。PROPELの特徴でもあるブレーキに関しては、キャリパーはカーボンよりもアルミ製の方がタッチが良かった。

開発チーフエンジニアに聞く、PROPELのこと


プロペルの開発チーフエンジニア、ニクソン・ファン氏プロペルの開発チーフエンジニア、ニクソン・ファン氏 2日間の日程には、ジャイアント本社のエンジニアで、プロペル開発のチーフを務めたニクソン・ファン氏が同席。同氏にプロペルに関してのショートインタビューを行った。

TRPとの共同開発で生まれたエアロブレーキシステムTRPとの共同開発で生まれたエアロブレーキシステム ープロペルの開発は、どのようにして始まったのでしょうか?
プロペルはエアロロードというカテゴリーが出始めた時期、ちょうど2年半ほど前に開発が始まりました。目標は「世界最速のロードバイク」を作ること。我々は企画の立ち上げから製品版の完成まで、およそ2年の際月をかけてエンジニアリングを繰り返してきました。CFD解析や風洞実験を用い、設計したバージョンは88に及びます。

競合他社もエアロロードバイクをデビューさせていますが、プロペルが他と違うのは、ボトルを装着した状態を前提としているなど、風洞内ではなく現実世界での速さを追い求めた点です。フレームやブレーキを工夫したバイクはあっても、ステム一体型の専用ハンドルや、コラムスペーサーのようなスモールパーツに至るまで工夫を凝らしたバイクは現在のところ他にありません。


レース前に調整を行うメカニック。ブレーキは調整も容易なよう配慮されているレース前に調整を行うメカニック。ブレーキは調整も容易なよう配慮されている (c)GiantーTRPと共同開発したブレーキに関して教えてください。
TRPとは非常に良い協力関係にあり、開発期間に幾つものプロトタイプを提供してくれました。フレームと一体化し、ブレーキ自体が整流効果を発揮するものは他にありません。

プロペルはプロチームとの共同開発の元に生まれたバイクだプロペルはプロチームとの共同開発の元に生まれたバイクだ (c)Giant製品版はアルミとカーボンの2タイプですが、プロライダーはスペシャル品であるCNC加工のアルミブレーキを使用しています。これにはアーチ調整が容易なようにアジャスターボルトを増設し、ニュートラルサービスを受ける場合など様々なリム幅のホイールに素早くセットさせるためです。


ープロライダー達はプロペルについてどういった印象をもっているのでしょうか?
プロペル開発のごく初期から携わってくれているテオ・ボスは、非常にプロペルを気に入ってくれており、ほとんどのレースで使っています。彼はトラック上がりのスプリンターであるため空力に関してとても研究熱心で、380mmのハンドルを組み合わせています。ごく製品版に近いプロトタイプを使い、今年の2月にはプロペルの初勝利を挙げました。

またスプリンターのみならず、バウク・モレマのようなオールラウンダーもツールの山岳ステージで使用していました。上りではTCRの方が軽いためアドバンテージがありますが、そのままではUCI規定よりも重量が軽すぎるためチームではウェイトを載せて使用しています。同じ重量であれば、エアロ性能に優れるプロペルの方が良いと彼は思っていたようですね。

モンバントゥーを走るバウク・モレマとプロペルモンバントゥーを走るバウク・モレマとプロペル (c)Giant
エアロに注力しつつも、バランスに秀でた性能を目指して開発したのがPROPELです。TCRとDEFY、そしてPROPELと全く個性の異なる3台のモデルが揃ったので、選択肢が増え、かつ選びやすくなったと思います。スピードを出すことに魅力を感じる方に乗って頂きたいですね。

提供:ジャイアント text:シクロワイアード編集部