TARMACやVENGEの影に隠れてしまいがちだが、スペシャライズドはフルアルミフレームのALLEZにも力を注いでいる。社内には高いアルミ製造技術を有するチームがあり、彼らが「最高のフルアルミフレーム」を合言葉に昨年発表したのが新型ALLEZである。

秘密はヘッドチューブの溶接法

スペシャライズド S-WORKS ALLEZスペシャライズド S-WORKS ALLEZ
スペシャライズドロードの基本デザイン(湾曲したトップチューブ、太いダウンチューブ、細身のシートステーなど)を踏襲しているALLEZ。プロジェクトをリードしたのは、先端技術開発部門で上級エンジニアを務めるチャック・ティシエラだ。かつて、素材メーカーのイーストンで28年間アルミの加工に携わり、2年ほど前にスペシャライズドへ移籍。'90年代初頭にはYetiと共同での最軽量アルミバイク、アルミ+カーボンのコンポジットバイクを手掛け、その後もアルミバイクを素材からリードしてきた世界的なキーパーソンだ。

そんなティシェラを筆頭に開発されたA-WORKS ALLEZ最大の特徴は、ヘッドチューブの製造法にある。ヘッドチューブ・トップチューブ前端・ダウンチューブ前端をハイドロフォーミングによって一体形成しておき、そこに各チューブを繋ぎ合わせているのだ。通常の溶接フレームのようにチューブとチューブを突き合わせて溶接する方法とは大きく異なっている。

溶接するチューブ端をこのように成型することで、剛性を向上させている溶接するチューブ端をこのように成型することで、剛性を向上させている ヘッドチューブのカットサンプル。通常の溶接に比べると内壁がスムーズヘッドチューブのカットサンプル。通常の溶接に比べると内壁がスムーズ


さらに、チューブ同士の接合部表面に谷間ができるようにチューブ端を加工しておき、その谷間を埋めるように溶接している。こうすることで、溶接部が薄く軽く仕上がるのだ。この溶接法はスマートウェルディングと名付けられ、スペシャライズドが特許を取得しているという。

S-WORKS ALLEZインプレッション

ALLEZには、アルミフレームの最高峰を目指したS-WORKSグレードも設定されている。S-WORKSは、セカンドグレードとなるALLEZ RACEに比べてわずかに薄いチューブを使い、ケーブルガイドなどの細部が細かく軽量化されている。結果、ALLEZ RACEに比べて20gの軽量化を達成している。

アルミとは思えないほど細いシートステーで快適性を確保しているアルミとは思えないほど細いシートステーで快適性を確保している
表面はアノダイズド処理。耐久性があり、通常の塗装に比べて軽くできる表面はアノダイズド処理。耐久性があり、通常の塗装に比べて軽くできる
スマートウェルディングが採用されたヘッドチューブ周辺スマートウェルディングが採用されたヘッドチューブ周辺


このS-WORKS ALLEZは昨年発表されたモデルだが、昨年は試乗車が用意されておらず悔しい思いをしたのだが、今年のGPLでやっと試乗することができた。ペダルを踏み始めてまず感じられるのは、力強いアルミらしさと硬派な踏み心地。軽くて硬いTARMACやしなやかに進むVENGEとは別世界の、パワフルなフレームだ。

ROVALのハイエンドモデルがついていたこともあるが、力強い加速は感動的。どんな操作も金属のフレームがかっしりと受け止めて正確な反応を返してくれるから、安心できるし信頼できる。形状の工夫が効いているのだろう、振動は意外にも丸みを帯びたものになる。

各国ジャーナリストから大きな注目を集めたS-WORKS ALLEZ各国ジャーナリストから大きな注目を集めたS-WORKS ALLEZ photo:Carson Blume
フレーム販売がないのが残念だが、S-WORKSとほぼ同じフレームのALLEZ RACE完成車が17万円台とは魅力的。せっかくここまでよく走るフレームなのだから、いいホイールを入れて走るべきだが。

着実に進化するROVALのホイール群 専用樹脂を開発し、セラミックベアリングを採用

スペシャライズド傘下のホイールブランド、ROVAL(ロヴァール)。昨年はフルカーボンリムまで全てクリンチャーだったが、今年のラインナップには軽量なチューブラーモデルが加わった。ROVALが重視するのは、限定的な状況でのみ機能するエアロダイナミクスではなく、高い空力性能を保ちつつ安定した操縦性を持つホイールである。

フルカーボンディープからディスク対応のカーボンクリンチャーまでラインナップフルカーボンディープからディスク対応のカーボンクリンチャーまでラインナップ
風の向きによってホイールの空気抵抗値が変化することは知られているが、この変化が急激なものだとコントロール性が悪くなり、ハンドリングが悪化してしまう。設計担当者は、「そういうホイールはスペシャライズドが求めるものではありません」とキッパリ。

「優れた空力性能を保ちながらも、風の角度によって性能が変わるといった不安定さをなくすことに注力しました。空力性能を高いレベルで保ちつつ、どんなコンディションにも対応できるホイールを作ることが我々の目標だったのです」机上の空論ではなく、実際に効くエアロを目指したというわけだ。

今年よりセラミックスピード社の高精度セラミックベアリングが採用された今年よりセラミックスピード社の高精度セラミックベアリングが採用された リム幅24.4mmのCLX60。リムハイト60mmながらどんな風向きでも操安性を保つリム幅24.4mmのCLX60。リムハイト60mmながらどんな風向きでも操安性を保つ


60mmというリムハイトを持ちつつ、高い操舵性が与えられている60mmというリムハイトを持ちつつ、高い操舵性が与えられている photo:Carson Blumeカーボンクリンチャーリムで問題になるのが、ブレーキング時にリムにかかる熱と圧力だ。各社独自の工夫を施してリムの強化を行っているが、スペシャライズドは完全にオリジナルな樹脂を開発し、それを使用することで問題をクリアしている。

この専用樹脂は、ハードブレーキ時に発生する高熱や圧力に耐えることができ、しかも耐久性も非常に高いものになっているという。ベアリングにはセラミックスピード社のセラミックベアリングが採用されたことも大きなトピックである。

ラインナップは、カーボンクリンチャーモデルが「RAPIDE CLX40」(リムハイト40mm、ペア重量1375g)、「RAPIDE CLX60」(リムハイト60mm、ペア重量1495g)の2種類。チューブラーは最軽量モデルとなる「RAPIDE CLX40チューブラー」(40mm、1240g)、空力性能に優れる「RAPIDE CLX60チューブラー」(60mm、1330g)となる。

いずれも、リムハイト40mmモデルがリム幅23mm、リムハイト60mmモデルがリム幅24.4mmのワイドリム仕様となっている。また、ディスクブレーキ対応のカーボンクリンチャー「RAPIDE CLX40 DISC」(40mm、1476g)もラインナップしている。

提供:スペシャライズド・ジャパン 企画/制作:シクロワイアード