今年、期待されたS-WORKSロードのモデルチェンジは発表されなかったが、S-WORKS ROUBAIX SL4にディスクブレーキモデルが追加されたことが大きなトピックとなっている。UCIルールはロードレースでのディスクブレーキ使用を禁止しているため、プロレースで使われることの多いTARMACやVENGEのディスク化は見送られ、ロングライドで悪天候の中を走る機会の多いROUBAIXが、いち早くディスクブレーキ化されたというわけだ。

ディスクブレーキのS-WORKS RoubaixをインプレッションディスクブレーキのS-WORKS Roubaixをインプレッション photo:Carson Blume

最も進化した“サイズ別設計”を持つ一台

S-WORKS ROUBAIX SL4は、非常に優れた振動吸収性を持つ専用シートピラー「コブルゴブラー」、フォークとシートステーに設けられた振動吸収材「ゼルツ」などの特徴を持つ、快適性を重視したエンデュランスロードの最上級モデル。ただの安楽バイクではなく、悪路のプロレースでも使われるプロユースバイクである。

S-WORKS ROUBAIXのディスクブレーキモデルをテストS-WORKS ROUBAIXのディスクブレーキモデルをテスト
最大の特徴は、フレームサイズ別に異なるコラム径を持たせた「サイズ・スペシフィック・フォーク」。ヘッドの下側ベアリングを、フレームサイズ49と52で1-1/8インチ、54と56で1-1/4インチ、58と61で1-3/8インチと変化させ、小さいフレームサイズではスムーズな走りを実現し、大きなサイズでは大柄な選手の負荷にも耐える剛性をもたせた、フレームサイズ専用設計である。

ディスクブレーキを搭載したROUBAIXシリーズのニューモデルが、S-WORKS ROUBAIX SL4 RED DISC。スラム・レッドの油圧ディスクで組まれており、ディスクローター径はフロント160mm、リアが140mm。ただディスク台座を付けてディスクブレーキを組み込めばいいというわけではなく、通常のキャリパーブレーキとディスクブレーキでは当然ながらフレームにかかる力が大きく異なる。フレーム形状から剛性チューニングまで、設計を一新しなければならないのだ。事実上のニューモデルである。

ブレーキ台座は必要なくなったため、シートステーのブリッジは細くなっているブレーキ台座は必要なくなったため、シートステーのブリッジは細くなっている 大きく湾曲した「コブルゴブラー」。衝撃吸収素材を挟んで快適性を向上させている大きく湾曲した「コブルゴブラー」。衝撃吸収素材を挟んで快適性を向上させている

リアはコントロール性を重視してフロントより小さい140mmを採用リアはコントロール性を重視してフロントより小さい140mmを採用 大きな制動力が必要とされるフロントのローター径は160mm大きな制動力が必要とされるフロントのローター径は160mm

ディスク化しても“完璧なバランス”は健在

ディスクローターの存在によって視覚的な重心位置が下がるため見た目は重そうに見えるかもしれないが、走りに重さは全くなく、漕ぎ出すといつものROUBAIXの世界がある。

ディスクブレーキを装備したROUBAIX SL4をテストしたディスクブレーキを装備したROUBAIX SL4をテストした
走行感は“軽やか”の一言。走り出す瞬間はフワリとソフトで、ハンドルやサドルに伝わってくる衝撃もとにかくマイルドなのに、そんな感覚とはリンクしないほどスピードが出ているという不思議なライディングフィールである。アメリカの山道によくあるアスファルトが剥がれた部分も、タンターンと軽やかに乗り越えていく。

キャリパーブレーキタイプのROUBAIXと同条件で乗り比べることはできなかったため、正確な比較はできていないが、ディスクブレーキ化によって前後フォークの末端部分が若干硬くなっているような印象は受ける。

しかし、バランスが崩れているとは感じられず、フレームサイズによって3種類ものフォークコラム径を採用してまで(それぞれに設計する手間を考えると凄いことだ)スペシャライズド技術陣が実現したかった“完璧なバランス”は健在。コーナリング中にハードブレーキングをしても進路の乱れなどはなく、フレーム剛性の左右差も感じられない。

ターマック、ヴェンジ、ルーベの比較インプレッション

TARMAC、VENGE、ROUBAIXのハイエンドモデルを一斉テストTARMAC、VENGE、ROUBAIXのハイエンドモデルを一斉テスト
S-WORKS TARMAC SL4S-WORKS TARMAC SL4 S-WORKS VENGES-WORKS VENGE

最後に、改めてスペシャライズドロードの各ライン(ターマック、ヴェンジ、ルーベ)の比較インプレッションを。まずS-WORKS TARMAC SL4だが、2年前の発表直後に乗ったときよりも、ずいぶん走らせやすくなったと感じた。2年前は下手をすれば筋肉が断たれるような過激さを感じたものだが、2014モデルではいい意味でマイルドになり、熟成された印象だ。

エンジニアに確認したところ、「フレームの変更は一切行っていない。おそらく、ホイールやタイヤなどパーツアッセンブルに起因するものでは?」とのこと。確かに剛性が低下したという印象は全くなく、相変わらず暴力的な加速性能を持っている。登坂でも平地でも、サクサクッとしたクリスピーなペダリングフィールが持ち味だ。そのぶん路面の凹凸はつぶさに伝えてくるが、減衰は速い。ハンドリングはクイックでまさにレースバイクである。

それぞれのモデルが異なる特徴を持っている。隙のないラインナップだそれぞれのモデルが異なる特徴を持っている。隙のないラインナップだ photo:Carson Blume
ヴェンジは横方向のしなりを伴いながら、身をくねらすようにしてスムーズに加速し、滑るように高速域まで連れて行ってくれる。TARMAC系より数値としての剛性は落ちるのだろうが、この絶妙な剛性感はペダリングにプラスに働く。いまや「高剛性=高性能」という等式は成り立たない。高速巡航性でもやはりヴェンジが一枚上手だ。

ターマック、ヴェンジ、ルーベの三本柱体勢をとるスペシャライズド。「鋭いキレ味」「高速域重視」「快適性とバランス」という方向性の異なる3つのラインを持っているからこそ、それぞれのモデルをそれぞれの方向性に特化させることができるのだ。技術力に富んだビッグブランドならではの、隙のないラインナップである。

提供:スペシャライズド・ジャパン 企画/制作:シクロワイアード