プレゼンテーションでは語られなかった新型SYNAPSEの深い部分や気になるところを、開発者サイドの主要人物2名から話を聞いた。

BB30の生みの親 クリス・ドッドマン

Q:まず、フレーム重量が1,000g以下とのことでしたが、フレームとフォークそれぞれの重量を教えてください。

A:フレームは塗装済みで950gです。フォークはサイズごとに角度や長さが異なるので一概には言えませんが、だいたい360g前後になるように造っています。

クリス・ドッドマン「手にすることでハッピーになれる。それがこのSYNAPSEなのです」クリス・ドッドマン「手にすることでハッピーになれる。それがこのSYNAPSEなのです」
Q:EVOでは656gという軽さを達成していますが、SYNAPSE Hi-MODではずいぶん重くなった、というのが率直な感想なのですが?

高剛性かつ快適なSAVE PLUSフォーク高剛性かつ快適なSAVE PLUSフォーク A:SYNAPSE Hi-MODの開発において軽さはEVOほど重要ではなかったのです。最も重要視したのは快適性、そして剛性感でした。

そして軽さよりも見た目に重点を置いたのです。黒いカーボンの表面に淡い色を塗る場合は、重ね塗りをしないと下地の黒が透けてしまいます。そのため、ペイントは1台につき4回行っているので、塗料の重量がおよそ100gになります。ケーブル内蔵になっているので、インナーワイヤーが通るルートもフレーム内に工作してあります。

BB30Aにすることで軽量化も図っていますので、結果としてはそれでバランスが取れていると考えています。実際に乗ってみてどうでしたか? 非常に快適で、それでいてよく走るバイクだったでしょう? ユーザーが乗ってハッピー、そしてバイクを眺めて、所有していることでハッピーになれるバイクを造りたかったのです。

Q:ワイヤー内蔵についてですが、EVOではメンテナンス性の確保を理由にワイヤーを外通しにしたと記憶しています。今回はなぜ内蔵に?

A:これもルックスを良くする為です。一目惚れするような要素が一つでも多くほしかったのです。EVO関してはメンテナンス性と軽さのためにもワイヤーを外通しにしました。レースで勝てる事を重要視したので、見た目のことは優先しませんでした。それでも十分スタイリッシュだと思いますが(笑)。

メカニックからしてみればメンテナンスしやすいに越したことは無いのですが。でも、SYNAPSE Hi-MODにはフレームの中にアウターを通す構造を設けてあるので、交換は難しくないと思います。

プロダクトマーケティング担当 マレー・ウォッシュバーン

Q:他社のエンデュランスロードと比べて、新しいSYNAPEはそれらとは真逆のスタイルを持って現れたと感じました。フロントフォークについてですが、他社のこのジャンルに属するバイクの多くはベンドフォークが採用されています。先のEVOにおいてもベンドフォークがマイクロサスペンションの一端を担っていました。なぜ今回はストレートタイプを採用したのですか?

A:SAVE PLUSとS.E.R.G.の相互作用を実現するするためです。このジオメトリではヘッド角がEVOよりも寝ています。仮にベンドフォークでオフセットドロップアウトのものをこのフレームに組み合わせるとなると、ペダリング中につま先に接触してしまうくらい大きくベンドしたフォークブレードになってしまうのです。へリックスデザインのストレートフォークにすることで、快適性を持たせつつダイレクトなハンドリングが実現しました。

マレー・ウォッシュバーン「あらゆる乗車姿勢で同様の快適性が得られるのはSYNAPSEだけ」マレー・ウォッシュバーン「あらゆる乗車姿勢で同様の快適性が得られるのはSYNAPSEだけ」
Q:フレーム自体の振動軽減方法についてですが、SYNAPSE Hi-MODでは造形とカーボンレイアップだけで高い快適性を達成しています。競合他社ではエラストマーやベアリングをフレームに内蔵したりしていますが、これについてはどう思いますか?

A:フレームにギミックを内蔵せず、素材や形状の工夫のみで快適性を向上させていることでSYNAPSE Hi-MODはシッティング、ダンシングの乗車姿勢に関わらず同等のライディングフィールを獲得しています。これが新型SYNAPSEの一番の特長ともいえます。

別の物体をフレームに入れることについてですが、例えばT社のシートチューブ付近にベアリングを入れるテクノロジーは振動吸収性に関して非常に優れていると思います。しかしこの手法では、快適なのはシッティング時に限定されてしまうというのが率直な意見です。

へリックス形状のバックステー。高い振動減衰効果が望めるへリックス形状のバックステー。高い振動減衰効果が望める Q:キャノンデールといえばかつてのアワーグラス(砂時計型)シートステーあってこそ、というファンが私の知人には多いのです。私もそんなファンの一人なのですが。SYNAPSEをフルモデルチェンジするにあたり、アワーグラスステーの採用は検討されたのでしょうか?

A:アワーグラスシートステーはキャノンデールの初期のテクノロジーです。あのような砂時計型の形状ではまず、横剛性が不足しているのです。そして、SAVE PLUSの方がより効率的に振動を吸収するので、採用には至りませんでした。それに、当時先端だったとはいえアワーグラスはCAAD4時代のテクノロジーです。SYNAPEにはより革新的なものが必要だったのです。

SYNAPSE Carbon Hi-MODと共に大活躍!ペーター・サガンインタビュー

インタビューに答えるペーター・サガンインタビューに答えるペーター・サガン Q:パワーピラミッドによるスプリントやアタックに対する反応性や剛性の向上は感じられましたか?

A:進化していると思う。石畳のレースは、通常のロードレースとは違っていて、路面にきちんと対応する最高のバイクが必要になる。新しいSYNAPEは自分のそんな要求に応えてくれるバイク。サドルの上で快適であるということは、同時に余計なことを考えずにライディングに集中できるということ。バイクが自分の思い通りにコントロールできると信じることができれば、ライダーはただひたすらに限界までペダルを漕ぎ続けることができる。僕の場合は、限界まで走ることはスプリントの時に必要になる。石畳の上でスプリント勝負になったときでもSYNAPSEは僕の要求にきちんと応えてくれるバイクだね。

Q:快適性についてですが、SYNAPEとEVOでは振動の伝わり方はどのように違うと感じましたか?

A:僕はマウンテンバイク出身のライダーだから、ロード1本でやってきたみんなとは少し違う感覚を持ってると思うんだ。だから、路面からの振動にそんなに悩まされたことはない。快適性の大きな差を感じるとすれば、例えば、パヴェを走っているときのニューSYNAPSEとアスファルトを走っているときのEVOでは、同じレベルで走ることができる。そのくらい快適なのさ。

Q:日本のロードバイクファンに向けて、SYNAPSE Hi-MODのおススメのポイントを一言ください。

A:(ダラダラ走るのではなく)パフォーマンスを十分に発揮しながら、1日中バイクに乗ってみたい(ロングライドをしてみたい)というようなライダーに向いていると思うよ。ベルギーの石畳のレースにニューSYNAPSEで出場したけれど、普段のトレーニングでも使っているんだ。このバイクはパーフェクトさ! とても気に入っているよ!

センセーショナルなデビューを果たした新型SYNAPSEセンセーショナルなデビューを果たした新型SYNAPSE photo:Riccardo Scanferla
提供:キャノンデール・ジャパン text:神宮司 高広