ディファイ1はジャイアントのロードラインナップのベースを成す、ロングライド向けアルミロードバイクだ。ALUXX-SLという、かつてプロチームへと供給されたバイクにも使われた高品質アルミ素材を用いて作られた、ビギナーにとっては十分なほどの性能が与えられたバイクである。

かつて世界のトップレースで走ったアルミ素材を使用する

ジャイアント DEFY 1ジャイアント DEFY 1
ALUXX-SLアルミは、ハイドロフォーミングという、素材となるアルミチューブの内側に液体を満たし、高い圧力をかけ膨張させる製法によって造られる。複雑な形状のパイプを形作ることを可能とした技術で、これによって成形されたアルミフレームはジャイアントが得意とするものだ。
このハイドロフォーミング製法を用いることで、パイプの肉厚を薄めて軽量化を実現し、加えて強度が必要な箇所を角断面などにすることで、形状により強度・剛性をコントロール。重量を増さずに剛性を高めることができるのだ。

アルミバイク全盛期の頃、ALUXX-SLアルミを用いたバイクは当時の強豪プロチーム「オンセ」などへと供給され、ツール・ド・フランスやクラシックレースなど、世界のトップレースで大きな活躍を見せた。ディファイ1は、そんな血統を受け継ぎ、ビギナーにロードレーサーの楽しみを提供するために生まれたバイクだ。

下側1-1/4インチのOVERDRIVEヘッドチューブを採用下側1-1/4インチのOVERDRIVEヘッドチューブを採用
ハイドロフォーミングによって薄く、多角断面に成形されたダウンチューブハイドロフォーミングによって薄く、多角断面に成形されたダウンチューブ
ストレート形状のカーボン製フロントフォークをアッセンブルするストレート形状のカーボン製フロントフォークをアッセンブルする

ディファイシリーズの特徴は、シートチューブとヘッドチューブの角度を寝かせ、トップチューブを短く、ヘッドチューブを長くしたエンデュランスジオメトリーを採用し、アップライトなポジションと高い直進安定性を確保していること。しかしディファイは単なるエントリーアルミとは異なり、下側1-1/4”のOVERDRIVEヘッドチューブの採用や、プレスフィットBB86を導入したPOWERCOREなど、TCRと同じシステムを用いて走りの性能を高めていることも特徴である。

フロントフォークはブレードが先端にいくほど細くなるシルエットを持ったカーボン製。振動吸収性を高めて快適さを増し、コラムをアルミ製とすることでハンドリング性能とフロントブレーキの制動力を確保するなど、ビギナー向けバイクと言えども一切手を抜いていない。

フレームとカラーコーディネートされたジャイアントオリジナルホイールフレームとカラーコーディネートされたジャイアントオリジナルホイール メインコンポーネントにはシマノ 105を採用。チェーンリングはコンパクト仕様だメインコンポーネントにはシマノ 105を採用。チェーンリングはコンパクト仕様だ

コンポーネントはシマノ・105を中心に組み上げられ、フロントチェーンリングはビギナーに適した50-34Tのコンパクト仕様。スプロケットは12-28Tとワイドギア仕様とされ、サイクリングから山岳を含むロングライドまで、幅広く対応した組み合わせとされている。

シートポストはジャイアントオリジナルのカーボン製として所有欲を高め、ホイールはフレームとカラーコーディネイトされたジャイアントオリジナル品。付属するサドルは厚めのパッドが施されたものが採用され、ロングライドをサポートしてくれるはずだ。

シンプルな形状の後ろ三角。振動吸収性に貢献するシンプルな形状の後ろ三角。振動吸収性に貢献する シートポストは丸断面のカーボン製を投入するシートポストは丸断面のカーボン製を投入する クッション性の高いサドルで、ロングライドをサポートクッション性の高いサドルで、ロングライドをサポート

こうして組み上げられたディファイ1の完成車重量は、Mサイズで9.2kgをマーク。このスペックで13万円を切る価格は、これからロードバイクを始めたいビギナーには魅力的に映ることだろう。女性専用設計のAVAILがラインナップされることも見逃せない。

ジャイアント DEFY 1 スペック

サイズ430(XS)、465(S)、500(M)、535(ML)mm
マテリアルALUXX SL-Grade Aluminum
フォークAdvanced-Grade Composite,Aluminum OverDrive Column
コンポーネントシマノ 105
ホイールGIANT P-R2 FORMULA Cartridge Bearing(ハブ)
重量9.2kg(500mm)
価格126,000円(税込み)


インプレッション

「軽量アルミらしく、快適性も高い。長い距離の上りもこなせる」
橘田脩平(湘南ベルマーレ)

「軽量アルミらしく、快適性も高い。長い距離の上りもこなせる」橘田脩平(湘南ベルマーレ)「軽量アルミらしく、快適性も高い。長い距離の上りもこなせる」橘田脩平(湘南ベルマーレ) 路面からのインフォメーションが細やかに伝わり、アルミの特性が活かされた乗り味を感じます。しかし、ロードインフォメーションは掴みやすくとも、突き上げ自体はさほど強く感じませんでした。

少し前のアルミフレームでネックとされていたような性格は薄れていて、カーボンフレームにこそ敵わないものの、上手く振動をコントロールする快適性を有していると感じます。おそらくチューブの厚みが薄いことに起因しているのでしょう。とりたててモタつく感触はありませんでした。

路面の情報がわかりやすいため、バイクを押さえ込むタイミングが取りやすく、ダウンヒルが非常に安心してこなせました。インプレ当日はウエットコンディションだったのですが、安心して下りもこなすことができます。シートチューブが寝ているため、腰を引いたポジションを取りやすいことも特徴ですね。

上りでアタック的な走りをすると、アルミらしいキレ味の感じられる走りをしてくれます。ウィップが少ないため体重をかけてダンシングしてもバイクが前へと進んでくれます。アルミらしくペダリング入力に対する反発も大きいのですが、ある程度乗りなれて来れば問題無いでしょう。重さこそハンデになりますが、快適性の高さゆえ、長い距離の上りも苦手ではありません。

平坦路では、高速域から更にもう一伸びしてくれる、アルミらしさがありました。脚力があれば良く走ってくれるはずです。腰を据えて、長い距離を走るのに適したアルミバイクです。サイクリングイベントやビギナーレベルのレースならば問題無く走ることが出来るでしょう。

「芯がしっかりしている。エントリーグレードらしからぬ剛性感」
神宮司高広

踏んだ瞬間、芯のある剛性感を感じました。まさに「しっかりしている」といった表現がぴったり。トルクをかけたい時にちゃんとフレームが応えてくれる。その剛性感は巡航状態からさらに一枚ギアを重くしたいと思わせてくれるほどです。

登坂ではそのフレーム剛性の高さゆえ、性能を引き出すならば軽いギアでクルクルと上るよりも、大きなギアを使って踏むほうが適していますね。スピード感のあるヒルクライムに適していると感じます。下側のベアリングに大きな径のものを使用しているためか、ダウンヒルを安心してこなせる安定感があります。タイトなコーナーを曲がる際にもブレたりせず、恐怖感を覚えることもありませんでした。

「芯がしっかりしている。エントリーグレードらしからぬ剛性感」神宮司高広「芯がしっかりしている。エントリーグレードらしからぬ剛性感」神宮司高広
アルミとは思えないほど振動吸収性能に長けていることも驚きです。「高剛性なカーボンフレーム」という表現が適当でしょうか。安価なモデルですが、決して性能面に雑な部分が無く、価格に対する軽さ・快適性は非常に良好でした。ロングライドに持ち出しても、必要以上に疲れてしまうこともないはずです。

社会人ならば問題無く購入できる金額ですし、長期的に見てもずっと付き合えるバイクだと思います。スポーツバイクの扱いに馴れない方ならぶつけてしまうこともあるでしょうし、カーボンや超軽量アルミモデルと違ってその部分での安心感が高いことも魅力でしょう。体重のある人やフィットネスレベルが高い人には、アルミの剛性感、芯がシッカリした部分が活きてくるはず。価格以上の性能を秘めた一台です。
提供:ジャイアント 編集:シクロワイアード編集部