前回、高速シマノトレインに無賃乗車をかますという暴挙に出たメタボ会長と、エイドステーションで何とか合流を果たした私たち。憔悴しきった表情の編集長とは裏腹にオヤジはまだまだ元気一杯だ。

ここからは再び海岸線を北上し、今回のメインとも言える”古宇利大橋”を目指して進む。前を走るメタボ会長のイエロードマーネが、見慣れたせいもあってかやたらカッコよく見えるのが悔しくてならない。沖縄の碧い空と海にその眩しいイエローの車体がひときわ映えている。

「おお~、やっと来たか!待ちくたびれちゃったぞ!」「おお~、やっと来たか!待ちくたびれちゃったぞ!」 広々とした本部循環線を北上してゆく。広々とした本部循環線を北上してゆく。


本部大橋を楽しそうに越えて行く。結構なアップダウンだ。本部大橋を楽しそうに越えて行く。結構なアップダウンだ。 「こいつカワイイな!連れて帰ろうか?」いやいやダメでしょ!「こいつカワイイな!連れて帰ろうか?」いやいやダメでしょ!


南国リゾートならではの解放感と一面に広がる碧い海に、すっかり気を許した編集長がのん気に話しかける。
「会長!ヤッパリ新車はイイですね!おまけに走り初めが沖縄なんて最高ですね!会長はいつもお忙しいのに今回はうまく長期休暇が取れてよかったですね!」

この言葉に急に真顔に戻ったメタボ会長から意外な言葉が返ってくる。「ん?今回の沖縄入りは、休暇じゃなくて業務だよ。」この突拍子もない言葉にあっけにとられることしかできない編集長に対して、オヤジが言葉を続ける。

「君たちは何か勘違いをしてるみたいだけど、今回は君たちの働きっぷりをチェックする事を目的とした現場視察だよ。だから今までと違って渡航費を含め全ての費用は、直近の数字が一番良かった消防事業部の予算から捻出したから何も問題なし!」

これがずいぶんと荒っぽい理論展開である事は誰の耳にも明らかである。誰がどう見たって単なる休暇でサイクリングを満喫してるだけじゃんか!こんな感情を抱いた私たちの感覚こそ常識的なものであるはずだ。

日本一早い桜?ならぬ桜モチをいただきました。日本一早い桜?ならぬ桜モチをいただきました。 この店構えにこのネーミング。昭和を感じさせてくれます。この店構えにこのネーミング。昭和を感じさせてくれます。


「ダチョウ見て行こうぜ!」ちょっと時間が足りませんでした。「ダチョウ見て行こうぜ!」ちょっと時間が足りませんでした。 羽地内海に掛かる橋の上から絶景が臨めました。穴場です。羽地内海に掛かる橋の上から絶景が臨めました。穴場です。


「消防事業部の方々は、会長の沖縄旅行の経費を負担する事を納得されているんですか?」
状況が把握しきれない編集長の問いかけにも、全く悪びれる様子も見せずにオヤジは持論を展開する。

「何言ってるの?消防事業部もトップは俺だよ?納得も何も全く問題なしだよ。個人的な沖縄旅行に会社の予算を使った場合は背任行為になっちゃうけど、今回は君たちの業務に対する評定視察なんだから当然の処理だよ。逆に、いままでの現場視察がすべて俺の自腹だったことのほうが問題だよ。」

もはや、この暴論を止める事は誰にもできない様相を呈している。ただ、会長の渡航費がメディア事業部持ちでない事にホッとした表情を浮かべる私たちに、サラリーマンの悲しい性が滲み出しているのもまた悲しい事実だ。

「そもそも、君たちが毎年キッチリ積み上げてくれる赤字だって、他の事業部が補填してるんだから同じ事だよ!でもまあ、君たちも俺もお互いに大切な業務ってことで丸く収めるのが一番イイんじゃないか?」
メタボ会長がニヤリと浮かべた表情の奥底にワルイ大人の思惑を感じ取ったのは私だけではあるまい。

南国の爽やかな空の下、ドロドロとした大人の理論を繰り広げながら車列は進む。海岸線を離れ内陸部に差し掛かっても、風景は本土とは異なる沖縄らしさを醸し出してくれる。そんな風情を味わいながら、ほどなくして古宇利大橋に差し掛かる。

古宇利大橋にやってきました。何回訪れてもこの景色は素晴らしいとしか表現のしようがありません。海の色が違う。古宇利大橋にやってきました。何回訪れてもこの景色は素晴らしいとしか表現のしようがありません。海の色が違う。

古宇利大橋はさすがに今コースのメインだけあって、何度訪れても飽きることない美しい風景を醸し出している。参加者さんもみな各々に立ち止まってシャッターを切っている。私たち取材班にとってもここはメインの撮影場所となるため、30分ほどじっくりと腰を据え、参加者の皆さんをカメラに納めてゆく。

ひたすら撮影に勤しんでいる編集長に女性ライダーさんから声が掛かる。「すみません、写真取ってもらってイイですか?」そう言って手渡されたスマホを受け取り、満面の笑みを浮かべながらシャッターを切る編集長。カメラマンを生業とする編集長が真剣な眼差しでスマホのシャッターを切る姿は、普段を知る私には滑稽にしか見えないのだが本人はいたって大真面目に取り組んでいる。

「チョ~気持ちイイ~!」古宇利大橋を独り占め。「チョ~気持ちイイ~!」古宇利大橋を独り占め。 メインとなる撮影場所でマジメに業務に勤しむ編集長。メインとなる撮影場所でマジメに業務に勤しむ編集長。


「はいチーズ!」編集長までもが小悪魔ちゃんたちのパシリに?「はいチーズ!」編集長までもが小悪魔ちゃんたちのパシリに? 30分を越える撮影に待ちくたびれる男がひとり。30分を越える撮影に待ちくたびれる男がひとり。


揚げたてのサータアンダーギーをいただきました。揚げたてのサータアンダーギーをいただきました。 古宇利大橋からの登り返し。けっこうキツイんです。古宇利大橋からの登り返し。けっこうキツイんです。


朝一番のメタボ会長といい、目前でシャッターを切る編集長といい、ウチの上司たちはとにかく女性ライダーに甘い。もちろん、甘いだけなら何ら問題ないのだが、女性ライダーに接する時の締りのない表情が問題なのだ。こんなだらしのない上司2人の絶対命令系統に属している自分の立場が悲しくてならない。もっとも、同じ状況に置かれた時の私の表情が、キリッと引き締まっている保証はどこにもない事は言うまでもないが。

古宇利大橋を後にした私たちが、次に目指すのはランチエイドの”OKINAWAフルーツランド”だ。ここでは食べ放題のビュッフェが待っていてくれるため私たちの足取りは軽い。多少の坂道が現れてもペースが落ちる事もなく快調に車列は進む。この道中で桜にも出会う事が出来たので、今大会のチャッチフレーズ、”日本一早い桜と碧い海を駆け抜ける”は完遂である。

妙に楽しげなシーサーと小太りのオヤジ。やはり微妙?妙に楽しげなシーサーと小太りのオヤジ。やはり微妙? たまに現れる登坂。平均8%あたりなので問題なし?たまに現れる登坂。平均8%あたりなので問題なし?


「本当に咲いてるぞ!」日本一早い桜を見つけました。「本当に咲いてるぞ!」日本一早い桜を見つけました。 ランチエイドのOKINAWAフルーツランド。食べ放題だ。ランチエイドのOKINAWAフルーツランド。食べ放題だ。


「はい!いただきます!」郷土料理がズラリ並ぶ。「はい!いただきます!」郷土料理がズラリ並ぶ。 「ココは撮るなよ!」あれだけ食べたあとに、まだアイス?「ココは撮るなよ!」あれだけ食べたあとに、まだアイス?


”OKINAWAフルーツランド”で食べ放題を堪能した私たちは、いよいよゴールを目指して走り出す。満腹中枢を満たされたメタボ会長もすこぶるご機嫌のご様子だ。普段ならそろそろ弱音を吐き始める筈のオヤジだが、イエロードマーネが持つ抜群の快適性も手伝ってか、ペースが落ちる気配すら感じさせない。いよいよ私たちの100kmもゴールを迎える。

小学生ライダーも完走まであと少し!ガンバレ!小学生ライダーも完走まであと少し!ガンバレ! やっぱり女性ライダーとランデブーを楽しむエロオヤジ。やっぱり女性ライダーとランデブーを楽しむエロオヤジ。


「ウチのカメラあそこだよ!みんなで写っちゃえ!」最後は素敵な女性ライダーさん達とゴールを迎える。「ウチのカメラあそこだよ!みんなで写っちゃえ!」最後は素敵な女性ライダーさん達とゴールを迎える。

こうして、あっという間にゴールを迎えた”美ら島オキナワ・センチュリーラン”が幕を降ろす。東京では想像もつかない温暖な気候の中を駆け抜けてきた参加者の皆さんの顔は、大きな満足感を漂わせながら抜群の輝きを放っている。私たち編集部にとっても、新年の取材初めがこの沖縄である事には、大きな感謝と小さな役得を感じずにはいられない。

「いやぁ~!今日も最高に楽しかったな!こんな仕事なら毎日でもイイな!早く片付けて飯でも食いに行こうぜ!」
業務に名を借りたサイクリングを満喫したメタボ会長が満面の笑みで吠える。そんな彼にご夫婦で参加されていたライダーさんから声が掛かる。
「会長のお腹さわらせてもらってイイですか?ご利益があるって書いてありましたもんね?」この会話を聞く限りでは、このご夫婦ライダーのお二人はかなり古くからのメタボ読者さんに違いない。隣の編集長は苦笑を隠せない様子である。

ゴール後、無料のトン汁が振る舞われる。ゴール後、無料のトン汁が振る舞われる。 その腹に触れるとご利益がある? いいえ災いだけです。その腹に触れるとご利益がある? いいえ災いだけです。


こうして、私たちの沖縄リゾート取材も幕を下ろした。天候にも恵まれた今大会は、過去2大会以上にサイクリングを満喫できた実感がある。メタボ会長の晴れ男っぷりが今回の天気に関与したか否かは知る由もないが、もし来年も晴天が約束されるのであれば、頭を下げてでも会長に同行をお願いしても構わないとまで感じさせるほどの楽しさだった事は紛れもない事実だ。それほど、天候に恵まれた沖縄は素晴らしいものであった。

来年もオヤジを連れて来るぞ!そんな普段ではあり得ない宣誓を心に抱きながら、片付けにいそしむ私だった。


今回、編集部チームが実走取材にお伺いした"美ら島オキナワ・センチュリーラン2013"を支えて下さった大会関係者並びにサポートスタッフの皆様に心より御礼申し上げます。    編集部一同。




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「ポイ捨てはダメだぞ!」「ポイ捨てはダメだぞ!」 メタボ会長
身長 : 172cm 体重 : 82kg 自転車歴 : 3年

当サイト運営法人の代表取締役。平成元年に現法人を設立し平成17年に社長を引退。平成20年よりメディア事業部にて当サイトの運営責任者兼務となったことをキッカケに自転車に乗り始める。ゴルフと暴飲暴食をこよなく愛し、タバコは人生の栄養剤と豪語する根っからの愛煙家。