皆さんこんにちは。2011年3月に台湾青年トラベラー大使として、ロードバイクで台湾一周をしてきました大河原正晴です。その時のレポートもこちらでお届けしましたが、今回は2011年11月に参戦してきた"太魯閣ヒルクライム2011"を台湾の魅力と共に紹介させて頂きます。

壮行会にお邪魔して、気が引き締まる思い。壮行会にお邪魔して、気が引き締まる思い。 3月に走り回った台湾では、辿り着いた各地でバドミントンの交流試合をさせていただきました。道中も、宿も、食事も知り合ったばかりの現地の方々にお世話になりっぱなしでした。

今回ももちろん太魯閣ヒルクライム参戦+バドミントンの欲張りスケジュールです。台湾への恩返しという気持ちを込めて、参戦レポートをお届けしましょう。

今回参戦してきた太魯閣ヒルクライム2011、世界で最も過酷なヒルクライムレースの1つと言われるこの大会。標高0mからスタートして、3275m地点まで登ってしまうのです。距離は90.5km、獲得標高は3620mになるとんでもないレース。過酷さが際立つ大会ですが、その一方で日本と台湾の人と心を自転車でつなぐ素敵な大会です。出発前には在日台湾大使館にて壮行会が開催され、昨年も参加した有名な選手たちやメディア関係者が集まる中、僕もちょこっとだけご挨拶に伺いました。

花蓮~太魯閣までは非常に走りやすく、わかりやすいルート花蓮~太魯閣までは非常に走りやすく、わかりやすいルート 2010年の大会の貴重なお話をたくさん聞けると同時に、これは本格的な準備をしなければ簡単には完走できないレースではと再確認。

未体験ゾーンへ挑戦する緊張感と、親しみのある台湾・花蓮へまた行けるというワクワク感で、胸いっぱい。そして、たくさん並んだ料理たちにお腹いっぱい。

僕が始めて大会のことを知ったのは、2011年3月に台湾一周の途中で花蓮という島の北東部の都市に訪れた時。仲良くなった地元のバドミントン愛好者の中に、自転車乗りの方がいて、その方曰く、

『台湾には天に向かって登っていくレースがある。ここからすぐ近くの太魯閣であるレースがまさにそれだ!!自転車乗りなら是非一度挑戦してみるといい。』と、教えていただきました。そんなことを言われたら、自他共に認める欲張りサイクリストの大河原正晴、挑戦しないわけにはいきません。

早速その話を聞いた翌日、自分の目で確かめてみようと思い、花蓮から太魯閣へロードバイクで乗り込むことに。花蓮から海岸線を走る道路9号線を北上していき、新城駅を越えたあたりで8号線に入りしばらく進むと、天まで続くといわれる太魯閣渓谷の入り口に辿り着きます。国家自然公園として、台湾有数の観光地としてたくさんの観光客が訪れ、その絶景に唖然とする場所。そして、常に落石に注意しなければならない、自然の荘厳さを肌で感じることができます。

絶壁がくり抜かれた道路。目の前に崖が迫ります。絶壁がくり抜かれた道路。目の前に崖が迫ります。 まさかの通行止。登るのを諦め、本番までおあずけ。まさかの通行止。登るのを諦め、本番までおあずけ。


辿り着いてみると想像以上の絶景、ところどころ出現する真っ暗なトンネル、どこまで続くかわからない坂道。そして、生々しい落石のあと。落石というにはおぞましいサイズの岩が落ちてきた光景が至る所で見かけられます。とんでもないところに道を作った先人たちの偉大さに感嘆。

いざ登り始めてしばらくすると、観光バスが大渋滞。なにごとかと確めに先頭まで行くと、なんと、通行止め!!桜が咲いていると聞いていた頂上付近ですが、今日は天候がよろしくないため、ここから先は通行不可とのことでした。話によると頂上付近の路面凍結により、危なくて上まで行かせるわけにはいかないとのこと。上まで登るのは本番までの楽しみにとっておけってことですね。

そして、時は流れ、決戦の11月。いよいよ待ちに待った今回の太魯閣ヒルクライム参戦のため、まずは台北に上陸。羽田空港から台北市内にある松山空港へ。どちらも市街地中心部から空港までのアクセスが非常に便利。空港内では自転車を前面に押し出した観光局の写真広告を発見!なんと背景は太魯閣渓谷。すごく歓迎されている気分にテンションもあがります。

壮大な景色に自転車の写真、ロードバイク+ラケットバックで上陸です。壮大な景色に自転車の写真、ロードバイク+ラケットバックで上陸です。 自転車持ち込みの際の案内自転車持ち込みの際の案内


街中の至る所に、自転車を掲げた広告や、イベントの告示があることが非常に印象的でした。その中でも、台湾100周年記念の大晦日の日に台湾一周を自転車で繋げようというイベントがあることには驚きました。世界の自転車工場に成長した台湾。民間も政府も一体になって自転車に力を入れている様子が伝わってきます。

輪行して花蓮に到着輪行して花蓮に到着 また、台北市内に張り巡らされつつあるMRT(地下鉄)。自転車持ち込み可能な駅と、持ち込み不可な駅があり、そのルールとともに告知されています。

輪行すれば特に指定の駅以外でも荷物として持ち込み可能とのこと。台北から花蓮に電車で行く際も電車内に輪行した自転車を置くスペースがあり、自転車に対するやさしい気遣いを感じます。

ちなみに、列車と乗り降りする駅によっては、輪行せずに自転車運搬用切符を買って、自転車をそのまま載せることが可能なこともあるんです。

レース2日前の金曜日に台北に到着していたので、3月にお世話になった方々へあいさつ回りをして、夜は地元のバドミントンチームにお邪魔して、ちゃっかりバドミントン交流。

翌日の土曜日、花蓮に無事に到着。少し天気の怪しい花蓮でしたが、到着後、まずはレースの受付場所となるホテルへ。訪れた時にはホテル専用ルームで各国選手たちを集めての記者会見が開催中でした。一般参加の選手たちは、ホテルからすぐそばにある花蓮高中(学校)の体育館で受付後、歓迎パーティーに参加します。

案内をしてくれたスタッフ案内をしてくれたスタッフ 専用のサインボードも専用のサインボードも


『花蓮高中』、なんだか見覚えのある景色に聞き覚えのある名前。記憶を辿りながら、体育館に向かうとびっくり。なんとここの体育館、3月に花蓮に訪れた時に、バドミントンをさせていただいた体育館だったのです。懐かしさと、感謝の気持ちと、ここで出会った人々を思い出しつつ、無事に受付完了。

歓迎パーティーまで時間があったので、宿に戻り、翌日のレースの準備。駅前のGIANTで整備をしてもらったり、タイヤをレース用に履き替えたり。そんな中、現地の友人から連絡があり、今夜のバドミントンのお誘いをいただきました。普段なら喜んで参加してしまうところですが、明日のレース難度は未知の世界。未体験の標高差にゴール地点の高度。バドミントンの疲れはともかく、睡眠不足だけは避けたいところ。

花蓮駅前にあるGIANT SHOPにてメンテナンス花蓮駅前にあるGIANT SHOPにてメンテナンス レース用にMAXXIS着用レース用にMAXXIS着用


そんなわけで、レース当日の朝が早いことを理由に、泣く泣く断念。代わりにレース当日、完走後にまた花蓮まで戻り、またこの花蓮高中に体育館でバドミントンをする約束をすることに・・・。ということは、バドミントンをする体力を残した上、時間内に完走し、さらに夜の約束の時間までに花蓮まで戻らなければならないことになったわけです。このハードルの高さも未知の世界。自身の身体を自由自在に管理してこそのパーソナルトレーナー、挑戦のしがいがあるってものです。

準備を終えて、歓迎パーティーの会場に戻り、日本からツアーで参加している方々への補足のミーティングへ。全体の大会説明での補足や質問受付をしていただき、厚いサポート体制にレースへの不安が和らげてくれます。

ちなみに、大会前夜の花蓮では雨が降り始め、翌日の大会当日は嵐の予感。レース開始直前まで開催するかどうかの判断を持ち越すとの情報も入り、大会関係者や選手たちも、不安の表情を隠せませんでした。

シクロワイアード編集長と一緒に謝謝Tシャツでシクロワイアード編集長と一緒に謝謝Tシャツで そんな中、非常に勇気をいただけたのが、このイベントの日本人プロデューサー笹忠之さん(R1ジャパン)らの発案により作成され、日本人参加者に配られた、『謝謝台湾』の記念Tシャツ。

大地震で傷ついた日本に、真っ先に支援の手を差し伸べてくれた台湾、その行動に感謝する気持ちが、イラストで表現されているTシャツ。明日はまさにこの気持ちを胸に秘めて、台湾の自然に挑戦してみたいと思うのでした。

パーティー後は、レース当日の朝食調達のために果物屋へ。台湾特有の南国のカラフルな果物たちが、所狭しと並べられています。そして、翌日のためにおいしいものをたらふく補給しておかなくてはという口実のもと、お気に入りのガチョウ肉の専門店へ。

花蓮では非常に有名なお店で、昼から夜遅くまで、観光客から地元客まで、客足が途絶えないお店。実はここのお店のオーナーがバドミントン愛好家で、3月に訪れた際、非常にお世話になった方なのです。

台湾と言えばおいしい果物!台湾と言えばおいしい果物! 地元花蓮のガチョウ専門の有名店地元花蓮のガチョウ専門の有名店


相変わらずの美味しい料理に舌鼓を打ちつつ、太魯閣を何度も走破したことのある自転車乗りのバドミントン選手から、いろいろ話を伺います。僕が太魯閣ヒルクライムに参戦することを知って、わざわざこの日のために何度もコースを走って、アドバイスをしに来てくれたのです。こんな国境を越えた友情に感慨無量です。

食事もアドバイスもいただいております。食事もアドバイスもいただいております。 レースでは頂上手前、最後の10kmの登りがとんでもないことと、この天候なので、とにかく土砂崩れや道の状態、そして寒さに気をつけるようアドバイスを頂きました。

花蓮では一週間前頃から嵐のような天気が続いており、道路は不安定な状態が予想されていて、それを知っている地元の選手たちは、当日の天候が悪ければ、多くの選手が棄権するだろうと言う話をしていたのが印象的でした。

地元の方たちは、普段から何度も走る機会があるのだから、わざわざ天候が悪い時に走る必要がないのも納得のいく話ですが、年に一度のつもりで来ている我々日本人にとっては、なんとか天候が良くなり、レースが開催されることを祈るのみです。

そういえば、3月に台湾一周を走ったときも、予想を上回る台湾の自然の厳しさに、幾度となくくじけそうになったこと思い出しました。そんな時、助けてくれたのはいつも地元の方々の温かいもてなしや手助け、今回もなんとかなるだろうと信じて、翌日に備えるのでした。

次回はいよいよ"太魯閣ヒルクライム2011"の実走レポートをお届けします。


text&photo:Masaharu.Okawara
edit:Kenji Degawa



大河原 正晴大河原 正晴 大河原 正晴 プロフィール

BICYCLE TRAINERS JAPAN 代表。
JCAサイクリングインストラクターを始め、上級救命技能、高齢者体力づくり支援士などの資格を有し、バドミントンと自転車を武器に日本各地、世界各国を駆け巡り、ウェルネスライフを実践するPERSONAL TRAINER。
都内フィットネスクラブ・自宅・出張にてパーソナルトレーニング指導したり、都内を拠点にパーソナルライド、パーソナルランニングセッションも実施する。
クライアントは運動未経験の女性からトップアスリートまで、年齢も子供から高齢者に至るまで、多岐に渡る。自身の身体能力を引き出すためのトレーニング、コンディショニングアドバイスを中心に、将来長く健康を維持するための生活習慣の見直しや提案、生涯スポーツへの挑戦もサポートもしてくれる。