神宮外苑クリテリウムは、ロードレースカップシリーズ全11戦の最終戦。ここで年間チャンピオンが決定するということで、激しい戦いが繰り広げられた。そこで、いまどき大学生の自転車事情の後編は、そんな熱い戦いを繰り広げた注目レーサーも登場する熱血・男子レーサー編。それでは、いってみよう!

選手同様に応援にも熱が入る!選手同様に応援にも熱が入る! 注目のレーサーにみんなで声援を送る注目のレーサーにみんなで声援を送る


東京大学 2年 荒牧 純平 くん エヴァディオ ヴィーナス
まずは学生らしい、いい味を出しているエヴァディオから「フレームは先輩から譲ってもらいました。部で代々乗り継いだフレームで、僕で3人目のオーナーなんです」よく見ればあちこちに使い込まれた痕跡が。
「キシリウムSLのホイールは、西薗さんから譲ってもらいました。サドルは部室に捨てられていたものですが、まだ使えそうだったんで」。このなんとも大学生らしい感じが微笑ましい。「お金が貯まったらサドルとコンポを変えたいですねぇ」

東大のチームカラーに塗られたフレームはエヴァディオ。代々使ってきた全体のヨレ感がいい感じ東大のチームカラーに塗られたフレームはエヴァディオ。代々使ってきた全体のヨレ感がいい感じ
幾多の思い出や歴史が詰まったフィジーク。ここまで使うと、なんだか美しいね幾多の思い出や歴史が詰まったフィジーク。ここまで使うと、なんだか美しいね 105のコンポも程よく使い込まれている。ホイールは「西薗さんが使っていたモノなので、ちょっとプレッシャーが大きいです」105のコンポも程よく使い込まれている。ホイールは「西薗さんが使っていたモノなので、ちょっとプレッシャーが大きいです」



明星大学 米内 蒼馬 くん グラファイトデザイン メテオ スピード
グラファイトデザインにデュラエース、ボーラに極めつけはSRM!こう言っては何だが、とても学生のバイクとは思えない豪華装備満載のレースバイクに思わず足を止めた。「しなやかな感じが独特のフレームなんですが、自分にはすごく合っていてかなり好きです」。ところでコレ、誰かの貢ぎモノ?それともキミは、学生IT社長か何か??「じつは自分のバイクを壊してしまったので、全て監督さんから借りて、今は乗らせていただいているんです」とのこと。なぜだか少しホッとしたのでした。

昨年自分のバイクを壊してしまったという米内くん。そこで急遽、この豪華装備バイクを借りているそう昨年自分のバイクを壊してしまったという米内くん。そこで急遽、この豪華装備バイクを借りているそう
SRMにボーラウルトラ!「監督さんより借りている」ということだが、「監督さん」って、ところでどんな人なんでしょ?SRMにボーラウルトラ!「監督さんより借りている」ということだが、「監督さん」って、ところでどんな人なんでしょ? 明星大学カラーに合わせたグリーンのバーテープとピンクのフレームが、春を感じる組み合わせ明星大学カラーに合わせたグリーンのバーテープとピンクのフレームが、春を感じる組み合わせ



東京大学 4年 西薗 良太 くん KOGA キメラロード
すでにシマノレーシングへの加入が決定し、この外苑クリテでシリーズ年間王者に輝くなど、この日最も注目が集まっていた西薗くん。今日のバイクは早くもシマノレーシング仕様のKOGA。さすがー!と思ってよく見るとフレームに「の」の文字。「じつはこのバイクは、野寺監督のお下がりなんです。自分用はもう少し先になるようです」カメラを向けると「ちょっと待ってもらえますか。」とシマノレーシングのアームウォーマーをわざわざ装着するあたり、早くもプロらしい振る舞いを見せていました。

この外苑クリテリウムの翌日には、シマノレーシングの南紀白浜キャンプに合流するという西薗くんこの外苑クリテリウムの翌日には、シマノレーシングの南紀白浜キャンプに合流するという西薗くん
「の」印のフレームが今のところの西薗くんのバイク。「の」印のフレームが今のところの西薗くんのバイク。 新型デュラエースのペダルを早くも投入!新型デュラエースのペダルを早くも投入!



明治学院大学 梅田 尚孝 くん アンカー RHM9RS
今日はアタックを続ける走りをしたいという梅田くん。前に乗っていたRFX-8から、監督の薦めもあって最近このRHM9RSに乗り換えた。「力を受け止めてくれる頼もしいバイクです」ポイントとなっている、ゴールドのフレームとゴールドのバーテープには監督の「優勝してゴールドメダルを」という思いが入っているそう。「このバイクにして入賞できたし、それでクラスも上がることができました!」というアンカーは、梅田くんの成績に大貢献している。

チームジャージもゴールドに近い黄色を配色して、全体の統一感が高い組み合わせチームジャージもゴールドに近い黄色を配色して、全体の統一感が高い組み合わせ
ゴールドのバーテープは、レース中にいつでも監督のメッセージが伝わって来そうなカラーゴールドのバーテープは、レース中にいつでも監督のメッセージが伝わって来そうなカラー 「お金が無いのでフロントとリアディレーラーだけがデュラエースです」という梅田くん。「できればフルデュラエースにしたい」「お金が無いのでフロントとリアディレーラーだけがデュラエースです」という梅田くん。「できればフルデュラエースにしたい」



ここでちょっとひと休み。
クルマに自転車って何台積めるの?

会場を回っていて気になる光景に出会ったのがこちら。学生たちがワゴン車の上に自転車を乗せ始めた。1台、2台、3台、4台・・・次から次にどんどん屋根の上に。最終的にその数、なんと12台!こんなに積めるなんて、正直に言って知りませんでした。しかもコレ、まだ屋根の上だけ。室内にも乗せたら、一体何台積めるの?

積み込み開始。まだこの段階ではそれほどでも積み込み開始。まだこの段階ではそれほどでも ジャーン!積み込み完了。6台ずつ前後2列でなんと合計12台!でもまだ屋根だけですジャーン!積み込み完了。6台ずつ前後2列でなんと合計12台!でもまだ屋根だけです


積み込みをしていた日本大学の学生に聞いてみたところ、今日はこれでもまだ少ないそうです。40台以上をクルマ3台に積み込んで移動することもあるそう。

鹿屋体育大学 1年 山本 元喜 くん キャノンデール スーパーSIX Hi-MOD
2010年のU23全日本チャンピオンに輝き、大学生にしてツール・ド・北海道をステージ優勝するなど、すでに大学生を超えた実力を発揮する山本 元喜くん。彼の足下を支えるバイクは、キャノンデール スーパーSIX「すごく軽くてよく進むし最高のバイクです!」と絶賛する。高校時代から使っているという真っ赤なフルクラムレーシングZEROと、鹿屋体育大学メンバーお揃いの赤いフレームは、まるで全日本チャンピオンカラーのようです。

グループ1は他の選手に任せ、自らはグループ2にエントリーした山本くん。見事に優勝を飾っていましたグループ1は他の選手に任せ、自らはグループ2にエントリーした山本くん。見事に優勝を飾っていました
山本くんのパワーにも負けないクランクとフレームはキャノンデール山本くんのパワーにも負けないクランクとフレームはキャノンデール 真っ赤なホイールに真っ赤なパナレーサー レースAは、まるで全日本チャンピオンカラー真っ赤なホイールに真っ赤なパナレーサー レースAは、まるで全日本チャンピオンカラー



中央大学 2年 勝谷 勝治 くん イリベ オーダーバイク
黒字にゴールドの文字、トップチューブに漢字で入る名前。学生らしからぬ渋いバイクは、奈良の自転車工房イリベのフルオーダーバイク。「体に合ったバイクが欲しかったので、イリベでオーダーしました。コロンバス スターシップのアルミフレームです」「このブラックとゴールドも自分でチョイスしたんです。でもいま大学選手権に同じカラーのイリベが僕を含めて3人いるんです。みんな強い先輩たちなんで頑張らないと」。派手なメーカーバイクに混じって目立っていた。

真っ黒のバイクが逆に目立つのでつい声を掛けたのが、このイリベのフルオーダーバイク真っ黒のバイクが逆に目立つのでつい声を掛けたのが、このイリベのフルオーダーバイク
リアバックはコロンバスのカーボンバック・マッスル。フロントフォークはタイム。どちらもビルダー入部氏のチョイスとうリアバックはコロンバスのカーボンバック・マッスル。フロントフォークはタイム。どちらもビルダー入部氏のチョイスとう トップには漢字で名前が入る。この渋さは目立つね!トップには漢字で名前が入る。この渋さは目立つね!



中京大学 2年 中根 英登 くん デ・ローザ キング3
デ・ローザ キングが目に止まり、思わず声をかけたのは中京大学の中根くん。「まだ大学選手権で同じバイクに出会ったことありません」そりゃそうでしょう。誰もが憧れるデ・ローザのしかもキング3なんだから。「たまたま格安で手に入れることができたんです。こんな立派なバイクに乗れるなんて幸せです。自分には勿体ないくらいですよ」と謙遜する彼、じつはチームユーラシアにも所属する将来を期待された選手なんです。今日はピセイのチームユーラシアジャージで決めている。

チームユーラシアジャージがまぶしい中根くん。じつは朝の試走でホイールとディレーラーハンガーを壊し、一時はレース出走を諦めかけていたのですが、会場に来ていた日直商会さんの手助けでなんとか出走できましたチームユーラシアジャージがまぶしい中根くん。じつは朝の試走でホイールとディレーラーハンガーを壊し、一時はレース出走を諦めかけていたのですが、会場に来ていた日直商会さんの手助けでなんとか出走できました
ジャーン!泣く子も黙るキング3!真っ赤なホイールのレーシングZEROは朝壊したホイールの代わりに借りてきた物ジャーン!泣く子も黙るキング3!真っ赤なホイールのレーシングZEROは朝壊したホイールの代わりに借りてきた物 チームメイトの榊原 健一くんと並んで。2人ともレースの1週間後にはヨーロッパのチーム合宿に出発するそうチームメイトの榊原 健一くんと並んで。2人ともレースの1週間後にはヨーロッパのチーム合宿に出発するそう



ここでちょっと番外編。学生たちの大先輩の自転車をご紹介。
早稲田大学OB 小梁さん 土屋製作所 エベレスト チャンピオン

後輩たちを応援に来た小梁さん。自らも大学生レーサーだったそう。その当時のバイクで会場に来られていました。「土屋製作所で、45年前に作った自転車だよ。今から43年前の国体を走って落車してさあ、頭に来たからすぐに競技辞めちゃったんだよ。もう自転車なんか見るのも嫌でね、そのまま部屋に放っておいたんだ。でも最近また乗ろうと思って直したんだ」「ほら、この辺の傷なんか、そのときの傷そのまんま」

美しいフレームワークは45年前に製作したエベレスト チャンピオン。ブレーキレバーに当時の落車の傷跡が残ったまま美しいフレームワークは45年前に製作したエベレスト チャンピオン。ブレーキレバーに当時の落車の傷跡が残ったまま
23回国民体育大会(国体)の車体検査証。43年前に張られた印がそのまま残る23回国民体育大会(国体)の車体検査証。43年前に張られた印がそのまま残る 美しい形状のフレームは小梁さんの先輩が設計してくれたもの。シフトレバー、ディレーラーはカンパニョーロ美しい形状のフレームは小梁さんの先輩が設計してくれたもの。シフトレバー、ディレーラーはカンパニョーロ



最後に、会場で発見した壊れモノたち
カタチあるもの、いつかは壊れる。激しいレースの世界では、アクシデントだって付きもの。できればあんまり出会いたくはないけれど、会場で出会った壊れ物をキャッチしてきました。
最初は見事にアルミスポーク2本が折れたホイールと、奥に見えるのはフレームのハンガーごと折れてしまったリアディレーラー。ちょっと調整の甘かったリアディレーラーがスポークを巻き込んでこんなことに。
次は、カーボンフロントフォークが無惨にちぎれてしまっているコレ。グループ1のレースで起きた序盤の落車に巻き込まれてこんな無惨な姿に。こんな状態になってしまうなんて、相当な衝撃が加わったことが予想される。幸いライダーには大きな怪我はなかったらしい。

ディレーラーの調整は慎重に行いましょうディレーラーの調整は慎重に行いましょう ケーブルのダボもフレームから外れ、衝撃の大きさを物語っているケーブルのダボもフレームから外れ、衝撃の大きさを物語っている



いかがでしたか、2回に渡ってお届けした、「神宮外苑クリテリウムに見る いまどき大学生の自転車事情」
快く取材に応じてくれた皆さまに、この場を借りてお礼申し上げます。


Text&Photo: Takashi.KAYABA

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