サイパンのファンライド系レース「ヘルオブマリアナ」に挑戦した初心者女性・加藤奈穂子さんは、現地の友人のススメで初めてレースにチャレンジ。この日を目標に練習を積み、レースに備えた。厳しいコースに苦しんだが、結果的にはエイジ2位に入賞というご褒美も。加藤さん自身の手記で綴ります。

サイパンの友人の薦めで出場を決心 ひとり練習を積む

加藤奈穂子さん レース経験はゼロのままヘルオブマリアナを目指してひとり練習してきた加藤奈穂子さん レース経験はゼロのままヘルオブマリアナを目指してひとり練習してきた 7月にサイパンを初めて訪れ、サイパンで行われる自転車レース「ヘル・オブ・マリアナ」のことを知りました。帰国後、『自転車レースに出たい!!!』と友人たちに宣言をし、早速練習を開始。といっても、外を走るのが苦手な私は、スピニングがメインなのです。

でも、サイパンの暑さのことを考えて、毎週末ひとりで朝6時半から約3時間程度100Km弱を休憩なしで走行する練習をしました。

更に、サイパンの高低差のことを考え「富士エコサイクリング」に、これまた1人で参加して走りました。じつはそこで、なんと、メタボ会長さんに遭っていたようで、そうとは知らずに写真撮影していただいたようで、シクロワイアードデビューしてました...(笑)。
写真キャプションに「スタイリッシュな女性ライダー」と書かれていて、とっても嬉しいです(笑)。

富士エコサイを無事完走できたものの、私のクロモリ製の愛車「鉄下駄号」は、とても重たく、本当に坂道は辛かったです。

メカ音痴の私は、鉄下駄号についているのが「男ギア」であるということには全く気がつかず、長年友人から譲りうけたロードレーサーを愛用していました。自転車屋さんに「これでサイパンはキツイと思う」と言われていた意味が、「富士エコサイクリング」に参加してようやく分かりました。

自転車を購入するか色々悩んでいた時、自転車で宇都宮まで行くというイベントに参加し、サイパンのレースに社員旅行として参加するという児山さんに出会い、ご一緒させていただくことに。(児山さんと女性社員たちの一行のレポートはこちらです)。


借り物自転車での練習 そしてケガ

そしてなんと、その児山さんに自転車までお借りできるという幸運が舞い込んできました! さっそく児山さんの愛車KATE号をお借りし、1人で練習をしていると、事故に遭ってしまい、左脚を縫うことに。
しかも事故にあった日に、サイパンに私の応援に来てくれる友人たちとの食事会が設定されていました。
あまりにも凄い傷で登場した私に、友人たちはビックリ。

サイパンで怪我をしないように、とにかく今回は完走を目指す。怪我をしないように、コースの下見だと思うようにする。という目標をたてました。この怪我がなければ、きっと無茶な走りをしていたでしょうね...。

完走という目標を目指して、会った翌週には友人たちと自宅から三浦半島までロングライド練習。
そして、児山さんやその女性社員の大畠さんたちと都民の森で特訓。やはり、仲間がいると楽しくていいですね。


コースを下見して不安が募る

レースの前日、コースの下見をしてみると、正直完走できるか不安でした。体力に自信はあるのですが、アップダウンの多さに圧倒されました。
日本人参加者の男性のみなさんが練習している横を車で通りすぎたのですが、みんな汗だくで辛そう。そんな姿を見て、自分の練習量の少なさを痛感しました。

『甘かったな』と、参加したことを少し後悔しましたが、もう後にはひけません。『とにかく、完走を目指す!』と自分に言い聞かせました。

下見を終えて、いよいよエントリー。私のゼッケンは、「417」(=よいな!)「なんだか完走できるかも」って、思ってきたのも束の間、日本人参加者のみなさんとの夕食会で、私の思っているペース配分では完走できないことが判明...。とても焦りました(笑)。


私にレース出場を勧めてくれたサイパンの友人。ダイビングのインストラクターだ私にレース出場を勧めてくれたサイパンの友人。ダイビングのインストラクターだ みんなに励まされながら走る

大会当日、参加者であり、私に自転車レースを教えてくれた現地の知人とスタート前に会話しました。「とにかく今日は雨が降って道が滑るから気をつけるように」とアドバイスをもらいました。
友人に「私、完走できるかな?」と聞くと、「できるよ。大丈夫!!」って答えてくれました。

早朝にも関わらず、日本から応援にかけつけてくれた友人たちからもパワーをもらい、いざ、スタート!とにかく完走を目標にし、無我夢中で走りました。

でも、自分のペースで行こうと決意していたので、スタートからだいぶ差が出てしまいました。
実は、最初の25kmまで、前のギアが重い方に入ってました(笑)。どうりで、重たかったはず。でも鉄下駄号で練習していたから、大丈夫だったんでしょうね。

日本人参加者の一人、大澤さんに引っ張っていただき、無事に25km到着。大畠さんに自転車を預け、トイレ休憩。そして、すぐにスタート!!!これからは、1番キツイコースの始まりです。

50km地点の難所、レーダータワーをクリアする加藤さん50km地点の難所、レーダータワーをクリアする加藤さん すれ違うたびに、参加者同士声を掛け合い、アップダウンの繰り返しです。とにかく、50km地点のレーダータワーまでは足切りの時間までに入ろうと時間を気にしていました。

レーダータワーの登り坂、スコールの直撃を受け、辛かったですが、スコールの中なんとか登り切り、予想時刻より30分も早く到着できました。自分の予想時刻よりも早く到着できたことにより、気持ちに余裕もできました。

リレー部門の第2ライダーである吉田さんと会話し、とにかくこの地点からは気持ち良い景色のなか走れると思い、再びスタートしました。



すれ違う参加者同士、合図して励まし合うすれ違う参加者同士、合図して励まし合う スーサイドクリフへの上り。背景には碧い海!スーサイドクリフへの上り。背景には碧い海!


辛いスーサイドクリフへの登り坂は、綾野さんのアドバイスを受けながらの走行。この辛い場所で、プロの方に引っ張っていただけて、私は幸運でした。

延々と続くスーサイドクリフへの上り坂延々と続くスーサイドクリフへの上り坂

スーサイドクリフの下り~バードアイランド経由グロットのチェックポイントは、景色も良いのでとっても気持ちよく走行できました。

バンザイクリフで第4ライダーを待つみんな。ありがとう、元気が出ました!バンザイクリフで第4ライダーを待つみんな。ありがとう、元気が出ました! 最終第4区間の始点であるバンザイクリフに到着。ゴールまでラスト25km。予定ではトイレ休憩のはずが、もうトイレなんて単語は頭から消え、気持ちはゴールに向かってました。

各チェックポイントに、女子リレーチームのメンバーがいてくれたことは、本当にありがたかったです。
大畠さん、吉田さん、児山さんありがとう!!


友人たちの思わぬ応援にサプライズ!

いよいよ最後、あとはゴールまでです。「ここまでくれば完走はできるな」と思いながらマイペースで走行。スタッフの方が親切に声をかけてくれ、応援してくれ、バイクで先導してくれました。

ゴール!ついに厳しい100kmを走りきったゴール!ついに厳しい100kmを走りきった ボランティアスタッフの方に「オールモスト」と言われたゴールまでのフラットな道で、並んだ車のクラクションが鳴り響き、思わず『何ごと?!』と思うと、応援の友人たちが乗っているタクシーでした。

私のことをGPSで確認していたの?と思うくらいの絶妙なタイミングでした。
後日、「私が6時間くらいで帰ってくると言っていたのに、何でタイミングがぴったりだったの?」と友人に聞いたところ、「PICのスタッフの方が、加藤さんはもっと早く帰ってくると思いますよ」と言われたからだそうです。PICスタッフの方、さすがですね!

そして、日本人参加者みなさんの応援、ボランティアスタッフの方の応援、そして友人たちの応援に支えられ、無事完走できました!

ゴール後、みんなの顔を見たらホッとして涙がこみ上げてきました。そして友人たちからの手作りのサプライズプレゼントに、またまた号泣。確かに辛かったけど、それ以上にとっても楽しかったです。

そして、表彰式ではまさかの入賞。メダルまでもらえて、今までのスポーツ人生で1番嬉しかったです。2010年、最高の走り納めをすることができました。
翌日、私と同じ年齢部門(男子)3位の韓国人選手の方とお話をし、お互いの健闘をたたえあいました。

ゴールして待っていたのは、友人たちが寄せ書きしてくれた応援フラッグゴールして待っていたのは、友人たちが寄せ書きしてくれた応援フラッグ

2位の賞品としてギフト券をもらいました!2位の賞品としてギフト券をもらいました! 応援にきてくれた友人たちと。入賞を喜んでくれてよかった応援にきてくれた友人たちと。入賞を喜んでくれてよかった


サイパンの自転車レースに参加したいと公言し、5か月。さまざまな出会い、これは偶然でなく必然なんでしょうね。

周囲のサポートにも恵まれ、私の夢は最高の形で実現しました。ヘル・オブ・マリアナの出会いというのは、私の人生を180度変えてしまうものでした。私のサイパンへの道を応援してくださったみなさんと、サイパンで知り合ったみなさんに感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
2011年は、更に上位を目指して、練習に励みたいと思います。(加藤 奈穂子)


photo:Makoto.AYANO,RainbowColor