ロードバイクシーズンが終了し、冬を迎える。使い倒したバイクのオーバーホールの季節だ。それにあわせて編集部のバイクを再塗装してアートなバイクに変身させてしまおうというこの企画がスタート。石川県内灘町のカツリーズサイクルのアーチスト、成田加津利さんが手がける。

再塗装のモデルバイクとなるのは綾野編集長のマイバイク、トレック5900だ。2002年モデルということで、約7年前のバイクだが、性能は立派に現役。しかし現在は最新のモデルに乗っているため、出番はめっきり少なくなっている。それを肴に遊んでしまおうという企画だ。

成田 加津利(カツリーズサイクル)成田 加津利(カツリーズサイクル) 成田加津利さん(カツリーズ)は現NIPPOコルナゴのメカニシャンとしても活躍。フレーム塗装のオリジナリティの高さであらゆるバイク塗装を担当。

トライアスロン日本代表選手のためのオリジナルペイントや、EQA・梅丹本舗・グラファイトデザインのチームジャージのデザインを手がけた。

また、カーデコレーションにおいても右に出るものはおらず、NIPPOコルナゴ、マトリックスパワータグ、EQA・梅丹本舗・グラファイトデザインなどのチームカー&トランスポーターのデザインを担当してきた。

他にもパーツのアルマイト加工やカスタマイズ、サングラスのオリジナルカラー塗装までなんでもOK。なんでもアートに生まれ変わらせる魔法の持ち主だ。

それでは、編集部の指名で本企画を担当することになった成田氏の手記で連載をお楽しみください。





オーダーはいつも突然に

「ブエルタ・ア・チワワに行ってくださいよ。チワワといっても犬じゃないですよ。UCIレースです!」と、メイタンの浅田顕君から依頼があり、思わずメキシコ遠征をしてきた。今年でレースメカニックを引退する事を密かに誓っていた僕にとって、最後の遠征だった。

ある日突然届いたバイク入りダンボール。「編集長、聞いてないよ~(泣)」ある日突然届いたバイク入りダンボール。「編集長、聞いてないよ~(泣)」 宮澤崇史君が最終日に2着という素晴らしい成績を収めてくれて、僕にとっては何よりの「はなむけ」だった。

で、帰国後、「ボ~」。風邪をこじらせたりもしたけど、燃え尽きて「ボ~」。

そんな「ボ~」なある日、唐突にダンボール箱に入ったロードバイクが送られてきた。シクロワイアードの編集長・綾野さんから

「再塗装ペルファボーレ(頼む)!」とのことだ(汗)。

で、電話で確認すると、
「デザインは任せる! 好きにやって! 納期はいつでもいい!コレ企画だから!」と、とても楽なような楽でないような、三拍子揃ったオーダーだった(笑)。でも、こういうのは十中八九「楽じゃない」ことは目に見えているのだ。あー、編集者はいつも強引だからなー」。

かくして綾野氏の旧愛車TREK5900は、お色直しに入る事になったのです。

TREK5900といえば、アームストロングが絶頂期だった2002年(今もなお絶頂期なのがコワイですけど)に駆ったバイクだ。初期型トレックOCLVフレームの完成型として成熟したモデルで、今乗ってもなお評価が高いモデルだ。
ランス信望者にとって垂涎のモデルだが、輪界の方が今乗るにはちょっとレトロ感あるバイクであることも事実。

パソコンに向かってアイデアを出すのが楽しい時間。でも「全部人任せにするとはヒドイ編集長だ...」パソコンに向かってアイデアを出すのが楽しい時間。でも「全部人任せにするとはヒドイ編集長だ...」 編集長は最新モデルのバイクにも乗っているが、「思い入れのあるバイクを人に譲ることもお蔵入りさせることもできない」とかで、この企画を思い立ったとのことだ。

送られてきたバイクを見れば、デュラエース7800・10速仕様にもグレードアップされているし、カーボンホイールもセットされていて、4年前までレースに出ていた仕様そのままだ。

引っかかるのはかつてのチームレプリカだけに、懐かしさ満点の「USポスタルサービス」のロゴとカラーリングだ。そりゃ、今乗るにはちょっとね...。まして輪界人だけになおさら。

先夏のテレビで観たツール・ド・フランス2009。帝王アームストロングは次から次へとアートなペイントのバイクに乗り換えて疾走していた。私はランスの走り以上に、アーチストたちとコラボしたというそのバイクのデザインに目を奪われていた。日本のバイクアーチストを自認する自分としては、おおいに競争心を掻き立てられたことこのうえない。

ゴォォォォ(心の中で燃えるファイヤー!)

で、あるアイデアを思いつき、フォトグラファーでもある綾野氏に僕から出したオーダーは「今までのツール・ド・フランス取材などで撮影した写真とかを一式まとめて送ってペルファボーレ!」


イラストレーターの画面上でデザインを考える。「どう遊んじゃおうおかな~」イラストレーターの画面上でデザインを考える。「どう遊んじゃおうおかな~」

かくしてフォトグラファー・綾野氏からは、即座にレースシーンの写真データと、シクロワイアードのロゴデータがネット経由のファイル受け渡しサービスを駆使して送られてきた。さすがデジタル世代の編集者は仕事が速い!

それらマニア垂涎のレース写真をウハウハ見ながら、デザインの下準備をする僕。アドビ・イラストレーター(ソフトの名称)を駆使して、パソコン上でデザインが進んでいくのです。

そして同時に、使い込まれたバイクのメカの隅々まで状態をチェック。オーバーホールも同時に行う注文を受けたからだ。そうです! 再塗装の際には必ずバイクはすべてバラバラにばらされるのです。だから、当然のようにパーツ類やフレーム各部のオーバーホールをしてしまうのが賢い!

トレック5900は軽量化のため塗装でなく保護フィルムが貼られるという過激なモデルだった。それをすべて剥がし終えるトレック5900は軽量化のため塗装でなく保護フィルムが貼られるという過激なモデルだった。それをすべて剥がし終える すべてのパーツが取り外され、洗浄される。そして部品単品ごとのオーバーホールへすべてのパーツが取り外され、洗浄される。そして部品単品ごとのオーバーホールへ ハンドルにもポジション再現のためのマーキングを施すハンドルにもポジション再現のためのマーキングを施す シートピラーに高さのマーキングシートピラーに高さのマーキング


かくしてトレックちゃんはさっそくバラバラに。パーツを取り外す前にハンドルやシートポストの位置は厳密にマーキングしておきます。かつてセッティングの鬼と呼ばれた(呼ばれてない?)綾野氏のライディングポジションを、再組み立て時にも忠実に再現することが重要。これはメカニシャンとしての鉄則です。NIPPOのバイクたちも良くみれば似たようなマーキングがアチコチに入っています!

フレーム表面のステッカー類や塗装が剥離されれば、デザインを考えやすくなります。

今回のメニュー。「完成車でお預かり!シェフの気まぐれお色直しコース・・・綾野氏の写真を添えて」

どんなデザインになるか、皆さん、おたのしみに~。

次回につづく。





オーバーホールと再塗装の目安価格

ちなみにオーバーホールとデザイン、再塗装の下地処理などにかかる費用お見積もりを例として以下に挙げておきます。再塗装とオーバーホールをする時間がたっぷりとれるオフシーズン。皆さんにもぜひオススメしたいですね。詳しくはお問い合わせ・ご相談ください。

■お見積もり
完成車預かり~完全メンテナンスお渡し 20,000円
デザイン料金 20,000円
フレーム下地処理(剥離作業) 20,000円(カーボンフレームのため手作業となる)
フレームステッカー一式 20,000円
塗装ソリッドカラー 2色 25,000円
フレーム塗装作業一式合計 105,000円(分解組み立て料金込み)

<パーツ>
ホイール2色塗装 60,000円
ステム塗装   15,000円(デザインあり)
ピラー塗装   15,000円(デザインあり)





成田 加津利(カツリーズサイクル)成田 加津利(カツリーズサイクル) プロフィール
成田 加津利(なりた かずとし)


1967年11月27日生まれ(ブルースリーと同じ日である事が自慢)。文化系の生い立ちで美術系への進学を試みるが、ことごとく失敗。その反動で、体育会系へ転身。

高校時代にピスト競技で日本一に輝き、実業団へと進む。ツール・ド・北海道や国際大会で入賞し、平成元年に競輪へと進む。2000年に現役を引退し、現在のショップ「カツリーズ」を開業。

同時に選手指導への思いも強く、アテネオリンピック代表の唐見実世子を育成。現在も石川県のヘッドコーチを務める。メカニックとしても活躍し、現在はNIPPO COLNAGOに所属。過去にはジャパンナショナル、愛三工業、EQA・梅丹本舗・グラファイトデザイン、ブリヂストン・アンカーでもスポットでメカニックを努めた事がある。

デザイナーとしては自分が選手として参加した、石川インターハイのパンフレットや、グッドデザインにも輝いたナカガワサイクルワークスの初代チームジャージを手がけている。ちなみに現在のカツリーズサイクルのカツリは、中川茂氏が間違えて読んだ事からニックネームとして定着。開業時に相談したところ、「カツリで行け!」と、かん高い声で名付けたという(分かる人には分かる話!)。

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