ヘタレ編集部員ことフジワラが行くシクロクロス参戦記をお届けします。CW編集部にジョインしたばかりの新人ムラタを連れてシクロクロスミーティング上山田に参戦。実業団E2のムラタには手も足も出ませんでした。



長野県千曲市上山田で開催されたシクロクロスミーティング長野県千曲市上山田で開催されたシクロクロスミーティング
肌に突き刺さるかのような寒さ、喉から出血しているかのような感覚、徐々に狭くなる視界に耐えるシクロクロスレースの季節が訪れた。一般的にはロードもマウンテンバイクのレースも落ち着いたオフシーズン、ありがたいことにオンシーズンは沢山のお仕事を頂けるシクロワイアード編集部員にとっては、ある程度落ち着いた冬・シクロクロスシーズンこそがオンシーズン。

今年はCWが誇るカテゴリー1ライダーのイソベ先輩は、愛知県で開催されたIRCカップでシーズンイン。例年、東京都下に事務所を構えるシクロワイアード編集部のシクロクロッサーたちの開幕戦となる茨城シクロクロス・小貝川ステージでは編集長が無事にCXシーズンを開幕させた。

新人編集部員ムラタが編集長から譲ってもらったリドレー X-FIREとともに初シクロワイアード撮り新人編集部員ムラタが編集長から譲ってもらったリドレー X-FIREとともに初シクロワイアード撮り 寒いのか緊張しているのか表情がこわばっている寒いのか緊張しているのか表情がこわばっている しかし、シクロワイアードの泡沫編集部員、ヘタレことフジワラ(私)は、シーズン序盤の開幕戦出場を逃したのだ。言い訳を考えるといくつも思い浮かぶ。エントリーの開始、終了日時を全く把握していなかった、そもそも夏の間自転車に乗っていなかったので、シクロクロスレースに出場すべきか否かが自分でも決断できていなかった、などなど。書き出してみるとシクロクロッサー失格の理由ばかりで、焦る。

小貝川のレースに不参加が決まった時点で、私のレース意欲はどんどんと低下。バイクを準備する気さえ消え失せ、松野四万十MTBレースで途中リタイアしたヤスオカ先輩と一緒に「オフトレ(お太れ)」と称し、お腹に脂肪を溜め込むトレーニング(間食)を繰り返していた。オフトレが実り、過去最高体重に達してしまったのは内緒だ。

顎は消え失せ、ベルトの上に脂肪がほどよく乗った頃、バリバリレースに参加している編集長が自身のCXバイク「リドレー X-FIRE」を譲ってくれるという話を持ちかけてきた。こんな美味い話があるものかと疑いの眼差しをむけて話を聞いてみたが、編集長はどうやら本気のようだ。理不尽な要求とかも無さそうだったので、リドレーを頂くことに。

折角手に入ったカーボンバイクに乗らないという選択肢はない。いつまでもオフトレをしているヤスオカ先輩はほっといて、私も遅ればせながらシクロクロスシーズンの幕を開け、減量に励むことを決意。私はシーズン緒戦をシクロクロスミーティングの上山田ラウンドに定めた。

昨年までは単独で遠征することが多かったが、今回はイソベ先輩を誘ってみることに。CWが誇るカテゴリー1ライダーのイソベ先輩からは二つ返事でOKをもらうことに成功。人数が多いほうが遠征も楽しくなると思った私は入社したばかりの新人編集部員ムラタにも声を掛けてみる。

試走では先輩面して前を走るヘタレ・フジワラ試走では先輩面して前を走るヘタレ・フジワラ CWが誇るC1ライダーイソベ先輩についていけないムラタCWが誇るC1ライダーイソベ先輩についていけないムラタ

先輩としての意地を見せなければ!とE2ライダーに喧嘩をふっかける先輩としての意地を見せなければ!とE2ライダーに喧嘩をふっかける 緊張しているムラタだが、その後ろには脳天気なフジワラが…緊張しているムラタだが、その後ろには脳天気なフジワラが…


ムラタは大学で自転車競技に打ち込み、社会人となった今でも実業団レースに参加する程のシリアス系ライダー。なんと入社1週間前に開催されたJBCF南魚沼ロードのE3カテゴリーで優勝、E2に昇格を果たした選手なのである。(記事下部にてCWデビュー済み!)ちなみにシクロクロス経験はゼロだ。最初はCXバイクを持っていないことを理由に断っていたが、私が貰い受ける予定のリドレーを譲るという餌をぶら下げてみると、たちまちレースに参加してくれることとなった。

自転車をタダで貰える権利を他人に譲渡するなんて、私は聖人君子ということだろう。それならば自転車を譲るといいだした編集長は神か何かでしょうか?それはいいとして、オフロード初参加にも関わらず、すんなりと参加を決めてしまったムラタの頭には「先輩の誘いは絶対断らない」とプログラミングされているのだろうか。

スタートをミスしたムラタを追い抜くフジワラスタートをミスしたムラタを追い抜くフジワラ
私の行動は、シクロクロスの楽しさ苦しさを一人でも多くに味わってもらいたいという純粋な気持ちの現れであるとを書き記しておきたい。辛い辛いシクロクロスで実業団E2ライダーの鼻をへし折り、先輩ヅラしてやろうという邪悪な気持ちからではないことも追記しておこう。

そもそもスピードコースとなりがちな上山田において、E2ライダーに勝とうという気持ちは湧いてくるはずもない。ムラタのシクロクロスデビューとなった練習で、イソベ先輩のペースアップに余裕の表情でついていったのを目の当たりにしていれば当然だろう。しかし、キャンバーのこなし方はまだ私のほうがスムーズだ。「もしかしたら…」という気持ちが心の片隅に芽生えた。

シケインを超える動作も様になってきた?シケインを超える動作も様になってきた? キャンバーからのコーナーも慣れたようにこなすムラタキャンバーからのコーナーも慣れたようにこなすムラタ

舗装された長い長いストレートが上山田コースの特徴だ舗装された長い長いストレートが上山田コースの特徴だ
私、フジワラは多少なりとも優越感を持ったままレース当日を迎えた。シクロクロスミーティングは朝1番のレースが多いC4のレースでさえ朝10時出走というゆとりあるスケジュールが採用されており、初参加の私はのんびりしすぎて召集時間に遅れてしまう。悪いことにシクロクロスミーティングの出走順は早い者勝ちだった。前から8列目くらいに位置づけたが、ストレートが長い上山田のコースでは後方にいるのは致命的だ。幸いにも同じレースに出るムラタは眼の前にいるから、勝機を逃したわけではない。

フジワラはどこを走ってんだよ!フジワラはどこを走ってんだよ! ムラタは実業団レーサーらしくラストスプリントもしっかりとかけるムラタは実業団レーサーらしくラストスプリントもしっかりとかける シクロクロス初参加レースだと驚くポイントの1つはスタートダッシュだろう。ムラタはスタートの雰囲気を掴めていないだろうから、私は親切にもゴールスプリントのようにもがく必要があること、最初のコーナーに差し掛かる前に出来る限り選手を追い越す重要性を教えてみる。私の目の前にいるムラタが好スタートを決めれば、真後ろにいる私はその恩恵を受けられるだろうという考えだ。

ムラタへのレクチャーを終えたあと私は、隣に並んだ選手と私のCXバイクについて会話の華を咲かせるほどリラックスできている。一方、ムラタは学連と実業団レースに参加して百戦錬磨であるはずなのに緊張と顔に書いてあるではないか。私が脳天気なだけだろうか。

レース開始の号令がかかり、選手たちが一斉に飛び出していく!と思いきやムラタが前走者に詰まっている。私はとっさに走行ラインを変えてムラタを追い越して先頭集団に食らいつく。ヘアピンに差し掛かる度に後方を確認するがムラタの姿を確認できない。ムラタ曰く「スタートは行くところが無かったんですよ。バックストレートとホームストレートで一気に抜け出しましたよ」とのことだ。E2選手だからできる技。

良いスタートダッシュを決めることができた私だが、コーナーは恐る恐るクリアし、直線ではスピードを乗せることができず、全くバイクを上手く操縦できていない。CXレース感がほぼゼロとなってしまい、スタートで突き放した後続集団に捕まり、あっという間にムラタに追い越されてしまう。先輩としての威厳とかそんなものはこの時点で消え去る。

キャンバーでハンドルが取られ、思わずしてコースアウトを喫してしまう。止まることもできないため、走りながらコースに戻ろうとすると、観客たちから笑い声が……。「好きでやってるんじゃないわい!」恥ずかしさを感じながらコースに復帰。もういやだ!ここから逃げ出したい。

レースはそんなに辛くはなかったのかな?チームメイトとの記念撮影も笑顔レースはそんなに辛くはなかったのかな?チームメイトとの記念撮影も笑顔 遅れること数分。戻ってきたフジワラをすでに見下しているムラタ遅れること数分。戻ってきたフジワラをすでに見下しているムラタ

ボコボコにされたフジワラ渾身の謝罪ボコボコにされたフジワラ渾身の謝罪
バックストレートからホームストレートに折り返す地点で、アップ中の選手から「ムラタさんは随分先ですよ!頑張れー!」と応援を受け、心に傷を負ったのも事実。ムラタは遥か彼方だし、自分の体力・スキルの無さにイライラしてズタボロだ。

そして、良いところ無しでフジワラの過酷な30分が終了した。数分前にフィニッシュラインを通過していたムラタは早速、私を見下すような発言を繰り返す。新入社員が入ってきたことで私はCWヒエラルキーを一段上に登った気でいたが、レースの結果で最下層に脱落したのは明らかだ。ムラタと一緒にレース出ても惨めな思いをするだけだから、もう誘わない!