11月13日、神奈川県小田原市にて開催されたショートヒルクライムレース、ヒルトン小田原スプリントヒル。約900mの激坂で競われた、異色のヒルクライムレースの様子をレポートします。



ホテルをめがけてもがき切るヒルトン小田原スプリントヒルホテルをめがけてもがき切るヒルトン小田原スプリントヒル
大磯クリテリウムや箱根ヒルクライムなど、神奈川県を中心にさまざまなホビーレースを開催するウォークライド。今年、新たな大会として開催したのがこの「ヒルトン小田原スプリントヒル」だ。

会場となるのは、大会名が示す通りヒルトン小田原リゾート&スパ。7万3千坪を誇る広大な敷地の中に、ホテルのみならずチャペルやプール、陶芸工房など、さまざまな施設が集まった総合リゾートとして、高い人気を集めるスポットである。

強豪レーサーたちが「ホビーレーサーの甲子園」と呼ばれるツール・ド・おきなわへと向かった11月13日、関東地方のパンチャー達はヒルトン小田原に集まった。ハロウィンも終わり、クリスマスムードに包まれたリゾートに集まったのは総勢24名の脚自慢たちだ。

谷にかかる橋の上からスタート谷にかかる橋の上からスタート スタート地点には、サンタクロースが用意されていたスタート地点には、サンタクロースが用意されていた


短いレースなので、スタートダッシュが重要だ短いレースなので、スタートダッシュが重要だ
スタートは号砲と共にスタートは号砲と共に ライバルたちの様子を窺いながら登っていくライバルたちの様子を窺いながら登っていく


コースとなるのは、ヒルトン小田原の敷地内に設けられた距離約900mの特設コース。サンタクロースが微笑みかけるゲートから、高くそびえるホテルの本館を望む正面ロータリーへゴールする激坂が勝負の舞台となった。

ショートコースということもあり、レースは4ヒートに分けての開催となった。第1ヒートと第2ヒートが予選となる。それぞれ10人弱のグループに分けられた、3組が1分ごとにスタート。それぞれの着順を合計し、予選の成績を決めるというルールだ。

そして、第3ヒートは準決勝と順位決定戦の2組に分けられる。予選で上位14名が準決勝に進み、残りの10名が順位決定戦を戦う事に。そこからさらに4名がふるい落とされ、10名で争われる決勝戦にて初代スプリントヒルのチャンピオンが決定されることになった。

1人逃げを決める人も1人逃げを決める人も コーナーの処理も大切だコーナーの処理も大切だ

女性ライダーも参加していた女性ライダーも参加していた ラストの激坂に苦しむ参加者たちラストの激坂に苦しむ参加者たち

準決勝、切れ味鋭いアタックを見せたウォークライドの石川俊太郎準決勝、切れ味鋭いアタックを見せたウォークライドの石川俊太郎 あっという間に差を広げたあっという間に差を広げた


短いレースであるが故、攻め方も人それぞれだ。スタート直後から逃げ切りを決めるべくアタックする人もいれば、フィニッシュのスプリントに全てを掛ける人、最後にぐぐっと斜度が上がる区間の入り口からロングスプリントを試みる人など、各組ごとに様々な展開が見られた。

4ステージでのレースということもあり、脚への疲労をいかに残さないかということも重要なポイント。決勝レースまでは、できるだけ無駄脚を使いたくないけれど温存しすぎて脚切りにかかってしまっては元も子もないということで、単なる脚力勝負にとどまらない頭脳戦が繰り広げられた。

準決勝で力を見せつけたのはホストチームであるウォークライドの石川俊太郎だ。準決勝で切れ味鋭いアタックを見せ、後続に3秒差を付けて1位となった石川。2度の予選ともに1位通過した脚力を見せつけるかのような走りで、このまま石川のストレート勝利を予感させた。

決勝で逃げ切りを決めた山本勝太(VIVA☆ZAPPEI)決勝で逃げ切りを決めた山本勝太(VIVA☆ZAPPEI)
優勝した山本勝太(VIVA☆ZAPPEI)優勝した山本勝太(VIVA☆ZAPPEI) しかし、そんな石川の前に立ちふさがったのは、山本勝太(VIVA☆ZAPPEI)。第1ヒートを1位、第2ヒートを3位、準決勝を4位で進めてきた山本は、決勝ヒートに向けて脚を溜めていた。ラスト250mでアタックし、ラストの激坂を先頭で入った山本。追いすがる石川から2秒差で逃げ切り、見事初代王者に輝いた。

「準決勝を見ていて、石川さんと最後まで一緒に行ってしまうと勝てないと思ったので、逃げ切りに賭けたんです。残り250mで飛び出してからは、全開で踏み続けました。2人くらい来ているとは思っていたのですが、一度も振り返らなかったですね。最後の激坂もアウターで踏みきりました。作戦がハマったので気持ち良かったです。」と展開を振り返る山本選手。

続けて「パンチャー系の脚質なので、このレースは狙っていました。クリスマスムードで雰囲気もとてもいいし、ホテルのお客さんの応援もあるので、1ヒート走るごとにモチベーションが上がっていきますね。また来年出たいです」と初回大会の印象を語った。

男子の部 表彰式男子の部 表彰式
小学生の部 表彰式小学生の部 表彰式 女子の部 表彰式女子の部 表彰式


表彰式はクリスマスの様々な企画でデコレートされた華やかな雰囲気に包まれたヒルトン小田原のロビーで、男子と女子、そして小学生の部の表彰がそれぞれ行われた。表彰式も豪華なら、入賞賞品も豪華。小学生の優勝者にはヒルトン小田原のランチチケット、女子にはディナーチケット、そして男子には宿泊券が贈られた。

レース後には、ヒルトン小田原の日帰り入浴が特別価格で用意され、激闘の汗を流すこともできるし、自慢のレストランで絶品ランチを頂くことも。リゾート施設として充実しているので、家族で参加し、お父さんはレースに、お母さんと子供たちはホテルで遊び、昼から合流するというプランだって立てやすそうだ。

大きな盛り上がりの内に幕を下ろしたヒルトン小田原スプリントヒル。国内ではあまり類を見ない形式のイベントだが、一体どういった経緯で開催に至ったのだろうか。主催者であるウォークライドの山根氏は「最近、駐車場を登るショートヒルクライムがいくつか開催されてきたのはご存じかと思います。そんな、お手軽で非日常感のある楽しみ方もできるんだよ、という提案ができればと思っていたところに、ヒルトンさんから自転車イベントをやりたいというお話をいただき、とんとん拍子に話が進んでいったんです。」と語る。

ヒルトン小田原の古田営業部長ヒルトン小田原の古田営業部長 箱根ヒルクライムの主催者でもあり、小田原と親密な関係を気づいてきたウォークライドだからこそ、実現したヒルトン小田原スプリントヒル。もう一方の立役者といえるヒルトン小田原の古田営業部長にもお話を伺った。

「週末には周辺に多くの自転車乗りの方が走られているんです。景色も良いですし、レストランや温泉に入っていただくこともできるこのホテルを自転車の方にも知っていただきたいと思い、このような機会を得ることになりました。参加者の方はもちろん、一般の来場者の方にとってもホテルの敷地を自転車が駆け抜けていく様は新鮮だったようで、ゴール地点には観戦する方がおられたのが印象的でしたね。ぜひ、定例イベントとして今後も続けていきたいと考えています。次は距離を延ばしたいですね。」ととても積極的な様子。今後のこの大会、そして小田原での自転車イベントの展開にも期待大だ。

レースの様子はウォークライドのYouTubeに順次アップロードされています。こちらよりご覧ください。