今年で19回目の開催を迎えた老舗ロードレースイベント「CSC5時間耐久チームサイクルロードレース」が、7月18日(月・祝)に静岡県伊豆市修善寺にある日本サイクルスポーツセンターにて開催された。サンサンと日差しが照りつける夏日にサーキットを駆け抜けたイベントの様子を紹介しよう。



試走はチームメイトと話しながらCSCの5kmサーキットを楽しめる試走はチームメイトと話しながらCSCの5kmサーキットを楽しめる
7月の「海の日」に開催されることが恒例となっている「CSC5時間耐久チームサイクルロードレース(以下、CSC5時間耐久)」。今年も7月18日に開催された。CSC5時間耐久は、夏の強い日差しが照りつける中、5時間の長時間をチームメイトとともにタスキを繋ぎ、走り遂げるというチームエンデューロイベントだ。

開催場所は静岡県伊豆市修善寺にある日本サイクルスポーツセンター(以下、CSC)。東名高速道路と伊豆縦貫自動車道を使用すれば首都圏と東海圏からスムーズに移動できる。加えて、圏央道の相模原~厚木区間が開通されてからは、東京西部や埼玉からも訪れやすくなっているのではないだろうか。

伊豆縦貫自動車道を使う手段だけではなく、箱根から伊豆スカイラインからアプローチしてもよい。CSCは修善寺の山の中に位置しアクセスしにくいと思われがちだが、意外と訪れやすいのだ。

スタート前はパラソルで第1走者をケア。なんてプロっぽいんだろうかスタート前はパラソルで第1走者をケア。なんてプロっぽいんだろうか この日、集団を率いてくれる競輪学校の教官たちこの日、集団を率いてくれる競輪学校の教官たち

みんなで5時間がんばるぞー!おー!みんなで5時間がんばるぞー!おー!
CSCは伊豆・修善寺という温泉街が近くにあるため、レース後に温泉で身体を洗い流してから帰路につくことも可能だ。箱根や熱海、湯河原の温泉街もCSCへアクセスしやすく、レース前日に前泊して伊豆半島を満喫しても良いだろう。

また、2020年に開催される東京オリンピックの自転車トラック競技が開催されるのもここCSCのヴェロドロームだ。来年のCSC5時間耐久に参加する際や、TOJの伊豆ステージでCSCに足を運ぶ機会があれば、東京オリンピックの先取りとしてヴェロドロームを見学してみてはいかがだろうか。実際に選手が走っていれば、板張りバンクの上をタイヤが転がる音や、チェーンの駆動音、選手が走り抜ける風を感じ取れるはずだ。

さて、CSC5時間耐久で走行するコースは5kmロードサーキット。約5,000mという比較的短いコースだが、ほぼすべての区間が登りか下りという走りごたえが十二分にあることが特徴である。登りの最大斜度は10%、下りは12%だ。

ホームストレートも緩く登っているため、油断していると失速してしまうホームストレートも緩く登っているため、油断していると失速してしまう ホームストレートが終わってからすぐに斜度が厳しい上り坂が待っているホームストレートが終わってからすぐに斜度が厳しい上り坂が待っている

いくつのものコーナーが用意されており、速く走るためにはライン取りのテクニックも求められるいくつのものコーナーが用意されており、速く走るためにはライン取りのテクニックも求められる 下りの後は登りが待っている下りの後は登りが待っている


ハードなコースプロフィールがゆえプロのレースでも厳しい展開となり、数々の名レースが生み出されたコースでもあるのだ。また、2016年のツアー・オブ・ジャパン 伊豆ステージで、新城幸也がロングスパートを決めた登りもコースに組み込まれている。プロ選手が生み出してきた名場面を追体験できると考えると、ハードなプロフィールでも楽しく走ることができるはずだ。

ここ数年天気に恵まれているCSC5時間耐久。今年もこの日が東海地方の梅雨明けとなり、夏らしい強い日差しがサーキットに照りつけた。朝の8時、参加者全員に義務付けられている試走がはじまる頃には車の温度計は30℃を表示する。「猛烈な熱さを覚悟しなければならないな」「暑さ対策をすればよかったな」と、CSCに到着したそばから思わされた。

対して参加者の暑さ対策はバッチリだったようだ。パドックに立ち並ぶテントやタープの数が、筆者が訪れた2年前と昨年大会の時よりも多くなっている。リピーターが多いこの大会では、テント内で待ち時間を過ごすスタイルがスタンダードとなってきたようだ。大会パンフレットに熱中症対策として記載されているため、初めて参加される方も参考にしながら準備することができるだろう。

夏の強い日差しに照らされる中はしる夏の強い日差しに照らされる中はしる
ジェットコースターのように右左とワインディングする下りはスリリングで攻めがいがあるジェットコースターのように右左とワインディングする下りはスリリングで攻めがいがある ホームストレートに至る上り坂はまるで壁。ほぼ全員を苦しめたホームストレートに至る上り坂はまるで壁。ほぼ全員を苦しめた


朝9時、いよいよレースがはじまり、チームメイトから大きな声で応援された参加者は笑顔で手を振りながらホームストレートを飛び出していく。この日吹いたやや強めの風は観戦者には恵みとなったが、ライダーにはあまり効果がなかったようだ。1周めから身体に熱を溜め込んだように、つらそうな顔をしたライダーがホームストレートに戻ってくる。

ピットがオープンし、ライダー交代できるのがスタートより30分後。いいペースで走ったはいいが、交代できないライダーが続出。「えー!?交代できないの?」と悲痛な叫びがライダーから挙がるが、「もう1周行ってこーい!」と笑顔で送り出す仲間たち。辛さもサイクリングの醍醐味と言わんばかりに、ピットに入れなかったライダーは笑顔を返しながら再びペダルを踏み直していく。

レースがスタートした直後から大会が用意しているBBQピットから煙が立ち上がってくる。朝ごはんからBBQだ。ハマグリや肉、とうもろこしなど、これぞBBQの定番食材がグリルの上に並べられており、食欲を誘うような香りが漂ってくる。写真撮影のために甲府青年会議所チームにお邪魔したら、なんとBBQを頂いてしまうことに。朝ごはんを食べるタイミングを逃していた筆者には恵みである。

3年連続でBBQピットを利用している甲府青年会議所のみなさん3年連続でBBQピットを利用している甲府青年会議所のみなさん 毎年恒例のパドック脇シャワーポイントでは、走り終わったライダー達が次々と駆け込んできていた毎年恒例のパドック脇シャワーポイントでは、走り終わったライダー達が次々と駆け込んできていた

あいぜっちゅーがパフォーマンスを披露してくれたあいぜっちゅーがパフォーマンスを披露してくれた 和光ケミカルの新ブランド、アグレッシブデザインからリリースされた日焼け止めファイターを試すことができた和光ケミカルの新ブランド、アグレッシブデザインからリリースされた日焼け止めファイターを試すことができた


お話を伺うと、3年前にBBQピットが開設されてから、甲府青年会議所のみなさんは毎年、BBQピット付きで参加しているという。「BBQがあるからこの大会に参加しているんですよ。BBQでワイワイと楽しむことがメインなので、僕らのチームは誰も走っていなくても良いんです。」と余裕ある大人の楽しみ方を教えてくれた。

日本サイクルスポーツセンターの藤井さんによると、10区画用意したBBQピットは完売御礼だという。テント付きのピットとグリルが貸し出されるこの企画は登場以来、人気が増しているとのことだ「BBQピット以外でもピットのご近所付き合いに支障をきたさない程度なら、パドック内で思う存分楽しんでも良いですよ」と藤井さんは言う。筆者が参加するならクーラーボックスいっぱいにスイカなど涼を取るものを持ち込みたい。

今年は伊豆のPRユニット「あいぜっちゅー(IZU)」がCSCまでやってきてライブを生歌で披露。うだるような熱さの中、パフォーマンスを行っていたステージ上だけは爽やかな空気が流れていたのは気のせいだろうか。ブース出展も毎年お馴染みの中村サイクル、ゼータトレーディングに加えて、今年は和光ケミカルが来場していた。

ホームストレートに帰ってくる仲間を今か今かと待ちわびるのもエンデューロの楽しみホームストレートに帰ってくる仲間を今か今かと待ちわびるのもエンデューロの楽しみ 選手交代の様子はシャッターチャンス!選手交代の様子はシャッターチャンス!

チームメイトが待機する場所、チップを交換する場所、ピット走行レーンがキチンと分けられており、安全に選手交代が行えるチームメイトが待機する場所、チップを交換する場所、ピット走行レーンがキチンと分けられており、安全に選手交代が行える チーム員総出で選手交代の時に檄を飛ばすチーム員総出で選手交代の時に檄を飛ばす


和光ケミカルは洗車やメンテナンスでお馴染みのワコーズテントと、今年より展開が始められたアグレッシブデザインの日焼け止めとクレンジングオイルのテントの2本立てとなんとも豪華。プロ選手からも大絶賛の日焼け止めは5時間耐久で汗を大量にかいても流れる落ちる心配がないというもの。今、重度の日焼けで腕と顔が痛い筆者は、「来年は日焼け止めを必ず使用するぞ」と心に誓って記事を書いている。なので、参加者の皆さんに日焼け対策は重要と声を大にして言いたい。

熱中症対策としてコース上とパドック脇にシャワーポイントが用意されているのも毎年恒例だ。テントを用意するというサイクリストの自発的な行動もあいまって、今年のCSC5時間サイクルロードレースでは熱中症で救護室を訪れた方はいなかったという。

撮影も兼ねて筆者もコースへ繰り出してみることに。ジェットコースターのように右左へと切り返す必要がある下りは、リズミカルで非常に気持ちよくこなせてしまうという印象だ。下った先には必ず登りが待ち構えているため、下っている最中から心の準備をしておかないと、登りの途中で心が折れそうになってしまうはずだ。この辛さもCSCの醍醐味の1つだろう。

僅かな水だが何時間も走り続けているライダーにとっては恵みとなったようだ僅かな水だが何時間も走り続けているライダーにとっては恵みとなったようだ
かろうじて筆者もホームストレートに戻ってきたが、筆者には交代してくれる仲間がいない。この時はじめて、チームメイトがホームストレートで応援してくれる有り難さと、交代できる余裕というものを感じることに。ソロで淡々と5時間走り続けている選手たちの忍耐力の強さも改めて感じさせられた。

あれもこれも見て回っていると時間はあっという間に13時半に。ピットクローズ前にスプリントをして、1周回増やして喜んでいるチームもあれば、「あれれ?時間内?」と予想よりも早くホームに戻ってきてしまい、思わず1周回追加してしまうチームも。しかし、思惑は違えど、走っているライダーと応援の方の顔には笑顔であったことは間違いない。暑く苦しいけど、それもサイクリング。そう思わせてくれるような光景だ。

防衛医大の女子チームは銀メダルと銅メダルを獲得!防衛医大の女子チームは銀メダルと銅メダルを獲得! 5時間ソロのポディウムには、強豪社会人レーサーの中村龍太郎さん、高橋誠さん、雑賀大輔さんが登壇。ホ5時間ソロのポディウムには、強豪社会人レーサーの中村龍太郎さん、高橋誠さん、雑賀大輔さんが登壇。ホ

あいぜっちゅーの方に「セルフィーいいですか?」あいぜっちゅーの方に「セルフィーいいですか?」 ポディウムにあがった仲間をパチリポディウムにあがった仲間をパチリ


14時になり、思わずプラス1周となってしまったライダーも含め、5時間耐久サイクルロードレースの幕が降りる。フィニッシュラインに戻ってきたライダーの顔はどれも満足感に満ち溢れている。表彰カテゴリーが多いこの大会はポディウム登壇者のバラエティーに富んでおり、見ているだけでも楽しくなってくる。

レースの結果を求めるレーサーから、サイクルスポーツセンターのレンタサイクルを利用するビギナーまでが参加するCSC5時間サイクルロードレース。ソロで淡々と己の体を試すのも良いが、チームでわいわいと盛り上がるのも楽しそうだと思わされた大会であった。

text&photo:Gakuto.Fujiwara