火の国・熊本県五木村にて開催された九州チャレンジロードレース。九州最速を決めるにふさわしいレースのレポートがモデルやコスプレイヤーとして活躍する林檎蜜紀さんから届きました。



熊本にやってきました!林檎蜜紀です!熊本にやってきました!林檎蜜紀です! photo:Shu Kato
皆さん、こんにちは。林檎蜜紀です。初めて私の名前を目にする方も多いと思いますので、簡単に自己紹介をさせてください。私の本業はモデル、コスプレイヤーで、休日はホビーサイクリスト。漫画「弱虫ペダル」を見てロードレースに興味を持つようになり、ロードバイクを購入、サイクリングの世界の扉を開きました。

最近は自転車のレースやイベントMCや自転車雑誌などで活動中です。2015年は、霞ヶ浦ロングライド、富士ヒルクライム、その他さまざまなレースイベントに挑戦しました。最近のマイブームはロードレース観戦。好きなものは突き詰める性格で、今年2月には自転車競技連盟(JCF)審判3級を取得しました!

今年前半の目標は、昨年初挑戦した富士ヒルクライムで自己記録(2時間)を大幅に更新して本格的なサイクリストの仲間入りをすることです。皆さん、応援よろしくお願いしますね!



谷間にひろがる五木村が九州チャレンジロードレースの舞台です谷間にひろがる五木村が九州チャレンジロードレースの舞台です photo:Shu Kato
憧れの黄色いMAVICカーがレースに帯同していました憧れの黄色いMAVICカーがレースに帯同していました photo:Shu Katoコース試走のために早速自転車を組み立てますコース試走のために早速自転車を組み立てます photo:Shu Katoさてさて、そんな私がこのたびお邪魔させていただいたのが「九州チャレンジサイクルロードレース2016」。

実はJCF(日本自転車競技連盟)公認の本格的ロードレースの現場を味わうのは初めて。これまで参加したり、応援したりしたことのあるホビーレースイベントとはやっぱり空気が違いました。

なんていったって、あの真っ黄色の「MAVICカー」がレースに帯同して、機材トラブルに対応してくれるんですよ!?MAVICカーが走るレースなんだと思うだけで、いつも中継を見ているヨーロッパのプロロードレースの世界に近づいたような気がして、少し興奮です(笑)。

レースの舞台となるのは、熊本県の五木(いつき)村。8年連続で水質日本一に輝いた川辺川が流れるとっても自然豊かなエリアなんです。名水の里には銘酒あり、ということで周辺には球磨焼酎の蔵がたくさん。「白岳」を筆頭に米焼酎の名産地として全国的に知られている地域です。

お酒の他にも、川魚や山菜、猪鹿料理(今風にいえばジビエですね!)といった山の幸が味わえますし、「夢唄」という素敵な温泉もある五木村。自転車に乗ってかいた汗を流して、おいしいご飯とお酒をいただく。最高ですね!

ちなみに谷間に位置する村ということもあり、村内にはたくさんの橋が架かっているのですが、なんとその橋の上からバンジージャンプができるんですよ。飛び降りることができるのは、高さ66mの「小八重(こばえ)橋」。実は今回のレースでも使われているんです。

大会のメイン会場となる道の駅「子守唄の里 五木」大会のメイン会場となる道の駅「子守唄の里 五木」 photo:Shu Kato実際にコースを走ってみました実際にコースを走ってみました photo:Shu Kato

こんな素敵な温泉もあるんですよこんな素敵な温泉もあるんですよ photo:Shu Kato西日本最大のバンジージャンプ台がある「小八重(こばえ)橋」西日本最大のバンジージャンプ台がある「小八重(こばえ)橋」 photo:Shu Kato


そんな五木村の公道を使用した8.4kmの周回コースは、アップダウンが激しいレイアウトで、コース図を見ているだけで「このコースを走る選手は大変だ―」と思ってしまうほど。私も実際に走ってみたのですが、「ゆっくり走るのであれば、自然が一杯でとっても楽しそう」という印象を受ける一方で、「選手はきっと景色を楽しんでいる余裕はないんだろうな……」と思ったり。

アップダウンの他にも、横風の強い橋区間も何箇所か現れるなど、アタックポイントが多いので、見ごたえのある展開が期待できるかも?なんて思いながらMC席へと向かいます。

受付に並ぶ選手のみなさん受付に並ぶ選手のみなさん photo:Shu Katoステージでの手順について打ち合わせ中ですステージでの手順について打ち合わせ中です photo:Shu Kato

選手宣誓をする子供たち選手宣誓をする子供たち photo:Shu Kato出番をまつ選手のみなさん出番をまつ選手のみなさん photo:Shu Kato


そう!実は私、この大会ではMCとしてレースの実況をさせていただいたんです!しかし、審判3級を取得したとはいえ、本格的な登録レースは未見というレース初心者の私に実況なんて務まるの?という不安を抱きながら向かった実況席には、なんと心強い助っ人が。それは大会実行委員長である、中田さんです。

いよいよエリートカテゴリーのスタートいよいよエリートカテゴリーのスタート photo:Shu Kato中田実行委員長のトークが冴えわたる!中田実行委員長のトークが冴えわたる! photo:Shu Kato豊富な知識とユーモア溢れるトークでレースを解説してくれる中田さんのおかげで、私もとってもリラックスして実況することができました。たとえば、張りつめた空気の漂うスタート前。「今日はどういった展開が予想されますか?」と尋ねた私に、「黄色いジャージのチームがレースを動かすでしょうね!」と返してくれます。

そこで私が「黄色のジャージというと、地元熊本のチームか、鹿屋体育大の選手たちですね?」と答えると、「そうです。でも、大会委員長の僕がこういえば、他の選手は『そんなことさせないぞ!』と大奮闘してくれる。レースを盛り上げるために、あえて僕はこう言っているのです!」と中田さん。スタートラインに並んだ選手や観客も思わず吹き出してしまい、一気に和やかな雰囲気に。

そうして始まった男子エリートのレースですが、いままで私が見たことのあるホビーレースとは全く次元が違うスピードにビックリ。思わず迫力に飲み込まれそうになりますが、気を取り直して実況に集中します。

予想通り「黄色のジャージ」の選手中心にレースが動いていきます予想通り「黄色のジャージ」の選手中心にレースが動いていきます photo:Shu Kato
登りをこなすエリート選手たち登りをこなすエリート選手たち photo:Shu Kato集団の後方はMAVICカーが守ります集団の後方はMAVICカーが守ります photo:Shu Kato黒枝選手の大逆転!黒枝選手の大逆転! 細かいアタックや牽制が繰り返され、各チームが主導権を奪いあう展開を事細かにお伝えすることができたのは、コミッセールとMCが無線で連携しているから。集団に付いているコミッセールカーに乗ったUCI国際審判の菊池さんからリアルタイムでレース状況が伝えられるので、実況席にいながらにして集団の中で走っているように感じるほど。

その臨場感が観客の方にも伝わったのか、レースが終盤に近付くにつれて会場の空気もどんどん熱くなっていきます。選手がいつ仕掛けるか、次にどう出るか、観客自身でも想像できるようなMCが少しでもできたのかな、と思うと少し嬉しいですね!

レースは、中盤で逃げが決まるも残り2周を残して吸収。最終周の登りで切れ味鋭いアタックを決めた柴田選手(龍谷大学)が逃げ切りを決めるかと思いきや、その背後にはチームメイト達の必死のアシストで引き上げられた黒枝選手(鹿屋体育大学)が迫ります。

そして、逃げ切りを確信した柴田選手がガッツポーズをした瞬間、左から差す黒枝選手!勝負の行方は写真判定にもつれ込み、どよめく会場のみなさん。そして、結果は黒枝選手の大逆転。まるで今年のドワーズ・ドール・フラーンデレンのような、劇的な結末にドキドキしてしまいました!

ロードレースは本当に最後の最後まで分からないものですね!特に最後の黒枝選手を勝たせるために働いたチームメイトの姿は、まさに「弱虫ペダル」で読んだ「エース」と「アシスト」の関係そのもの。それが、実際にこの目で見られたことはとっても感動的でした。テレビやネットでレースの映像を見ていましたが、実際の現場で味わった興奮はかけがえのないもの。レース観戦の虜になってしまいそうです!

九州でのレースイベントも初、大会MCとしても初と、初めてづくしの経験でしたが、多くの方々に「林檎ちゃん!」と声をかけていただく機会があって、とっても嬉しかったです。できれば、次は選手として走ってみたいですね。チャレンジする心を忘れず、いつかポディウムを狙うようになりたい!と思うほど、初めてのロードレース観戦は大きな感動を与えてくれました。

優勝した黒枝選手とチームメイトのみなさん優勝した黒枝選手とチームメイトのみなさん photo:Shu Katoエリート表彰式の様子エリート表彰式の様子 photo:Shu Kato

記念写真のリクエストにももちろんお応えしました記念写真のリクエストにももちろんお応えしました photo:Shu Kato表彰式のプレゼンターも務めさせていただきました表彰式のプレゼンターも務めさせていただきました photo:Shu Kato




さて、そんな大迫力のこの大会ですが、どういった経緯で開催され、そしてどういったレースを目指していくのでしょうか。大会委員長であり熊本自転車競技連盟理事長、そして普段は高校教諭として働かれている、中田さんのお話をもとにご紹介しましょう。

大会実行委員長であり熊本自転車競技連盟理事長である中田さん大会実行委員長であり熊本自転車競技連盟理事長である中田さん photo:Shu Kato2013年以来、4回目の開催となる九州チャレンジロードレース。開催のきっかけとなったのは、中田さんと同期で仲の良いサイクリストが五木村の観光課に所属しておられ、その方から「五木村でロードレースはできないだろうか?」という相談が持ちかけられたことなんだとか。

大会規模は決して大きくはなく、今年も300人程度ということですが、やみくもに参加者を増やすことは考えていない、と中田さん。小規模でも持続的に開催を続けていけるように、そして選手目線での満足感を大切にしていきたいという思いがあって、あえてこの規模での開催を続けられているそうです。

子供たちもレースに参戦 登録レースでは珍しい光景です子供たちもレースに参戦 登録レースでは珍しい光景です photo:Shu Katoそして、もうひとつ大切な目的として掲げられているのが、将来の自転車選手育成の場となること。JCF公認レースでありながら、子供たちが参加できるレースを設けているのは全国的に見てもかなり珍しいケース。九州の子供たちが自転車競技を楽しみ、経験を積むための機会としてとても貴重な存在なんです。

将来的には、九州の他県でも同じようなレベルの大会を立ち上げ、連携していくことでツール・ド・北海道のようなステージレースイベントにしていくことも大きな目標の一つだと、中田さんには語っていただきました。これからの九州チャレンジロードレースの展開に要注目です!


text&Model :Mitsuki Ringo
direction&photo:Shu Kato


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