8月11日、Merida/Veloチームのライダー、アルバン・アウバートが日本にやってきた。『5大陸、5つのDHコースを2週間で走る』という冒険企画を、富士見パノラマを走って完結させるためである。



5大陸の最初のスポット、ユーラシア大陸/フランス・シャテルにて。5大陸の最初のスポット、ユーラシア大陸/フランス・シャテルにて。 (c) Tanguy Ducommun / Merida
アルバン・アウバート(右)。左にいるカメラマンと二人で、5大陸を2週間で走るという冒険を成し遂げた。アルバン・アウバート(右)。左にいるカメラマンと二人で、5大陸を2週間で走るという冒険を成し遂げた。 “5Continents 5spot “のグラフィックアイコン。彼が毎年のMTBアドベンチャーとして企画、実行している『ゴージャス・アドベンチャー(豪華な冒険)』の一環だ。“5Continents 5spot “のグラフィックアイコン。彼が毎年のMTBアドベンチャーとして企画、実行している『ゴージャス・アドベンチャー(豪華な冒険)』の一環だ。 アウバートはメリダのフリーライド系チーム員として、レースではないフリーライディング、MTBでさまざまなところへ旅し、そこを走るというスタイルを通し、オフロードライディングの素晴らしさを伝え続ける。これまで彼が行ってきた活動をあげてみよう。このメロウでフロウなライドが好まれる昨今において、なかなかにストイックである。まさに現代のMTB冒険王と呼ぶにふさわしい。

アルバン・アウバートの冒険の軌跡
2007年 ダウンヒル世界最長標高差、5078m 
     世界記録達成 @エクアドル
2010年 12時間で距離27.365kmのダウンヒルに成功 
     世界記録達成 @フランス
2011年 50日間で50箇所のバイクパークを走行 
     @ヨーロッパ全土
2012年 5日間で5つの火山からダウンヒル
     標高差合計 5000m @エクアドル
2013年 標高差 3513mのダウンヒルに成功 @スイス
2014年 標高5600mにてダウンヒル @イラン

数字だけみるとめちゃくちゃな記録をメイクしており、そもそも50日間で50箇所も走れるぐらいMTBパークがヨーロッパにはあるのか!という新たな驚きも湧いてくる。が、それはそれとして、アウバート本人はいたってのんびりとした感じのライダーである。

その彼が今回日本に来たのは、「5Continents 5spot」のため。これは5つの大陸にあるダウンヒルコースを合計で2週間、14日間で走りきるというものだ。どこでMTBに乗ったか、ということだけでなく、MTBとともに移動する旅そのものが、この企画の趣旨である。

アフリカ大陸/モロッコ・アミズミズ。ここだけはDHパークではなく、広大なトレールだった。アフリカ大陸/モロッコ・アミズミズ。ここだけはDHパークではなく、広大なトレールだった。 (c) Tanguy Ducommun / Merida
カメラマンと二人で5大陸を移動し、撮影を繰り返していく。各地のコースを楽しむだけでなく、行った先々の土地の文化や食べ物にも感動する。とかく『行った乗った帰ってきた』になりがちな自転車トリップを、さらに深く楽しむことも提唱している。

今回の5大陸、走った場所は、次のとおり。

ユーラシア/フランス・シャテル
アフリカ/モロッコ・アミズミズ
アメリカ/カナダ・ウィスラー
オセアニア/オーストラリア・ケアンズ
アジア/日本・富士見パノラマ

アジア/日本はおなじみ富士見パノラマでのフォトセッションとなった。アジア/日本はおなじみ富士見パノラマでのフォトセッションとなった。 (c) Tanguy Ducommun / Merida
オセアニア大陸/オーストラリア・ケアンズ。豪州MTB天国と言われるパークだ。オセアニア大陸/オーストラリア・ケアンズ。豪州MTB天国と言われるパークだ。 (c) Tanguy Ducommun / Meridaアメリカ大陸/カナダ・ウィスラー、ジャンプが果てしなく続く噂のコース『A ライン』アメリカ大陸/カナダ・ウィスラー、ジャンプが果てしなく続く噂のコース『A ライン』 (c) Tanguy Ducommun / Merida


7月29日から始まった『5大陸5スポット』DHツアーは、富士見を走ることで幕を閉じた。曰く「富士見はCコースが一番楽しい」だそうである。

アウバートが今回のアドベンチャーで一番気に入ったのは、ウィスラーのジャンプが続くコース、『Aライン』だそうだ。彼が住むスイスの北、ルロンドンには、同じようなジャンプが続くダウンヒルコースがあるそうだ。

アルバン・アウバートの愛車 メリダ・ワンエイティー
アルバンが相棒に選んだ『メリダ・ワンエイティー』。リアサスのトラベル量は180mmとダウンヒルスペックだ。アルバンが相棒に選んだ『メリダ・ワンエイティー』。リアサスのトラベル量は180mmとダウンヒルスペックだ。
今回、彼が5大陸を走ったメリダのフリーライドMTBをご紹介しよう。『メリダ・ワンエイティー(180)』。180mmストロークを持つ、仮想ピボットポイントシステム『VPK』を利用するフルサスMTB。 これは4つのピボットを利用して1つの仮想メインピボットを作り出し、ペダリングと衝撃吸収との最適なバランスポイントを取るという、現在のMTBリアサスの理想形とも言われるリアサスシステムだ。

ペダリング時の自然な挙動を排し、ドロップオフからの大きな衝撃も確かに吸収し、なめらかに走り続けるメリダの最高峰マシン。残念ながら、このトラベル量180mmスペックのモデルは日本未発売。近い国内発売モデルは『ワンシックスティ160』となる。

今やMTBにマストのパーツ、ドロッパーシートポストは、シンプルなサドル操作レバータイプ。今やMTBにマストのパーツ、ドロッパーシートポストは、シンプルなサドル操作レバータイプ。 フロントサスには、サポートを受けるSRサンツアーのDHサス、RUX(ラックス)を使用。フロントサスには、サポートを受けるSRサンツアーのDHサス、RUX(ラックス)を使用。

変速ももちろん現在のスタンダード、前1速x後11速。軽量でトラブルも減らせるシステムだ。変速ももちろん現在のスタンダード、前1速x後11速。軽量でトラブルも減らせるシステムだ。 仮想ピボットポイントを使うリアサスシステムVPK。リアサスの調整で好みの走行感を設定する。仮想ピボットポイントを使うリアサスシステムVPK。リアサスの調整で好みの走行感を設定する。


「世界中を走ってきたけれど、やっぱり故郷のスイスが最高だね。これまで15年以上プロとして走り続けているけど、それでもすべてのトレールの30%ぐらいしか走れていないんだよ。もういちどMTBライダー人生を繰り返すとなっても、多分スイスを拠点にすると思うよ」

稀代の冒険家も、やっぱり地元がお好みのようである。我々も彼のように、「自分の母国トレールが大好きだ」と言えるような、世界中を走り回るMTBライフを送ってみたいものである。

今回、一緒に回ったカメラマンのタングイさん(左)とアウバート(右)、富士見のコースで記念撮影。同じバイクに乗っているのは、「ああ、これは僕のスペアバイクみたいなもの(笑)」だからだそう。今回、一緒に回ったカメラマンのタングイさん(左)とアウバート(右)、富士見のコースで記念撮影。同じバイクに乗っているのは、「ああ、これは僕のスペアバイクみたいなもの(笑)」だからだそう。

photo&text:中村パンソニ( Nakamura Pandasonic)