MTBイベントとしては国内最大規模を誇るシマノバイカーズフェスティバルも今年で25回記念大会。真夏の太陽が燦々と降り注ぐ富士見パノラマリゾートを舞台に、XCレースにグラヴィティ系種目、そしてオフロードツーリングなどさまざまな楽しみ方で、2日間で約2,300名もの参加者がMTBを満喫した模様をレポートします。



今年もやってきたMTB夏の祭典ことシマノバイカーズフェスティバル今年もやってきたMTB夏の祭典ことシマノバイカーズフェスティバル
マウンテンバイクというジャンルが確立されて間もない1991年より開催され、ついに25回目の節目を迎えたシマノバイカーズフェスティバル。MTBイベントとしては国内最大の規模と参加人数を誇り、今年は7月25日・26日の2日間で約2,300名もの参加者を集めた。

その舞台となるのはMTB好きにとってはお馴染みであり、前週にはMTB全日本選手権が開催された富士見パノラマリゾート。XC向けとDH向けの両コースを備え、あたりにはトレイルが点在するなど、抜群のライド環境を活かした豊富な種目の数々がシマノバイカーズフェスティバルの特徴であり、人気の理由であると言えよう。

今年は天気に恵まれ、夏らしい青空のもと開催された今年は天気に恵まれ、夏らしい青空のもと開催された 森の中を走るシングルトラック区間森の中を走るシングルトラック区間

XCコースには新たにフライオーバーが新設されたXCコースには新たにフライオーバーが新設された 女性参加者も多い女性参加者も多い


高原と聞けば涼しさを期待するが、今年は兎にも角にも暑かった。都内の暑さにやられていた筆者も「今日の取材は涼しくて疲れなさそう」なんて考えていたが、そんな予想は富士見高原へと降り立った瞬間に木っ端微塵に吹き飛んだ。心配されていた台風12号の影響が無かったのが救いだが、朝から気温がグングンと上がり、日差しが痛いくらいに照りつけた。

ただ、「アツい」のは気温だけでは無く、参加者の皆さんも同じ。今回は土日2日間開催のうちの土曜日の朝から取材を行ったが、会場に到着した7時頃には、早くも試走が盛況を迎えており、会場全体が良い雰囲気に。あとのレースなどお構い無し(?)に自転車をドロドロにしながら、楽しみまくっているのだ。ロードイベントと比較すれば、その人数自体は多くないが、盛り上がり方は明らかに上を行っており、もっとMTB乗りが増えても不思議ではないと感じさせてくれる。

気温以上に熱い?応援も(ちなみに4時間エンデューロのトップを争っているチームでした)気温以上に熱い?応援も(ちなみに4時間エンデューロのトップを争っているチームでした) キッズレースも多くのエントリーを集めたキッズレースも多くのエントリーを集めた

4時間エンデューロの終盤は強い西日に照らされた4時間エンデューロの終盤は強い西日に照らされた
8時からは第1種目である60分XCマラソンがスタート。XCのコースには今年からフライオーバーが新設され、心拍数が上がり切った選手達の脚を更に削っていく。その後はキッズ達によるXCレース、数ある競技の中でも気軽さで最も多くのエントリーを集める2・4時間XCエンデューロへと続く。

「暑さと土煙で、今年は特に厳しかった」との感想が多く、強豪アマチュアが先頭争いを繰り広げる一方で、チームや家族で仲良く参戦という参加者も多く、賑やかな中で各レースは進行。キッズレースでは選手たち以上に熱くなった応援のパパやママ達からの檄が飛び、エンデューロではラッパを使ったりと趣向を凝らした(?)チームメイトからの声援が。この雰囲気こそが「MTB夏の祭典」の所為なのだろう。

朝から元気いっぱいなDHライダーのみなさん朝から元気いっぱいなDHライダーのみなさん DHバイクはこんな風にして頂上へと運びますDHバイクはこんな風にして頂上へと運びます

華麗なジャンプを披露するのは念願のDH全日本王者に輝いた永田隼也選手(アキファクトリーレーシング)華麗なジャンプを披露するのは念願のDH全日本王者に輝いた永田隼也選手(アキファクトリーレーシング) 2人もしくは3人一組で走るチームDH2人もしくは3人一組で走るチームDH


一方、北側斜面DHコースでは欧州で高い人気を誇り、シマノバイカーズでも昨年より登場した「DHエンデューロ」、2人もしく3人のチームが一斉に出走しタイムを競う「チームDH」が開催。ゴール前のジャンプポイントではツイストを入れたりと、タイムだけではない魅せる走りにゴール付近では度々大きな歓声が沸き起こる。普段あまり下り系のバイクを見る機会がないだけに、迫力満点で見ているだけでもおもしろい。

そして、今年はゲストライダーも豪華で、国内のオフロード系シマノサポートライダーが集結。XCではブリヂストン・アンカーやチームスコットが、DH系競技ではチームジャイアントやアキファクトリー勢が参加者と共に走り、各レースを盛り上げた。また、前週の全日本選手権XC男子エリートを制し、富士見に残って高地トレーニング中だという山本幸平選手(トレックファクトリーレーシング)が登場するサプライズも。

前週に富士見で全日本王者に返り咲いた山本幸平選手(トレックファクトリーレーシング)の姿も前週に富士見で全日本王者に返り咲いた山本幸平選手(トレックファクトリーレーシング)の姿も 今年は豪華なサポートライダーが富士見に集結今年は豪華なサポートライダーが富士見に集結

グラヴィティ系種目を実況ブースでMCアリ―さんと浅野善亮選手(TeamGIANT)を発見グラヴィティ系種目を実況ブースでMCアリ―さんと浅野善亮選手(TeamGIANT)を発見 DH系種目では黄色い声援も!DH系種目では黄色い声援も!

関西シクロクロスを初めとしたサイクルイベントで人気のタベルナ・エスキーナが初出展関西シクロクロスを初めとしたサイクルイベントで人気のタベルナ・エスキーナが初出展 シマノブースではMTB乗り憧れのXTR Di2をテストすることができたシマノブースではMTB乗り憧れのXTR Di2をテストすることができた


走る以外の楽しみが充実しているのもシマノバイカーズの人気の理由の1つであろう。多くのメーカーが集った出展ブースでは最新鋭のMTBが並べられ、試乗コースでテストすることもできた。また、今年は飲食ブースが強化されており、目立つ所ではシクロクロスイベントでお馴染みのタベルナ・エスキーナが出展。暑い日にピッタリな、いちごの果肉を使ったシロップのかき氷が最高でした。



シマノバイカーズもう一つの魅力「MTBツーリング」に参加 長距離ダウンヒルを思う存分満喫

とっておきのビュースポットとロングダウンヒルを紡ぐ入笠釜無林道ビューツーリングとっておきのビュースポットとロングダウンヒルを紡ぐ入笠釜無林道ビューツーリング
ついついスキー場内で行われているレース種目に目が行きがちだが、シマノバイカーズはそれだけではない。辺りに無数に広がるトレイルを目一杯満喫できるMTBツーリングもとても魅力的だ。昨今「MTBの走る場所」を取り巻く環境が複雑化する中にあって、気軽に参加できるとあり初心者にもうってつけといえるだろう。

2日間を通して用意されているツーリング種目は全部で15種類。今回、何年か前に一度トレイルライドを走ったことがあるだけという筆者が参加(挑戦)したのが「入笠釜無林道ビューツーリング」である。全長38kmの中級者向けで、登りが680m、下りが1,200mという走りごたえ満点の中級者向けコースである。

今回のお供はジャイアントのXCバイク「XTC ADVANCED 27.5」今回のお供はジャイアントのXCバイク「XTC ADVANCED 27.5」 出発前のミーティングで安全に走るためのイロハを確認出発前のミーティングで安全に走るためのイロハを確認

1つのゴンドラには2台ずつ自転車を詰め込むことができる1つのゴンドラには2台ずつ自転車を詰め込むことができる 楽しいMTBツーリングのスタートです楽しいMTBツーリングのスタートです


さて、シマノバイカーズ当日。お供として用意したバイクはジャイアントのXCバイク「XTC ADVANCED 27.5」。MTBは持っていないため、編集部内から調達してきたバイクである。借りてきたのは大会前日で、当然持っているはずのないMTB用のビンディングシューズを調達したのも前日というギリギリっぷり。ガイドには「1時間のダウンヒルがある」と書いてあり、内心「しまった」と頭を抱えたのはここだけのはなし(笑)。

しかし、結論から言えば、カーボンの振動吸収性と27.5インチホイールの高い走破性のおかげで、リアリジットでも下りを十分に楽しむことができた。参加者に皆さんのバイクをチェックして見ると、大半がフルサスであったが、中にはフルリジットで参加した強者も(2人のうちの1人は女性!)。決して筆者を見習ってはいけないが、それぐらい気軽に楽しめるのがMTBツーリングの魅力の1つである。

早速シングルトラックが登場早速シングルトラックが登場 チームで参加されている方もいらっしゃいましたチームで参加されている方もいらっしゃいました

ハードなダウンヒルがあるにも関わらず、女性の参加者もハードなダウンヒルがあるにも関わらず、女性の参加者も 登りの獲得標高700m弱あり、途中には斜度が10%を越える箇所も登りの獲得標高700m弱あり、途中には斜度が10%を越える箇所も

マナスル山荘の名物というソフトクリーム。しっかり甘いのにさっぱりしていて美味でしたマナスル山荘の名物というソフトクリーム。しっかり甘いのにさっぱりしていて美味でした マナスル山荘の番犬(?)に癒やされるマナスル山荘の番犬(?)に癒やされる


まずは、参加者全員と3人のガイドが集まってミーティングがあり、その後ゴンドラへ移動。「上手くゴンドラにバイクを積めるのだろうか」と不安にかられつつ、係員さんに助けてもらい無事に積み込み完了。眼下にDHコースを眺めながら、頂上へ到着。標高にして730mをいっきに登るとまるで空気が違い、下界は優に30℃をこえていたものの、標高1,780m界隈は半袖のサイクルウェアではやや肌寒いほど。

参加者全員が揃ったところで、いきなり、高山植物が生い茂るシングルトラックへと突入。ディスクブレーキの制動力の高さにびっくりしつつも、(そこからかっ!というツッコミはご容赦ください笑)、走り始めてから10分も経たない内に登場したドロップオフで興奮したりと、早くも「MTBって超楽しい」と思ったり。

「熊の目撃情報がありました。」「熊の目撃情報がありました。」 海外のような壮大な自然の中をダウンヒル海外のような壮大な自然の中をダウンヒル

入笠山東側の八ヶ岳一帯を望むビュースポットにて入笠山東側の八ヶ岳一帯を望むビュースポットにて
ドロップオフあとはしばらく木漏れ日の舗装路の登りが続き、3つ設けられた内の最初のエイドステーションがあるマナスル山荘へと到着。用意された地物の野菜スティックと、ブルーベリーはとても新鮮で、高原の味を満喫することができた。加えて、たまたま居合わせた大会レポーターの絹代さんから情報をゲットし、マナスル山荘名物というソフトクリームもペロリ。しっかりと甘いながらも、さっぱりとしており、これは食べなきゃ損と思わせてくれる美味しさでした。

マナスル山荘を出発すると、しばらくは登り基調で、斜度が10%を超える区間も所々に。標高が高いとあって、数字以上のキツいものの、開けた所では、八ヶ岳一帯の山々が視界に飛び込んでくる。この日は晴天とあって、その景色の良さは一入。約12kmで獲得標高350m弱のややハードな登りを終え、冷やしトマトが待つ第2エイドで小休止をとった後、お待ちかねの釜無林道のロングダウンヒルへと突入する。

地物という冷え冷えのトマト。赤くてしっかりと濃厚な味わい地物という冷え冷えのトマト。赤くてしっかりと濃厚な味わい こちらも地元で採れたというブルーベリーこちらも地元で採れたというブルーベリー

釜無山の登山口から、1時間のロングダウンヒルへ出発釜無山の登山口から、1時間のロングダウンヒルへ出発 滑るバイクを抑えこみながらのダウンヒルはMTBの醍醐味滑るバイクを抑えこみながらのダウンヒルはMTBの醍醐味

木漏れ日のダートロードも木漏れ日のダートロードも ふとタイヤを見たら、カミキリムシがふとタイヤを見たら、カミキリムシが 銘酒真澄が有名な宮坂醸造の工場に置かれた、クラシカルな列車と銘酒真澄が有名な宮坂醸造の工場に置かれた、クラシカルな列車と

シメは付近の特産品でもある飲むヨーグルトシメは付近の特産品でもある飲むヨーグルト 洗車してバイクを綺麗にするまでがMTBツーリングです洗車してバイクを綺麗にするまでがMTBツーリングです


ツーリング終了後にスタッフの方に話を聞くと、コース設定は富士見付近を拠点とするMTB乗りの方達が監修しているのだそう。適度にハードで、普段からスポーツバイクに乗っているという方であれば、しっかりと楽しめる絶妙なコース設定だないう印象で、これはもっと人気が出ても全く不思議ではない。

かく言う筆者もMTBの魅力にどっぷりとハマってしまった様で、レンタルバイクで参加できるガイドツアーを探してしまっている。シマノバイカーズのツーリングは一度参加すれば、あなたも、MTBの魅力をどっぷりと体感できるはずだ。



1日目の〆はウェルカムパーティーとスリリングなCXレース

シマノバイカーズ名物の豚の丸焼きには長蛇の列ができたシマノバイカーズ名物の豚の丸焼きには長蛇の列ができた ウェルカムパーティー盛り上げてくれた富士見太鼓保存会の皆さんウェルカムパーティー盛り上げてくれた富士見太鼓保存会の皆さん

銘酒真澄も無料で振る舞われた銘酒真澄も無料で振る舞われた 夕暮れとも共に涼しげに夕暮れとも共に涼しげに


全ての一般参加種目が終了すると、夕暮れの少し前ぐらいからは、お待ちかねのウェルカムパーティーがスタート。40年以上の歴史を持つ地元の和太鼓チーム「富士見太鼓保存会」のパフォーマンスがなんとも心地よい雰囲気の中、参加者の皆さんが長蛇の列をなしていたのが、毎年恒例となっている「豚の丸焼き」。10日前から仕込みを開始し、当日もお昼すぎから4時間程掛けてじっくり焼き上げたバイカーズ定番のごちそうに多くの参加者が舌鼓を打った。

そして、今年はシマノサポートライダーや、地元SUWAKO RACING TEAM、メーカー関係者が出場したシクロクロスレースも開催され、多いに盛り上がった。CXと2足のわらじを履くXCライダーに加え、フルフェイスヘルメットをかぶった「正装」のDHライダーも出走。スタートダッシュと抜群のバイクコントロールテクニックで会場を沸かせた。

出展ブースゾーンをコースの一部に取り入れたエキシビジョンCXレース。DHライダー勢がホールショットで魅せる出展ブースゾーンをコースの一部に取り入れたエキシビジョンCXレース。DHライダー勢がホールショットで魅せる
観客の前で華麗なディスマウントを披露する斉藤亮選手(ブリヂストンアンカー)観客の前で華麗なディスマウントを披露する斉藤亮選手(ブリヂストンアンカー) ガチな走りでぶっちぎりの独走優勝を飾ってみせたのは沢田時選手(ブリヂストンアンカー)ガチな走りでぶっちぎりの独走優勝を飾ってみせたのは沢田時選手(ブリヂストンアンカー)


レースは、DHライダーの加藤将来選手(アキファクトリー)がホールショットをとったものの、その後は前週の全日本選手権XCでU23王者となった沢田時選手(ブリヂストンアンカー)が借り物のCXバイクで独走。最後は青木卓也選手(TeamGIANT)との順位関係無しのスプリント争いを制しトップでフィニッシュ。エキシビジョンながら、ハードな展開となった2位争いを斉藤亮選手(ブリヂストンアンカー)が制し、チームでの1・2フィニッシュを飾って魅せた。

シマノバイカーズ初日は日没と共に閉幕。2日目も多いに盛り上がった様で、天気に恵まれた今大会は大盛況のうちに終了した。25年目の節目を経て、次の一歩へと踏み出す国内最大級のMTBイベント「シマノバイカーズフェスティバル」。来年もきっと多くのマウンテンバイカーの笑顔が会場に溢れかえることになるはずだ。

text&photo:Yuya.Yamamoto