今回もまた唐突にメタボ会長が編集部にやってきた。来るなり自分の愛車を見つけて一言。

「おぉ!イメージ通りの仕上りだよ。サンキュー!」

メタボ会長の巨体を揺さぶる ダンシングならぬ メタボ会長の巨体を揺さぶる ダンシングならぬ 満面の笑みで愛車を眺めながらタバコを一服。
この笑顔に何度騙されたかわからないものの、満足げな表情を見ると、私も少しだけ報われた様な気になってしまうのが不思議である。
いかんいかん!私の学習能力は低くない筈だぞと自己を制する私だった。

「楽しみだな。これからホームコース周るぞ。付き合え。」

おいおい。アンタは少年か!すこしは編集部激務の都合を考えようよ。今日はマジで残務がテンコ盛。その2時間が命取りになりかねないくらい多忙なのである。その旨を会長に伝えると、ニヤリと一言。

「俺はもっと忙しいんだぞ。1日は24時間も あるじゃないか。出発!」 全く呑気なものである。

空調事業部の設計図をチェックするメタボ会長。 アナタは立派な芸人です空調事業部の設計図をチェックするメタボ会長。 アナタは立派な芸人です 言われてみれば、メタボ会長も確かに激務ではある。他の事業部との打合せが長引いて、13時からの編集会議に22時になって現れてみたり、今日は忙しいからと編集会議を朝7時から始めたこともあった。

実際のところは何処で何をしているかは誰も把握していないのだが、メタボ会長不眠説が本社では囁かれている程の仕事の鬼である。

もっとも、編集部に対しては<仕事の鬼>どころか、単にタチの悪い<悪魔>のような存在ではあるが。


何となく騙された感を抱きながら、今日はホームコースの多摩湖・鹿島休憩所から伴走開始。1周12kmのコースを30分掛けて走る。始めた頃はガシガシとパワーにまかせて漕ぎまくっていたメタボ会長だが、スムーズに足が回り始めている事に気がついた。

いい迷惑の編集部員たち   ※手放しは危険です。真似しないで下さいいい迷惑の編集部員たち   ※手放しは危険です。真似しないで下さい 表情も汗だくの赤鬼ではなくなり、ごくごく普通のサイクリストのそれになり始めている。

「足回りが軽いと楽チンだぜ。上りが平らに見えるぞ。自転車サイコー!今日もカイチョー!!」
やたらご機嫌である。

「足回りは軽くても、アンタが重いから台無しだよ。」
またまた心の中だけでボヤく私だったが、心地よさそうに走る会長の姿を見ると不覚にも、私まで爽やかな気持ちになってくる。自転車ってやっぱりいいもんである。


1周して再び鹿島休憩所に到着。ここでおもむろに会長がバックポケットからビニール袋を取り出し、
「タバコのポイ捨てが多くていかんな。これじゃ愛煙家が嫌がられても文句言えないな。」

平日でも次々と人々が訪れる鹿島休憩所。 キレイに使いたいですね。平日でも次々と人々が訪れる鹿島休憩所。 キレイに使いたいですね。 ブツブツ言いながら、タバコの吸殻を拾い始めた。
これにはタバコを吸わない私達も感心しながら気持ち良く参加させてもらう。
この人にもこんな素晴らしい一面あるんだなぁと思いながら手伝っていると、メタボ会長が

「俺はいつも此処でタバコ吸ってるから、
 ポイ捨てが俺のせいにされちゃ敵わんからな。」

ん?理由はそれだけ?
美しき道徳心は関係無かったの?
今回ばかりは深く考えるのを止めよう。


その後、編集部に戻ってからもご機嫌で、編集部員に愛車を自慢している。穏やかな空気の中で談笑が続く。
そろそろ仕事に掛かろうと思った時に会長が
「東京側の舗装が悪い所走ってる時、振動で手がしびれて辛いんだけど。こんなもんか?」

お得意の< 立ちコギ>     巨大なオシリが少し小さくなったかも?お得意の< 立ちコギ>   巨大なオシリが少し小さくなったかも? ここで事件が起こった!!

油断していた編集部員の一人がまともに答えてしまったのだ。
「振動吸収に関してはやっぱりカーボンに利がありますからね。ハンドルバーだけでもカーボンにすれば収まる可能性は高いと思いますが・・・」

編集部内に緊張が走る!

答えてしまった編集部員は気づいて青ざめた表情に一変している。さっきまでの穏やかな空気は消え、嵐の予感。

ここでメタボ会長が部品棚を指差しながら
「あそこにあるのはカーボンハンドルだよな。今度はあれを試すぞ。」

台風直撃!! 答えてしまった編集部員は泣きそうになっている。

「じゃ、仕事頑張れよ。次回も楽しみだな。ヨロシク。」 地獄の置き土産を残してメタボ会長は帰っていった。

誰が悪い訳でも無いのだが、テンコ盛の残務が更に増える結果だけが残った。だが、毎月確実に赤字を計上している編集部なだけに全ての業務を、そつなくこなす以外の選択肢は残されていなかった。編集部全員が無言でデスクに向かう。

「1日は24時間じゃ足りないじゃないか!」  心の中で叫びながら、膨大な残務に取り組む私だった。



次回は、続かないで欲しいかも?


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「タバコのポイ捨ては絶対ダメだぞ!」  by メタボ会長「タバコのポイ捨ては絶対ダメだぞ!」  by メタボ会長 (プロフィール)
メタボ会長
身長 172cm
体重 87kg
体脂肪率 27%


当サイト運営法人の代表取締役。
高校3年まで野球に明け暮れ、大学時代にオートバイのロード
レースに夢中になり卒業後、メーカー系チームに所属し
全日本選手権に3年間出場。鳴かず飛ばずで所属チームを解雇され、
その後、着々と太り続ける典型的な中年体型オヤジ。
タバコは人生の栄養剤と豪語する根っからの愛煙家。