4月17~19日にかけてイギリスの港町ブリストルで行なわれた、ヨーロッパ最大のハンドメイド自転車ショー『Bespoked(ビスポーク)UKHBS』。今回は日本から出展した『Ogre(Weld One)』、最優秀賞・最優秀新人賞をダブル受賞したRowan Frameworks、最優秀ロードバイク賞を獲得したDonhou Bicycles、最優秀オフロードバイク賞を獲得したSwarf Bicyclesを紹介する。



Ogre(オーガ)

惜しくも賞を獲得することは無かったが、数多くの来場者、他のビルダー達の注目を集めた惜しくも賞を獲得することは無かったが、数多くの来場者、他のビルダー達の注目を集めた
後三角は丸パイプの曲げと溶接。酸化色が美しい後三角は丸パイプの曲げと溶接。酸化色が美しい 前三角はチタン板を何枚も溶接し、ロゴはサンドブラストで表現前三角はチタン板を何枚も溶接し、ロゴはサンドブラストで表現


チタンフレームを得意とし、京都府北部、日本三景の一つ天橋立に近い与謝野町に工房を構えるOgre(オーガ)。今回は、昨年秋のサイクルモードで初公開となった、チタン製フルサスペンションDHバイクを海外で初めて展示した。ビルダーの小西栄二さんは実際にこれに跨がり、同年のレッドブル・ホーリーライドに出場している。

工房は京都府北部にある(手に持っているのは筆者のフレーム)工房は京都府北部にある(手に持っているのは筆者のフレーム) 驚くのは何といっても溶接箇所の多さ。製作には、フルタイムでこれ1台にかかりきって、1ヶ月を要したそうだ。注文を受けて作ったバイクではないので値段はつけられないが、少なくとも100万円以上の制作費がかかっているとか。

小西さんが自転車フレームの製作を始めたのは8年前。それまでは一般企業に勤め、溶接技師として腕を磨く。オートバイのパーツなどを個人的に頼まれて作り始めるようになり、2年後独立。自転車のフレームは、頑丈さと軽さが同時に求められるトライアル競技のフレームを作り始めたのが最初。自転車は、企業で求められる溶接と異なり、自分一人の手で1から完成まで仕上げられるのが好きだ、とのこと。



Rowan Frameworks

次は、最優秀賞・最優秀新人賞を2つ同時に獲得したRowan Frameworks。新人賞の名の通り、ビルダーのティミー・ローワンさんは昨年8月、自転車作りの専門学校TBA(The Bike Academy)のコースを受講し、フレームビルディングの技術を学んだばかり。つまり、実績は1年にも満たない!

最優秀賞・最優秀新人賞をダブル受賞したバイク。車種としては「ユーティリティバイク」になるのだろうか最優秀賞・最優秀新人賞をダブル受賞したバイク。車種としては「ユーティリティバイク」になるのだろうか
キャリア・ハンドル・ステム・木製のカゴまで自作だ。変速レバーはギブネールを使用キャリア・ハンドル・ステム・木製のカゴまで自作だ。変速レバーはギブネールを使用 歯数差の大きなホワイトインダストリーのクランク。カスタマーは自分自身歯数差の大きなホワイトインダストリーのクランク。カスタマーは自分自身


工房は地元イギリスのウッドチャーチという町に構える。今回賞を獲得したバイクは、まだ作り始めて4つめのバイクだそうだが、キャリアはもちろん、ハンドル・ステムに至るまで自作するという凝りよう。キャリアに載る木製のカゴももちろん自作だ。変速は、ブレーキレバーから手を離さずWレバーのように変速が出来る『ギブネール』のレバーを使用する。クランクはホワイト・インダストリーだ。

ビスポークUKHBSに限らず、賞を受賞するバイクは、フレームだけでなくパーツアッセンブルにもこだわりが見えるバイクが多い。このバイクは、ビルダー本人用として作られた。



Donhou Bicycles

最優秀ロードバイク賞を獲得したのは、DSS1と名付けられたインストックフレームシリーズ最優秀ロードバイク賞を獲得したのは、DSS1と名付けられたインストックフレームシリーズ
続いて、最優秀ロードバイク賞を受賞したDonhou Bicycles。ロードバイク以外に、コミューターバイクなどが数台展示されていた。ビスポークUKHBSには初回の2011年から参加し、初の最優秀賞、その後も部門賞をいくつか獲得するなど、ショーの常連のようだ。主にフレームを製作するのはビルダーのトム・ドンホーさん。他に1人が工房を手伝い、溶接だけでなく、フレームペイントも自分の工房で行なう。

今回賞を獲得したのは、Donhou Signature Steel – DSS1と名付けられたインストックフレームシリーズ。ハンドメイドバイクにありがちな納期の不安定さを減らすため、ジオメトリー・ペイント・パーツアッセンブルがあらかじめ決められたモデルだ。パイプは地元イギリスのビルダーに使用されることが多いレイノルズ853。Enveのテーパーコラムフォークが組み合わされ、最新の油圧ディスクブレーキ仕様。価格は完成車で4,385ポンド(約82万円)。

ジオメトリー・ペイント・パーツアッセンブルにこだわったモデルも注文可能ジオメトリー・ペイント・パーツアッセンブルにこだわったモデルも注文可能 ビスポークUKHBSではコミューターバイクの展示も多いビスポークUKHBSではコミューターバイクの展示も多い

自家ペイントなだけあって、クオリティは非常に高い自家ペイントなだけあって、クオリティは非常に高い Donhou Bicyclesは毎年のように賞を獲得しているDonhou Bicyclesは毎年のように賞を獲得している




Swarf Bicycles

「普段使い」のMTBを展示したSwarf Bicycles「普段使い」のMTBを展示したSwarf Bicycles
最後に紹介するのは、最優秀オフロードバイク賞を獲得したSwarf Bicycles。ブリストルの南、ドーセットという町に工房を構える。ビルダーのアドリアン・ベドフォードさんが自転車製作を始めたのは、ちょうどこのショーが始まった2011年ごろ。最優秀賞を獲得したローワンさんと同じく専門学校TBAで溶接コースを受講し、最初は自分用、次に友人用にとフレームを作り始め、今までに製作したのは20台ほど。今回は自分用と、友人用に製作した29erのMTBを2台ショーに持ち込んだ。

フレーム作りの方針は、頑丈で永く使えること、だそうで、このMTBもパイプはレイノルズ853を使用し、質実剛健に作られている。ピカピカ輝くショーバイクの中にあって、やや「使い込んでる感」があるのが印象的だ。ブレーキの油圧ラインも含めてケーブルはすべてフレームの中を通るように交錯されている。シートステーはややトップチューブの前の方で溶接され、タイヤのクリアランスを多くとる工夫がされている。ブロンズのヘッドバッジは、ビルダーのお兄さんが特別に作ってくれたものなんだそう。

イギリスのショーだからか、レイノルズのパイプを使用したフレームが多くみられたイギリスのショーだからか、レイノルズのパイプを使用したフレームが多くみられた ビルダーのベドフォードさんの兄が製作した銅製のヘッドバッジビルダーのベドフォードさんの兄が製作した銅製のヘッドバッジ

油圧ブレーキラインは内蔵される油圧ブレーキラインは内蔵される 部門賞を獲得したのは、全員地元イギリスのビルダーだ部門賞を獲得したのは、全員地元イギリスのビルダーだ


次回の記事では、ツーリング車・トラックバイク・シクロクロスバイクなどをお伝えする予定です!!

Photo & Text : Hisanori“Mario”Ueda