4月17~19日にかけて、イギリスの港町ブリストルで、ヨーロッパ最大のハンドメイド自転車ショー『Bespoked(ビスポーク)UKHBS』が行なわれた。これからいくつかの記事で、『ビスポーク』の概要や会場の様子、はるばる日本から出展したビルダー、各部門の賞を獲得したバイクについて紹介していこうと思う。



Bespoked(ビスポーク)UKHBS会場入口。駅から至近距離だが、自転車での来場者も多いBespoked(ビスポーク)UKHBS会場入口。駅から至近距離だが、自転車での来場者も多い
開業から175年の歴史を誇るブリストル・テンプルミーズ駅開業から175年の歴史を誇るブリストル・テンプルミーズ駅 東京から直行便でロンドンまで12時間半。そこからさらに鉄道に乗り換え、2時間でブリストルという街に着く。古く10世紀から港町として栄え、現在の人口は40万人ほど。イギリスでは自転車の街として知られ、国内の自転車メディアの多くが本拠地をロンドンではなく、ここブリストルに構えている。

ブリストルまで、ロンドンからディーゼル特急で約2時間ブリストルまで、ロンドンからディーゼル特急で約2時間 そんな自転車の街ブリストルで、『Bespoked(ビスポーク)』(オーダーメイドの、という意味)と名付けられたハンドメイド自転車ショーが始めて開催されたのは2011年のことだ。当初は40の出展ブースで始まったこのショーも、今年で5回目となり、100を超えるビルダー・ブランドが出展するようになった。今やアメリカのNAHBS(ノースアメリカ・ハンドメイドバイクショー)と並ぶ、ヨーロッパ最大規模のハンドメイド自転車ショーとなったのである。

今回の会場となったのは、ブリストルの中心駅テンプル・ミーズ駅の一部で、かつて乗り場が設置されていたものの現在は使われていない部分。設計者の名をとってブルネル旧駅と呼ばれているエリアだ。過去5回の歴史の中で、去年だけはロンドンで行なわれたが、今年『ビスポーク』は再びブリストルに戻ってきた。

会場の広さはサッカー場の半分程度だろうか。入場が有料(2,700円ほど)なのにも関わらず、平日金曜日の午後に始まったショーは、開場直後から大勢の来場者を集め、かなり混雑していた。過去最多の出展者を集めただけあって通路は狭く、隣のブースに行くのにも苦労するほどだ。

ロンドンで60年以上の歴史を持つフレーム工房・自転車ショップのCondor Cyclesロンドンで60年以上の歴史を持つフレーム工房・自転車ショップのCondor Cycles 革サドルで有名な老舗ブルックスも、イギリスでの製造を続けているブランドだ革サドルで有名な老舗ブルックスも、イギリスでの製造を続けているブランドだ

アメリカ・ポートランドから、Ciero by Chris Kingも出展したアメリカ・ポートランドから、Ciero by Chris Kingも出展した チタン・カーボンの接着フレームを展示したLegend Factory(イタリア)チタン・カーボンの接着フレームを展示したLegend Factory(イタリア)


出展していたビルダーは地元イギリスで製作を行なっているところが多かったのだが、その他にもイタリアやチェコ、リトアニアなど、ヨーロッパ各国からこのショーのために自転車を持ち込んでいた。イタリアのビルダー曰く、地元にはこれほど大きなハンドメイド自転車ショーは無いそうで、日本からもOgre(Weld One)とHelavna Cyclesが今回ビスポークに初の出展を行なっている。

出展者はハンドメイド自転車ビルダーだけでは無く、イギリスやヨーロッパでの製造を続けているパーツメーカー、ハンドメイド系に強い地元の自転車ショップ、代理店などがあり、そして自転車の作り方を教える専門学校の出展もいくつかあったのが印象的だった。

.変わった形のカーゴバイクも、ハンドメイドフレームが得意とする分野だ.変わった形のカーゴバイクも、ハンドメイドフレームが得意とする分野だ リトアニアから刺激的なTTフレームを持ち込んだTsubasa(奥さんが日本人なのだそう)リトアニアから刺激的なTTフレームを持ち込んだTsubasa(奥さんが日本人なのだそう)

フレームビルディング専門学校のThe Bike Academyの先生。教え子5人が、6つの部門賞を獲得したフレームビルディング専門学校のThe Bike Academyの先生。教え子5人が、6つの部門賞を獲得した ハブ・BB・クランクなどをイギリス・ハンプシャーで製造するRoyceハブ・BB・クランクなどをイギリス・ハンプシャーで製造するRoyce


会場内はどこでも飲食自由。日本でもファッションに敏感なサイクリスト達の間で、可愛いジャージとキャップが話題となった「Look Mum No Hands!(ロンドン)」が飲食ブースを設け、ランチやコーヒー、そして海外の自転車ショーには欠かせないビール(笑)を提供していた。ビルダーも来場者もまだ明るいうちからビールを引っかけ、話し好きのイギリス人のトークがまた長くなる。また、日本では見られない光景として、特に変わったデザインのバイクの前でスケッチブックを広げ、絵を描く画家がいたりしたのも面白かった。

ハンドメイド自転車というと、日本では競輪用の需要が盛んなことからほとんどがクロモリフレームだが、欧米ではクロモリ以外にもチタン・カーボン・ステンレス・木材・竹材といった、様々な素材が使われていることが特徴だ。それも、1人のビルダーが同じ素材にこだわることなく、色々な種類の素材に挑戦している例が多く見られた。自転車の種類も、ロード・トラック・MTB・シクロクロス・ツーリング・小径車・タンデム・実用車・ママチャリと、多岐に渡っている。ハンドメイドだからクロモリ!という感じでは全く無いのだ。

Look Mum No Hands!(ロンドン)のフードブースも会場を盛り上げるLook Mum No Hands!(ロンドン)のフードブースも会場を盛り上げる ビールは海外の自転車ショーには欠かせない。イギリス人は話すのが大好きビールは海外の自転車ショーには欠かせない。イギリス人は話すのが大好き

新人賞と最優秀賞の2つを同時に獲得し涙ぐむ、Rowan FrameworksのTimmy Rowanさん新人賞と最優秀賞の2つを同時に獲得し涙ぐむ、Rowan FrameworksのTimmy Rowanさん 各賞に輝いたバイクは次回以降の記事で紹介します各賞に輝いたバイクは次回以降の記事で紹介します


そしてBespoked UKHBSでもアメリカのNAHBSと同じように、主催者発表の賞が用意され、ロード・トラック・MTBなど車種別の賞の他に、Best Alternative Material=クロモリ以外のバイク賞や、Best Finish/Paint=塗装と仕上げが美しいバイク賞などが用意されていた。これらの賞は初日の閉場前に発表・表彰され、賞を獲った嬉しさのあまり泣き出すビルダーもいたりと、各ビルダーがどれだけの思いを持ってこのビスポークに出展しているかが窺い知れたのだった。

次回以降の記事では各賞を獲得したバイクを中心に紹介しようと思う。

text&photo:Hisanori“Mario”Ueda