2015/03/26(木) - 09:00
2月7・8日にタイ北部で開催されたチェンライ国際MTBチャレンジ、実走レポートの後編をお届け。タイ奥地のトレールをたっぷり味わえる冒険レースは、2日目のコースも相当にエキサイティングだ。
クタクタになるまでたっぷり走って、タイ名物古式マッサージを受けて、ナイトマーケットで美味しい料理とシンハービールで乾杯した前夜。2日目の朝は身体のあちこちに筋肉痛と心地よい疲労を抱えながらも「今日もタフなコースにチャレンジするぞ!」と妙なヤル気が湧いてくるのは不思議だ。
スタートサインをする参加者は、口々に「カラダが痛い」「すぐに脚が攣りそう」などと口にしているが、不思議と笑顔が絶えない。たしかに普通に考えてこのレースのかなり厳しいコースを2日連続走るのは体力的にもかなりの負担だ。しかしそれでも挑戦してみたいと思えるのは、ひとえにコースも風土も、何もかもが最高だからだろう。
リムコックリゾートを発った一行は、今日のスタート地であるチェンライ郊外のお寺へと向かう。狛犬のような虎の像が据えられた、黄金の佛教寺院に集合。スタート前には参拝もして、荘厳な気分に。あまりにハデな黄金の寺院と龍の置物に、「名古屋のシャチホコも負けとるねぇ〜」とカトーサイクルの社長、加藤さん談。
今日のSS3ロングステージは35km。昨日ほどの標高差はないものの、それでも高度上昇値は903m(実測)に達するアップダウンが連続するハードコースだ。名物「チキンクライム」と呼ばれる激坂が待っている。
軽いアップダウンをこなしながら林道で距離を稼いでいく。年齢別のクラスごとに抜きつ抜かれつ、グループによる集団走行のドラフティングを利用して遅れないように走る、ハイスピードレースだ。
繰り返すアップダウンに、じわじわと遅れる人が出てグループが絞られる。やがて脚の合う数人ごとになる。のどかな山村とタイの田舎の風景を愛でながら走れるコース。水牛の群れる村、少数民族の住む小さな村を抜けて走ると、やがてコースは熱帯の山間部へと分け入っていく。
高速でダブルトラックのジープロードから畑のあぜ道、川を横切る小径などを繋いでいく。MTBを飛ばしていると、突然水牛の群れが横切ったり、大きな轍や穴が現れたりするから油断は大敵だ。
ニワトリの駆けまわる小さな村から直登するような激坂だからその名がついた「チキンクライム」は、今日最大の難所。30%あるような勾配で、まっすぐにズドン!と登る激坂。脚力とバランス感覚が優れたライダーしか乗ってはいけない急勾配だ。皆、壁のような登りに取り付くと、「ありえな〜い!」と叫ぶ。ただ、距離自体は短いので、恐れるに足らず。
全参加者中、足を着かずに乗ってクリアできたのはわずか4人。斉藤亮、平野星也、タイのTEPWONG選手、そして宇田川聡仁さん(ブリヂストンサイクル・アンカー販売課勤務)!。「チェンライは楽しいから頑張れちゃいますね!」と笑う宇田川さんは、現在36歳のかつてのMTB-XC全日本チャンプ(1999年)。最近はかなり走れているようで、近々の現役選手復帰もありうる?!
激坂を登り切ったら、お待ちかねの下り区間だ。スイッチバックの続くご機嫌トレイルだが、路面が大きく掘れている箇所も多くてけっこう危険。雨季に降った豪雨が土をえぐったようだった。
脚が売り切れる頃にランチポイントの待つフィニッシュへ到着。今日もランチはタイ料理のブッフェ。今日は「カオソイ」と呼ばれるタイ北部でしか食べられないカレー風の麺「チェンマイヌードル」が供された。これは街なかでもなかなか食べられない珍品で、ラーメンとカレー好きの日本人にはたまらない一品だ。おもわず「シンハービール飲みたい〜!」と叫ぶ中年ライダーたち(笑)。
ランチを済ませると、SS4は9kmのフラットステージ。最終ステージだけに逆転をかけた争いが激化する。争う理由はあまりないのだが、今回一緒に走った仲間同士で競える最後のチャンスに、意味もなく燃えるのだ。
ちなみにこの最終ステージはスタートしばらくは舗装路の下りでロードレースさながらの高速ローリング。そして一気にガツンッと登る激坂を越えると、あとはフラットなジープロードが続く。その短い登りが勝負のポイントで、筆者はこれまでのステージで撮影優先で競えなかったぶん、ここで勝負をかけさせてもらった。登りでアタックして、その差をキープしたままゴールまで逃げ切った。小さなステージ1勝は、気持ちが良いものである(笑)。
続々とゴールするエントラントたち。完走した皆でお互いを讃え合う。「楽しかったね〜」「また来年も来るよ」という言葉が自然に出てくる。記念写真を一緒に撮ったり、道端の少数民族のおばちゃんから手づくりの民芸品をおみやげに買ったり。
ゴール地点からはリエゾンでリムコックリゾートホテルに向かう。途中でアイスを食べ、寄り道しながらの楽しい道中だ。ゴールするとボランティアのお姉さんたちが象の完走メダルを首にかけてくれる。
2日間走り終えたら、その夜は参加者皆での後夜祭ディナーパーティだ。プールサイドで円卓を囲みながら表彰式を行い、ブッフェの美味しいタイ料理を食べて、飲み放題のシンハービールで乾杯。ビールの空き缶をテーブルの上にどこまで積み上げられるかを競うのも恒例だ。
このパーティには例年、タイで合宿中のロード選手たちが飛び入り参加してくれる。今年は翌日からアジア選手権がタイのナランチャコシマで開催されるのだが、出場を控えた新城幸也(ユーロップカー)が登場し、会場は大興奮。即席でユキヤを応援するミニパーティが始まった。
レースの表彰は年代ごとに、各クラス1位の人には1000バーツ(9000円)の賞金も授与される。そして上位入賞者には木彫の象のトロフィーがプレゼントされる。ちなみに総合トップの斉藤亮(ブリヂストンアンカー)のタイムは3時間49分!。 「今年もメチャクチャ追い込んで、メチャクチャ楽しめました。シーズンのスタートはやっぱりここですね!」とニッコニコ。
最高齢73歳のカトーサイクルの加藤さんは3度めの完走。そして最年少10歳ながらインターナショナルクラスに出場し、大人顔負けの走りで軽々と完走した綾野尋君(チームK)に特別賞が授与された。
後夜祭で恒例なのが、表彰台に上がった優勝者をそのままプールへと落とす手荒い祝福「プール落としの刑」。皆、ずぶ濡れで爆笑の時間を過ごす。そしてまた来年、チェンライに帰ってくることを約束しあうのだ。
2日間のタイム合計による総合上位
1位 斉藤亮 3:49:42
2位 松尾純(ミヤタ・メリダ)3:59:42
3位 恩田祐一 4:00:24
4位 Apisit WICHIANKHRUEA 4:26:39
5位 平野星矢(ブリヂストンアンカー) 4:28:14
※ただし表彰は年齢別
photo&text:Makoto.AYANO
フォトギャラリー(CW Facebookアルバム)
クタクタになるまでたっぷり走って、タイ名物古式マッサージを受けて、ナイトマーケットで美味しい料理とシンハービールで乾杯した前夜。2日目の朝は身体のあちこちに筋肉痛と心地よい疲労を抱えながらも「今日もタフなコースにチャレンジするぞ!」と妙なヤル気が湧いてくるのは不思議だ。
スタートサインをする参加者は、口々に「カラダが痛い」「すぐに脚が攣りそう」などと口にしているが、不思議と笑顔が絶えない。たしかに普通に考えてこのレースのかなり厳しいコースを2日連続走るのは体力的にもかなりの負担だ。しかしそれでも挑戦してみたいと思えるのは、ひとえにコースも風土も、何もかもが最高だからだろう。
リムコックリゾートを発った一行は、今日のスタート地であるチェンライ郊外のお寺へと向かう。狛犬のような虎の像が据えられた、黄金の佛教寺院に集合。スタート前には参拝もして、荘厳な気分に。あまりにハデな黄金の寺院と龍の置物に、「名古屋のシャチホコも負けとるねぇ〜」とカトーサイクルの社長、加藤さん談。
今日のSS3ロングステージは35km。昨日ほどの標高差はないものの、それでも高度上昇値は903m(実測)に達するアップダウンが連続するハードコースだ。名物「チキンクライム」と呼ばれる激坂が待っている。
軽いアップダウンをこなしながら林道で距離を稼いでいく。年齢別のクラスごとに抜きつ抜かれつ、グループによる集団走行のドラフティングを利用して遅れないように走る、ハイスピードレースだ。
繰り返すアップダウンに、じわじわと遅れる人が出てグループが絞られる。やがて脚の合う数人ごとになる。のどかな山村とタイの田舎の風景を愛でながら走れるコース。水牛の群れる村、少数民族の住む小さな村を抜けて走ると、やがてコースは熱帯の山間部へと分け入っていく。
高速でダブルトラックのジープロードから畑のあぜ道、川を横切る小径などを繋いでいく。MTBを飛ばしていると、突然水牛の群れが横切ったり、大きな轍や穴が現れたりするから油断は大敵だ。
ニワトリの駆けまわる小さな村から直登するような激坂だからその名がついた「チキンクライム」は、今日最大の難所。30%あるような勾配で、まっすぐにズドン!と登る激坂。脚力とバランス感覚が優れたライダーしか乗ってはいけない急勾配だ。皆、壁のような登りに取り付くと、「ありえな〜い!」と叫ぶ。ただ、距離自体は短いので、恐れるに足らず。
全参加者中、足を着かずに乗ってクリアできたのはわずか4人。斉藤亮、平野星也、タイのTEPWONG選手、そして宇田川聡仁さん(ブリヂストンサイクル・アンカー販売課勤務)!。「チェンライは楽しいから頑張れちゃいますね!」と笑う宇田川さんは、現在36歳のかつてのMTB-XC全日本チャンプ(1999年)。最近はかなり走れているようで、近々の現役選手復帰もありうる?!
激坂を登り切ったら、お待ちかねの下り区間だ。スイッチバックの続くご機嫌トレイルだが、路面が大きく掘れている箇所も多くてけっこう危険。雨季に降った豪雨が土をえぐったようだった。
脚が売り切れる頃にランチポイントの待つフィニッシュへ到着。今日もランチはタイ料理のブッフェ。今日は「カオソイ」と呼ばれるタイ北部でしか食べられないカレー風の麺「チェンマイヌードル」が供された。これは街なかでもなかなか食べられない珍品で、ラーメンとカレー好きの日本人にはたまらない一品だ。おもわず「シンハービール飲みたい〜!」と叫ぶ中年ライダーたち(笑)。
ランチを済ませると、SS4は9kmのフラットステージ。最終ステージだけに逆転をかけた争いが激化する。争う理由はあまりないのだが、今回一緒に走った仲間同士で競える最後のチャンスに、意味もなく燃えるのだ。
ちなみにこの最終ステージはスタートしばらくは舗装路の下りでロードレースさながらの高速ローリング。そして一気にガツンッと登る激坂を越えると、あとはフラットなジープロードが続く。その短い登りが勝負のポイントで、筆者はこれまでのステージで撮影優先で競えなかったぶん、ここで勝負をかけさせてもらった。登りでアタックして、その差をキープしたままゴールまで逃げ切った。小さなステージ1勝は、気持ちが良いものである(笑)。
続々とゴールするエントラントたち。完走した皆でお互いを讃え合う。「楽しかったね〜」「また来年も来るよ」という言葉が自然に出てくる。記念写真を一緒に撮ったり、道端の少数民族のおばちゃんから手づくりの民芸品をおみやげに買ったり。
ゴール地点からはリエゾンでリムコックリゾートホテルに向かう。途中でアイスを食べ、寄り道しながらの楽しい道中だ。ゴールするとボランティアのお姉さんたちが象の完走メダルを首にかけてくれる。
2日間走り終えたら、その夜は参加者皆での後夜祭ディナーパーティだ。プールサイドで円卓を囲みながら表彰式を行い、ブッフェの美味しいタイ料理を食べて、飲み放題のシンハービールで乾杯。ビールの空き缶をテーブルの上にどこまで積み上げられるかを競うのも恒例だ。
このパーティには例年、タイで合宿中のロード選手たちが飛び入り参加してくれる。今年は翌日からアジア選手権がタイのナランチャコシマで開催されるのだが、出場を控えた新城幸也(ユーロップカー)が登場し、会場は大興奮。即席でユキヤを応援するミニパーティが始まった。
レースの表彰は年代ごとに、各クラス1位の人には1000バーツ(9000円)の賞金も授与される。そして上位入賞者には木彫の象のトロフィーがプレゼントされる。ちなみに総合トップの斉藤亮(ブリヂストンアンカー)のタイムは3時間49分!。 「今年もメチャクチャ追い込んで、メチャクチャ楽しめました。シーズンのスタートはやっぱりここですね!」とニッコニコ。
最高齢73歳のカトーサイクルの加藤さんは3度めの完走。そして最年少10歳ながらインターナショナルクラスに出場し、大人顔負けの走りで軽々と完走した綾野尋君(チームK)に特別賞が授与された。
後夜祭で恒例なのが、表彰台に上がった優勝者をそのままプールへと落とす手荒い祝福「プール落としの刑」。皆、ずぶ濡れで爆笑の時間を過ごす。そしてまた来年、チェンライに帰ってくることを約束しあうのだ。
2日間のタイム合計による総合上位
1位 斉藤亮 3:49:42
2位 松尾純(ミヤタ・メリダ)3:59:42
3位 恩田祐一 4:00:24
4位 Apisit WICHIANKHRUEA 4:26:39
5位 平野星矢(ブリヂストンアンカー) 4:28:14
※ただし表彰は年齢別
photo&text:Makoto.AYANO
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