2月7・8日にタイ北部で開催されたチェンライ国際MTBチャレンジ、実走レポートの後編をお届け。タイ奥地のトレールをたっぷり味わえる冒険レースは、2日目のコースも相当にエキサイティングだ。



タイ仏教寺院にずらりと並んでの記念撮影も恒例行事だタイ仏教寺院にずらりと並んでの記念撮影も恒例行事だ photo:Makoto.AYANO
クタクタになるまでたっぷり走って、タイ名物古式マッサージを受けて、ナイトマーケットで美味しい料理とシンハービールで乾杯した前夜。2日目の朝は身体のあちこちに筋肉痛と心地よい疲労を抱えながらも「今日もタフなコースにチャレンジするぞ!」と妙なヤル気が湧いてくるのは不思議だ。

スタートサインをする参加者は、口々に「カラダが痛い」「すぐに脚が攣りそう」などと口にしているが、不思議と笑顔が絶えない。たしかに普通に考えてこのレースのかなり厳しいコースを2日連続走るのは体力的にもかなりの負担だ。しかしそれでも挑戦してみたいと思えるのは、ひとえにコースも風土も、何もかもが最高だからだろう。

リエゾンは国道を走り、チェンライ郊外へ向かうリエゾンは国道を走り、チェンライ郊外へ向かう 朝もやの中を郊外へと向かう参加者たち。スタート地点はタイの仏教寺院だ朝もやの中を郊外へと向かう参加者たち。スタート地点はタイの仏教寺院だ photo:Makoto.AYANO


リムコックリゾートを発った一行は、今日のスタート地であるチェンライ郊外のお寺へと向かう。狛犬のような虎の像が据えられた、黄金の佛教寺院に集合。スタート前には参拝もして、荘厳な気分に。あまりにハデな黄金の寺院と龍の置物に、「名古屋のシャチホコも負けとるねぇ〜」とカトーサイクルの社長、加藤さん談。

仏教寺院を参拝。ちょっとした観光も楽しめてしまうのがこのイベントのいいところ仏教寺院を参拝。ちょっとした観光も楽しめてしまうのがこのイベントのいいところ 寺院の庭にこんな可愛い像を発見寺院の庭にこんな可愛い像を発見


今日のSS3ロングステージは35km。昨日ほどの標高差はないものの、それでも高度上昇値は903m(実測)に達するアップダウンが連続するハードコースだ。名物「チキンクライム」と呼ばれる激坂が待っている。

軽いアップダウンをこなしながら林道で距離を稼いでいく。年齢別のクラスごとに抜きつ抜かれつ、グループによる集団走行のドラフティングを利用して遅れないように走る、ハイスピードレースだ。

SS3のロングコースへとスタートしていくA1・2・3クラスの選手たちSS3のロングコースへとスタートしていくA1・2・3クラスの選手たち photo:Makoto.AYANO
朝の涼しい空気の中、街の裏道を抜けていく朝の涼しい空気の中、街の裏道を抜けていく コースは村の生活道路になっているため村人たちとすれ違うコースは村の生活道路になっているため村人たちとすれ違う photo:Makoto.AYANO


繰り返すアップダウンに、じわじわと遅れる人が出てグループが絞られる。やがて脚の合う数人ごとになる。のどかな山村とタイの田舎の風景を愛でながら走れるコース。水牛の群れる村、少数民族の住む小さな村を抜けて走ると、やがてコースは熱帯の山間部へと分け入っていく。

昨年の総合トップの平野星矢(ブリヂストンアンカー)がパンク。宇田川さんがサポート昨年の総合トップの平野星矢(ブリヂストンアンカー)がパンク。宇田川さんがサポート フラットダートを飛ばすA5の先頭集団フラットダートを飛ばすA5の先頭集団

今日も川を渡った。走破のコツは勢いをつけて一気にジャブッと渡ること!今日も川を渡った。走破のコツは勢いをつけて一気にジャブッと渡ること! ニワトリの走り回る村を抜けてキチンクライムへと向かうニワトリの走り回る村を抜けてキチンクライムへと向かう photo:Makoto.AYANO


高速でダブルトラックのジープロードから畑のあぜ道、川を横切る小径などを繋いでいく。MTBを飛ばしていると、突然水牛の群れが横切ったり、大きな轍や穴が現れたりするから油断は大敵だ。

ニワトリの駆けまわる小さな村から直登するような激坂だからその名がついた「チキンクライム」は、今日最大の難所。30%あるような勾配で、まっすぐにズドン!と登る激坂。脚力とバランス感覚が優れたライダーしか乗ってはいけない急勾配だ。皆、壁のような登りに取り付くと、「ありえな〜い!」と叫ぶ。ただ、距離自体は短いので、恐れるに足らず。

名物チキンクライム。30%以上とも思える超激坂が壁のように立ちはだかる名物チキンクライム。30%以上とも思える超激坂が壁のように立ちはだかる photo:Makoto.AYANOチキンクライムを乗ったままクリアした宇田川聡仁さんチキンクライムを乗ったままクリアした宇田川聡仁さん


全参加者中、足を着かずに乗ってクリアできたのはわずか4人。斉藤亮、平野星也、タイのTEPWONG選手、そして宇田川聡仁さん(ブリヂストンサイクル・アンカー販売課勤務)!。「チェンライは楽しいから頑張れちゃいますね!」と笑う宇田川さんは、現在36歳のかつてのMTB-XC全日本チャンプ(1999年)。最近はかなり走れているようで、近々の現役選手復帰もありうる?!

竹やぶに覆われたトレイルを行く竹やぶに覆われたトレイルを行く photo:Makoto.AYANO
今日もランチはタイ料理のブッフェ。どれも美味しくて最高です今日もランチはタイ料理のブッフェ。どれも美味しくて最高です photo:Makoto.AYANO右端がチェンマイヌードル「カオソイ」。カレー風味のタイ式ラーメンだ右端がチェンマイヌードル「カオソイ」。カレー風味のタイ式ラーメンだ photo:Makoto.AYANO


激坂を登り切ったら、お待ちかねの下り区間だ。スイッチバックの続くご機嫌トレイルだが、路面が大きく掘れている箇所も多くてけっこう危険。雨季に降った豪雨が土をえぐったようだった。

脚が売り切れる頃にランチポイントの待つフィニッシュへ到着。今日もランチはタイ料理のブッフェ。今日は「カオソイ」と呼ばれるタイ北部でしか食べられないカレー風の麺「チェンマイヌードル」が供された。これは街なかでもなかなか食べられない珍品で、ラーメンとカレー好きの日本人にはたまらない一品だ。おもわず「シンハービール飲みたい〜!」と叫ぶ中年ライダーたち(笑)。

カオソイをずるっとすすれば、「ビール飲みたい〜!」カオソイをずるっとすすれば、「ビール飲みたい〜!」 photo:Makoto.AYANO最高齢73歳のカトーサイクルの加藤さんと最年少10歳ながらインターナショナルクラスに出場・完走した綾野尋君(チームK)最高齢73歳のカトーサイクルの加藤さんと最年少10歳ながらインターナショナルクラスに出場・完走した綾野尋君(チームK)



SS4スタート。いよいよ最終ステージだSS4スタート。いよいよ最終ステージだ ランチを済ませると、SS4は9kmのフラットステージ。最終ステージだけに逆転をかけた争いが激化する。争う理由はあまりないのだが、今回一緒に走った仲間同士で競える最後のチャンスに、意味もなく燃えるのだ。

ちなみにこの最終ステージはスタートしばらくは舗装路の下りでロードレースさながらの高速ローリング。そして一気にガツンッと登る激坂を越えると、あとはフラットなジープロードが続く。その短い登りが勝負のポイントで、筆者はこれまでのステージで撮影優先で競えなかったぶん、ここで勝負をかけさせてもらった。登りでアタックして、その差をキープしたままゴールまで逃げ切った。小さなステージ1勝は、気持ちが良いものである(笑)。

フラットダートの超高速走行で走り出すSS4フラットダートの超高速走行で走り出すSS4 photo:Makoto.AYANO
登り口でこの写真を撮った後にアタックした筆者はそのまま逃げ切り成功!登り口でこの写真を撮った後にアタックした筆者はそのまま逃げ切り成功! ゴール!過酷なレースを走りきった後だけに誰しも笑顔が弾ける瞬間だゴール!過酷なレースを走りきった後だけに誰しも笑顔が弾ける瞬間だ


続々とゴールするエントラントたち。完走した皆でお互いを讃え合う。「楽しかったね〜」「また来年も来るよ」という言葉が自然に出てくる。記念写真を一緒に撮ったり、道端の少数民族のおばちゃんから手づくりの民芸品をおみやげに買ったり。

ゴール地点に待ち構えていたアカ族のおばちゃんから民芸品を買う。値段交渉が楽しいゴール地点に待ち構えていたアカ族のおばちゃんから民芸品を買う。値段交渉が楽しい お互いの完走と健闘を讃え合う。「また来年も来るよ」が合言葉だお互いの完走と健闘を讃え合う。「また来年も来るよ」が合言葉だ

村の子供達が珍しい自転車の人を見つけて駆け寄ってくる村の子供達が珍しい自転車の人を見つけて駆け寄ってくる 道端に店を広げるアカ族の民芸品をおみやげに買いましょう道端に店を広げるアカ族の民芸品をおみやげに買いましょう



ゴール地点からはリエゾンでリムコックリゾートホテルに向かう。途中でアイスを食べ、寄り道しながらの楽しい道中だ。ゴールするとボランティアのお姉さんたちが象の完走メダルを首にかけてくれる。

ゴールにつくと象のメダルを首にかけてもらえますゴールにつくと象のメダルを首にかけてもらえます 皆で記念撮影。「また来年も出場するぞ!」皆で記念撮影。「また来年も出場するぞ!」 photo:Makoto.AYANO


2日間走り終えたら、その夜は参加者皆での後夜祭ディナーパーティだ。プールサイドで円卓を囲みながら表彰式を行い、ブッフェの美味しいタイ料理を食べて、飲み放題のシンハービールで乾杯。ビールの空き缶をテーブルの上にどこまで積み上げられるかを競うのも恒例だ。

プールサイドでの後夜祭。贅沢な時間だプールサイドでの後夜祭。贅沢な時間だ ディナーパーティの料理は本格的タイ料理。つまり結構辛いですディナーパーティの料理は本格的タイ料理。つまり結構辛いです


このパーティには例年、タイで合宿中のロード選手たちが飛び入り参加してくれる。今年は翌日からアジア選手権がタイのナランチャコシマで開催されるのだが、出場を控えた新城幸也(ユーロップカー)が登場し、会場は大興奮。即席でユキヤを応援するミニパーティが始まった。

ユキヤの登場で会場は大盛り上がり。プレゼントもいただきました!ユキヤの登場で会場は大盛り上がり。プレゼントもいただきました! 飛び入りの新城幸也選手に大喜びの参加者。でもコルナゴシャツを用意しているあたり、さすがリピーターさんだ飛び入りの新城幸也選手に大喜びの参加者。でもコルナゴシャツを用意しているあたり、さすがリピーターさんだ


レースの表彰は年代ごとに、各クラス1位の人には1000バーツ(9000円)の賞金も授与される。そして上位入賞者には木彫の象のトロフィーがプレゼントされる。ちなみに総合トップの斉藤亮(ブリヂストンアンカー)のタイムは3時間49分!。 「今年もメチャクチャ追い込んで、メチャクチャ楽しめました。シーズンのスタートはやっぱりここですね!」とニッコニコ。

総合トップの斉藤亮(ブリヂストンアンカー)には3000バーツ(約12,000円)の賞金が渡された総合トップの斉藤亮(ブリヂストンアンカー)には3000バーツ(約12,000円)の賞金が渡された 年代別、クラス別に様々な表彰があるのが嬉しい年代別、クラス別に様々な表彰があるのが嬉しい


最高齢73歳のカトーサイクルの加藤さんは3度めの完走。そして最年少10歳ながらインターナショナルクラスに出場し、大人顔負けの走りで軽々と完走した綾野尋君(チームK)に特別賞が授与された。

後夜祭で恒例なのが、表彰台に上がった優勝者をそのままプールへと落とす手荒い祝福「プール落としの刑」。皆、ずぶ濡れで爆笑の時間を過ごす。そしてまた来年、チェンライに帰ってくることを約束しあうのだ。

プールへと運ばれる斉藤亮(ブリヂストンアンカー)。まんざらでもなさそうだプールへと運ばれる斉藤亮(ブリヂストンアンカー)。まんざらでもなさそうだ プールに投げ込む手荒な祝福!プールに投げ込む手荒な祝福!

びしょ濡れの松尾純と平野星矢。毎年のようにプールに落とされているびしょ濡れの松尾純と平野星矢。毎年のようにプールに落とされている 参加者皆で記念撮影。このアットホームさがこの大会の魅力の一つ参加者皆で記念撮影。このアットホームさがこの大会の魅力の一つ photo:Makoto.AYANO


2日間のタイム合計による総合上位
1位 斉藤亮 3:49:42
2位 松尾純(ミヤタ・メリダ)3:59:42
3位 恩田祐一 4:00:24
4位 Apisit WICHIANKHRUEA 4:26:39
5位 平野星矢(ブリヂストンアンカー) 4:28:14
※ただし表彰は年齢別


photo&text:Makoto.AYANO

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