魅力的なトレイルがたくさんある長野県。今回、i-nac MTBチームの監督でインストラクターの今田大三氏を講師に迎えた1泊2日のトレイル入門ツアーに編集部ヤスオカが参加してきた。なにかと敷居の高いイメージのあるMTBの世界を身近にしてくれるツアーの様子を紹介しよう。



ブエルタが終わり、ジャパンカップが終わり、さいたまクリテリウムが終わり、残すはおきなわぐらいとなったロードレースシーズン。シクロクロスが各地ではじまり、編集長はじめ、イソベやフジワラといった編集部員はほぼ毎週末自転車を担いでは泥まみれになって帰ってきている。そんな10月も終わりにさしかかった日のこと。

信州のトレイルを満喫してきました!信州のトレイルを満喫してきました!
なんか、新しいことがしてみたいなあ。ロードバイクももちろん楽しいのだが、コケまくって泥まみれになりながらも笑い続けているフジワラを見ていると、自転車の楽しみ方はロードバイクだけではないことを改めて思い知らされるのだ。まあ、コケすぎて頭のネジがどこかに飛んで行ったしまった可能性も否定できないのだけれども。

それにしても、オフロードは楽しそうである。とはいえ、安直(?)にシクロクロスに流れるというのも天の邪鬼な性格が災いし、なかなか難しい。というより、やっぱり自転車でオフロードと言えば王道はMTBでしょう!3か月前にシマノバイカーズフェスティバルで実走取材して以来、MTBにかなり興味が湧いていたのも事実。しかし、走るところもあまり分からないし、乗り方自体も雑誌を読んでの自己流だし、というので少し二の足を踏んでいたというのも事実。

そんな悶々としていたところ、大学のサイクリング部のOBが国際自然環境アウトドア専門学校(i-nac)に進学・卒業し、長野の観光協会で働いているのを知ったのだ。サイクリング部のOBOGの集まるツーリングがあり、その中でマウンテンバイクスクールとトレイルツーリングのコーディネイトを手掛けているという話が出て、興味があったサイクリング部連中と一緒に食いつき、じゃあぜひ一度お願いします、ということでとんとん拍子に話は進んだ。

幸いバイクは編集部にGIANTのハードテールバイク XTC ADVANCED 2がある。初心者にはもったいないぐらいのスペックを持つレーシングバイクだが、テクもない初心者にはこっちのほうが良いハズ。他のメンバーもMTB経験はほぼゼロで、もちろんバイクもないのだが、そこはレンタルバイクも用意されているので安心だ。あとは白馬に向かうだけだ。



みっちりとオフロードでの基礎を学んだ1日目

さて、そんなこんなで白馬に到着。渋滞の影響もあり、昼過ぎからスクールは開講となった。スクールの会場となったのは長野オリンピックのクロスカントリー競技の会場となった、白馬クロスカントリー競技場(スノーハープ)。ちなみに長野県にはオリンピックの時に使われた施設がたくさんあり、いまもコンサートやランニング大会といった、さまざまなイベント時に有効利用されているのだ。

まずはストレッチからスクールは始まるまずはストレッチからスクールは始まる アキレス腱を伸ばすストレッチ 私は体が硬くて無理でしたアキレス腱を伸ばすストレッチ 私は体が硬くて無理でした

8の字のお手本を見せてくれる今田さん8の字のお手本を見せてくれる今田さん
ペダルの踏み方を解説中ですペダルの踏み方を解説中です 実際に走ってみましょう実際に走ってみましょう


まずは、自己紹介とレンタルバイクのフィッティングから。用意されていたレンタルバイクを各自の身長に合わせてフィッティングしていく。ただ、サドル上にどっかりと座ることはないため、サドル高はかなり低めで合わせられる。普段ロードに乗っているメンバーからはそれだけでも、かなり驚きのよう。

まずは、ハンドルの握りかた、ブレーキレバーの握り方、ペダルへの踏み方といった、本当に基本中の基本というようなところから丁寧にレクチャーが始まっていく。普段からロードに乗っているんだったらそれくらいできるだろ、と思っている読者諸氏。バーハンドルの自転車に乗るのも久しぶりなので、基礎からはじめてもらえると非常にありがたいのだ。

前輪が乗り越えるときは後ろに身体を引いて前輪が乗り越えるときは後ろに身体を引いて 後輪が乗り越えるときは前に身体を倒す後輪が乗り越えるときは前に身体を倒す

フロントリフトの練習中フロントリフトの練習中 最後は、急斜面の下り方のレクチャーで〆最後は、急斜面の下り方のレクチャーで〆


次は、基本となる「立ち乗り」。クランクを地面と水平にして、サドルから腰を上げた状態で進む基本的な姿勢だ。ヒザとヒジを軽く曲げ、路面のギャップを身体をサスペンションとして吸収しながら進んでいくために、まずはこの乗り方をマスターする必要があるということだ。

さて、それが終われば、障害物を乗り越えるための前後への荷重移動やフロントリフトのレクチャー。角材を障害物に見立てて、その上を通過していくというスタイル。他にも、MTBならではのリーンインでのコーナーリングや、ブレーキングについてのレクチャーを受け、最後はドロップオフの下りかたを体験してみて、ボリュームたっぷりの1日目は終了。途中は、笑いも挟みながらわかりやすく教えてくれるのは、i-nacで山本幸平選手を始めとした多くのプロMTBライダーを育ててきた今田さんならでは。

食事が終わったら、明日のコースについてリクエストを聞いてくれたり食事が終わったら、明日のコースについてリクエストを聞いてくれたり
わきあいあいと食卓を囲みますわきあいあいと食卓を囲みます おいしそうな料理がたくさん並んでいました この大学芋がうまいのなんのって。おいしそうな料理がたくさん並んでいました この大学芋がうまいのなんのって。


レクチャーが終わったら、今晩お世話になる白馬のペンション「SUNNY SIDE HUT」へと移動。近くの温泉で汗を流したら、オイシイ夕食が待っていた。おいしいワインとご飯を頂きながら、今田さんと今日の講座のこと、長野のトレイルのこと、i-nacのことなど、いろんな話をしているとあっという間に時間が経ってしまう。

スクールの受講の様子などを見て、今田さんとツアーコーディネーターの遠藤さんが明日走るコースを相談してくれ、とっておきのトレイルに連れて行ってくれることに決まった。こういうフレキシブルなところも、カスタマイズの効くツアーならでは。明日の朝早い出発に備えて、日付が変わる前に就寝した。



長野のトレイルを満喫した2日目

翌朝起きると、おいしそうな匂いが食堂から漂っている。フレンチトースト(なんとおかわり自由!)をいただいて、朝からお腹一杯になったら、今田さんの車についてトレイルへと移動していく。峠道の途中にある駐車場に車をデポしたら、自転車を下して、ストレッチをして走りだしていく。

紅葉がきれいな峠を登っていきます紅葉がきれいな峠を登っていきます
行ってきまーす!またきてねー^^行ってきまーす!またきてねー^^ さあ、いよいよトレイルに向けて出発!さあ、いよいよトレイルに向けて出発!


はじめは舗装路の登りを走っていく。ロードで走っていれば、どうしても峠はシャカリキにゼーハーと走ってしまいがちだけれども、MTBだと自然とまったり登ろうという気分になる。そして、いよいよトレイルに到着。いきなり階段が現れ、いきなり担ぎから始まる。ロードでは考えられないシチュエーションで、なんだかそれだけで楽しくなってしまう。

結構厳しめの登りセクションで初心者の私たちが乗れる区間はあまり無かったけれど、それでも参加している皆が笑顔なのが面白い。考えてみれば、単純に登山としてとらえても、立派なアウトドアアクティビティになる訳で楽しくないわけがない。しかも自転車を担いでいるなんて、普通の人はやらないわけで非日常感はたっぷりだ。

担ぎ方のレクチャーもあります担ぎ方のレクチャーもあります こうやって、上にいる人に渡したりもするとかこうやって、上にいる人に渡したりもするとか

さっそく担いで登っていきますさっそく担いで登っていきます
頂上めざして押し歩き頂上めざして押し歩き 切り返しが急なところは自転車を立てて押します切り返しが急なところは自転車を立てて押します


そうこうしているうちに、山頂へとたどり着く。眼下に広がる眺望は雄大で登ってきた甲斐もあろうというもの。とはいえ、本当に登った目的はこの先の下り区間。とはいえ、そこは初心者なのでそろそろと下っていく。地元のMTBライダーが集って整備しているだけあって、非常に走りやすいトレイルだ。

ほどよく上下の動きがあるセクションに、バームが作られたような九十九折れのセクションにと、かなり楽しめるコースレイアウトで、初心者でも怖くなく、かといって単調になりすぎるわけでもなく、バイクを下りないといけないようなセクションも少なくて、最高に楽しめるトレイルだ。

絶景に思わずパシャリ絶景に思わずパシャリ 標高1000mのプレートを感慨深げに見つめる標高1000mのプレートを感慨深げに見つめる

あっちの方に下っていくんだよあっちの方に下っていくんだよ 押した分だけ下りが気持ちいい!押した分だけ下りが気持ちいい!

ちょっと急すぎる下りでしたねちょっと急すぎる下りでしたね 少しうねっているストレートセクション少しうねっているストレートセクション


最初はそろりそろりと下っていたみんなも、だんだん慣れてくるとスピードを出して下るようになってくる。イージーなセクションはどこかというのを、今田さんがあらかじめ教えてくれるので安心して走っていけるのだ。バイクを降りたほうがよさそうなセクションの前では、止まって教えてくれるので無理することもあまり無い。

それでもたまにこけてしまうのもまた、オフロードの醍醐味と言えるだろう。あまり速度が出ていないのと、地面が柔らかいので、オンロードに比べると怪我しづらいのだ。大体はちょっと泥まみれになるぐらいで済むのだ。一緒に走っていた仲間も大体1回は転び、地面と仲良くなっている。

途中、実がたくさんなっている林檎畑の中を通ったりしながら、気づけばトレイルは終わっていた。住宅街の裏路地を通り抜けて、車まで戻れば1本目のトレイルは終了。お昼ご飯は長野市内の蕎麦屋でくるみ蕎麦を頂き、午後のトレイルへと移動した。

ストレート区間はスピードが出てたのしー!ストレート区間はスピードが出てたのしー! なんだか様になってきたかも?なんだか様になってきたかも?

新しいセクションに入るたびに走り方をレクチャーしてくれるので、皆真剣に聞いています新しいセクションに入るたびに走り方をレクチャーしてくれるので、皆真剣に聞いています
もう最高!といった感じ?もう最高!といった感じ? 赤いりんごにくちびる寄せて赤いりんごにくちびる寄せて


2本目のトレイルは遊歩道的な位置づけのルート。登りでの担ぎはあまり無かったけれど、下りは岩場や階段がちょくちょく登場し、バイクを担いで下りることもしばしば。うまくなれば、こういうセクションも乗車したままクリアできるようになるんだろうな、などと考えていると、俄然MTBの練習をしたくなってきた。

無事に2本目のトレイルも走り終えると、すでに日没が近くなってきた。駐車場に戻り、バイクを車に積み込む。帰り支度をしている皆もどこか名残惜しそうな表情。最後に、今日の感想をお互いに話したけれど、皆口ぐちに初めてのトレイルライドがいかに楽しかったかを語ってくれた。このままいけば、行きつけの自転車店にMTBの注文がまとめてはいる日も近そうだ。ちなみに私は帰ってきてからというもの、多摩湖の周りのちょっとしたオフロードを見つけては走りまわっている。

みなさんお疲れ様でした!!みなさんお疲れ様でした!!
「どこを」「どう」「だれと」走ればいいのか、わからないために少し敷居が高く感じがちなMTBライド。でも、そこで諦めてしまうにはもったいないくらいの楽しさが敷居のむこうに待っている。不安に感じる人に必要な水先案内人こそ、今田さんのようなプロのガイドだ。MTBと信州のトレイルを知り尽くしたインストラクターがフルスクラッチでプランを作ってくれるプレミアムなツアーに興味がある人は信州しなの町エコツーリズム観光協会(メール)に連絡してみてはいかがだろうか?

photo&text:Naoki.Yasuoka

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