フランス、スイス国境に面したイタリアの北西部の州、ヴァッレアオスタは、ヨーロッパを代表する名峰を眺めることができる絶景の中、変化に富んだ地形や歴史ある街道でのサイクリングを楽しめるエリアだ。食事や遺跡観光なども同時に楽しめるアオスタの魅力を凝縮した、フェローサイクルプロデュースの魅力あるサイクリングルートを紹介しよう。


雄大なアオスタ渓谷バックにサイクリングを満喫できる雄大なアオスタ渓谷バックにサイクリングを満喫できる (c)フェロートラベル
数々の名峰の絶景と豊富なサイクリングルート

ヨーロッパでの本格的なサイクリングツアーを企画しているフェローサイクル。イタリアをディスティネーションとして、2つのプランを用意している。1つは前回紹介した、世界遺産として有名なドロミテエリアだ。もう一つは本編で紹介するアオスタエリアだ。

アオスタ州は、アルプス山脈に四方を囲まれた自然豊かな土地だ。20あるイタリアの州の中で最も面積が小さく、最も人口が少ない州であり、フランス国境に近いことから、イタリア語と併用してフランス語も公用語として話されている国境沿いであることを感じさせるエリア。
アオスタサイクリングルートマップアオスタサイクリングルートマップ (c)フェロートラベル
氷河が作り出した深い谷と急峻な山しかないような地形が特徴で、同州の真ん中を高速道路が貫いている。イタリアの大都市とフランスを繋ぐ交通の要所だが、その高速道路を除けば、他の州とのアクセスが良いとは言えない。そのため、交通量も少なくサイクリングを楽しむには最適だ。

アオスタの谷の複雑な自然の地形を生かした変化に富んだコースはさまざまな表情をサイクリストに見せてくれる。30を越えるオンロードサイクリングの推奨ルートがあり、フェローサイクルではそれらのルートをアレンジした、オリジナルルートを設定している。それではそのルートを紹介していこう。



アオスタの自然を気軽に体感できるルート25
フェレの谷へののどかなルートフェレの谷へののどかなルート (c)フェロートラベル
ルート25は、スキーシーズンの宿泊拠点としても有名で、古くからの街並みが魅力のクールマイユールからスタートし、フェレの谷を目指す、走行距離約15㎞、標高差565mのルート。交通量が少なく、距離も高低差も少ないため、ツアーのサイクリング初日に慣れるには格好のルートだ。

目前に迫るモンテビアンコ(モンブラン)を見上げながら、迫りくるダイナミックな景観を眺めながら走ることが最大の魅力。静かで落ちついたフェレの谷でのサイクリングを充分に楽しんだ後の帰路は、途中のラ・パルドで自転車を降り、ロープウェイを乗り継いで標高3462mのブンタ・エルブロンネルの展望台から、目前に迫るモンテビアンコを眺めることができる。

時間があればここからさらにフランス側(シャモニー方面)からの展望台で別の表情を魅せるモンテビアンコを眺めることも可能だ。サイクリングをしながら見上げていたモンテビアンコを展望台で間近に見ることも同時にできてしまう眺望も、このルートを走るならぜひ体験する価値があるだろう。



歴史的なナポレオン街道を自転車で走るルート17
グラン・サンベルナール峠の上りを進むグラン・サンベルナール峠の上りを進む photo:Makoto Ayano
 ルート17は、走行距離約35 ㎞、標高差1883mと中級者向けのルートだ。ナポレオン街道との呼称で、歴史を感じることができるルートだ。峠を上るにつれ次第に眼下に広がってくるアオスタの谷の景観は爽快そのもので、谷の風を感じながらサイクリングを最大限味わうことができる。

2009年ツール・ド・フランス。別府史之がグラン・サンベルナール峠頂上を目指す2009年ツール・ド・フランス。別府史之がグラン・サンベルナール峠頂上を目指す photo:Makoto Ayanoアオスタ市街地からスイスとの国境である、標高2473mのグラン・サンベルナルド峠までのヒルクライムは、新城幸也と別府史之が日本人として初めて完走を果たした、2009ツール・ド・フランスの第16ステージにおいて登場した峠。

読者の中にも応援で訪れたこともある人もいるのではないだろうか?ちなみにツール史上でも4番目に標高の高い峠であり、もちろん超級山岳としてカテゴライズされる、かなり走り応えのあるルートだ。ヒルクライムに自身のあるサイクリストにとっては憧れのスポットだ。




コーニュまでの変化に富んだ谷を走るルート32
冠雪したアルプスの裾野を走り抜ける冠雪したアルプスの裾野を走り抜ける (c)フェロートラベル
 ルート32は、アオスタ市街地から、南側の標高1610mのコーニュを目指す、走行距離約25㎞、標高約1000mのルート。バルノンティ谷などのタイトで高低差のある地形をぬって走る変化に富んだルートは、氷河が作り出したヴァッレアオスタならではの様々な形の渓谷のバリエーションを思う存分に味わえるサイクリングルートだ。途中、深い谷に建造された歴史ある石造りの水道橋は、ぜひ立ち寄りたいポイントの一つだ。



名峰チェルビーノを目指すヒルクライム
観客が詰めかけた1級山岳チェルヴィニアを登る観客が詰めかけた1級山岳チェルヴィニアを登る photo:Kei.Tsuji
 ルート10は、チェルビーノの玄関口であるシャティオンからチェルビニア峠までの走行距離約27㎞、標高1470mのヒルクライムルートだ。シャティオンから真正面に、名峰チェルビーノを捉えてヒルクライムが始まる。途中、チェルビーノが湖面に映り込む景観が魅力のブルーレイクや、アンテイ・セント・アンドレの街、スキーの拠点での有名なヴァルトナンシュを経て、名峰が広がるワイドな景観のチェルビニア峠に到着。

標高2001mに向けて全長26kmオーバーのヒルクライム標高2001mに向けて全長26kmオーバーのヒルクライム photo:Kei.Tsuji2012ジロ・デ・イタリア第14ステージのフィニッシュ地点ともなったチェルビニアへの上りは、急勾配の上りは少なく、5~6%程度の登りが延々と続いていくことが特徴だ。脚力に自信がなくとも、景観を楽しみながらゆっくりと登れば、無理なく楽しめる程よい難易度の峠と言えるだろう。

峠を登りきってチェルビニアに到着すれば、自転車でここまで登ってきたご褒美が用意されている。峠に存在するロープウェイに乗り継げば、さら2000m上り、標高4478mのチェルビーノの景観をより間近に思う存分楽しむことができる。



ヴァッレアオスタでのサイクリングは、フランス、スイスとの国境にそびえている名峰に登り、数々の絶景を眺める以外にも、アオスタの街並みや遺跡、州に130も存在している中世のお城、そして現地のバイクショップを楽しみ、郷土料理とアオスタ産のワインと共に味わいながら、疲れを癒すことができる。ぜひ、サイクリングを堪能しながら五感でヴァッレアオスタを味わってはいかがだろうか。

なおツアーについて詳しくは以下リンクの記事より日程や内容、諸条件をご確認ください。